ロボット
ロボット(robot)は、人の代わりに何等かの作業を自律的に行う装置、もしくは機械のこと。
主に以下に大別することが可能である。
- ある程度自律的に連続、或いはランダムな自動作業を行う機械。例・産業用ロボット、軍事用ロボット、掃除用ロボット、搾乳ロボットなど。
人や動物を模した、または近似した形状および機能を持つ機械。現状では主にSFで描かれているもの(自律行動が出来るいわゆるアンドロイドや人造人間と呼ばれるもの(『鉄腕アトム』など)や遠隔操作するもの(『鉄人28号』など)、パワードスーツなども含む人間が搭乗や装着して行動する人の力を増幅するもの(『マジンガーZ』など))が容易に想像されるが、現実世界でも研究用やパブリックなもの(テーマパークやパビリオンなどで案内係を務める)だけではなく、愛玩用のペットロボットや、二足歩行ロボットの実用化以来、ホビーとしての手軽なロボットも広まりつつある。
単なる機械とロボットとの境界は厳密にいえば明確になっておらず、今後、技術が進歩するにつれ、ますます曖昧になっていくといわれ[1]、AIやセンサー技術、IoTなどにより、自家用車や家電はロボットと呼ぶべきものになっていく可能性がある。
近年では無人機「ドローン」を半ば自律化させたもの[2]も存在し、自動運転車の実現が視野に入ってきており、SFの世界が現実のものとなりつつある。
生命体に通常以上の力を発揮させる方策として何らかの人工物を埋め込んだり置き換えるなどの方策を採った者は一般に「サイボーグ」などと呼ばれ区別されることが多い。
目次
1 語源
2 定義
3 歴史
4 実在のロボット概略
4.1 人型
4.2 一般社会への普及
4.3 搭乗型
4.4 兵器
4.5 警備
4.6 特殊環境用
4.7 動作補助
4.8 人命救助
4.9 研究用
4.10 競技・興行用
4.11 分類
5 ロボットを題材とした作品
6 ロボットの研究者
7 実在のロボット
8 脚注
9 参考文献
10 関連項目
11 外部リンク
語源
この言葉が初めて用いられたのは、1920年にチェコスロバキア(当時)の小説家カレル・チャペックが発表した戯曲『R.U.R.(ロッサム万能ロボット商会)』においてであるが、この作品では現在認知されている金属製の機械ではなく、人間とは異なる組成の肉体と人間そっくりの外見を持つものを、化学的合成で原形質を使って製作したもので、現在のSFで言うバイオノイドである。
チェコ語で賦役(強制労働)を意味するrobota(ロボッタ)と[3]、スロバキア語で労働者を意味するrobotnik(ロボトニーク)から創られた造語[4]である。
着想にはゴーレム伝説が影響していると作者が述べており[5][6]、また、言葉自体も作ったのは自身ではなく、兄で画家のヨゼフ・チャペックであるとしている。あらすじを兄に話し、どのような名前にしたらよいだろうかと聞いてみたところ、口に絵筆をくわえてもごもごとした口調で「ロボット」はどうだろうかと答えたという[7]。その後、この作品が各国で翻訳・上演されたことで広まり、一般に使用されるようになった。
日本においても、同作品が1923年に『人造人間』(宇賀伊津緒訳、春秋社)として出版されており、宇賀はrobotを「人造人間」と訳している。原典のままをカタカナ化した言葉が普及するのは、戦後以降である。
定義
起源とされる上記作品において「人の代わりに作業(労働)をさせることを目的に」、「人(の姿と自律行動)を模して」作られたものであるとされているが、同作品の一般への広範囲な広まりにより、各分野においてそれぞれ普及し、独自に用いられるようになった。ヨーロッパでは1930年代中頃から『自動化』という意味合いでも使われており、ドイツのカメラメーカーであるオットー・ベルニングは1934年から発売したモータードライブ内蔵カメラを『ROBOT』と命名している。
明確な定義は事実上存在しないとされているものの、起源に習い「人に代わって作業(労働)をするために作られた存在」、「人の姿を模して作られた存在」、「人の(自律)行動を模して作られた存在」のいずれかまたは複数が該当する存在であると捉えられている。なお特定の分野においては明確に定義が定められている場合もあり、JISでは「JIS B 0134」(1998年)により「産業用ロボット」の定義を、「自動制御によるマニピュレーション機能又は移動機能をもち,各種の作業をプログラムによって実行できる,産業に使用される機械。」と規定されており、さらに「JIS B 0134」では産業用マニピュレーティングロボットに関する用語が定義されている。
