ナビエ–ストークス方程式
この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。 出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(2013年2月) |
ナビエ–ストークス方程式(ナビエ–ストークスほうていしき、英: Navier–Stokes equations)は、流体の運動を記述する2階非線型偏微分方程式であり、流体力学で用いられる。アンリ・ナビエとジョージ・ガブリエル・ストークスによって導かれた[1][2]。NS方程式とも略される。ニュートン力学における運動の第2法則に相当し、運動量の流れの保存則を表す。
目次
1 導出
2 単純化した方程式
2.1 非圧縮性流れ
2.2 粘性率が一定の流れ
2.3 粘性率が一定の非圧縮性流れ
2.3.1 ストークス流れ(クリープ流れ)
2.4 オイラー方程式
2.5 ポテンシャル流れ
2.6 ブシネスク近似
2.7 境界層近似
3 一般解
4 数値シミュレーション
5 性質
5.1 乱流
6 脚注
7 参考文献
8 関連項目
9 外部リンク
導出
流体の質量と運動量の保存則を表す連続の方程式
∂ρ∂t+div(ρv)=0{displaystyle {frac {partial rho }{partial t}}+operatorname {div} (rho {boldsymbol {v}})=0}
∂(ρv)∂t+div(ρvv)=divσ+ρg{displaystyle {frac {partial (rho {boldsymbol {v}})}{partial t}}+operatorname {div} (rho {boldsymbol {v}}{boldsymbol {v}})=operatorname {div} {boldsymbol {sigma }}+rho {boldsymbol {g}}}
から、流れの速度場 v のラグランジュ微分は
DvDt=∂v∂t+(v⋅∇)v=1ρdivσ+g{displaystyle {frac {D{boldsymbol {v}}}{Dt}}={frac {partial {boldsymbol {v}}}{partial t}}+({boldsymbol {v}}cdot nabla ){boldsymbol {v}}={frac {1}{rho }}operatorname {div} {boldsymbol {sigma }}+{boldsymbol {g}}}
と導かれる。ここで ρ は密度場で、σ は応力場、g は流体の質量あたりに作用する外力場(加速度場)である。
ニュートン流体を仮定すれば、応力場が
σ=(−p+χΘ)1+μ(e−23Θ1)=(−p+λΘ)1+μe{displaystyle {boldsymbol {sigma }}=left(-p+chi Theta right)mathbf {1} +mu left({boldsymbol {e}}-{frac {2}{3}},Theta ,mathbf {1} right)=(-p+lambda Theta )mathbf {1} +mu {boldsymbol {e}}}
で与えられる。ここで p は圧力(静圧)で、χ は体積粘性率、μ は剪断粘性率である。e は対称化した速度勾配で、デカルト座標の下で成分表示をすれば
eab=∂va∂xb+∂vb∂xa{displaystyle e_{ab}={frac {partial v_{a}}{partial x_{b}}}+{frac {partial v_{b}}{partial x_{a}}}}
で表され、Θ は速度場の発散
Θ=divv=12tre{displaystyle Theta =operatorname {div} {boldsymbol {v}}={frac {1}{2}}operatorname {tr} {boldsymbol {e}}}
である。
この形の応力場を用いると、速度場のラグランジュ微分が
DvDt=−1ρgradp+μρ△v+λ+μρgradΘ+Θρgrad(λ+μ)+1ρgrad(v⋅gradμ)+1ρrot(v×gradμ)−1ρv△μ+g{displaystyle {begin{aligned}{frac {D{boldsymbol {v}}}{Dt}}=&-{frac {1}{rho }}operatorname {grad} p+{frac {mu }{rho }}triangle {boldsymbol {v}}+{frac {lambda +mu }{rho }}operatorname {grad} Theta +{frac {Theta }{rho }}operatorname {grad} (lambda +mu )\&+{frac {1}{rho }}operatorname {grad} ({boldsymbol {v}}cdot operatorname {grad} mu )+{frac {1}{rho }}operatorname {rot} ({boldsymbol {v}}times operatorname {grad} mu )-{frac {1}{rho }},{boldsymbol {v}}triangle mu +{boldsymbol {g}}\end{aligned}}}
で与えられる。この方程式がナビエ–ストークス方程式である。
速度場のラグランジュ微分の第二項は対流項(移流項)と呼ばれる。対流項はベクトル解析の公式により
(v⋅∇)v=grad(12v2)−v×ω{displaystyle ({boldsymbol {v}}cdot nabla ){boldsymbol {v}}=operatorname {grad} left({frac {1}{2}}{boldsymbol {v}}^{2}right)-{boldsymbol {v}}times {boldsymbol {omega }}}
と変形することができる。ここで ω は速度場の回転
