汚れた英雄








汚れた英雄』(よごれたえいゆう)は、大藪春彦が1966年から1969年にかけて発表した4部からなる長編小説。角川映画(現・KADOKAWA)により映画化され、1982年12月18日に公開された。


フィクションであるが、生沢徹・田中健二郎・高橋国光にマイク・ヘイルウッド、ジム・レッドマン、ドメニコ・アグスタ(イタリア語版)伯爵など実在の人物も登場する。


小説は現在は角川文庫・徳間文庫より全4巻が刊行されている。


なお、1960年に製作されたイタリア映画に、同じ邦題が付けられた作品(原題:Il gobbo)があるが、本作とは関係がない。




目次






  • 1 ストーリー


  • 2 映画


    • 2.1 概要


    • 2.2 物語


    • 2.3 出演


    • 2.4 スタッフ


    • 2.5 主題歌


    • 2.6 同時上映




  • 3 主人公のモデル


  • 4 映画でのスタント


  • 5 参考文献


  • 6 脚注


  • 7 関連項目


  • 8 外部リンク





ストーリー


生まれた直後に父を、第二次世界大戦中に母を亡くし、戦災孤児となり母方の叔父の実家が経営するオートバイ屋に引き取られた主人公・北野晶夫。しかし晶夫はオートバイレーサー・メカニックの両面で天才的な才能を持っていた。


晶夫はレーサーとして生計を立てることを望み、いわゆる浅間高原レースを皮切りに、本格的にオートバイレーサーとしての活動を開始する。その後、アメリカ西海岸での活動を経て最終的にヨーロッパに渡り、MVアグスタのワークス・チーム入りしてロードレース世界選手権(WGP)を制覇するまでに至る。


一方で晶夫は、生まれ持った美貌と肉体で次々と女を自分のものにしていき、一財産を築く(ある種のジゴロ)。その稼ぎはレーサーとしての収入とは比較にならないぐらい莫大なものだった。


晶夫はオートバイレーサー生活も晩年にさしかかり、最終的に4輪レーサーへの転向を試みることになるが…。



映画









































































汚れた英雄
監督
角川春樹
脚本
丸山昇一
原作
大藪春彦『汚れた英雄』
製作
橋本新一 / 和田康作
製作総指揮
角川春樹
出演者
草刈正雄
レベッカ・ホールデン
木の実ナナ
浅野温子
勝野洋
奥田英二
中島ゆたか
朝加真由美
伊武雅刀
音楽
小田裕一郎
主題歌
ローズマリー・バトラー
『汚れた英雄』
原題:Riding High
撮影
仙元誠三
編集
西東清明
製作会社
角川春樹事務所/東映
配給
東映
公開
日本の旗 1982年12月18日
上映時間
112分
製作国
日本の旗 日本
言語
日本語
配給収入
16億円[1]
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概要


本作は角川春樹による監督作品第1作である。本来角川はプロデューサーであり、監督は別に計画されていたが人選が難航、結果的に角川が自ら演出することとなった。


演出経験を持たない角川は、脚本の丸山昇一と相談し、極力台詞を削ることで映像の持つ迫力を前面に出す演出を心がけた。これについては当時、最低限のものだけを残しギリギリまで削り込む俳句の技法を応用した、との発言を残している。


また、物語は原作小説とはまったく異なるものである。脚本の丸山は当時のインタビューで、2時間弱の映画の中では原作の一部分しか描けず、また終戦後から始まる原作では当時の時代背景から描かねばならないことなどから、原作のストーリーから離れて現代を舞台にすることに当初から決めたという。丸山は原作の中の「物語」ではなく、「キャラクターの生きざま」を描こうとしたといい、「北野晶夫ライブ」という表現を用いている。


制作にあたりヤマハ発動機の全面的な協力が得られたことから、ヤマハの関連会社が経営するスポーツランドSUGOで、TZ500や当時のWGP主力マシンであったYZR500を使った模擬レースを開催するなど、現代のロードレースシーンを描くことに成功している。


映画の終盤で草刈正雄演ずる北野晶夫が大群衆に囲まれるシーンには、〔角川春樹を陣中見舞いに来た〕薬師丸ひろ子の歌を聞きに来たファンをエキストラに使用した[2][3]



物語


全日本ロードレース選手権、国際A級500ccクラスは、ヤマハのワークスライダー大木圭史とプライベートの北野晶夫の熾烈な争いが展開され、第8戦までで2人は同点に並んでいた。ワークスチームはその組織力で、最終戦に向けて調整を進めていく。


一方、北野はその天性の美貌を活かし、上流階級の女性をパトロンとすることで、レース参加にかかる莫大な費用を捻出していた。


いよいよ最終の第9戦、様々な人々の思惑が交錯する中で、菅生サーキットでの熱い戦いが始まる。



出演



  • 北野晶夫:草刈正雄

  • クリスティーン・アダムス:レベッカ・ホールデン(英語版)