基本的に、人の代わりに作業を行う装置のうち、ある程度の工程なり手順なりを自動的かつ連続的に行うものであり、単一の動作のみを行う装置(ベルトコンベアー、エスカレーターなど)や、絶えず人間が操作をする必要がある装置(リフト装置やエレベーター)、操縦者が搭乗する必要性があるもの(ブルドーザーやショベルカーなど)は含まないことが多い。
その一方で、人の形を模した(若しくは類似した)外観である機械装置であれば、まったくの手動操作・操縦であっても、範疇に含む場合があり、パワードスーツなどを含めた「人の形をした乗り物または作業用機械」についても同様に、一般的にはロボットと呼ばれている。
作業用機械・装置であっても、高度な遠隔操作や自動制御技術の導入が進み、人間が操縦者から単なる作業指示・命令者に近づきつつあり、さらに、従来よりオートパイロットと呼称されている、航空機や船舶など乗り物全般の自動操縦技術も、より発展し自動車にまでも及びつつあり、今後これらが更にロボット化が進む可能性があり、一層、境界が曖昧になって来ている。
操り人形の類は何かの作業を目的とした装置ではなく、ましてや自動的に動作する物でもないため含まれないことがほとんどだが、あらかじめ設計された一連の動作を、特定の操作をきっかけとして行うからくり(からくり人形)の一部(もっぱら糸で繋がった手足などを人が操作するものも、からくり人形と呼ばれる場合がある)やオートマタ等に、今日あるロボットの原型を見出すことができるため、間接的にからくり人形やオートマタをロボットの一種と見なすことも可能である。
モーター等の動力が内蔵され機械的または電気的に人間の操作を伝達して動作するマニピュレーターも一種と見なされ、ロボットアームとも呼ばれる(医療ロボットのダ・ヴィンチや国際宇宙ステーションのカナダアーム2など)が、これらは厳密な定義による分類ではなく、多分に慣用句的用法である。
物体としては存在しないが、「人の代わりになんらかの作業を、ある程度の工程なり手順なりを自動的かつ連続的に(かつ効率的に)行うもの」という定義から、コンピュータ言語によるプログラムやソフトウェアも範疇に含まれる場合もある。例としてインターネットの情報を自動検索するソフトウエア「検索エンジン」などはロボット検索(命令(検索ワードの入力)するだけで、さまざまな結果・情報の取得まで自動で行なう)と呼ぶ。これらは機械的ロボットとの区別のために短縮形のボット(Bot)と呼ばれる(インターネットボット、ボットネットなど)こともある。
別の用法として、「機械的」という概念を人間にあてはめ、「自分で判断をしない、指示待ち的な人間」や「自分の意志ではなく、他人に操られて動く人間」を、やや侮蔑的に比喩として呼称することもある。ただし、同様の人を指して「傀儡(かいらい)」や「操り人形」という比喩は、それ以前から存在するため、新しい語をバリエーションの一つとしてあてはめたものと言える。英語においても、同様の比喩に用いるが、こちらも先に「オートマトン(オートマタ、機械人形)」が比喩に用いられていた。
歴史
- 古代の神話には、自律的に動く人型の人工物がいくつか登場する(ゴーレムやピグマリオン、タロースなど多数)。
紀元前4世紀、アルキタスは鳩型の空飛ぶ機械を製作したとも言われている。
紀元前4世紀、アリストテレスはオートマタによって人間の奴隷を廃止できる可能性について議論したとされる。
紀元前4世紀、「列子」に人型の機械人形を作成した人物に関する記述がある。「韓非子」にも空飛ぶ鳥型の人形の記述がある。
紀元前3世紀、クテシビオスは人形が周りを回る水時計を作製した。また、アレクサンドリアのヘロンやビザンチウムのフィロンは様々な自動機械の仕組みを発明した。
1088年、機械学者の蘇頌は人形が数時間ごとにチャイムを鳴らす大時計を作成した[8][9]。
12世紀、機械工学者のジャザリーは飲み物を給仕するものや、楽器を演奏するものを作製した。
12世紀、鎌倉時代の仏教説話集『選集抄』に人間そっくりの生物的ロボットと言えるものの記述が登場し、これが日本のロボット史の最初とされる[4]が、これは人骨を集めて作った人形に魂を宿す魔術によって蘇るという話でありロボットと言えるのか意見の分かれるところである。
12世紀、アルベルトゥス・マグヌスがアンドロイドを作ったと記録されている。
13世紀、Robert II, Count of Artoisは数々の人型、動物型の機械人形を作製した。
