森林鉄道
森林鉄道(しんりんてつどう)とは、森林から生産される木材を搬出するために設けられた産業用鉄道である。日本の場合、急峻な山岳地形に対応するため、軌間が狭くカーブの曲率も高い線形が特徴である。山間奥部に集落や飯場が存在するため客扱いを行った路線も存在する。
目次
1 日本の森林鉄道
1.1 現存する森林鉄道
1.2 動態保存されている森林鉄道
1.3 廃止された主な森林鉄道
2 森林鉄道と森林軌道
3 日本国外の森林鉄道
3.1 現存する森林鉄道
3.2 廃止された森林鉄道
4 関連項目
5 外部リンク
日本の森林鉄道
明治時代の後半、欧米列強の脅威から国を守るために富国強兵と殖産興業に邁進していた日本では、国産木材の需要が急速に高まった。しかし、古来から行われていた筏による木材の水上輸送は、常に商品である木材の紛失と水難事故の危険を伴うもので、計画的な物流が難しかった。そこで、森林鉄道の建設を目指す機運が全国で高まった。また、水力発電のためのダムの建設により水上輸送が不可能になることへの補償として、電力会社主導で敷設されることもあった。
日本の森林鉄道の歴史は、1909年(明治42年)12月20日に開通した津軽森林鉄道に始まる。その後、長野県の木曽、高知県の魚梁瀬をはじめとして、全国各地の林産地帯に大小さまざまな森林鉄道が建設された。また、当時は日本の一部だった台湾にも、同様に阿里山森林鉄路などの森林鉄道が建設された。
軌間は殆どが762mm でいわゆるナローゲージである。営林署が中心となって762mm を標準とし、例外的に610mm を採用していた模様であり、かなり小規模な路線でも鉱山用軌道や構内軌道に見られる508mm の軌間は採用されていなかった[要出典]。運材台車や機関車の互換性の他に木材移動時の転覆の防止もあったものと考えられる。
1960年代までの日本は国産材中心の時代であり、大量の木材が生産されていた。しかし伐採した木材を搬出する林道網が貧弱な上、トラックなどの性能が低かったこともあり、運搬手段として鉄道が一般的に利用されてきた。宮崎県では当時[いつ?]の国鉄の営業キロを上回る延長の森林鉄道が存在した。
1970年代になると、外国材の輸入が本格化して採算性が悪化したこと、資源の枯渇が進み鉄道で運び出すほどの量の木材が生産できなくなったこと、自動車の発達と林道網の充実したことにより、またたく間に山から消えていった。1975年に、本州最後の森林鉄道が廃線し、歴史に幕を閉じた。林鉄の衰退後、自動車輸送の集積所まで索道が用いられることもあったが、それも伐採量の減少により廃止され、現在、付加価値の高い材木はヘリコプターで集められるようになっている。
21世紀を迎えた現在、全国には森林鉄道の遺構である橋や軌道跡が多く残されている。中には、道路や遊歩道などに姿を変えて利用されている場所も多く、かつて林業で栄えた歴史を持つ地方自治体の中では、それらの観光や車両の動態保存を通じて地域振興を図る機運が高まっている。
年度 | 鉄道(1級) | 軌道(2級) | 索道 | 自動車道 | 車道 | 木馬道 | 牛馬道 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1947 | 1,964 | 4,639 | 10 | - | 9,394 | 1,495 | 4,178 | 21,680 |
1948 | 2,371 | 3,752 | 8 | 4,910 | 5,193 | 1,273 | 3,964 | 21,471 |
1949 | 2,421 | 3,751 | 15 | 5,048 | 4,779 | 1,176 | 3,950 | 21,140 |
1950 | 2,488 | 3,643 | 17 | 5,444 | 4,788 | 1,098 | 3,900 | 21,378 |
