随意契約
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随意契約(ずいいけいやく)とは、国や地方公共団体などが競争入札によらずに任意で決定した相手と契約を締結すること、及び締結した契約をいう。
目次
1 概要
2 随意契約が認められる理由
2.1 契約の性質又は目的が競争を許さない場合
2.2 緊急随契
2.3 競争に付することが不利と認められる場合
2.4 少額随契
2.5 その他政令で定める場合
2.6 不落随契
3 契約形態による分類
3.1 競争性のない随意契約
3.2 企画競争またはプロポーザル
3.3 オープンカウンター方式
3.4 公募
4 随意契約の見直し
5 脚注
6 関連項目
7 外部リンク
概要
国および地方公共団体が行う契約は入札によることが原則であり(会計法第29条の3第1項、地方自治法第234条第2項)、随意契約は法令の規定によって認められた場合にのみ行うことが出来る。随意契約によろうとする場合は、なるべく見積書を徴すること、またなるべく二以上の者から見積書を徴することとされている(予算決算及び会計令第99条の6、都道府県・市町村の規則等)。なお、国と地方公共団体とでは適用される法令や事務の範囲が違うため、完全には一致しない。競争入札の場合は予定価格内最廉価格を落札としなければならない規定がある(会計法第29条の6)が、随意契約については明確に定められていない。しかし、財務省通達[1]の趣旨に照らし合わせて、競争入札と同様に、予定価格内最廉価格の者と契約すべきであると考えられている。
競争入札と比べて、早期の契約締結(特に一般競争入札では入札者の公募や質問書の受付などのために2ヶ月程度の期間を要する)、手続の簡素化、小規模事業者でも参入可能等のメリットがあるが、予算の効率化、公平性、透明性の点でデメリットがある。
随意契約が認められる理由
契約の性質又は目的が競争を許さない場合
契約の性質又は目的が競争を許さない場合(会計法第29条の3第4項)には随意契約が認められる。
緊急随契
緊急の必要により競争入札に付することができないとき(会計法第29条の3第4項、地方自治法施行令第167条の2第1項第5号)には随意契約が認められる。ただし、国内部の事務の遅延のみを理由とした緊急随契は財務省通達にて禁止されている[2]。
一例として、天変地異などの災害の防止、人命救助など特に緊急を要する事業がある。たとえば東北地方太平洋沖地震の直後に、国土交通省東北地方整備局が、津波被災地への緊急輸送道路を啓開した(くしの歯作戦)際に、多数の緊急随契が締結された。
競争に付することが不利と認められる場合
競争に付することが不利と認められる場合(会計法第29条の3第4項)には随意契約が認められる。その場合は、予算決算及び会計令に列挙された理由であっても具体的理由を説明できなければならない[2]。
少額随契
予定価格(貸借契約の場合は予定賃貸借料)が少額の場合(会計法第29条の3第5項、予算決算及び会計令第99条第2項~第7号、地方自治法施行令第167条の2第1項第1号、地方自治法施行令別表第5)に、二以上の者から見積書を徴取して契約者を決める方式。法令上、予定価格が少額随契可能な額であっても、可能な限り競争入札を行なうように指導されている[1]。
種類 | 国 | 都道府県及び政令指定都市 |
その他市町村 |
根拠条文 |
---|---|---|---|---|
工事又は製造 |
250万円 | 250万円 | 130万円 | 予決令第99条第2号、地方自治法施行令別表第5 |
財産購入 |
160万円 | 160万円 | 80万円 | 予決令第99条第3号、地方自治法施行令別表第5 |
物件借入 |
80万円 | 80万円 | 40万円 | 予決令第99条第4号、地方自治法施行令別表第5 |
財産売払 |
50万円 | 50万円 | 30万円 | 予決令第99条第5号、地方自治法施行令別表第5 |
物件貸付 |
30万円 | 30万円 | 30万円 | 予決令第99条第6号、地方自治法施行令別表第5 |
それ以外 |
100万円 | 100万円 | 50万円 | 予決令第99条第7号、地方自治法施行令別表第5 |
- ※予決令=予算決算及び会計令
- ※各地方自治体においては、上記の金額の範囲内で各自治体の規則で定める額以下とされている。