1495年、レオナルド・ダヴィンチが現代で言えばヒューマノイドとして捉えられる、詳細な設計図も含んだ一群のスケッチを作成する(ダヴィンチのロボット)。
1533年、レギオモンタヌスは鷲型の空飛ぶ機械を製作した[10]。また、ジョン・ディーは空飛ぶカブトムシの機械を製作した。
1622年、からくり人形の竹田座が大阪に開業(1768年まで)[4]。
1739年、ジャック・ド・ヴォーカンソンがアヒルを模したオートマトンを開発する。
1770年、「トルコ人」と呼ばれたチェスを指すオートマタと詐称した物が作製される。
1773年、ピエール・ジャケ・ドローによる文字を書く人形が作製される。
1796年、細川半蔵が茶運人形などの構造を図解した「機巧図彙」(からくりずい、きこうずい)を著す。
1886年、ヴィリエ・ド・リラダンが「未来のイヴ」という小説でアンドロイドという語を初めて使ったとされる。
1921年、カレル・チャペックが「ロボット」の造語を使用し、その概念が広まった。
1926年、ウェスティングハウス・エレクトリックが電話で送った信号によりリレーを操作する機械(人間が発した言葉に応答した人類史上初の機械である)「テレヴォックス」(Televox)を開発する。のち(1927年にニューヨークで開催された世界博覧会に展示される折)に筐体表面に人型に切り抜いた板を貼り付けたことで、これが人型ロボット第一号とみなされてしまうこともある。
1927年、アンドロイドが登場する有名な映画「メトロポリス」が放映される。
1928年、世界初のヒューマノイドとされる「Eric(エリック)」が作製される。
1928年、日本初のロボット[4]と認識されている「學天則」(がくてんそく)を、生物学者の西村真琴が製作した。その後、翻訳上演された外国演劇にロボットが登場したことをきっかけに関心が高まるも、第二次大戦勃発により日本のロボット開発は中断する[4]。
1947年9月25日、アメリカ空軍のC-54輸送機がオートパイロットで大西洋を渡り、イングランドへの着陸に成功する。
1948年、William Grey Walterが「Elmer and Elsie」と呼ばれる初期の自律式ロボットを作成する。
1950年、SF作家のアイザック・アシモフが、『われはロボット』作中でロボット工学三原則を発表、人間との共存に関する議論の的となる。
1950年、手塚治虫が漫画『鉄腕アトム』発表[4]。
1961年、アメリカのジョージ・デボルが世界初の実用的産業用ロボットである「ユニメート」を発売した。すぐにゼネラルモーターズの工場に納入され、ダイカスト作業に投入された[11]。
1963年、日本初のTVアニメ「鉄腕アトム」が人気となり、劇中のロボット「アトム」は、のちの日本でのロボット開発において一つの目標となる。
1969年、川崎重工がユニメートのライセンス生産を開始する[12]。
1970年、大阪万国博覧会が開催され、ロボットを中心にしたパビリオン「フジパンロボット館」が出展された。
1970年代末、日本の多くの企業が産業用ロボット市場に進出する。
1980年代、自動車などの生産ラインに、溶接や部品の組み付けなどの作業を行う産業用ロボットが導入され始める。また同時期、マイコン制御による自律自走式のマイクロマウス競技が流行し、様々な企業や個人が、優れた迷路脱出能力をもつものを開発・発表する。さらにアメリカ等の国々で、マイコン制御の家庭用ロボットが複数市販された。これらはROMチップに焼き付けたプログラムをStepByStepで実行する関係で扱いが難しく、また高価であることからあまり普及しなかったものの消費者の関心を集めた。そのブームに乗り、パソコンやゲーム機で制御する(人形やフィギュアとは別の意味の)「ロボット玩具」が普及し、テレビアニメ等で様々なロボット物の番組が提供された。
1985年、筑波研究学園都市で国際科学技術博覧会(つくば科学博)が開催され、「芙蓉ロボットシアター」などで様々な種類が展示された。
1996年、単体で完全な二足歩行を行う人型ロボット「P2」を本田技研工業が発表する。
1999年、ソニーが犬型ロボット「AIBO」を発売して人気となり、家庭用エンターテイメントロボットという市場が生まれた。
2000年、本田技研工業がASIMOを開発。
2002年2月4日、ロボット競技ROBO-ONE第一回大会が東京で開催。二足歩行ロボット研究が個人レベルにまで浸透する。
2004年3月18日、コンピュータ操作の無人自動車によるレース「DARPAグランド・チャレンジ」がアメリカ国防総省によってモハベ砂漠で開催。参加車両15台中、240kmを完走した車両は出なかったが、翌年10月の第二回大会では参加車両23台のうち5台が212kmを完走した。
