登記




登記(とうき)とは日本の行政上の仕組みのひとつであり、個人・法人・動産・不動産・物権・債権など実体法上の重要な権利や義務を、不動産登記法や商業登記法などの手続法により保護するとともに、円滑な取引を実現する、法の支配並びに法治国家を支える法制度の一つである。登記制度は裁判制度とともに明治維新以降、日本国及び国民の権利を保護している。(登記制度開始当初は裁判所が登記所を管轄していたが、現在は法務局が管轄している。)具体的には、実体法及び手続法を順守した登記申請が法務局にて受理されることで、効力の発生並びに対抗要件を備えることができる。


登記全般の専門職として1872年に代書人(現在の司法書士)が創設され、昭和に入って表題登記の専門職として土地家屋調査士が創設された。2016年現在、不動産登記、商業登記、法人登記、動産譲渡登記、債権譲渡登記、成年後見登記、船舶登記などの種類があり、申請件数としては不動産登記が最も多い。


実体法や手続法、司法書士法、土地家屋調査士法に違反する申請行為などは刑事罰が科される。


歴史的には、律令制時代の検地や豊臣秀吉の太閤検地、明治初期の地券制度などを経て、明治19年に登記法が公布(翌年施行)されたことで登記制度が確立し、以後、登記制度は国家及び国民の権利並びに取引活動を支えている。




目次






  • 1 登記の種類


  • 2 不動産登記


    • 2.1 不動産登記の効力


    • 2.2 登記請求権




  • 3 商業登記


    • 3.1 商業登記の効力


    • 3.2 商業登記簿




  • 4 船舶登記


  • 5 脚注


  • 6 関連項目


  • 7 外部リンク





登記の種類



不動産登記

表題部で不動産(土地や建物)の物理的現況などを公示し、権利部で所有権や抵当権などの権利を公示するとともに、効力発生や対抗要件を得ることができる登記である。(民法、借地借家法、信託法、不動産登記法、不動産登記規則、不動産登記令など)

商業登記


会社や商人を対象として、会社の設立や新設合併などで効力を発生させ、それらを含めた会社や商人の幅広い権利義務を公示して法令上、また取引上の対抗要件を得る登記である。(民法、商法、会社法、商業登記法、商業登記規則など)

法人登記


会社以外の法人についての登記である。(民法、法人法ほか)

外国法人の登記

 

船舶登記


船舶に関する私法上の権利関係を公示するための登記である。(商法、船舶法)

成年後見登記

 

動産登記

特別法で登記がされることが定められている動産(農業用動産信用法に基づく農業用動産の登記、建設機械抵当法に基づく建設機械の登記)

動産譲渡登記

債権譲渡登記とともに平成17年から始まった制度


債権譲渡登記 

 

質権設定登記(債権質)

債権譲渡登記の規定を準用

各種財団登記

工場財団に関する登記、鉱業財団に関する登記、漁業財団に関する登記、港湾運送事業財団に関する登記、道路交通事業財団に関する登記、観光施設財団に関する登記

企業担保権登記

 

夫婦財産契約登記

 

立木に関する登記

 



不動産登記


不動産登記とは、不動産(土地・建物)の物理的現況及び私法上の権利関係を公示することを目的とする登記で、取引の安全を保護するのに役立つ(公示力)。不動産の物理的現況を公示する「表示に関する登記」と、権利関係を公示する(登記により効力が発生する場合もある)「権利に関する登記」の2種類に分かれる。
「表示に関する登記」に関しては土地家屋調査士が、「権利に関する登記」に関しては司法書士が他人から依頼を受け業務を行う事ができる。




不動産登記の効力


不動産に関する物権の得喪変更(物権変動)を第三者に対抗するためには、不動産登記(権利に関する登記)をする必要がある(民法177条)。例えば、不動産を購入した者は、売買契約によって所有権を取得する(民法176条。意思主義)が、その登記を怠ると、第三者に所有権を対抗できない(主張できない)という不利益を受ける(場合によっては所有権を失うこともある)。これは、登記を信頼して取引に入った第三者を保護するとともに、このような不利益を受けないために権利者が登記を具備するよう促すことによって、実際の権利関係と登記が一致する状態を維持するためである。これによって、登記を信頼して取引関係に入ることが可能になり、取引の安全が担保されるのである。