二以上の者から見積書を徴取することで一応の競争性は担保されているが、徴取対象事業者を恣意的に選定すれば官制談合の温床になる恐れがある。とはいえ、特命随契とは違い、予定価格に制限があるため、大規模な事件になることは少ない。ただし、一括に発注すべき契約を複数に分割することで少額随契とするなど、その抜け道もある。そうした複数分割事例は会計検査で何度か指摘されている[3]。
一方で、むやみに一般競争化することは、いたずらに小規模事業者を排除することになり、中小企業対策として好ましいとは言えない。一般競争については、参加資格の制定を認められており(予算決算及び会計令72条および第2項、第3項)、資格を定めた場合は名簿登録事業者しか競争に参加できない。現在、物品の製造・販売、役務の提供等、物品の買受けについて殆どの省庁が省庁間統一資格名簿を利用している。指名競争については、一般競争の名簿と兼ねる場合を除いて、参加資格の制定が義務づけられている(予算決算及び会計令第95条および第2項、第3項)。よって、参加資格名簿に登録されていない業者は一般競争にも指名競争にも参加することが出来ない。名簿登録の資格審査には財務状況等の詳細な資料の提出が必要であり、これは、小規模事業者にとって費用対効果に乏しく、事実上の参入障壁となっている(たとえば、法人税や消費税の分割納付[4]をしていると添付書類のうち納税証明書その3が発行されない。そのため、名簿登録のためには一括納付する必要がある)。また、入札に係る手続きの煩雑さも、小規模事業者には参入しにくい原因となる。一方で、随意契約には、そのような決まりはなく、手続きも簡素であるため、事業者の規模に関係なく参加の余地が与えられる。
平成18年度に見直しされて以降、より高度な競争性や透明性が求められるようになっている。
行政改革推進会議は、オープンカウンター方式等を活用して可能な範囲で競争性や透明性に配慮した取組を行うことが求められるとしている[1]。
その他政令で定める場合
国の行為を秘密にする必要があるとき(予算決算及び会計令第99条第2項。ただし、外交又は防衛上の重要機密に限られる[2])等で予算決算及び会計令第99条の各項に定められた場合においては随意契約が認められる(会計法第29条の3第5項)。
不落随契
競争契約を行っても入札者がいなかったり落札しない場合(予算決算及び会計令第99条の2、地方公共団体は地方自治法施行令第167の2第8号)、または、落札者が契約を結ばない場合(予算決算及び会計令第99条の3)には、最低価格での入札者との間で随意契約を行うことが出来る。その場合、必要に応じて履行期限の延長や契約保証金の免除等条件の変更を行ってもよいが、予定価格は変更できない。
国・地方公共団体等で競争入札を行う場合、1回目の入札で落札者がいない時、その場で直ちに2回目の入札を行う。契約担当官等は、2回目以降の入札でも落札者がいない場合、国は予算決算及び会計令第99条の2、地方公共団体は地方自治法施行令第167の2第8号の規定に基づいて随意契約を行うが、相手方の選定方法は特に定められていない。国土交通省では、原則として、前回の入札参加者全員から見積を取っている[2]。最高裁判所入札監視委員会は見積合わせを実施することが最も妥当な方法であるとしている[3]。公正取引委員会では最廉入札者と商議を行っている[4]。
尚、国土交通省では2005年より不落随契を原則廃止している[5]。
契約形態による分類
予算決算及び会計令第99条により、随意契約では原則として二人以上の者から見積書を徴さなければならないが、一部例外が認められる。
競争性のない随意契約
契約の相手方が一に限られる場合(会計法第29条の3第4項、第5項、地方自治法施行令第167条の2第1項第2号、第5号、第6号等)に、特定の事業者を指定して契約を締結する方式で、俗に『特命随契』と呼ばれる。別名『業者指定契約』とも言う。単に随意契約と言った場合は特命随契を指すことが多い。
競争性がないため落札率が高止まりして予算の無駄遣いとなりやすい。また、予定価格の根拠となる価格資料を契約予定者から徴取せざるを得ない場合が多く、契約予定者による価格操作が容易で、予定価格制度が形骸化しやすい。天下り先の公益法人を契約相手方とする等、官製談合の温床になりやすいとの批判もあった。法令に具体的な規程が無かったため、各省庁で拡大解釈がまかり通っていたが、平成18年度に見直しが行われ、特命随契可能な事例は大幅に制限された。競争入札へ移行できない物は、企画競争若しくは公募を行うこととしている。
- 特命随契に伴う公募
