トマホーク (ミサイル)
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戦艦「ミズーリ」から発射されるトマホーク

潜水艦から発射されるトマホーク
トマホーク (BGM-109 Tomahawk) は、アメリカ合衆国で開発された巡航ミサイル。
目次
1 前史
2 開発
3 ミッション
3.1 対地ミッション
3.2 対水上ミッション
4 発展型
4.1 ブロック I
4.2 ブロック II / IIA / IIB
4.3 ブロック III
4.4 BGM-109E/F
4.5 ブロック IV
4.6 タクティカル・トマホーク
4.7 新型ブロック IV
5 要目一覧
6 地上発射型 / 空中発射型
6.1 地上発射型 BGM-109G GLCM
6.2 空中発射型 AGM-109 MRASM(開発中止)
6.2.1 概要
6.2.2 海軍用バリエーション
6.2.3 空軍用バリエーション
6.3 要目一覧(MRASM、GLCM)
7 LCMS-Fasthawk-
7.1 概要
7.2 要求されていたスペック
8 戦歴
9 登場作品
9.1 映画
9.2 アニメ・漫画
9.3 小説
9.4 ゲーム
10 脚注
11 関連項目
12 外部リンク
前史
トマホークの起源には幾つかの説があるが、もっとも有力と考えられているのは、第一次戦略兵器制限条約(SALT I)調印(1972年)に前後して行われたアメリカ海軍の研究である。
当時の国家安全保障問題担当大統領補佐官であったヘンリー・キッシンジャーは、SALT Iによって生じる制約の影響を最小限にとどめるべく、条約交渉では検討されなかったタイプの核兵器運搬手段の研究を国防総省に命じた。海軍が中心になって進められた研究の結果は、本質的には無人の有翼航空機である巡航ミサイルであれば、条約違反を犯すことなく、しかも極めて効果的であるとの結論であった。
開発

トマホークを発射する戦艦「ウィスコンシン」(湾岸戦争時)
当初検討されたのは、ポラリス・ミサイルの発射筒を用いる大型のミサイルと、潜水艦の魚雷発射管を用いる小型のミサイルとの2つの案であった。この2案から翌1972年6月に後者の採用が最終的に決定され、11月には潜水艦発射巡航ミサイル(SLCM:Submarine Launched Cruising Missile)と呼ばれるようになった、このミサイルの設計のための契約が結ばれた。
1974年から、数社の設計案が競争試作にかけられ、1976年2月、ジェネラル・ダイナミクスの設計案が採用された。また、この時までに、潜水艦だけでなく水上艦艇からも発射することができるように仕様が変更されたため、SLCMとは海洋発射巡航ミサイル(Sea Launched Cruising Missile)の頭文字とされるようになった。
1977年になると、カーター政権下で統合巡航ミサイル計画(JCMP:Joint Cruise Missile Program)が開始され、同じ頃やはり巡航ミサイル(AGM-86)の開発を進めていたアメリカ空軍と海軍とが、共通の技術基盤を用いて巡航ミサイルを開発することになった。この計画のもと、空軍のAGM-86からは巡航ミサイルのターボファンエンジンが、海軍のBGM-109からは地形等高線照合(TERCOM:Terrain Contour Matching)システムが、それぞれ共通コンポーネントとして採用されている。また、この計画では、BGM-109の空中発射用の派生型AGM-109も試作され、AGM-86と実飛行を含む競争にかけられたが、空軍はAGM-86を選択したため、AGM-109の開発は中止された。
1980年3月、量産型BGM-109Aが水上艦から、同年の6月には潜水艦から、それぞれ初めて発射されている。評価はこの後も続けられ、1983年3月には、実任務に就役可能であることが宣言された。こうして、熱核弾頭を搭載した対地攻撃型BGM-109A TLAM-N(Tomahawk Land-Attack Missile-Nuclear)および通常弾頭の対水上艦型BGM-109B TASM(Tomahawk Anti Ship Missile)の2つのタイプの任務に就くに至った。これら最も初期に配備されたトマホークは、まとめてブロックIと呼ばれている。
