司法修習
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司法修習(しほうしゅうしゅう)は、日本の司法試験合格後に法曹資格を得るために必要な裁判所法に定められた「司法修習生の修習」の通称である。司法修習を行っている者を司法修習生という。
目次
1 概要
2 修習期間
3 カリキュラム
3.1 旧司法試験合格者
3.2 新司法試験合格者
3.3 司法修習生考試と修習終了
4 司法修習生
5 脚注
6 関連項目
概要
司法試験の合格者は、最高裁判所に司法修習生として採用され、公務員に準じた身分で司法修習を行う。司法修習は裁判官・検察官・弁護士のいずれを志望する場合であっても、原則として同一のカリキュラムに沿って行い、修了後、裁判官であれば判事補として任官、検察官であれば検事(2級)として任官(これを「任検」という。)、弁護士であれば弁護士会への登録を行い、それぞれ法曹として活動するほか、研究者等それ以外の進路を選ぶ者もいる。
修習開始時期の呼称は、旧司法試験による場合は「旧第○期」といい、新司法試験による場合は「新第○期」という。新旧司法試験の区別が存在しない第59期まで及び第66期からは、単に「第○期」という。
修習期間
司法制度改革(法科大学院の設置等)の影響などにより、修習期間は短縮されてきている。
- 旧司法試験合格者対象の司法修習
- 第52期(1998年4月修習開始)まで - 2年
- 第53期(1999年4月修習開始)から第59期(2005年4月修習開始)まで - 1年6か月
- 第60期(2006年4月修習開始)から - 1年4か月
- 第52期(1998年4月修習開始)まで - 2年
- 新司法試験合格者対象の司法修習
- 新60期(2006年11月修習開始)から - 1年
- 新60期(2006年11月修習開始)から - 1年
カリキュラム
裁判実務科目の占める割合が多い。民・刑事裁判における事実認定が基本とされ、検察・刑事弁護・民事弁護に関するカリキュラムも裁判における事実認定を前提とする。
新司法試験合格者と旧司法試験合格者が併存していた60期から65期までは、以下のとおりそれぞれ別々に行われていたが、66期以降はそのような区別はなく、1年間の修習が統一的に行われている。
旧司法試験合格者
旧司法試験合格者の場合、司法研修所において1年4か月の修習を受ける。カリキュラムは前期修習、実務修習、後期修習に区分される。
最初の2か月の前期修習と最後の2か月の後期修習は、埼玉県和光市の司法研修所における集合修習で、民事裁判・刑事裁判・検察・民事弁護・刑事弁護の5科目からなる座学・起案作成からなる。司法修習生を担当する第二部教官は、担当科目について実務経験の深い裁判官・検察官・弁護士が充てられる。各クラス、各科目につきそれぞれ1人の教官がいるため、教官総数はクラス数×5となる。その他、各科目につき、クラスを担当しない「所付」と呼ばれる教官(教材作成やクラス教官補助を担当する教官で、比較的若い実務家が登用されることが多い)が1名ずつ任命される。司法修習生の修習指導に関する必要事項は司法研修所長が定め、修習の企画その他の重要事項を定めるには、所長を議長とする第二部教官会議を経る。実施の具体的細目は、各科目教官が協議の上定める。
中間の1年間の実務修習は、民事裁判修習・刑事裁判修習・検察修習・弁護修習を3か月ずつ行う。司法修習生は各都道府県の地方裁判所本庁所在地に配属され、仕事に立ち会ったり、裁判手続や書面作成のレクチャーを受け、実際の事件を題材として、実務家の指導の下、実務家法曹としての基礎を学ぶ。
新司法試験合格者
新司法試験合格者の場合、「法科大学院において実務教育がなされている」とみなされ、修習期間は1年とされている。カリキュラムは、10か月の実務修習と、司法研修所における2か月の集合修習に分かれる。新60期については実務修習前に1か月の導入修習が司法研修所にて行われていたが、新61期からはこの導入修習は廃止された。しかし、68期からは1か月の導入修習が復活した。
実務修習では、全国の地方裁判所本庁所在地(新63期からは東京地裁立川支部も修習地に加わった)に配属され、刑事裁判・民事裁判・弁護・検察・選択修習を2か月ずつ研修する。選択修習では、各人の関心に従い、専門性を深める。
司法修習生考試と修習終了