2005年、愛・地球博開催。多種多様なロボットが発表され、展示だけでなく会場案内や楽器演奏、ミュージカル出演など活躍。
2008年、ロボットスーツHAL製品化。
2017年、香港のハンソン・ロボティクスの人型ロボット「ソフィア」がロボットでは世界初の市民権を取得[13]。
実在のロボット概略
以下は現実世界におけるロボットの研究・開発状況について解説する。
ロボットは長い間フィクションの中だけに登場する存在であったが、主に工場などの生産ラインで腕力の必要な作業や、高温など危険な環境下での機械関係の点検・保守作業などで、自律的に人間の代行ができる機械が産業用ロボットと呼ばれ活躍している(自動車組み立てロボットなど)。
すでに一部では、歩行する人間型の物ではないが、自動的に建物内を巡回・警備するロボットのレンタル事業が開始されており、病院内の物資運搬におけるロボットカートの採用、また自動車の自動運転という意味のロボットカーなど、非人間型ロボットを中心に、移動する自動機械が人間社会の中で実際に活動を始めている。据え置き型の製造機械である産業用ロボットは、それらが動かない限り、ロボットと呼ばれる自動機械であり、人間社会に与える影響も旧来の自動機械と同等と考えられたが、これからの人間社会は移動するロボットからの影響を受けることが想像される。
福島第一原子力発電所事故の発災後に日本製の原発ロボット(調査ロボット)の投入が遅れたことや、その後、投入されたものの目覚しい活躍を示していない現状[14][15]や、掃除用ロボットなどの分野で日本企業が主役から外れていることなどを背景に、実用性の高いロボットの研究開発の重要性が指摘されている
人型
1980年代後半以降、ASIMO(本田技研工業)・HRP-2/HRP-3(川田工業・産業技術総合研究所・川崎重工業)・SDR-4X/QRIO(ソニー)・PALRO(富士ソフト)等の二足歩行可能な人型ロボットが開発・発表されており、ROBO-ONEのような企画向けに個人で製作されるものにも高度なものが現れ、オーケストラの指揮したり[16]、TPR(トヨタ)等の実際に楽器演奏ができる(従来のものは「フリ」をしてカラオケを流していただけであるが、トランペット(実際に「息」で吹く)や、ドラムを操作して音を出す)ものも登場している。
2018年10月11日には、ボストン・ダイナミクス社の最新型アトラスが「パルクール」を軽々とやってのける動作を撮影した新映像が公開された[17][18]。
いずれもこれら人の形をした(もしくは目指した)ロボット開発は、古くからのSF作品で描かれた「人間社会に溶け込み、人間との共同作業や共に生活するロボット」というイメージに沿ったものでもあり、日本においては『鉄腕アトム』の影響が少なからず二足歩行ロボット開発者の発言に示されている一方、若い世代では一連の巨大ロボットもののアニメーション(→ロボットアニメ)が言及される。たとえば、ASIMOでは前述の『鉄腕アトム』を、HRP-2/HRP-3開発者の一部は『機動警察パトレイバー』の影響を受けていることを公言しており、同シリーズは実動機のデザインをアニメのメカデザインで活躍する出渕裕に依頼[19]したことでも知られる。
一般社会への普及
古くはリモートコントロールや簡単なマイクロコンピュータで制御された物が、博覧会や展示施設で訪れた者の目を楽しませていたが、近年ではコンピュータの高度化に伴い、施設案内業務等の実質的な「仕事」を果たすロボットが登場している。
前出のASIMOは、イベント会場にレンタルされ集客に一役買っていたり、2002年にはニューヨーク証券取引所で、史上初の「人間以外では初めて」取引開始の鐘を鳴らす役目を担うなどの役目を果たした。最近では日本科学未来館・ツインリンクもてぎ・鈴鹿サーキットホールメープル・Hondaウエルカムプラザ青山に常設され、訪れた人々の間を歩き回ったりもしている。
近年では、ソニーのAIBOに代表されるエンターテイメントロボットの登場により、一般家庭に愛玩品や娯楽品、果ては「家族」という位置付けで様々な家庭用ロボットが発売されている。これらは人間とコミュニケーションを取ったり、自由に動き回って目を和ませたり、更には「ロボットの居る生活」という「近未来的な暮らしをしたい」というニーズに応えている。これらは主に、ペットという性格付けが強いことから、動物型の物が多く市場投入される傾向にある。ただし、感情移入のしやすい動物や人の姿などをしていなくても「愛玩」する層は居る模様であり、中には掃除用ロボットが「かわいい」「健気」と愛着や感情移入している人々もいる[20]。