以下、トマホークについて記述をすすめるが、多くのバリエーションが登場するものの、基本的に、発射環境、ミッション、誘導システムや弾頭が改正された各種の発展型の3つの軸で分類可能である(表1および表2を参照)。
ミッション |
弾頭 |
ブロック I |
ブロック II / IIA / IIB |
ブロック番号なし 開発中止 |
ブロック III |
ブロック IV (開発中止) |
タクティカル トマホーク |
---|---|---|---|---|---|---|---|
対地 |
核 |
BGM/RGM/UGM-109A TLAM-N |
|||||
対地 |
通常 |
BGM/RGM/UGM-109C TLAM-C (ブロック II/IIA) BGM/RGM/UGM-109D TLAM-D (ブロック IIB) |
BGM-109F |
RGM/UGM-109C/D TLAM-C/D |
RGM/UGM-109H THTP |
RGM/UGM-109E RGM/UGM-109H |
|
対水上 |
BGM/RGM/UGM-109B TASM |
BGM-109E |
|||||
汎用 |
RGM/UGM-109E TMMM |
ミッション |
弾頭 |
地上発射型 |
空中発射型 |
---|---|---|---|
地対地 |
核 |
BGM-109G |
|
空対地 |
通常 |
AGM-109 (開発中止) |
BGM-109という制式名称は、1986年にRGM-109(水上発射型)およびUGM-109(潜水艦発射型)の2つに改められた。そのため、BGM/RGM/UGMが混在することになる(1963年に原型が定められた米国防総省のミサイル命名規則によれば、同一のモデルのミサイルでも異なった目的もしくは発射手段を持つミサイルには、制式名称の先頭3ケタのローマ字を変更するものとされている)。それだけでなく、いくつかの接尾辞(xGM-109EおよびH)は全く異なるミサイルに何度も与えられているため、いっそう混乱しやすい。
そのため、以下の記述では制式名称は必要がない限り用いず、各バリエーションに与えられた(ミッションにもとづく)略字(TLAM-N、TASMなど)およびブロック名を主として用いる。
ミッション
多くのバリエーションが登場しているにもかかわらず、トマホークのミッションはただの2つしかない。すなわち、対地ミッションと対水上ミッションである。核弾頭か通常弾頭であるかによって一部違いがあり、また、後日の発展型では、新しい技術を取り入れるための改正がなされているが、ミッションの基本的なプロファイルは変わっていない。
対地ミッション

ミサイル駆逐艦「ステザム」から発射されるトマホーク
- 発射から中間誘導
- 水上艦であればMk143 装甲ボックスランチャーまたはMk41 VLSから、潜水艦であれば魚雷発射管またはVLSから、固体ロケットブースタで射出され、ターボファンエンジンで巡航する。発射にあたっては、トマホーク武器システムのサブシステムであるTWCS(トマホーク武器管制システム)が直接の発射管制を行なう。また、攻撃計画は地上司令部のTMPC(戦域任務計画センター)、あるいは艦上のAPS(洋上計画システム)によって立案される。
- 誘導システムの中心であるTERCOMは、電波高度計から得た高度情報を、事前に入力されたレーダー地図と照合しつつ、計画された飛行経路に沿ってミサイルを飛翔させてゆく。この経路には中継点がいくつか含まれており、この地点に差し掛かるつど、事前の計画に応じて高度と方位を変え、地形を利用して迎撃や探知を回避しつつ、目標へと迫ってゆく。
- ただ、速度はせいぜい亜音速であり回避機動をとるわけでもないので発見されてしまえば迎撃は比較的容易である。また、探知されないわけではないが発見されづらいため夜間攻撃が望ましい。
- 終端誘導
- 中間誘導までの段階では、TLAM-Nでも通常弾頭のTLAMでも違いは全くない。両者の相違が現れるのは、その最終段階である終端誘導においてにある。