ω=rotv{displaystyle {boldsymbol {omega }}=operatorname {rot} {boldsymbol {v}}}
であり、渦度と呼ばれる。
単純化した方程式
ナビエ–ストークス方程式は複雑過ぎるが故に解を求めることは困難である。このため、いくつかの仮定をして問題を単純化することが多い[3]。しかし単純化された方程式でも解析的な解法は知られておらず、数値的解法が必要であることが多い[注 1][4]。
非圧縮性流れ
非圧縮性流れでは、速度場の発散 Θ がゼロなので、速度場の発散を含む項を落として
- DvDt=−1ρgradp+μρ△v+1ρgrad(v⋅gradμ)+1ρrot(v×gradμ)−1ρv△μ+g{displaystyle {frac {D{boldsymbol {v}}}{Dt}}=-{frac {1}{rho }}operatorname {grad} p+{frac {mu }{rho }}triangle {boldsymbol {v}}+{frac {1}{rho }}operatorname {grad} ({boldsymbol {v}}cdot operatorname {grad} mu )+{frac {1}{rho }}operatorname {rot} ({boldsymbol {v}}times operatorname {grad} mu )-{frac {1}{rho }}{boldsymbol {v}},triangle mu +{boldsymbol {g}}}
となる。
粘性率が一定の流れ
粘性率 μ や χ は温度や圧力の関数であり一定ではないが、多くの場合に粘性率は一定とみなされる[5]。
この場合は粘性率の勾配を含む項を落として
- DvDt=−1ρgradp+μρ△v+λ+μρgradΘ+g{displaystyle {frac {D{boldsymbol {v}}}{Dt}}=-{frac {1}{rho }}operatorname {grad} p+{frac {mu }{rho }}triangle {boldsymbol {v}}+{frac {lambda +mu }{rho }}operatorname {grad} Theta +{boldsymbol {g}}}
となる。また、体積粘性率 χ は小さいので、χ = 0 に選べば
- DvDt=−1ρgradp+ν△v+ν3gradΘ+g{displaystyle {frac {D{boldsymbol {v}}}{Dt}}=-{frac {1}{rho }}operatorname {grad} p+nu triangle {boldsymbol {v}}+{frac {nu }{3}}operatorname {grad} Theta +{boldsymbol {g}}}
となる(ストークスの仮説)。ここで ν = μ/ρ は動粘性率である。
粘性率が一定の非圧縮性流れ
粘性率が一定で非圧縮性の流れでは
- DvDt=∂v∂t+(v⋅∇)v=−1ρgradp+ν△v+g{displaystyle {frac {D{boldsymbol {v}}}{Dt}}={frac {partial {boldsymbol {v}}}{partial t}}+({boldsymbol {v}}cdot nabla ){boldsymbol {v}}=-{frac {1}{rho }}operatorname {grad} p+nu triangle {boldsymbol {v}}+{boldsymbol {g}}}
となる。ここで ν = μ/ρ は動粘性率である。
ストークス流れ(クリープ流れ)
流体の速度が遅かったりスケールが小さいなど、レイノルズ数が小さい場合に、非線型である対流項 (v⋅∇)v{displaystyle ({boldsymbol {v}}cdot nabla ){boldsymbol {v}}} が無視できて
- ∂v∂t=−1ρgradp+ν△v+g{displaystyle {frac {partial {boldsymbol {v}}}{partial t}}=-{frac {1}{rho }}operatorname {grad} p+nu triangle {boldsymbol {v}}+{boldsymbol {g}}}
となる。この式はストークス方程式(Stokes equations)と呼ばれている。
オイラー方程式
粘性のない(χ = μ = 0)流れでは
- DvDt=−1ρgradp+g{displaystyle {frac {D{boldsymbol {v}}}{Dt}}=-{frac {1}{rho }}operatorname {grad} p+{boldsymbol {g}}}
となる。この式はオイラー方程式と呼ばれている。
ポテンシャル流れ
渦度(速度場の回転)がない流れ
- ω=rotv=0{displaystyle {boldsymbol {omega }}=operatorname {rot} {boldsymbol {v}}=mathbf {0} }
の場合には、ベクトル解析の定理により
- v=gradΦ{displaystyle {boldsymbol {v}}=operatorname {grad} Phi }
となる速度ポテンシャル Φ が存在する。
ブシネスク近似
熱輸送を伴う流れにおいて、温度による密度変化が大きくないとして扱う近似法をブシネスク近似という。
境界層近似
流れが主流方向を持ち(逆流、再循環および剥離がない)、幾何的な変形が緩やかなときに行う近似法を境界層近似という。
一般解
しばしば用いられる条件である、非圧縮性流れ (incompressible flow) ρ = const. の場合、ナビエ–ストークス方程式は
- ∂v∂t+(v⋅∇)v=−1ρ∇p+ν∇2v+g{displaystyle {frac {partial {boldsymbol {v}}}{partial t}}+({boldsymbol {v}}cdot nabla ){boldsymbol {v}}=-{frac {1}{rho }}nabla p+nu nabla ^{2}{boldsymbol {v}}+{boldsymbol {g}}}