また人型・非人型を含め、巡回・警備・清掃するロボット事業は始まっており、物資移動用のロボットカートなど、非人間型ロボットを中心に労働源として人間社会に浸透しつつある。
更に世界初の調理ロボットといわれているビタクラフトのRFIQ自動調理システムや、掃除用ロボットなど、家事の手助けをするロボットも普及している。要介護者の介護作業を助けさせたり、ホームセキュリティの一環で、家庭内を巡回・警邏させる試みなども始まっている。
搭乗型
ロボットアニメにおいて、主人公らが乗って操る、搭乗型二足歩行ロボットは、もはや定番であり、これらに対するあこがれは根強いものがある。現実的に、これに近い存在のロボットも実際に出現しつつある。
テムザック社のT-52「援竜」[21]は、災害現場における大型レスキューロボットで、全高3.45m、重量5tで、遠隔操縦もしくは有人で操縦できる。マニピュレータは操縦者の腕の動きにあわせて稼動し、巨大さの割にはきめ細かく動作する。
i-foot(トヨタ)は、人型ではあるものの、下半身のみの搭乗型二足歩行ロボットで、歩行障害者の使用する車いすの代替をめざし開発され、2005年日本国際博覧会(愛・地球博)で実際に活躍している。高さは2.36mと、動歩行の二足歩行ロボットとしては最大級のサイズを実現し、階段の昇降も可能という。
LAND WALKER(榊原機械)は、すり足のため擬似的なものではあるが、有人での二足歩行を再現している。
兵器
軍事活動やそれに付随する危険物処理などでは、人的被害(→戦死)を減らすための導入や、様々な活動の機械化が進められている。米国では偵察や輸送など不意な接触にともない戦闘に巻き込まれやすい分野で、日本では地雷処理など戦後処理の分野での開発が進められている。
警備
治安活動やそれに付随する危険物処理などでは、人手不足を減らすための導入や、様々な活動の機械化が進められている。中でも交通違反の取り締まり、証拠収集、顔認識による犯罪者の特定などや、さらに武装化[22][23][24]させて法執行活動に採用する国もあり、2017年に中国では非人型の[25]、アラブ首長国連邦のドバイでは人型のロボットの警察への配備が報じられた[26][27]。
特殊環境用
宇宙空間
宇宙開発においては、その苛酷な環境や生命が失われるリスクの高さから、自動的に状況を判断して行動するロボットの重要性は高まっている。また火星や月の裏側など、無線操縦が出来ない環境では、ある程度自己判断能力のある無人探査機の開発が求められていた。その結果、近年では無人火星探査車ローバーのように、自分で移動経路を判断して探査任務を行うロボットが実用化されている。- 日本では、自国製ロケットの運搬能力が(生命維持装置を含めた)人間を軌道上に打ち上げるのが難しいこともあり、国際宇宙ステーション(ISS)への物資輸送においては、自動的に軌道修正を行ったりできるロボット宇宙船(無人のスペースシャトル)の構想が、国内での宇宙開発における主要方針となっている。他にも国際宇宙ステーションからの緊急脱出機材として一時アメリカで開発が進められていた乗員帰還機(CRV)のX-38(Xプレーンシリーズ)は国際宇宙ステーションからパイロット無しで脱出・地球への帰還ができるよう、完全自動化する構想であった。開発中止になったが、一種のロボット宇宙船といえる。
水中探査
- 未踏破領域である深海探査には、多くの国が乗り出している。日本には、最大潜航深度7000メートルで世界一の無人潜水船「かいこう7000」が開発されている。また、小型で安価な大量のロボット潜水艦を投入しようという計画もあり、海洋資源開発に期待が持たれている。
- 深海対応型を含め、水中探査ロボットの研究・開発は多くの企業や研究者が取り組んでおり、東日本大震災時は、東工大などが開発した「Anchor Diver 3」、三井造船の「RTV」、米Seamor Marine「seamor-ROV」、米SeaBotix「SARbot」などが遺体や瓦礫の捜索、地形の調査などのために使われた。
火山探査
千葉工業大学,東北大学,筑波大学,岡山大学,情報通信研究機構(NICT),産業技術総合研究所(AIST)が火山探査を目的にクローラ型移動ロボット「Kenaf」を開発している。
原子力事故