- TLAM-Nでは、最終段階までTERCOMのみによって誘導され、そのCEPは80mであるが、搭載するW80 核弾頭(5-200kTの可変威力型)からすれば、これは充分な数字である。
- 通常弾頭のTLAMには、追加の誘導装置が加わる。この装置は、デジタル式情景照合装置(DSMAC:Digital Scene-Matching Area Correlation)と呼ばれ、電子光学センサーにより地上をスキャンし、事前に登録された情景と比較しながら進路を修正する。これら誘導システムによって得られる最終的な精度は、CEP 10mである。
対水上ミッション
- 発射から命中まで
- TASMの発射から巡航までの手順はTLAMのそれと変わらない。大きく異なるのは、誘導装置である。TASMには、ハープーン対艦ミサイルの誘導システムの主要部分を流用したものが搭載されている。
- 敵艦のおおまかな方位を向けて発射されたTASMは、目標の推定位置が近づくと、捜索パターンを描きながら、目標からの電波放射を捕捉するパッシブ方式と自身のレーダーによるアクティブ捜索方式とを併用して捜索をはじめる。
- 一度敵艦を発見すると、TASMは海面近くを飛行し(シースキミング)、目標の側面もしくは上面から突入する。
- 「長すぎる槍」
- TASMはすでに退役している。ハープーンと比べると、TASMは射程でも弾頭量でも優れているが、価格が高い(1990年代初めの時点で1発あたり、トマホークは143万ドル、ハープーンは112万ドル)。それゆえ、価格に見合った射程と目標に対して使用するのでなければ見合わないが、同時に、この「相応な目標」は、捜索することそれ自体が困難な作業であるため、TASMは「使いにくい」ミサイルと見なされたのである。しかし、新型ブロックIVでは再び対艦攻撃能力が追加されており、海軍のピート・ファンタ少将は海軍が新型の対艦ミサイルを製造するのかという質問に対して、「トマホークに対艦能力を持たせる必要性を我々はまだ感じており、以前はトマホークの射程にセンサーが追いつかなかったため計画中止となったが、現在は解決されている」と述べている[1]。
発展型
ブロック I
ブロック Iに属する2つのバリエーション、すなわち対地核攻撃ミッション用のBGM/RGM/UGM-109A TLAM-Nおよび、対水上ミッション用のBGM/RGM/UGM-109B TASMはすでに退役している。TASMの退役により、トマホークのミッションは対地ミッションに限定されることになった。
BGM-109Aの退役は、中距離核戦力(INF)全廃条約に基づくもので、1991年まで撤去が完了している。
ブロック II / IIA / IIB
次の発展型であるブロック IIには、1986年から実戦配備されたBGM/RGM/UGM-109C TLAM-CおよびRGM/UGM109D TLAM-Dの2種類のバリエーションが含まれる。
BGM/RGM/UGM-109Cは通常型の単弾頭を備えた基本的な型である。最初のブロック IIは、飛行の最終段階では目標側面に直進して突入するだけだったが、IIAではソフトウェアが変更され、目標上部からの突入および目標上空での弾頭爆破の2つのモードが追加された。
ブロック IIBは、RGM/UGM-109Dである。これは、RGM/UGM-109Cの単弾頭を子爆弾ディスペンサーに交換したもので、1988年から配備された。これは、兵員、非装甲車両、露天駐機中の航空機など、脆弱な目標を広範囲にわたって攻撃するのに適している。
ブロック III

戦艦「ニュージャージー」から発射されるトマホーク
1980年代、トマホークの2次供給契約者であるマクドネル・ダグラス(現在はボーイング)は、ブロック IIIと呼ばれる機能向上を提案し、採用された。これには誘導装置(GPS受信機の追加、DSMAC2A)の更新、改良型のエンジンの他、より小型で同等の威力を持つ弾頭が含まれ、これらによって精度の向上と射程の延伸が目指された。
GPSは、TERCOMの限界、すなわち特徴の乏しい地形(砂漠・平原など)での精度の低下を補うものとなり、ミッションの柔軟性を増すことに役立っている。ブロック IIの全てのミサイルは、定期点検の機会を利用してブロック IIIへのアップグレードを受けた。