1951 | 2,592 | 3,602 | 22 | 6,071 | 4,422 | 1,012 | 3,932 | 21,653 |
1952 | 2,692 | 3,491 | 25 | 6,786 | 4,332 | 927 | 3,850 | 22,103 |
1953 | 2,103 | 3,930 | 25 | 7,560 | 4,243 | 832 | 3,840 | 22,533 |
1954 | 2,112 | 3,848 | 26 | 8,515 | 4,001 | 722 | 3,514 | 22,738 |
1955 | 1,819 | 4,103 | 28 | 9,423 | 3,752 | 708 | 3,331 | 23,164 |
1956 | 1,743 | 3,914 | 31 | 10,497 | 3,623 | 673 | 3,285 | 23,766 |
1957 | 1,740 | 3,876 | 29 | 10,527 | 3,615 | 673 | 3,286 | 23,746 |
1958 | 1,605 | 3,736 | 33 | 11,410 | 3,518 | 569 | 3,174 | 24,045 |
1959 | 1,474 | 3,348 | 34 | 12,383 | 3,428 | 521 | 3,142 | 24,330 |
1960 | 1,352 | 3,033 | 41 | 13,535 | 3,432 | 498 | 3,112 | 25,003 |
1961 | 1,164 | 2,737 | 40 | 14,535 | 3,441 | 380 | 2,760 | 25,057 |
1962 | 1,049 | 2,466 | 38 | 15,602 | 3,045 | 328 | 1,892 | 24,420 |
1963 | 900 | 2,095 | 36 | 17,010 | 2,859 | 290 | 1,628 | 24,818 |
1964 | 750 | 1,756 | 30 | 18,252 | 2,692 | 264 | 1,454 | 25,198 |
1965 | 602 | 1,285 | 21 | 19,536 | 2,690 | 232 | 1,317 | 25,683 |
1966 | 438 | 998 | 21 | 20,920 | 2,537 | 137 | 1,150 | 26,201 |
1967 | 326 | 779 | 17 | 22,052 | 2,368 | 81 | 926 | 26,549 |
1968 | 261 | 580 | 14 | 23,123 | 2,200 | 61 | 799 | 27,038 |
1969 | 170 | 321 | 9 | 24,347 | 2,142 | 54 | 653 | 27,696 |
- 1947年度の車道は自動車道含む
- 日本林業技術協会編『林業技術史』第4巻、日本林業技術協会、1974年、318頁
現存する森林鉄道
安房森林軌道(鹿児島県熊毛郡屋久島町)
- 安房-発電所間は発電所の整備の為に使われており、ダムより上流部では屋久杉の土埋木の運材の為に現在も用いられている。また、観光施設への物資の搬送業務も担う。
京都大学演習林軌道(京都府)
- 極めて不定期ながら運行されている模様。
動態保存されている森林鉄道
まむろがわ温泉 梅里苑(山形県真室川町2014年は4/29から土日祝日運行。平日は10名以上の予約で運行)
丸瀬布森林公園いこいの森(北海道遠軽町丸瀬布)- 園内に武利意森林鉄道の路盤を一部使用した全長2kmの森林鉄道規格の軌道を敷設。
松原スポーツ公園(長野県王滝村)
赤沢自然休養林(長野県上松町)
丸山公園(高知県馬路村)
廃止された主な森林鉄道
北海道
- 羽幌森林鉄道
- 温根湯森林鉄道
- 置戸森林鉄道
- 足寄森林鉄道