- アメリカ空軍は開発中だった原子力飛行機の墜落に備え「ビートル」を試作、原子力飛行機の計画が中止された後は放射性物質を含む瓦礫の除去に用途変更された。
動作補助
パワードスーツ、ロボットスーツ、強化外骨格等ともいう。現在の医療での回復が見込まれない、脊髄損傷により歩行ができない人や、それ以外に病気などで歩行が困難な人を対象に、歩く動作を補助する目的で「ロボットスーツ」が開発されている。開発は、筑波大学大学院システム情報工学研究科の山海嘉之教授が中心となって行っており、ロボットベンチャーサイバーダインが設立され、「HAL」を製造している。イメージとしては小説「宇宙の戦士」などに登場する架空の兵器であるパワードスーツといったらわかりやすいかもしれない。福島第一原発事故後、「HAL」を原発作業員のために改良したロボットスーツを公開している[28]。
また、松下電器産業が神戸学院大学総合リハビリテーション学部の中川昭夫教授らのチームと共同開発した半身麻痺患者のリハビリテーション用ロボットスーツは、健常な半身の筋肉の動きをセンサーで検知し、麻痺した側に装着した人工筋に伝えることで左右同じ動きを実現するもので、2008年の実用化が計画されている。
これらは通常「ロボット」と呼ばれる物と異なり単体での動作はなく、人間が装着することで機能し、医療・福祉関係のほかに、物流関係、工事現場など広く民生用への応用が期待される。軍事用に米軍がマサチューセッツ工科大学と共同で強化外骨格の研究をしているといわれる。また、人間の力を拡大するのではなく、手術などの微細な作業の際に人間の動きを縮小するマイクロサージェリー用のロボットも医療用に開発されている。
人命救助
危険な場所に、人間に代わって導入するロボットをレスキューロボットという。既述の地雷撤去ロボットや、災害などにおける被災者の救護活動を担うロボットなどがある。
レスキューロボットは地震や噴火・津波などによる被災地に投入して、いち早く被災者を発見・保護することで、救命率の向上と二次災害による被害を防ぐことを目的とする。これらのロボットは、センサーや移動能力を持ち倒壊建物に取り残された被災者の発見に役立てるほか、テムザックの「援竜」のように従来からある建設機械を発展させて二本のアームを供えロボット化し、瓦礫撤去を効率よくこなすことが期待される。
火災の場合では、コンビナート火災など危険すぎて消防隊が突入できない個所にも侵入できる放水銃を備えた無人走行放水車や、危険のともなう火災現場に突入して状況を調べるための偵察ロボット、水中を捜索する水中検索装置・マニピュレーターを備え、要救助者を回収する救出ロボットが、東京消防庁に配備されている([2])。これらはリモートコントロール式の装置であるが、危険個所の消防と被災者の救出に威力を発揮することが期待される。
2011年3月11日東北地方太平洋沖地震による東日本大震災や福島第一原発事故後には、ロボットを使った人命救助や、原子力災害ロボットの役割の重要性が改めて認識された。現在、多くの研究者や企業が原発災害用ロボットの開発に力を入れている。
研究用
動物の動作を制御する仕組みを理解するにあたって、脳や脊髄の動的な相互作用を記録することは困難なため、神経科学の研究道具として動物の動作を模したロボットを作り、理解に役立てることがある[29]。
競技・興行用
迷路探索から格闘まで様々な競技が行われている。黎明期には技術の実証など研究的側面が強く、DARPAグランド・チャレンジのように公的機関が資金を拠出する競技も多かったが、現代では見た目のインパクトを重視した興行型や純粋に成績を競うスポーツ型の競技も行われ、相撲ロボットのようなルールに特化したロボットが多数開発されている。
多くは無人機によるものだが、2017年には有人機同士による格闘がイベントとして行われた[30]。
分類
用途別と構造別による分類が行える[31]。
- 用途別による分類[32][31]
- 産業用ロボット分野
- 産業用ロボット
- 製造業
溶接ロボット、塗装や組み立て・搬送ロボットなど
- 3品産業
- 食品、化粧品、医薬品 に関わるロボット
- サービスロボット分野
- サービスロボット
家庭用ロボット、医療用ロボット、介護ロボット、パワードスーツ、エンタテインメントロボット(娯楽・家庭向けと展示用を含む)、警備ロボット、掃除用ロボット
- 特殊環境用ロボット
探査ロボット、宇宙ロボット、レスキューロボット、軍事用ロボット
- 構造による分類
マスタースレーブ型ロボット
マニピュレーター装置付き小室- プログラム制御型ロボット