BGM-109E/F
BGM-109E/Fは、1980年代中頃に提案されたが採用されなかったプランである。BGM-109EはTASMの改良型、BGM-109Fは飛行場の攻撃に特化した型であった。
ブロック IV
1994年、ヒューズ(現レイセオン)は、ブロック IVまたはトマホーク・ベースライン改良計画(TBIP:Tomahawk Beseline Improvement Program)として知られるアップグレードの開発に着手した。
これには2つの計画が含まれており、ひとつはRGM/UGM-109E TMMM(Tomahawk Multi-Mode Missile)と呼ばれる、単一のミサイルで水上および地上の全ての目標に対応する型である。この型はエンジンを換装し、さらに、赤外線またはミリ波によるイメージング・シーカー、さらに飛行中の目標変更を可能にするデータリンクなどが提案されていた。
もう一方は、RGM/UGM-109H THTP(Tomahawk Hard Target Penetrator)と呼ばれる、防護を強化された目標に対応する強化型徹甲弾頭を備えた型である。しかしながらこの計画は、余りにも高価であることが判明したため、1996年に中止された[2]。
タクティカル・トマホーク
タクティカル・トマホークは、トマホークの最新発展型である。これは、ブロック IV中止後の1998年に同計画のより廉価な代替案として提案され、当初はブロック Vと呼ばれていたが、ブロック IVの名称が復活した。この計画では、生産段階におけるコストの削減が目指され、現行のTLAM-C/D(ブロック III)の半分の価格で、性能を損ねることなく調達することとされた。そのために軽量化とより安価なエンジンへの換装が行われる。
また、軽量化に伴う構造強度の低下により、潜水艦発射型は魚雷発射管からの発射ができなくなったため、もっぱらVLSから発射されることになったが、魚雷発射管より発射できるタイプも2007年にはテストされ、イギリス海軍はこれをトマホークBlock IVとして導入し、トラファルガー級原子力潜水艦やアスチュート級原子力潜水艦で運用されている[3]。
また、能力向上として、以下のような機軸が盛り込まれた。
- UHF周波帯の衛星リンクによる飛行中の再プログラム。これにより、事前に登録された15個までの代替目標のひとつ、または、GPSで指示される任意の座標に指向させることができるようになった。
- また、同じ衛星リンクを利用する、前方監視カメラ画像の発射母体への送信。損害評価または照準に利用することができる。
- (従来では不可能だった)搭載艦艇での飛行計画立案、具体的にはGPSを用いた目標座標指示による柔軟性の向上。
タクティカル・トマホークの試射は潜水艦発射型・水上発射型とも2002年に成功し、レイセオンと生産契約が結ばれた。2004年には、作戦可能状態に達し、実戦配備が開始された。
タクティカル・トマホークには2つのバリエーションが含まれる。RGM/UGM-109Eは、ブロック IIIと同じ軽量単弾頭を搭載し、RGM/UGM-109H TTPV(Tactical Tomahawk Penetrator Variant)は、防護強化もしくは地下の目標を攻撃する強化型徹甲弾頭を搭載する。どちらも軽量化に伴って燃料搭載量が増し、射程が延伸した。
新型ブロック IV
海軍力を著しく増強し、A2/ADに対応した長距離対艦ミサイルの開発に取り組んでいる中国海軍を念頭に置いた水上艦艇攻撃力強化の一環として次世代対艦型トマホークの開発が行われており、2021年には運用に入るとみられている[4][5]。これは海軍攻撃対艦兵器(Navy’s Offensive Anti-Surface Warfare、OASuW)が運用に入るまでの繋ぎとみられており[6]、アップグレードされた通信システム、新しい多機能弾頭、マルチモードセンサスイートの挿入が計画されている[7]。センサーについては移動する目標を破壊するために新しいパッシブ・アクティブシーカーと高速プロセッサからなる統合スイートが開発されている[8]。同様の計画として、スタンダード艦対空ミサイルであるSM-6に対艦能力を付加する事も検討されている[9]。
