集史
1206年初春のチンギス・カンの即位(『集史』パリ本) 『 集史 』(しゅうし、ペルシア語: جامعالتواریخ Jāmi` al-Tavārīkh、アラビア語: جامع التواريخ Jāmi` al-Tawārīkh)は、イルハン朝の第7代君主ガザン・ハンの勅令(ヤルリク)によってその宰相であったラシードゥッディーンを中心に編纂された歴史書である。イラン・イスラム世界、さらに言えばモンゴル君主ガザン自身の視点が反映されたモンゴル帝国の発祥と発展を記した記録として極めて重要な文献である。 モンゴル史部分の編纂には、ガザン自身も多くの情報を口述しこれがモンゴル史の根本となったことはラシードゥッディーンも序文で述べているが、これらのことからも『集史』はガザン自身の見解が色濃く反映された歴史書である。その性格のため『集史』はペルシア語で編纂された歴史書であるが、13、14世紀のモンゴル語やテュルク語やその他の多言語の語彙・用語を多く含み、そのペルシア語の用語も多く含まれている。このため『集史』は、モンゴル帝国が持つユーラシア規模の世界性をまさに体現した希有の資料と評されている。 ペルシア語で書かれたものであるが、タイトルである Jāmi` al-Tawārīkh はアラビア語で「諸々の歴史を集めたもの」を意味し、日本語では『集史』と翻訳されている。ちなみにロシアの東洋学者ベレジンによる校訂本に基づいたモンゴル史までの中国語訳があるが、この題は『史集』と訳されている。 目次 1 成立 2 特徴 3 構成 3.1 第一巻(Mujallad-i Awwal)(モンゴル史) 3.1.1 序文(Muqaddima-yi Mujallad-i Awwal) 3.1.2 第一部(Bāb-i Awwal)(テュルク・モンゴル諸部族史) 3.1.3 第二部(Bāb-i Duwwum)(チンギス・カン一門の歴史) 3.2 第二巻(Mujallad-i Duwum)(世界史) 3.3 第三巻(Mujallad-i Suwum)(地理誌) 4 後世における『集史』の影響 5 現存する写本 5.1 第一巻『ガザン史』(モンゴル史)の...