ただし、以上とは逆に、実際には無権利者であるのに、権利者であるかのような登記がされていたとしても、これを信頼して無権利者から買い受けた者は保護されない(不動産登記には公信力がない)。もっとも、真の権利者が虚偽の登記の作出に自ら関与していたり、虚偽の登記を知りながら放置していたりして、真の権利者に帰責性がある場合には、民法94条2項(虚偽表示)を類推適用し、登記名義人から善意で取得した第三者は、権利を取得するとする判例がある[1]。これは、一定の場合に限って公信力を認めたのと同様の効果を生むこととなる。



登記請求権


登記上の利益を受ける者を登記権利者,不利益を受ける者を登記義務者といい、登記権利者が登記義務者に対して登記を請求できる権利のこと。



  • 物権的登記請求権

  • 物権変動的登記請求権

  • 債権的登記請求権




商業登記


商業登記とは、民法、会社法、商法、商業登記法などの規定により、会社を成立させる登記から始まり、会社や商人に関する現在および過去の権利義務を公示し、事業を終了するまで継続して行う登記である。司法書士が商業登記の申請や相談などの業務を行うことができる。会社の設立や組織再編の多くは登記によってその効力が発生し、それらを含めた会社に関する様々な事項(商号、本店、株式、新株予約権、各種制度、機関、役員など)を公示することで法令上、また取引上の対抗要件を得る。取引の相手方は、商業登記簿の閲覧により、円滑な商行為が可能となるため、商業登記簿は取引の安全を重視する商法の世界を支えるインフラの役目を果たしている。そのため、登記を怠ると過料が科せられる。



商業登記の効力


商業登記簿に記載すべき事項については、原則として、登記の後でなければ、善意の第三者(その事実を知らずに取引関係に入った者)に対抗できない(消極的公示力、商法9条1項前段)。一方、登記の後であれば、商業登記簿に記載すべき事項について、第三者は悪意(知っていたもの)とみなされる(積極的公示力、通説)。ただし、第三者に「正当な事由」がある場合は、当事者はその善意の第三者に対抗できない(9条1項後段)。この「正当な事由」は、災害による交通の途絶や登記簿の滅失・汚損などの場合のみしか認められず、ほとんど認められる余地はない。さらに、故意又は過失で不実の登記(真実と異なる登記)をした者は、不実を理由として善意の第三者に対抗できない(9条2項)という公信力もある。



商業登記簿


商業登記に関する手続は商業登記法や商業登記規則などに定められている。


同法において、登記所には次の商業登記簿を備えることとされている(同法6条)。




  • 商号登記簿


  • 未成年者登記簿


  • 後見人登記簿


  • 支配人登記簿


  • 株式会社登記簿


  • 合名会社登記簿


  • 合資会社登記簿


  • 合同会社登記簿


  • 外国会社登記簿




船舶登記


船舶登記は、商法、船舶法などの規定により、船舶の所有権・賃借権・抵当権の公示のための登記をいう。




脚注


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  1. ^ 最判昭和37年9月14日民集16巻9号1935頁、最判昭和41年3月18日民集24巻4号266頁、最判昭和45年9月22日民集24巻10号1424頁など。




関連項目



  • 法務局

  • 登記事項

  • 登記事項 (不動産登記)

  • 司法書士

  • 土地家屋調査士

  • 海事代理士

  • 商業登記ソフトウェア

  • 企業コード

  • 会社法人等番号

  • 法人番号

  • 個人番号



外部リンク



  • 法務省:登記 -不動産登記-

  • 登記・供託インフォメーションサービス:法務局

  • 法務省:登記-商業・法人登記-

  • 登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと

  • 登記情報提供サービス




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