2014年に、ソフトウェアアップグレード試験が行われており、前例のない高高度飛翔からの垂直突入や潜水艦から発射された飛行中のトマホークを別の管制センターからデータリンクで目標変更する等の試験が行われた[8]。2015年には、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦キッドから発射された新型トマホークが、F/A-18E/Fから情報更新を受けつつ飛翔し、移動する標的艦に命中させることに成功している[10]。2016年、米国防省は対艦オプションの多様化を目標に、2017年度予算でLRASMやAARGM-ERの開発を加速させると共に、改良トマホークや対艦型SM-6への投資を重視していくと発表した[9]。他、貫通力をより高めるJMEWS(Joint Multiple Effects Warhead System)の開発計画もリスク精査を行っている段階である[8]。
要目一覧
トマホークミサイルによる曳火攻撃の様子。1986年撮影
以下の要目は実際に配備されたもののみを取り上げる。なお、いずれのタイプでも、本体サイズおよびロケットブースターは共通である。
- 本体
- 全長(ブースター除く):5.56m
- 翼幅:2.67m
- 直径:0.52m
- 速度:880km/h
- エンジン:ウイリアムズ F107-WR-400(ブロック IIまで)/F107-WR-402(ブロック III)/F415-WR-400/402(タクティカル・トマホーク)
- ブースター部分
- 型式:アトランティック・リサーチ Mk106 固体推進ロケット
- 全長:0.69m
- 直径:0.52m
- 重量:270kg
型式 |
重量 |
射程 |
弾頭 |
誘導方式 |
---|---|---|---|---|
RGM/UGM-109A TLAM-N |
1,180kg |
2,500km |
可変威力型熱核(5-200kT) |
慣性、TERCOM |
RGM/UGM-109B TASM |
460km |
通常単弾頭(454kg) |
慣性、アクティブレーダー、PF/DF(電波受聴・方位探索) |
|
RGM/UGM-109C TLAM-C |
1,310kg |
1,250km(ブロック II) 1,650km(ブロック III) |
慣性、TERCOM、DSMAC (ブロック IIIはDSMACを新型に更新、GPS追加) |
|
RGM/UGM-109D TLAM-D |
1,220kg |
1,250km |
子爆弾×166個 |
|
RGM/UGM-109E/H タクティカル・トマホーク |
3,000km |
慣性、TERCOM、DSMAC2A、GPS、前方監視カメラ、衛星リンク |
地上発射型 / 空中発射型
トマホークには、ここまで述べてきた海洋発射型だけでなく、地上発射型および空中発射型がある。ただし、前者は既に退役し、後者は開発段階で計画中止となったため実戦配備されていない。
地上発射型 BGM-109G GLCM
1971年頃、アメリカ空軍は、MGM-13 メイスを近代的な地上発射巡航ミサイル(GLCM:Ground Launched Cruising Missile)で置換する計画を進めていた。この新ミサイルに求められていたのはTERCOMシステムによる精密誘導と小型で燃費の良いターボファンエンジンを用いることだった。
1977年、空軍は、海軍のBGM-109 トマホークSLCMの地上発射用の派生型であるBGM-109Gの開発と配備を許可し、1980年5月には最初のミサイルが試射された。このミサイルは、車両に搭載された4連装TEL(輸送起立発射機)容器内に格納されたかたちで配備された。なお、空軍ではトマホークではなく、グリフォン(グリフィン)と呼ばれた。
BGM-109Gは、1983年からヨーロッパのNATO諸国に配備されたが、1987年12月に米ソがINF全廃条約に調印すると、GLCMはまさにこの条約の規制対象であったため、1988年から撤去が開始された。1991年5月には撤去が完全に完了し、全数が保管中である。