財務省通達で認められた契約以外について、要件を満たす者が一に限られることを理由に随意契約を行う場合は、事前に公募をしなければならない。ただし、初めから要件を満たす者が複数存在することが明らかな場合は、公募を行わずに、一般競争入札や企画競争を行わなければならない。公募に対して応募者がなかった場合、または、応募者の中に要件を満たす者がいなかった場合は、特命随契が認められる。しかし、要件を満たす応募者がいた場合は、一般競争入札又は企画競争を行わなければならない。
企画競争またはプロポーザル
企画競争(プロポーザル方式)は、複数の業者から企画提案や技術提案を提出させ、提案内容を審査し、企画内容や業務遂行能力が最も優れた者と契約する方式。会計法上は特命随契の一種である。
種類 | 公募 | 提案書提出 | 提出物 |
---|---|---|---|
企画競争 |
有り | 応募者全員 | 企画提案書 |
公募型プロポーザル |
有り | 選定された者のみ | 技術提案書 |
簡易公募型プロポーザル |
有り | 選定された者のみ | 技術提案書 |
標準プロポーザル |
無し | 選定された者のみ | 技術提案書 |
企画競争は、競争性及び透明性を担保し、特定の者が有利とならないように、次のことが求められる。
- 業者選定には、業務担当部局だけはなく契約担当部局も関与する
- あらかじめ具体的に定めた複数の採点項目により採点を行う
より透明性を高めるため、第三者機関に審査基準の制定や提案書の審査等を依頼することもある。
オープンカウンター方式
少額随契において競争性や透明性に配慮した発展的な取組として、発注者が見積りの相手方を特定しないで、調達内容・数量等 を公示し、参加を希望する者から広く見積書の提出を募る方式である[6]。
内閣官房等では引き続きオープンカウンタ方式を積極的に活用して多数の者に競争参加の機会を広げるとしている。[7]。
公募
公募とは、次のような場合に、設備や技術等の必要条件を具体的に明示して、掲示、Webサイト等で広く参加者を募ることを言う。
- 財務省通達で認められた契約以外について特命随契を行おうとする場合
- 企画競争やプロポーザル等への参加希望を募る場合
公募期間は、一般競争の公告期間(予算決算及び会計令第74条)に準じて、適切に定めなければならないとされている。
公募した結果として随意契約が認められた調達において、価格交渉を行なって契約額を削減した事例が行政改革推進会議にて平成26年度調達改善に係る優良取組事例に選定された[8]。
随意契約の見直し
国の契約については、2005年度(平成17年度)に発覚した談合事件等をきっかけとして、随意契約の見直し[2]が行われた。その概要は次の通り。
- 特命随契による場合は具体的に挙げた事例に限定し、その他は一般競争とする。
- 一般競争が困難な場合は企画競争若しくは公募を行う。
- 国の事務の遅延は「緊急の必要」とは認めない。
- 随契理由は具体的に説明できなければならない。
- 合理的理由なしに分割して少額随意にしている場合は一括契約として一般競争にする。
- 一括再委託は禁止であり、再委託状況と随契理由は整合してなければならない。
- 一部の少額随契等を除いて契約情報を公表しなければならない。
- 随契理由の整合性、契約分割の合理的理由、競争性担保を重点項目として内部監査を実施する。
- 財務大臣あてに毎年度の契約の統計を提出する。
脚注
- ^ ab財務省通達『契約事務の適正な執行について』(昭和53年4月1日付蔵計第875号)
- ^ abcd財務大臣通達『公共調達の適正化について』(平成18年8月25日付財計第2017号)
^ 例えば、外務省による物品・役務調達契約に関する指摘(平成12年)や社会保険事務局による国民年金事業に使用する金銭登録機の購入契約に関する指摘(平成15年)など。
^ 様々な事情により一括納税できない場合、納税の猶予により1年以内で分割して国税を納付する制度。詳細は国税庁「国税を期限内に納付できないとき」参照。
関連項目
- 入札談合等関与行為防止法
- 官製談合
- 独占禁止法
談合罪(刑法96条の3)
競争入札:一般競争入札、指名競争入札、随意契約、総合評価落札方式
- 官庁会計
- 会計法
- 予算決算及び会計令
- 総合評価落札方式
- 地方自治法
- ベンダーロックイン
外部リンク
公共調達の適正化について(財務省)- 統一資格審査申請受付サイト
- 会計法全文
- 予算決算及び会計令全文
- 地方自治法全文
- 地方自治法施行令全文