- 斗満森林鉄道
- 淕別森林鉄道
- 津別森林鉄道
- 武利意森林鉄道
- 定山渓森林鉄道
- 芦別森林鉄道
- 古丹別森林鉄道
- 幾春別森林鉄道
- 主夕張森林鉄道・下夕張森林鉄道
王子軽便鉄道(王子製紙所有)
青森県
- 津軽森林鉄道
- 川内森林鉄道
- 大畑森林鉄道
岩手県
- 水沢森林鉄道
秋田県
- 長木沢森林鉄道
- 鷹巣森林鉄道
- 杉沢森林鉄道
- 仁別森林鉄道
- 森吉森林鉄道
- 玉川森林鉄道
宮城県
- 定義森林鉄道
- 新川森林鉄道
群馬県
- 根利森林鉄道
埼玉県
- 武州中津川森林鉄道
- 東京大学演習林軌道
- 入川森林鉄道
神奈川県
- 世附森林鉄道
静岡県
- 千頭森林鉄道
- 水窪森林鉄道
- 気田森林鉄道
- 熊切森林鉄道
長野県
- 木曽森林鉄道
- 浦森林鉄道
- 黒河内森林鉄道
- 遠山森林鉄道
- 阿寺軽便鉄道
愛知県
設楽森林鉄道
- 田峯森林鉄道
- 田口森林鉄道
- 田口鉄道
岐阜県
- 付知森林鉄道
- 双六・金木戸森林鉄道
湯舟沢森林鉄道(岐阜県・長野県)- 恵那山森林軌道
坂川鉄道 - 廃止後、営林局へ譲渡。坂下森林鉄道の一部となる- 七宗森林鉄道
- 小坂森林鉄道
三重県
- 大杉谷森林鉄道
和歌山県
- 高野山森林鉄道
- 土場連絡用軌道
兵庫県
- 波賀森林鉄道
高知県
- 魚梁瀬森林鉄道
熊本県
内大臣森林鉄道
監物台樹木園に機関車が保存されている。ゲージは狭軌。
宮崎県
- 綾森林鉄道
- 巣之浦森林鉄道 巣之浦線16.8km大幡線12.0km。霧島山の国有林を小林駅 (宮崎県)まで搬出するため建設。運行停止は1965年頃
森林鉄道と森林軌道
森林鉄道の中には、森林軌道の名称を使用しているものがある。森林軌道も森林鉄道の一種であるが、正確に言えば、森林鉄道は大きく、1級線と2級線、作業軌道に区別されており、1級線が森林鉄道、2級線が森林軌道という。作業軌道に対し、1級線と2級線を土木軌道ともいう。
森林鉄道と森林軌道、作業軌道の違いは規格の違いにより、森林軌道規格の森林鉄道路線も存在する。当初は両者の区分は曖昧であったが、1953年(昭和28年)に林野庁によって一定の規格が定められた。林野庁通達による区分は次の通りである。
- 1級線(森林鉄道)
- 最小曲線半径:30m 以上
- 勾配限度:40‰
- 軌条:10 - 22kg
- 道床厚み:100mm
- 2級線(森林軌道)
- 最小曲線半径:10m 以上
- 勾配限度:50‰
- 軌条:9kg
- 道床厚み:70mm
- 作業軌道
- 仮設的に施設され簡易構造の軌道。路盤が無いものが多く、伐採の進捗により仮設される場合が多い。殆どは伐採終了後に撤去されるが、整備され、1級線、2級線になるものもある。
日本国外の森林鉄道
現存する森林鉄道
阿里山森林鉄路(台湾嘉義市、嘉義県、南投県) - かつて台湾が日本の一部だった時代に建設された歴史的経緯があり、線路の規格などが日本の森林鉄道と同一である。
太平山森林鉄路(一部トロッコ観光化、台湾宜蘭県)
廃止された森林鉄道
羅東森林鉄路(台湾・宜蘭県羅東鎮)
嵐山森林鉄路(台湾・花蓮県)
哈崙森林鉄路(同上)
葦河森林鉄路(中国黒竜江省)
モルタビッタ森林鉄道(ルーマニア)
シンプルチャタッイ森林鉄道(ルーマニア)
関連項目
- 車両メーカー
- 雨宮製作所
- 協三工業
- 酒井重工業
- 加藤製作所
- 富士重工業
- 北陸重機工業
- ボールドウィン・ロコモティブ・ワークス
- プリマス・ロコモティブ・ワークス
- 木馬道
- 軽便鉄道
外部リンク
森林鉄道/林野庁HP 画像、映像
木材のいにしえを探るシリーズ2:―国有林で活躍した林業機械メーカーは今どうなったか?― - 林野庁(更新日不明)2018年4月1日閲覧
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