BGM-109Gのミッションと性能は、地上から発射されることを除けば、同様に核攻撃ミッションに従事したBGM-109Aと同じである。ただし、核弾頭は別で、W84型を用いている。
空中発射型 AGM-109 MRASM(開発中止)
概要
空中発射型は中距離空対地ミサイル(MRASM:Medium-Range Air-to-Surface Missile)と呼ばれ、1970年代の海軍・空軍共同の巡航ミサイル開発計画(JCMP)のなかで開発が進められたが、最終的に中止となった。海軍・空軍のそれぞれ向けに、以下のようなバリエーションが考えられていた。
海軍用バリエーション
海軍用バリエーションは、航空母艦の弾薬エレベーターのサイズと搭載母機(A-6が予定されていた)の制約から、空軍向けのものにくらべて全長が短く、軽量だった。
- AGM-109C
- ブロック II / IIAとおなじ通常型弾頭による地上攻撃型。
- AGM-109J
- 上記の廉価版または子爆弾搭載型。
- AGM-109I
- 対地と対水上の兼用型。低価格版のTERCOMおよび赤外線イメージング方式による終端誘導のテストを行った(非公式)。
- AGM-109L
- 廉価な通常型弾頭を搭載。
空軍用バリエーション
- AGM-109H TAAM(Tactical Air-Field Missile)
- 飛行場攻撃用。子爆弾搭載型。
- AGM-109K
赤外線イメージング方式誘導型。
要目一覧(MRASM、GLCM)
以下に空中発射型および地上発射型の本体要目を示す。なお、地上発射型はロケットブースターを用いるが、海洋発射型と同一のものであるので省略する。
型式 |
全長 |
直径 |
重量 |
射程 |
エンジン |
弾頭 |
---|---|---|---|---|---|---|
AGM-109H/K |
5.84m |
53.1cm |
1,200kg |
2,500km |
テレダインCAE J402-CA-401ターボジェット |
AGM-109H:子爆弾(28個) AGM-109K:通常単弾頭(450kg) |
AGM-109L |
4.88m |
1,000kg |
不明 |
通常単弾頭(295kg) |
||
BGM-109G |
5.56m |
51.8cm |
1,200kg |
2,500km |
ウイリアムズ F-107-WR-400ターボファン |
可変威力型熱核(0.2-150kT) |
LCMS-Fasthawk-
概要
LCMSは、ローコストミサイルシステム(LowCostMissileSystem)の略であり、1993年3月にボーイングが、アメリカ海軍と契約し開発をおこなったものである。このプログラムは低コストの先端技術実証のデモンストレーターを開発することが目的であり、この開発ミサイルはファストホーク(Fasthawk)とも呼ばれた[11][12]。
ファストホークの呼ばれ方からも見て取れるように、海軍はこれを現在使用しているトマホークの代替用ミサイルとして開発を進めていた[12]。だが、トマホークを原型に開発されたものではなく、推進機関にはラムジェットエンジンを使用、ミサイル本体はフィンレスボディで作成され、後部のラムジェットエンジン部分を自由に曲げられることで、噴射方向を変えることができるという現在のロケット、ミサイルで使用されているTVCの先駆けともいえる技術が採用されている[11][12]。
しかし、LCMSは他の計画との選考の結果などの理由から、1999年に開発終了となった[11]。
要求されていたスペック
- 飛行速度:M4
- 射程:700海里(約1300km)以上
- ペイロード:700ポンド(約320kg)
戦歴

トマホークの運用国
1991年 湾岸戦争。TLAM-C 261発、TLAM-D 27発が発射。うち14発は潜水艦発射型。命中率は85%。
1998年 イラク領内の地上目標を攻撃(デザート・フォックス作戦)
1998年 ユーゴスラビア内戦介入に伴い、セルビア地上目標を攻撃(アライド・フォース作戦)
2001年 アフガニスタン戦争
2003年 イラク戦争
