アルバム













アルバム(英語: album)は、公衆に流通している関連付けられたオーディオトラックの集合。多くはレコード、コンパクト・ディスク、コンパクトカセット、DVDなどのメディアとなって市場で流通する。一部ライブやコンサートの会場などで直接販売される、あるいはウェブサイトを通じてダウンロード販売されることもある。販売用の媒体としては、数曲を収録した小さな販売単位であるシングルと対比される表現である(後節も参照)。




目次






  • 1 由来と変遷について


  • 2 シングルとの違いについて


  • 3 既発表曲の収録について


  • 4 アルバムの種類について


    • 4.1 単独のアーティストの収録に関するアルバムについて


    • 4.2 複数のアーティストの収録に関するアルバムについて


    • 4.3 既存の楽曲の音源に関するアルバムについて




  • 5 脚注


  • 6 関連項目


  • 7 外部リンク





由来と変遷について




アルバムの装丁は写真用のアルバムを模していた


「レコードアルバム」(Record Album)という用語は、20世紀前半までの、最大収録時間3分(10インチ盤)~5分(12インチ盤)のSPレコード(78回転盤、シェラック盤)が主流だった時代に、何枚かのレコードを写真アルバムに似せた本という形で発売させたことに由来する。最初にアルバムと呼ばれたレコード集は、オデオンレコードによって1909年にリリースされた、ピョートル・チャイコフスキーのくるみ割り人形を収録した4枚組である。価格は16シリングであった(2007年現在の通貨価値だと約1万1000円に相当)。


1948年にアメリカ合衆国のコロムビア・レコードから、ビニライト製の音溝を細くした、直径12インチにもかかわらず最大収録時間30分程度のLPレコード(33回転盤、ビニール盤)が生産された。LPは長時間再生 (Long Play) のアクロニム(頭字語)であり、その「長い」収録時間は、それまでのアルバムのうちかなりのものを丸ごと入れることができた。従来のレコードアルバムを1枚のLPにしたものや、新しく発売された複数曲収録のLPも、アルバムと呼ばれた。


2016年11月現在、ビニールでできたレコードは主要な形式としては使用されないが、「アルバム」という用語はコンパクトディスク(CD)、コンパクトカセット、あるいはデジタルダウンロードの録音の集合に対し使われている。


CDが主流になる前にもLP2枚組などで1時間前後のアルバムがあったが、CDが主流になった1990年代にはCDの容量をほとんど使い切った70分以上を収録するアルバムが盛んに制作された。2000年代になると欧米ではCDの単価下落による収益の悪化やデジタルダウンロードの普及(一般的にCDよりもアルバムの単価が低い)などが要因となり、30分程度の非常に短いアルバムも一般的となった。


日本では再販売価格維持制度によりCDなどの価格の下落は防がれているが[1]、様々な要因により売上が低下しており(CD不況を参照)、そのため、アルバムに付加価値をつける試みが多く行われる。一例としてミュージック・ビデオを収録したDVDを付属して発売する場合がある。このような高付加価値化は海外でも行われている。


2015年7月10日から、各国でばらばらだったアルバムとシングルの発売日が金曜日に世界統一された[2]が、日本国内では2016年11月現在もアルバムやシングル共に水曜日に発売している歌手が多い。



シングルとの違いについて


新しいメディアが大容量であるため、アルバムがどのぐらい長くあるべきかという問題が議論になる。UKシングルチャートは4トラック以上、または、収録時間の合計が20分を超えるものはアルバムとされる。


日本のオリコンは、ポップスではリミックス(バージョン違い)等を除くオリジナル曲が5曲(5トラックではない)以上の場合はアルバムとしている[3][4]。これを利用して、シングルに同じ曲のリミックスを多数収録し、お買い得感や話題性を出すことがある。例えば、浜崎あゆみのマキシシングル『A』(1999年)は、14トラックあり(ボーナストラック含む)、かつ70分をはるかに超える収録時間にも関わらず、そのほとんどが同じ曲のリミックスで、「曲数」としては4曲しか収録されていないため、シングルとされた。8cmのCDの場合、10曲が収録された山崎邦正の『ヤマザキ一番!』(1998年)はシングルとされた一方、7曲が収録された所ジョージの『トンカチ』(1998年)はアルバムとされた。クラシックなどでは、1曲でも時間が長ければアルバムとされる。また、曲数はディスクごとではなくパッケージで数えるため、シングルボックスはアルバムとされる。


一方で日本レコード協会は、リミックスを含む収録曲が3曲(カラオケは除く)以内かつ定価が1600円以下のものをシングル、その他をアルバムとしている[3]



既発表曲の収録について


日本ではシングルのメイン曲やカップリング曲(メイン曲以外の収録曲のこと)を改めてアルバムにも収録するケースがあるが、これは1970年代以降の英米ではあまり見られない慣例である。これは、日本では先に数曲のシングルを発売したあと、その期間の集大成のような形でアルバムが出されるのに対し、英米では先にアルバムがリリース(発売)され、そこから一定間隔を置いてシングルをカットしていく(先行シングルは大抵1・2曲が限度である)という違いから来るものである。英米ではシングルのカップリング曲はアルバム未収録の新曲(没曲など)や表題曲のリミックスを収録することが一般的である。日本においてカップリング曲をアルバムに収録しない場合は、アルバム発売後でもシングルの価値をある程度保つなどの意図が考えられる。ただし、カップリング曲のみ収録し、表題曲は収録しないアルバムも存在する。


