竜馬がゆく
『竜馬がゆく』(りょうまがゆく)は、司馬遼太郎の長編時代小説。幕末維新を先導した坂本竜馬を主人公とする。
「産経新聞」夕刊に1962年6月21日から1966年5月19日まで連載し、1963年から1966年にかけ、文藝春秋全5巻で刊行された。1974年に文春文庫創刊に伴い全8巻で刊行、単行・文庫本ともに改版されている。
司馬の代表作であり、世間一般でイメージされる坂本龍馬像は、この歴史小説の影響が大きいとされている[1]。
これまでに、大河ドラマの他に、民放各局でも何度かテレビドラマ化されている。とりわけ萬屋錦之介は中村錦之助時代から、この作品の「竜馬像」に惚れ込み、中村玉緒や弟の中村嘉葎雄等とも、初版刊行まもない時期に舞台公演をしており、司馬自身の「楽屋訪問」や「打ち上げ」での写真もある。
目次
1 主な登場人物
2 刊行書誌
3 逸話
3.1 ちょうりんぼう事件
4 テレビドラマ
4.1 1965年版
4.2 1968年版
4.3 1982年版
4.3.1 スタッフ
4.3.2 キャスト
4.4 1997年版
4.4.1 スタッフ
4.4.2 キャスト
4.5 2004年版
4.5.1 スタッフ
4.5.2 キャスト
5 映像媒体
6 脚注
7 外部リンク
主な登場人物
- 坂本竜馬
- 土佐脱藩の志士。18歳で剣術修行のために出府した際に黒船来航に直面し、衝撃を受ける。勝海舟に師事し、軍艦を手に入れようと奔走する。子供のような一面を持ちつつ、つかみどころのない性格をしている。
- 勝海舟
- 幕臣。竜馬の唯一の師匠。
- 陸奥陽之助
- のちに宗光と改名。紀州藩出身。藩の勢力争いに絡み、父親が失脚したことに反発して、若くして脱藩。海援隊に参加し、竜馬の右腕として活躍する。才気煥発に過ぎ、朋輩の受けは今一つである。
- おりょう
- 竜馬の妻。身寄りのない所を竜馬が保護し、寺田屋に住まわせた。初対面の人がはっとするほどの美人だが、思考が自己中心的でいわゆる「空気を読まない」発言もしばしばある。竜馬の女性関係に過敏で、姉の乙女の話題にすら反応する。
- 寝待ノ藤兵衛
- 元盗賊。竜馬の人柄にほれてその使用人のような存在となる。特技を生かし、諜報活動などを行う。
- 乙女
- 竜馬の姉。男勝りの性格で、竜馬に与えた影響は計り知れない。のちにおりょうを引き取るが、うまが合わなかったようである。
- お登勢
- 伏見の船宿寺田屋の女主人。面倒見がよく、頭の良い女性。竜馬にほれているが、それを表に出さない。身寄りのないおりょうを養女とする。
- お田鶴
- 土佐藩家老福岡家の娘。坂本家は福岡家預り郷士である。のちに三条実美に仕える。身分の差を越えて竜馬を愛している。平井収二郎の妹で西山志澄の妻となる平井加尾がモデルとされる。
- 千葉さな子
- 千葉重太郎の妹。女性ながら、北辰一刀流免許皆伝。竜馬に告白し、閉口した竜馬のあいまいな返事を承諾と受け取った。竜馬の婚約者として、生涯独身を貫いた。
- 後藤象二郎
- 土佐藩士。吉田東洋の縁者。竜馬の船中八策を受け入れ、山内容堂に大政奉還を進言する。
- 武市半平太
- 土佐藩士。竜馬と並ぶ郷士の頭目的存在。土佐勤王党を結成するが、吉田東洋暗殺、藩政壟断の罪に問われ切腹。
- 吉田東洋
- 土佐藩の元参政。土佐勤王党員に暗殺される。
刊行書誌
- 単行本
- 『竜馬がゆく』(全5巻、文藝春秋、1963年 - 1966年)
- 『竜馬がゆく』(新装版全5巻、文藝春秋、1988年)
- 文庫判
- 『竜馬がゆく』(全8巻、文春文庫、1974-75年)
- 『竜馬がゆく』(新装版全8巻、文春文庫、1998年)
- 全集
- 『司馬遼太郎全集 3・4・5』(文藝春秋、1981年)
逸話
本作品は司馬の代表作の一つで同時に維新の英傑として、今日に至る竜馬像を確立した作品である。『司馬遼太郎 歴史のなかの邂逅(5)』(中公文庫、2011年)に作品随想を収録している。
『竜馬がゆく』の執筆のきっかけは産経新聞時代の後輩にあたる高知県出身の渡辺司郎(元産経新聞社常務大阪代表、元大阪市教育委員会委員長)が遊びに来て
「これは仕事で言ってるのではなくて、自分の国の土佐には坂本竜馬という男がいる。竜馬を書いてくれ」と依頼されたことがきっかけになっている[2]。依頼された当初は、司馬自身その気がなかったが、後日他の小説の資料あつめをしていると不思議と坂本竜馬が出てきて親しみを覚え、本格的に坂本竜馬を調べてみようと思うようになったと述べている。
当時坂本龍馬の誕生日には諸説あったが、この作品で11月15日を使用したため11月15日に龍馬の誕生日が確立したという逸話がある。
俳優で海援隊のボーカルでもある歌手の武田鉄矢は、高校生の頃にこの『竜馬がゆく』を読んで、熱烈な龍馬のファンになった。
サザンオールスターズの原由子も産休中に『竜馬がゆく』を読んだことがきっかけで、龍馬ファンになっている[3]。