  • 斎藤京子:木の実ナナ

  • 緒方あずさ:浅野温子

  • 緒方宗行:奥田英二

  • 緒方和巳:磯崎洋介

  • 大木圭史:勝野洋

  • 鹿島健:貞永敏

  • 雨宮貴司:林ゆたか

  • 御木本菜穂子:朝加真由美

  • 亀谷鉄也:草薙幸二郎

  • 畑田:中田博久

  • 島崎:清水昭博

  • テディ片岡:伊武雅刀

  • 清水:望月太郎

  • 大橋:辻萬長

  • 河井和子:中島ゆたか

  • ピアニスト:世良譲

  • ウィリアムス:ジョセフ・グレース


  • 黒部進、津田ゆかり、団時朗、菅田俊、山下伸二、内田勝康 ほか

  • バイクスタント:平忠彦、木下恵司、上野真一、浅見貞夫、毛利良一、江崎正、Hiro T.A Sheeneなど



スタッフ



  • 製作・監督:角川春樹

  • 原作:大藪春彦

  • 脚本:丸山昇一

  • 撮影:仙元誠三

  • 美術:今村力

  • 照明:渡辺三雄

  • 録音:瀬川徹夫

  • 編集:西東清明

  • 助監督:松永好訓

  • 記録:小山三樹子

  • 製作担当:元持昌之

  • 音楽監督:甲斐正人

  • 音楽プロデューサー:高桑忠男

  • 音響効果:大橋鉄矢、帆苅幸雄

  • ヴィジュアルアドバイザー:四方義朗

  • レースシーン監修:金谷秀夫

  • カーアドバイザー:三上祥一

  • カースタント:武士レーシング

  • MA:アオイスタジオ

  • 現像:東映化学

  • プロデューサー:橋本新一、和田康作



主題歌


発売元は東芝EMI(現・ユニバーサル ミュージック合同会社)。


オープニングテーマ

  • 『汚れた英雄』(原題:Riding High)
    • 作詞:Tony Allen / 作曲:小田裕一郎 / 編曲:Peter Bernstein / 歌:ローズマリー・バトラー


挿入歌

  • 『THE LAST HERO~ラスト・ヒーロー』
    • 作詞:Tony Allen / 作曲:小田裕一郎 / 編曲:Peter Bernstein / 歌:ローズマリー・バトラー



同時上映


  • 『伊賀忍法帖』


主人公のモデル


小説『汚れた英雄』の主人公・北野晶夫のモデルとなった人物として、当時主にヤマハに所属していた、WGPライダーの伊藤史朗の名が挙げられることがある。小説には伊藤自身も登場しており、浅間高原レースやWGP等で晶夫と伊藤が競い合うシーンも多数書かれている。また姓が同じであり、浅間から世界GPに進出した経歴を持ち、天才的ライダーと評されることから、北野元もモデルと言われることがある。


ただし、作者の大藪自身はあとがきで「北野晶夫にはモデルはありません」とモデルの存在を否定している。大藪によれば、晶夫のレース成績の面ではゲイリー・ホッキング、マイク・ヘイルウッド、タルキニオ・プロビーニ、ジャコモ・アゴスチーニを参考にし、華麗なる女性遍歴についてはアリ・ハーン(Prince Aly Khan、アーガー・ハーン3世の息子で1960年に事故死)やポルフィリオ・ルビロサ(同じく事故死)等の経歴を参考にしているという[4]



映画でのスタント


映画で北野晶夫のレースシーンスタントを担当した平忠彦は、当時国際A級500ccクラスにステップアップしたばかりの若手ライダーだったが、長身で風貌も草刈によく似ていたために異例の抜擢となった。その後、平は全日本選手権500ccクラス3連覇を達成、世界GPフル参戦も果たし、資生堂の男性化粧品「TECH21」のイメージキャラクターを長年務めるなど、北野さながらの活躍を見せた。


映画でバイクスタントを演じた当時の平は、ヤマハワークスの大先輩である野口種晴の店(野口モータース)に住み込みの身であり、映画のイメージとは全く違う生活を送っていたと言われる。映画版では北野晶夫が自宅のプールで泳ぐ場面があるが、「平さんも家にプールがあるんですか?」とたびたび聞かれるようになったため、平は当時のインタビューで閉口した旨を述べている。


映画のクライマックスのレースシーンで北野晶夫がウイリーしながらゴールする場面のスタントは、平忠彦ではなく同じヤマハワークスの木下恵司が演じている。2ストロークの500ccマシンはアクセル操作にとても敏感で当時500ccクラスルーキーだった平にはまだウイリー走行を披露するほどの経験がなかったためだと言われている。



参考文献



  • 大久保力『サーキット燦々[さんさん]』三栄書房、2005年2月13日 初版第1刷発行、ISBN 978-4879048783


脚注


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  1. ^ 1983年配給収入10億円以上番組 - 日本映画製作者連盟


  2. ^ 「草刈正雄『出たくてしょうがなかった』」『読売新聞』2016年7月29日付夕刊、第3版、第9面。


  3. ^ “【角川映画40年・動画付き】草刈正雄63歳が明かした「復活の日」撮影秘話 「僕の乗ったヘリがアンデスの山中で墜落したんです…」 (3/5ページ) - 産経ニュース” (2016年8月6日). 2017年3月25日閲覧。 “撮影中、エキストラを集めるために、薬師丸ひろ子さんが歌を歌ってくれたこともありましたね。”


  4. ^ 『汚れた英雄』角川文庫版・第4巻あとがき、pp.423 - 427




関連項目



  • 1982年の映画

  • 1983年の映画



外部リンク



  • 汚れた英雄 : 角川映画


  • 汚れた英雄 - allcinema


  • 汚れた英雄 - KINENOTE


  • 汚れた英雄のチラシ - ぴあ





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