直交ロボット、円筒・極座標型、垂直多関節ロボット、水平多関節ロボット、パラレルリンクロボットなど
- 移動型ロボット
- 二足歩行ロボット、多脚、車輪、クローラ、飛行など
- ヒューマノイド
- 人体装着型ロボット(パワードスーツ)
- マイクロロボット
ロボットを題材とした作品
ギリシア神話には青銅で出来た自動人形『タロース』が登場する。これは自然発生したものではなく、鍛冶の神であるヘーパイストス(あるいはダイダロス)によってクレタ島を警備するために作り出されたとされ、現代の定義では警備ロボットか軍事用ロボットに該当する。
複雑な機械装置が登場すると、工学的に精巧な装置を組み合わせていけば最終的には人間に限りなく近い物ができあがるだろうという予測から、古今東西・様々な架空のロボットが想像され、ロボットアニメや ロボット漫画などジャンルが形成されている。またロボット工学三原則、スーパーロボットやリアルロボットなどの用語も登場している。
ロボットの研究者
当初は機械工学や制御工学など機械系の研究者が多かったが、認知科学などの分野からのアプローチも増えている。
浅田稔(大阪大学教授)
石黒浩(大阪大学教授)
加藤一郎(早稲田大学教授)
小林宏(東京理科大学教授)
柴田崇徳(産業技術総合研究所主任研究員)
菅野重樹(早稲田大学教授)
高西淳夫(早稲田大学教授)
広瀬茂男(東京工業大学教授)
福田敏男(名古屋大学教授)
藤江正克(早稲田大学教授)
三浦宏文(工学院大学教授)
吉田司雄(工学院大学教授)
吉川恒夫(立命館大学教授)
実在のロボット
- aibo
- ASIMO
- HRP-2
- HRP-4C
- トヨタ・i-foot
- LAND WALKER
- Nao
- PALRO
- pepper
- PLEN
- QRIO
- Romeo
- TERA
- TWENDY-ONE
- wakamaru
- アクトロイド
- イフボット
- ジェミノイド
- トヨタ・パートナーロボット
- ハローキティロボ
- ハローズーマー
- ビッグドッグ
- メカニマル
- ロビーナ
- 學天則
- 先行者
脚注
^ 【森山和道の「ヒトと機械の境界面」】ロボットがより器用で、存在感を持つ他者となり、役に立つために必要な技術とは ~ロボット学会セミナーより - PC Watch、閲覧2017年12月19日
^ 世界初・完全自律制御ドローンでの長距離荷物配送に成功しました!~福島浜通りロボット実証区域でドローンの実証にチャレンジ!~(METI/経済産業省)、閲覧2017年12月19日
^ カレル・チャペック『ロボット』千野栄一訳、岩波文庫、1989年、206頁。
- ^ abcdefROBOT九州共立大学、2007
^ 井上晴樹『日本ロボット戦争記 : 1939~1945』124頁(NTT出版,2007) ISBN 978-4757160149
^ Morris, Nicola"The Golem in Jewish American Literature: Risks and Responsibilities in the Fiction of Thane Rosenbaum" p.119
^ カレル・チャペック『ロボットという言葉の起源』栗栖継訳(『現代人の思想22 機械と人間の共生』平凡社、1968年、収録)
^ “Su Song's Clock: 1088”. 2007年8月26日閲覧。
^ “Earliest Clocks”. A Walk Through Time. NIST Physics Laboratory. 2008年5月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年8月11日閲覧。
^ “Sir Richard Arkwright (1732–1792)”. BBC. 2008年3月18日閲覧。
^ 「図説 世界史を変えた50の機械」p172 エリック・シャリーン著 柴田譲治訳 原書房 2013年9月30日第1刷
^ 「図説 世界史を変えた50の機械」p172 エリック・シャリーン著 柴田譲治訳 原書房 2013年9月30日第1刷
^ “人型ロボットに市民権を与えた最初の国家が登場”. GIGAZINE. 2018年11月30日閲覧。
^ レスキューロボットを参照
^ 新技術開発センターHP、テクノビジョン ダイジェスト、【連載:世界一の品質を取り戻す36】検証・日本の品質力 原発事故から浮かび上がった 「ロボット大国・日本」の弱点 閲覧2017年3月28日