司馬は本作品の執筆にあたり、神田神保町の神田古書店街の複数店に依頼し、ワゴン車1台分の当時1400万円相当の古書・古文書を集め購入したという。
ちょうりんぼう事件
1983年9月、京都新聞の広告に「ちょうりんぼう」という差別語が使われ、部落解放同盟がこれに抗議した。京都新聞社は『竜馬がゆく』に使われていた言葉を借用したと釈明したため、解放同盟は司馬を糾弾。同年12月に京都部落解放センターの差別確認会の席へ司馬を出席させた。この席で司馬は「"長吏"と人間の尊厳について」という釈明文を朗読した。ヤジなどで騒然としていた会場は司馬の部落差別に対する批判と明晰な文章によってすぐに静まりかえり、その後糾弾がエスカレートすることはなくなったという。なお司馬は執筆当時、「ちょうりんぼう」が差別語である事は知らず、古い土佐弁で「馬鹿」を意味する罵倒語の一種であるとしか認識してなかったと語っており、差別語の指摘を受け出版社へすぐに該当箇所の削除を申し出ている。
テレビドラマ
1965年版
1965年4月19日〜1965年11月22日の21:00〜21:30にMBSで放送された。主役:中野誠也。
1968年版
NHK大河ドラマ、主役:北大路欣也。
1982年版
1982年1月2日の12:00~23:53にテレビ東京の12時間超ワイドドラマで放送された。主演は萬屋錦之介。全五部構成。
スタッフ
- 原作:司馬遼太郎
- 脚本:下飯阪菊馬、沢島正継、岡本育子、武末勝
- 監督:大洲斎、松島稔
- 音楽:佐藤勝
キャスト
土佐藩
薩摩藩
| 長州藩
その他の藩
幕閣・幕臣
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1997年版
1997年1月1日18:00〜23:09にTBSで放送された(TBS大型時代劇スペシャル枠)。
スタッフ
- 監督:脇田時三
- 脚本:長坂秀佳
- 音楽:篠原敬介
- 語り:林美雄
- 主題歌:沢田知可子「生きる歓び」
- 製作:TBS、テレパック
キャスト
土佐藩
長州藩
| 薩摩藩
その他
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2004年版
テレビ東京の新春ワイド時代劇枠で2004年1月2日に放送された。
第一部 出発、第二部 脱藩、第三部 襲撃、第四部 希望の、全4部構成。
スタッフ
- 製作:テレビ東京、松竹株式会社
- 脚本:長坂秀佳
- 監督:松原信吾、奥村正彦
- 音楽:川崎真弘
- 主題歌:ASKA「心に花の咲く方へ」
- 殺陣:宇仁貫三
- 制作:島川哲雄(テレビ東京)、野田助嗣(松竹)
- チーフプロデューサー:小川治(テレビ東京)
- プロデューサー:只野研治(テレビ東京)、武田功(松竹)、佐々木淳一(松竹)
- プロデューサー補:三好英明(松竹)
- 企画協力:C.A.L
キャスト
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※1997年版と同じ長坂秀佳の脚本だが、放映時間が伸びたことで場面、登場人物が追加された他、97年版と同じ場面でもかなり改稿が加えられ、新しい仕上がりの作品となっている。
映像媒体
- 1982年版(萬屋錦之介)
- 竜馬がゆく DVDBOX 発売日:2001年12月21日:2010年3月12日
- 竜馬がゆく 第1巻 発売日:2001年12月21日
- 竜馬がゆく 第2巻 発売日:2001年12月21日
- 竜馬がゆく 第3巻 発売日:2001年12月21日
- 竜馬がゆく 第4巻 発売日:2001年12月21日
- 竜馬がゆく 第5巻 発売日:2001年12月21日
- 1997年版(上川隆也)
- 竜馬がゆく 発売日:2004年11月26日
- 2004年版(市川染五郎)
- 竜馬がゆく DVDBOX 発売日:2004年9月25日
脚注
^ 例えば、「坂本龍馬=土佐弁」のイメージが定着したのは、この小説によるとの研究がある。:田中ゆかり『「方言コスプレ」の時代 ニセ関西弁から龍馬語まで』(岩波書店)ISBN 978-4-00-024870-9
^ 司馬遼太郎が語る日本 週刊朝日 11-20増刊 1996年 時代を超えた竜馬の魅力 P57
^ 原由子『あじわい夕日新聞~夢をアリガトウ~』P56 - 57、朝日新聞出版、2013年
外部リンク
- 新春ワイド時代劇「竜馬がゆく」公式サイト
テレビ東京 12時間超ワイドドラマ | ||
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テレビ東京 新春ワイド時代劇 | ||
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忠臣蔵〜決断の時 (2003年) | 竜馬がゆく (2004年) | 国盗り物語 (2005年) |
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