電波
電波(でんぱ)とは、電磁波のうち光より周波数が低い(言い換えれば波長の長い)ものを指す。光としての性質を備える電磁波のうち最も周波数の低いものを赤外線(又は遠赤外線)と呼ぶが、それよりも周波数が低い。送信機が電波を人工的に発生させ、受信機がアンテナを使って受け取る。ハワイにある日本のすばる望遠鏡は宇宙の電磁波を観測する装置である。
目次
1 定義・概要
2 用途
3 電波における電磁スペクトル
4 電波の質
5 注釈
6 関連項目
7 外部リンク
定義・概要
電波は光や音波などと同様に、空間を伝播する性質がある(伝播速度は光速と同じであり音(音速)より速い)。電波は宇宙空間のような何もない空間でも、伝播することができる(音の伝播には気体・液体・固体いずれかの振動媒質が必要である)。
日本での法的な定義は、電波法第2条第1号で電波を「三百万メガヘルツ[1]以下の周波数の電磁波」と定義している。国際連合の専門機関である国際電気通信連合は、国際電気通信連合条約[2]附属書で「電波とは、人工的導体のない空間を伝搬する当面3000ギガヘルツ[1]より低い周波数の電磁波をいう[3]。」と定義されている。
物理的には、ガンマ線や光も電波も電磁波のある帯域を指している用語であり、光としての性質(粒子性)と波としての性質(波動性)を持つため、技術的にどちらの性質を利用しているかで区別することがある。電波天文学などでは測定方法によって電波として扱ったり、光として扱える周波数帯がある。これは、高周波技術の発展によって従来は遠赤外線領域とみなされていた周波数領域までヘテロダイン方式で受信できるようになったことによる。
社会的には電波は公共の財産である。各国では政府機関が利用者に周波数を割り当てる。日本では総務省が管轄する。日本以外の世界では、携帯電話用の周波数帯を中心に「電波オークション(電波競売)」で割り当てる場合もあり、電波利用料には大きな差がみられる。
用途
次が挙げられる。
- 放送・(広域、複数対象の)通信
テレビやラジオの放送(地上波によるものも、衛星によるものもある)- 業務用無線通信:警察、消防・救急医療、船舶、航空管制など
- アマチュア無線通信:アマチュア無線
- 電話:携帯電話・PHS(電気通信事業)、マルチチャネルアクセス無線、コードレス電話
- データの送受
無線LAN、テレメータなど
気象観測(ラジオゾンデなど)
- 遠隔操作
リモコンから電子機器への通信、ラジコンのおもちゃでコントローラーから本体への通信。
- 位置測定
GPS、VICS、ロランなどの位置情報システム
- 加熱
電子レンジ:マイクロ波による加熱
- 反射を利用したもの
- レーダー
- 分析化学
- 核磁気共鳴分光法
- 電子スピン共鳴
電波における電磁スペクトル
周波数と対応する波長によって電波は以下の周波数帯に分割される。
周波数帯 | 略称 | ITU基準 | 周波数と波長 | 用途例 |
---|---|---|---|---|
3Hz以下 100,000km以上 | ||||
極極極超長波 | ELF | 1 | 3 - 30Hz 100,000km - 10,000km | 潜水艦の通信 |
極極超長波 | SLF | 2 | 30 - 300Hz 10,000km - 1000km | |
極超長波 | ULF | 3 | 300 - 3000Hz 1000km - 100km | 鉱山における通信 |
超長波 | VLF | 4 | 3 - 30kHz 100km - 10km | 無線心拍計、地球物理学 |
長波 | LF | 5 | 30 - 300kHz 10km - 1km | 電波航法、電波時計、長波放送 |
中波 | MF | 6 | 300 - 3000kHz 1km - 100m | 中波放送、雪崩ビーコン |
短波 | HF | 7 | 3 - 30MHz 100m - 10m | 短波放送、アマチュア無線、業務通信、核磁気共鳴分光法 |
超短波 | VHF | 8 | 30 - 300MHz 10m - 1m | 超短波放送、VHFテレビ放送、業務通信、核磁気共鳴分光法 |
極超短波 | UHF | 9 | 300 - 3000MHz 1m - 100mm | UHFテレビ放送(地デジ含)、電子レンジ、携帯電話、無線LAN、Bluetooth、GPS、業務通信、核磁気共鳴分光法 |
センチメートル波 | SHF | 10 | 3 - 30GHz 100mm - 10mm | ETC、無線LAN、衛星放送、最新レーダー、電子スピン共鳴 |
ミリ波 | EHF | 11 | 30 - 300GHz 10mm - 1mm | 電波天文学、高速中継放送、最新レーダー(ミリ波レーダー)、電子スピン共鳴 |
サブミリ波 | 300GHz以上 1mm以下 |
電波の質
電波法第28条に「送信設備に使用する電波の周波数の偏差及び幅、高調波の強度等電波の質は、総務省令で定めるところに適合するものでなければならない。」と規定している。これを受けた無線設備規則には、第1章総則第2節電波の質として、第5条から第7条に「周波数の許容偏差」、「占有周波数帯幅の許容値」、「スプリアス発射又は不要発射の強度の許容値」があり、具体的な値は別表第1号から第3号に規定するものとしている。
注釈
- ^ ab3,000,000MHz=3,000GHz=3THzである。
^ CONVENTION DE L'UNION INTERNATIONALE DES TELECOMMUNICATIONS
^ 原文はフランス語で記述されている。
関連項目
電波の周波数による分類 - アマチュア無線の周波数帯
- 電離層
電波工学・無線工学
- 電波障害
通信・電気通信・無線通信
- エレクトロニクス用語一覧
- 電波利用料
- 電波天文学
電波の日(6月1日)- 電磁波過敏症
- 非電離放射線
- ラジオ
- アンテナ
- マクスウェルの方程式
電波系 - 人間の類型のひとつ
外部リンク
- 電波暗室検索サイト アンナビ
- 総務省 電波利用ホームページ
- Signal Identification Guide(無線信号同定ガイド)
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