いずれの修習の場合も、最後に国家試験である「司法修習生考試」を行う。司法試験以来2回目の試験ということから「二回試験」とも呼ばれる。司法修習生考試は研修所から独立した司法修習生考試委員会によって、筆記考試の形式で行われる。科目は、民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護、刑事弁護の5教科で、1教科を1日かけて行う。具体的には、実際の記録を元に作成された研修用教材を題材として、設問に沿って事実認定上の問題点や法律上の問題点などを検討する。かつては、筆記考試科目に一般教養科目があったほか、筆記考試とは別に口述考試があり、試験委員による口頭試験の形式で、民事系と刑事系の2教科の試験が行われていた。
この司法修習生考試に合格した者は修習終了となり、判事補・2級検事任用資格及び弁護士登録資格を得る。不合格の者は、法曹資格を得られない。かつては、合格留保として、不合格科目のみの追試をする制度があったが、59期を最後に廃止された。合格留保・不合格者は、長くゼロまたは1桁の時代が続いたが、59期は100人以上、修了者の約7%が合格留保者・不合格者となった。その後も、新61期考試で113人(受験者の約6%)の不合格者[1]が出ている。不合格者は一旦罷免され、修習生として再採用を経て考試を再受験することとなる。なお司法修習生考試に連続して3回合格しない者は、再度司法試験に合格しない限り司法修習生に採用されないことになっている。[2]
司法修習生
「司法修習生」(しほうしゅうしゅうせい)とは、司法試験合格後に、最高裁判所に任用されて、司法研修所などで法律実務を修習中の者についての呼称である。
司法修習生は、司法試験合格者から最高裁判所がこれを命ずる(裁判所法66条1項)。身分は公務員ではないが、国家公務員に準じた地位を有する。守秘義務・修習専念義務を負い、副業・アルバイトは許されない。行状が品位を辱めるものと認めるとき、その他最高裁の定める事由があると認めるときは罷免され(裁判所法68条)、2017年1月までに罷免された者は4名いる。準公務員であるため最高裁は日本人に限るとする国籍条項を設け、1977年以降は在日外国人の合格者が入所を希望した場合には「相当と認めるものに限り、採用する」との方針を示した。1990年まで外国人にのみ日本国法令に従う旨の文書による誓約を求めていた。2009年11月から国籍条項は撤廃された。司法試験受験や弁護士資格について国籍条項はない。
記章(バッジ)は、筆記体大文字の「J」を図案化したものである。「J」の由来は、法学者・法学生を意味する jurist である。ラインが全て繋がるように描かれ、それぞれの囲みが検察官・裁判官・弁護士を表す赤・青・白の3色で塗り潰されている。この色分けは、旧憲法下での司法官、弁護士の職服の刺繍の色分けがもとになっているといわれる。
配属先は実務修習を行う地方裁判所であり、司法研修所へ派遣される扱いである。
2010年11月より以前に採用された修習生は、国家公務員と同じく国から給与を支給されており、国家公務員一種採用者と同等額(本俸20万4200円に各種手当)が支払われていた。ただし、通常の公務員と異なり、官舎を利用することはできなかった。修習期間中、1度ないし2度の転居がある。旧試験合格者は前期修習終了後に和光市の司法研修所から実務修習地へ、実務修習終了後に実務修習地から後期修習が行われる司法研修所へ、新試験合格者は実務修習地から司法研修所へ行く点は全員について共通であるが、実務修習地によっては司法研修所から再び実務修習地に戻る。
当初は、2010年11月入所の修習生(新第64期)からは給与支給を廃止し、最高裁が無利息で生活資金を貸与し修習後にこれを返済する制度となる(平成16年12月10日法律第163号参照)予定であったが、新64期修習開始(2010年11月27日)間際の2010年11月26日に日弁連などの要求から議員立法で給与制を1年間延長する裁判所法改正法が成立した。
その後、2011年11月に入所の修習生(第65期)から給費制が廃止され、貸与制に移行した。司法修習生の修習資金の貸与等に関する規則(平成21年10月30日最高裁判所規則第10号)によれば、貸与額は基本額23万円であり、貸与後5年据置きで、10年以内で返済することとなっている。貸与を受ける際、連帯保証人2名を立てることができない者は、オリエントコーポレーションの保証を受ける必要がある[3]。
脚注
^ 追試制度の廃止により、合格留保者はなくなり、不合格者のみとなった。
^ 司法修習生採用選考審査基準 最高裁判所 http://www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/saiyou-kijun.pdf
^ 最高裁判所と株式会社オリエントコーポレーションの包括保証契約書
関連項目
- 司法
- 最高裁判所 (日本)
- 旧司法試験
- 司法試験 (日本)
- 司法研修所