と簡単化される。ここでν:=μ/ρ{displaystyle ;nu :=mu /rho ;}は動粘性係数である。各項はそれぞれ、
- 左辺 - 第1項:時間[微分]項、第2項:移流項(対流項)
- 右辺 - 第1項:圧力項、第2項:粘性項(拡散項)、第3項:外力項
と呼ばれる。外力項には、状況によって、重力をはじめ浮力・表面張力・電磁気力などが該当する。
上記の、非圧縮性流れに対するナビエ–ストークス方程式は、未知数として圧力p{displaystyle ;p;} と流速v{displaystyle ;{boldsymbol {v}};} を含んでいる。したがって未知数決定に必要な方程式の数が足りない。そこで、質量保存則から導かれる連続の式(非圧縮性流れについては次の形)
- ∇⋅v=divv=0(for incompressible flow){displaystyle nabla cdot {boldsymbol {v}}=mathrm {div} ,{boldsymbol {v}}=0quad {text{(for incompressible flow)}}}
と連立することによって、原理的には解くことが可能である。もし一般解が求まれば、流体の挙動を完全に知る事ができることになるが、未だに一般解は発見されていない。また、解の存在可能性についても明らかとはなっておらず、物理学と数学の両方に跨る重要な課題の一つとなっている(ミレニアム懸賞問題、ナビエ–ストークス方程式の解の存在と滑らかさ参照)。従って、極めて特殊な制約条件の問題を除いて数値解析によって近似的に解を求める。
数値シミュレーション
流体の数値シミュレーション(数値流体力学、CFD)では、このナビエ–ストークス方程式と連続の式、その他必要に応じてエネルギーの式(熱対流)やマクスウェルの方程式(電磁流体力学)、状態方程式などを連立して、数値的に解くことで流体の挙動を予測する。
移流と拡散両方に関係している現象であるので、クーラン数、拡散数の両方を満たすようにシミュレーションを行う必要がある。
性質
乱流
乱流は流体の多くの流れで見られる時間依存のカオス的な振る舞いである。全体としての流体の慣性にそれがしたがうことが一般に信じられている。それゆえ慣性の効果が小さな流れは層流となる傾向がある。移流と粘性の強さの比率はレイノルズ数と呼ばれる無次元量であり、レイノルズ数がある閾値を越えると微小なかく乱が移流項の非線型性により拡大していくことで流れ場は非定常な乱流となる。一方、右辺の粘性率を含む項(粘性項)は乱流の変動を抑制する効果を持つ。正確に理解されていないにもかかわらず、ナビエ‐ストークス方程式が乱流の性質を記述することが信じられている[6]。計算に対して計算時間が有意味に解き得るようになるところのよい計算メッシュによる解のようなこの要求条件の安定した解または直接数値シミュレーションの、乱流の流れについてのナビエ‐ストークス方程式の数値解は極度に困難で、その乱流の流れに含まれている混合長さの尺度の違いに重大に依存する。適当に変換するのに役立たない、層流を解くものを用いて乱流の流れを解く試みは非定常解で典型的な結果を残す。これに反して、乱流モデルを補った、Reynolds平均ナヴィエ‐ストークス方程式(RANS)のような時間平均方程式は乱流の流れをモデル化するときに実用的な数値流体力学(CFD)の応用で用いられる。追加の方程式の種類を加えてRANS方程式を終結されるよう導く、Spalart-Allmaras乱流モデル、k‐ω乱流モデル、k‐ε乱流モデル、並びにSSTモデルを含む幾つかのモデルは、Large eddyシミュレーション(LES)がこれらの方程式を数値的に解くように用いるようにもできる。RANSよりも計算時間と計算機記憶の面で、これらのアプローチは電子計算機で行うには大変コストがかかる。しかしそれは陽的に大きな乱流の尺度を分解するのでより良い結果を生み出す。
脚注
^ 単純化された方程式を上手く選べば、数値計算の負荷を小さくできるため、依然これらの近似方程式は重要である(Ferziger, Perić, 2003)。
参考文献
^ C. L. M. H. Navier, "Mémoire sur les lois du mouvement des fluides," Mémoires Acad. Roy. Sci. Inst. France, 6, pp.389-440 (1823)
^ G. G. Stokes, "On the Theories of the Internal Friction of Fluids in Motion, and of the Equilibrium and Motion of Elastic Solids," Trans. Camb. Phil. Soc., 8, pp.287-319(1845)original paper
^ 寺沢寛一編 『自然科学者のための数学概論 応用編』 岩波書店、1960年、640頁。ISBN 4-00-005481-3。
^ Joel H. Ferziger; Milovan Perić; 小林敏雄、谷口伸行、坪倉誠訳 『コンピュータによる流体力学』 シュプリンガー・フェアラーク東京、2003年、12–15頁。ISBN 4-431-70842-1。
^ L.D. ランダウ、E.M. リフシッツ 『流体力学』 竹内均 訳、東京図書、1970年。ISBN 4-489-01166-0。
^ R. G. Lerner; G. L. Trigg (1991). Encyclopaedia of Physics (2nd ed.). VHC publishers. ISBN 0-89573-752-3.
関連項目
- ナビエ–ストークス方程式の解の存在と滑らかさ
- 流体力学
- バーガース方程式
- 移流拡散方程式
外部リンク
- 京都大学 Navier-Stokes方程式の数理とその応用プロジェクト