また、日本でシングル曲(メインとなる表題曲のこと)をアルバムに収録する場合、リミックスを施す、イントロ(最初)やアウトロ(最後)を変える等の「アルバム・バージョン」として収録することもある。特にシングルがアルバムと同時発売の場合、シングルの価値を低下させない為などからアルバムにはバージョン違いを収録することが多く見受けられる。リカットシングルにおいても、アルバムとは異なるバージョンで発売されることもある。



アルバムの種類について


収録時間の短いアルバムをミニアルバム(和製英語:mini + album)と呼ぶ。それに対し、ミニアルバム以外のアルバムをフルアルバムと呼ぶ。ミニアルバムとフルアルバムの違いは明確ではないが、おおよそ6曲前後までならミニアルバム、8曲前後からはフルアルバムと呼ばれる。


LPの直後、RCAビクターが、LPと類似の技術を使い、LPより小さく収録時間は12インチSPとほぼ同じ5分であるEPレコード(45回転盤)を発売した。EPはextended playの略で、シングルより長いことを意味する。これにより現在でも、収録時間が特に短いミニアルバムをEPと呼ぶことがあるが、シングルのことをEPと呼ぶこともある。


2枚組アルバム、いわゆるダブルアルバムと呼ぶ1つのパッケージの中に2枚のディスクを収納した作品をリリースすることがある。これらは収録時間がディスク1枚の上限を超えていることが多く、さらにオリジナル盤とリミックス盤等必ずしも上限を超えなくても分けることがある。ちなみに、何枚かのディスクを1つの箱に入れてリリースすることも多々ある。こちらはCDボックス、いわゆるボックスセットと呼ぶ。



単独のアーティストの収録に関するアルバムについて


アーティスト名をアルバムのタイトルとすることがある(セルフタイトル)。



スタジオ・アルバム(オリジナル・アルバム)

いわゆる一般的なアルバム。“収録曲はすべてそのアルバムのために新たにレコーディング(録音)されたもの”というのが原則にはなるが、アルバム以前に発表されたシングルを含んでいるケースが国内外問わず多い。特に日本では、アルバム発売時で既発表シングルを複数収録しているものが多い。その一方、英米ではアルバム発売時の既発表曲はリードシングル1曲のみのケースが主流である。

1stアルバム、2ndアルバム…と言う場合、普通はスタジオ・アルバムのみを数えることが多いが、ライブアルバムやリミックスアルバム等も含んで数える音楽家もいる。

コンセプト・アルバム

アルバムの全収録曲が一つのストーリーで構成されている等、明確なテーマを持つ作品に対して称される。しかし、定義自体は非常に曖昧である為に、実際には制作者自身の定義で決まってくる。


セルフカバー・アルバム

過去に他のアーティストに提供した楽曲を自ら演奏するもの。広義では過去に自ら演奏した楽曲を改めて演奏するものを含む。



複数のアーティストの収録に関するアルバムについて



コンピレーション・アルバム

アルバム制作開始の時点で、既に録音を終えた曲を集めたアルバムのこと。複数のアーティストの曲で構成されている。

過去のヒット曲等を集めた「オムニバス・アルバム」等が該当する。

トリビュート・アルバム

収録曲全てがオリジナルアーティストの物であり、これらを別のアーティストが演奏・歌唱(カバー)して再収録を行う。そして、それらの曲を集めた作品のことを「トリビュート・アルバム」と言う。

多くのアーティストに敬愛されているオリジナルアーティストに重点が置かれる。

カバー・アルバム

トリビュートとは対照で、別のアーティストの曲をオリジナルアーティストが演奏・歌唱して再収録を行う。そして、それらを集めた作品のことを「カバー・アルバム」と言う。

カバーする側の技量に重点が置かれる。

スプリット・アルバム

数組(概ね2〜3組)のアーティストの音源を1枚のディスクに収録したアルバム。

音源の名称は特に決まりは無い。



既存の楽曲の音源に関するアルバムについて



ベスト・アルバム

過去のヒット曲や代表曲を集めたもの。アーティストの中には、ベスト・アルバム用に新曲を数曲用意する場合が多い。

既発表のシングル曲のみで構成されたベスト・アルバムは「シングル・コレクション」等と名称されることがある。

ライブ・アルバム


観衆の前での演奏を収録したアルバムのこと。

収録されている曲はライブ音源と呼ばれ、スタジオ・アルバム等で収録された音源とは異なる。

リミックス・アルバム

既にあるオリジナル曲を、本人か他者がリミックスした音源で新曲にさせ、それらを収録したアルバムのことを指す。

収録されている曲は単にリミックス曲等と呼ばれる。



脚注


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  1. ^ 音楽レコードの還流防止措置の項も参照。ただし、中古市場をのぞく。


  2. ^ アルバム・シングル発売日、世界で金曜日に統一

  3. ^ ab音楽・テレビ・CM・映画 ここまでわかった100の謎 MUSIC 音楽編、『日経エンタテインメント!』1998年12月号より。(インターネットアーカイブのキャッシュ)


  4. ^ ただし、過去にはB'zの『BAD COMMUNICATION』(1989年)のように3曲のみでもミニアルバムとして認めた例があり(日本レコード協会ではシングル扱いであった)、時代により異なる。ちなみに、近年ではマキシシングルは3曲収録のものも珍しくない。




関連項目



  • シングル

  • ボーナス・トラック

  • コンパクト盤

  • コンパクトディスク



外部リンク



  • まちがい音楽用語辞典パート16(2003)




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