2011年 リビア内戦「オデッセイの夜明け作戦」(米、英、仏、伊、加参戦)
2014年 - 過激派組織ISILに対するイラク・シリアでの攻撃「生来の決意作戦」
2017年 - 米トランプ政権による、アサド政権の空軍基地に対するシリアでの59発の攻撃「シャイラト空軍基地攻撃」[13]
潜水艦の魚雷発射管から発射可能という制約のもと開発されたことで、トマホークは極めてコンパクトなサイズとなり、アメリカ海軍の水上戦闘艦のかなりの部分と、スタージョン級以後のすべての攻撃型原子力潜水艦に搭載されるようになるほど普及した。また、湾岸戦争で使用されてからは、世界でも希少な実戦経験のある巡航ミサイルとなっており、おそらく世界で最も成功した兵器のひとつ[独自研究?]と言うことができるだろう。
なお、1995年、アメリカ合衆国政府はイギリスへのトマホーク輸出に同意し、1998年にはイギリス海軍の潜水艦から試射が行われた。2008年までには、すべての攻撃原潜に運用能力を付与することが予定されている。また、2004年にはブロック IV(タクティカル・トマホーク)の購入について、両国は合意した。1999年、コソボ紛争に介入したNATO軍にスウィフトシュア級攻撃原潜「スプレンディッド」(HMS Splendid, S106)が参加し、実戦での発射をイギリス潜水艦としては初めて実施している[要出典]。
登場作品
映画
- 『シン・ゴジラ』
- 終盤の「ヤシオリ作戦」を支援する架空のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「ヒューイ」に搭載されたものが、ゴジラの動きを封じるため、グラントウキョウなどの東京駅周辺の高層ビル群に向けて発射される。
- 『沈黙の戦艦』
アイオワ級戦艦「ミズーリ」を乗っ取ったテロリストたちが、搭載されていた核弾頭搭載型トマホークをブラック・マーケットに売り飛ばそうとする。終盤では、主人公のケイシー・ライバックたちに計画を邪魔されたことで堪忍袋の緒が切れたテロリストのリーダーによって、核弾頭搭載型2発がホノルルに向けて発射されてしまう。- 『バトルシップ』
- アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「ジョン・ポール・ジョーンズ」に搭載されたものが、エイリアンの侵略兵器に対して使用される。エイリアンの電波妨害によってレーダーやGPSが使えなくなったため、まっすぐ飛翔させることしかできなくなったが、津波ブイによって判明した目標の位置から未来位置を予測することで命中させることに成功する。
- 『ミッドナイト・イーグル』
核爆弾に近づく某国工作員たちを殲滅するため、日本国政府からの要請で、日本海にいる架空のロサンゼルス級原子力潜水艦「セント・バージニア」に搭載されたものが、日本アルプスに向けて発射される。
アニメ・漫画
- 『こちら葛飾区亀有公園前派出所』
- TVスペシャル「大ハード!両津勘吉は二度死ぬ」にて、ドルフィン刑事が使用する。
- 『ジパング』
第二次世界大戦時へタイムスリップした架空のイージス護衛艦「みらい」の搭載兵器として、BGM-109Bが登場。空母「ワスプ」と大和型戦艦「大和」に対して使用される。- 『戦海の剣-死闘-』
海上自衛隊の架空潜水艦「くろしお」の搭載兵器として登場。空母「剣」や日本各地のコンビナート、都市に対して使用される。- 『タイドライン・ブルー』
- 架空の戦略型原子力潜水艦「ユリシーズ」の搭載兵器として登場。ヤビツに対する攻撃に使用される。
- 『沈黙の艦隊』
- 第150話にて、架空のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦「サン・シャントン」に搭載されたものが、日本の野党「鏡水会」党首と会談するため北極海に浮上する、原子力潜水艦「やまと」に対して使用するため、Mk.13に装填される。
- なお、実際のタイコンデロガ級はMk.13を装備しておらず、また、Mk.13でトマホークを運用することはできない。
- 『東のエデン』
あたご型護衛艦の搭載兵器として登場。日本の主要政令都市に向けて発射される。なお、実際のあたご型はトマホークを搭載していない。- 『魔法少女まどか☆マギカ』