^ 大阪工業技術専門学校ロボット研究部、指揮者ロボット「フクマス」、メカトロライフ閲覧2017年2月9日
^ Parkour Atlas - YouTube
^ Watch Boston Dynamics' Humanoid Robot Do Parkour WIRED wired.com |2018年10月11日閲覧
^ 出渕はパトレイバーシリーズのメカデザイナーでもあるので、同シリーズは出渕構想の概念に基づくこととなる。
^ ロボット掃除機“ルンバさん”が愛される理由って? [T-SITE、閲覧2017年3月28日]
^ (移動はクローラで、先端にカニ爪状の手がついた巨大な二本のマニピュレータが装備されており、元々は建設機械であるため人型ではないが、頭部(カメラ装備)もあり、巨大ロボット然としている)
^ “China Debuts Anbot, The Police Robot” (英語). Popular Science (2016年4月27日). 2019年1月1日閲覧。
^ “フシンシャハッケン…中国空港に「ロボコップ」が誕生しました”. ギズモード (2016年9月30日). 2019年1月1日閲覧。
^ “中国ロボは縦長の「R2-D2」か? 米国「殺人ロボ」の先行くスグレモノ”. フジサンケイ ビジネスアイ. 2019年1月1日閲覧。
^ “警察ロボットが高速鉄道鄭州東駅に登場 中国初”. 人民網 (2017年2月18日). 2019年1月1日閲覧。
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^ “未来の街はロボットが運営? ドバイや中国では現実に”. BBC. 2018年11月30日閲覧。
^ 2011年11月7日AFP「原発作業にロボットスーツを、サイバーダインが公開」[1]
^ “イモリの様に走り、泳ぐことのできるロボット”. TED (2016年1月). 2017年1月10日閲覧。
^ “日米巨大ロボ対決”は引き分け - ITmedia
- ^ ab“平成25年度 特許出願技術動向調査報告書(概要)ロボット (PDF)”. 特許庁 (2014年2月). 2017年1月4日閲覧。
^ 特許庁の資料をもとに作成
参考文献
出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。記事の信頼性向上にご協力をお願いいたします。(2015年10月) |
- 『ブルックスの知能ロボット論 なぜMITのロボットは前進し続けるのか?』-ロドニー・ブルックス〈五味隆志訳〉(2006年、オーム社 ISBN 4274500330)
- 『アンドロイドの脳 人工知能ロボット"ルーシー"を誕生させるまでの簡単な20のステップ』-スティーヴ・グランド〈高橋則明訳〉(2005年、アスペクト ISBN 4757211015)
- 『ロボットのこころ 想像力をもつロボットをめざして』-月本洋(2002年、森北出版 ISBN 4627827814)
- 『ロボットフロンティア』(『岩波講座ロボット学 6』)-下山勲ほか(2005年、岩波書店 ISBN 4000112465)
- 『ロボットインフォマティクス』(『岩波講座ロボット学 5』)-安西祐一郎ほか(2005年、岩波書店 ISBN 4000112457)
- 『ロボットモーション』(『岩波講座ロボット学 2』)-内山勝、中村仁彦(2004年、岩波書店 ISBN 4000112422)
- 『ロボット学創成』(『岩波講座ロボット学 1』)-井上博允ほか(2004年、岩波書店 ISBN 4000112414)
- 『脳・身体性・ロボット 知能の創発をめざして』(『インテリジェンス・ダイナミクス 1』)-土井利忠、藤田雅博、下村秀樹編(2005年、シュプリンガー・フェアラーク東京 ISBN 4431711597)
- 『ロボット21世紀』(『文春新書』)-瀬名秀明(2001年、文藝春秋 ISBN 4166601792)
- 『ロボットは人間になれるか』(『PHP新書』)-長田正(2005年、PHP研究所 ISBN 4569641555)
- 『コミュニケーションロボット 人と関わるロボットを開発するための技術』(『知の科学』)-石黒浩、神田崇行、宮下敬(2005年、オーム社 ISBN 4274200655)
関連項目
- シーケンス制御
- RobotML
- オペレーティングシステム
外部リンク
日本ロボット学会
- 日本のロボット研究
- 人工知能学会
- 社団法人 日本ロボット工業会
- ロボット教室ナビ