- TV放送版第11話・劇場版後編にて、暁美ほむらが使用する[14]。
- 『まりかセヴン』
- 第14話で在日米軍が怪獣ガライバに対し相模湾から発射し同時に出撃させた大量のMQ-1 プレデターとの併用で物量攻撃を仕掛けるが岩石のような硬い皮膚を持つガライバには効かず反って怒らせてしまうが、最終的には田子ノ浦の発案で怒ったことにより急激に上がった体温を湖で急激に冷やされ皮膚が脆くなった所を第2陣で撃破した。
- 『ルパン三世 ナポレオンの辞書を奪え』
ルパン一味を攻撃するCIAや多国籍軍が使用する。作中では、次元大介が性能について解説する場面があり、軍艦だけでなく車両に搭載されたランチャーからも発射されている。
小説
- 『ルーントルーパーズ 自衛隊漂流戦記』
異世界へ飛ばされた架空のイージス護衛艦「いぶき」に搭載されていた極秘兵器として、タクティカル・トマホークが登場。内陸にある魔法陣地への攻撃に使用される。
ゲーム
- 『バトルフィールド4』
司令官モードのコマンドとして、指定座標にトマホークを発射できる。
脚注
^ US Navy: More Can Be Done If Risks Are Accepted
^ なお、「BGM-109E」という制式名称は、1980年代に開発中止になったヴァリアントに次いで2度目の利用である。さらに、タクティカル・トマホークでは109Hの制式名称も再利用されるため、混乱しないよう注意を要する
^ Royal Navy Submarine Test Fires Block IV Tactical Tomahawk
^ Video: Tomahawk Strike Missile Punches Hole Through Moving Maritime Target
^ WEST: U.S. Navy Anti-Ship Tomahawk Set for Surface Ships, Subs Starting in 2021
^ Navy: Raytheon Tomahawk Likely to Compete in Next Generation Anti-Ship Missile Contest
^ Raytheon Working on Tomahawk With Seeker
- ^ abcNavy test-fires upgraded Tomahawk
- ^ abPentagon Budget Requests $2B for Tomahawks, $2.9B for SM-6
^ Watch an F/A-18 Hornet guide a Tomahawk cruise missile into a moving ship
- ^ abcFasthawk Low Cost Missile System (LCMS) globalsecurity.org
- ^ abcFASTHAWK AIMS TO OVERTAKE TOMAHAWK, ARMED FORCES janes.com 原本Jane's Defence Weekly Apr 16, 1997
^ Why the Navy’s Tomahawk missiles were the weapon of choice in strikes in Syria
^ 『魔法少女まどか☆マギカ公式ガイドブック you are not alone.』 P.112-113より。ただし、実際のランチャーの形状は実物とは異なる
関連項目
トマホーク武器システム - トマホーク・ミサイルを主要なサブシステムとする武器システム- 中距離核戦力全廃条約
- アメリカ合衆国のミサイル一覧
ロサンゼルス級原子力潜水艦 — 後期建造艦はトマホーク用VLSを装備
改オハイオ級原子力潜水艦 — 初期建造艦4隻が、トマホークを運用する巡航ミサイル原潜に改装- 巡航ミサイル潜水艦
外部リンク
Raytheon Company: Products & Services: tomahawk — 現在の主契約者レイセオンの公式サイト。
BGM-109 Tomahawk — GlobalSecurity.org内の解説記事。