睡眠







眠る子供




眠る家猫


睡眠(すいみん、羅: somnus、仏: sommeil、英: sleep)は、眠ること、すなわち、周期的に繰り返す、意識を喪失する生理的な状態のことである[1]ねむりとも言う[1]。体の動きが止まり、外的刺激に対する反応が低下して意識も失われているが、簡単に目覚める状態のことをこう呼んでいる[2]。ヒトは通常は昼間に活動し、夜間に睡眠をとる[3]。動物では夜間に活動し、昼間に睡眠をとるものも多い[3]


ヒトの睡眠中は、急速眼球運動(レム, REM)が生じ、ノンレム睡眠であるステージIからステージIVの4段階と、レム睡眠を、周期90~110分で反復する[4]。睡眠は、心身の休息、身体の細胞レベルでの修復、また記憶の再構成など高次脳機能にも深く関わっているとされる。下垂体前葉は、睡眠中に2時間から3時間の間隔で成長ホルモンを分泌する。放出間隔は睡眠によって変化しないが、放出量は多くなる。したがって、子供の成長や創傷治癒、肌の新陳代謝は睡眠時に特に促進される。また、睡眠不足は身体にとってストレスである。




目次






  • 1 睡眠


  • 2 ヒトの睡眠


    • 2.1 睡眠のタイプ


    • 2.2 生涯における睡眠の変化


    • 2.3 環境からの影響


    • 2.4 睡眠と生体内物質


    • 2.5 推奨時間


      • 2.5.1 睡眠不足




    • 2.6 熟睡


      • 2.6.1 熟睡のポイント




    • 2.7 短眠について


    • 2.8 文化差、地域差


      • 2.8.1 世界


      • 2.8.2 日本




    • 2.9 昼寝


      • 2.9.1 昼寝におけるその他の研究報告


      • 2.9.2 昼寝の方法






  • 3 動物の睡眠


  • 4 生理学


    • 4.1 睡眠不足時のマーカー


    • 4.2 睡眠障害のマーカー




  • 5 文化


    • 5.1 信仰


    • 5.2 文学


    • 5.3 睡眠にまつわる表現




  • 6 脚注


  • 7 関連項目


  • 8 外部リンク





睡眠


睡眠中は刺激に対する反応がほとんどなくなり、移動や外界の注視などの様々な活動も低下する。一般的には、閉眼し意味のある精神活動は停止した状態となるが、適切な刺激によって容易に覚醒する。このため睡眠と意識障害とはまったく異なるものである。またヒトをはじめとする大脳の発達したいくつかの動物では、睡眠中に夢と呼ばれるある種の幻覚を体験することがある。


短期的には睡眠は栄養の摂取よりも重要である。ネズミの実験では、完全に睡眠を遮断した場合、約1、2週間で死亡するが、これは食物を与えなかった場合よりも短い。極端な衰弱と体温調節の不良と脳では視床の損傷が生じている。ヒトの場合でも、断眠を続けると思考能力が落ち、妄想や幻覚が出て、相当期間、強制的に、眠らない状態でいさせると恐らく死んでしまうと言われている[5][6]



ヒトの睡眠



睡眠のタイプ




ヒプノグラム(Hypnogramm)の一例




ヒプノグラムの一例。フランス語で表記。赤い部分はSommeil paradoxal(逆説睡眠)。破線で「Micro-réveil」とあるのは短時間の覚醒のこと。


20世紀になり、ヒトの睡眠は、脳波と眼球運動のパターンで分類できることが知られるようになった。急速眼球運動 (Rapid Eye Movement) を伴う睡眠をレム睡眠 (Rapid eye movement sleep、REM sleep)、ステージI - IVのように急速眼球運動を伴わない睡眠をまとめてノンレム睡眠 (Non-rapid eye movement sleep、Non-REM sleep)と呼ぶ[4]



ステージI(N1)

傾眠状態。脳波上、覚醒時にみられたα波が減少し、低振幅の電位がみられる。

ステージII(N2)

脳波上、睡眠紡錘 (sleep spindle) がみられる。

ステージIII(N3)

低周波のδ波が増える(20% - 50%)。

ステージIV(N4)

δ波が50%以上。


レム睡眠(REM)


  • 急速眼球運動 (Rapid Eye Movement) の見られるレム睡眠の脳波は、比較的早いθ波が主体となる。この期間に覚醒した場合、夢の内容を覚えていることが多い。レム睡眠中の脳活動は覚醒時と似ており、エネルギー消費率も覚醒時とほぼ同等である。急速眼球運動だけが起こるのは、目筋以外を制御する運動ニューロンの働きが抑制されているためである。全睡眠の20-25%を占める[4]



成人はステージI〜REMの間を睡眠中反復し、周期は90-110分程度である[4]


入眠やステージI - IVとレム睡眠間の移行を司る特別なニューロン群が存在する。入眠時には前脳基部(腹外側視索前野)に存在する入眠ニューロンが活性化する。レム睡眠移行時には脳幹に位置するコリン作動性のレム入眠ニューロンが活動する。覚醒状態では脳内の各ニューロンは独立して活動しているが、ステージI - IVでは隣接するニューロンが低周波で同期して活動する。



生涯における睡眠の変化


新生児では断続的に、つまり細かく中断をはさむかたちで1日あたり16時間の睡眠をとり、2歳児で9〜12時間になり、成人は(健康な人では)一晩で6〜9時間の睡眠を必要とする[3]。パターンの推移としては、乳幼児期に短時間の睡眠を多数回とるというパターンで、成人になるにつれ一度にまとまった睡眠パターンへと推移していく。


高齢になると、昼間に何度も居眠りし夜間は数時間しか眠らないというパターンになる[3]。睡眠の深さも浅くなり、ノンレム睡眠が完全に消失していることもある[4]



環境からの影響



人間が加齢とともに早寝早起きの就寝スタイルに移行するのは、概日リズムの位相の前進による影響という説がある[7]。しかし、生物時計の研究では、生物時計を司る神経細胞は加齢とともに減少傾向にあるものの、生物時計の概日周期は加齢による影響はほとんど見られないという[7]。竹村尊生は人間の就眠慣習が前進する理由として、本来、睡眠の概日リズムと深部体温の概日リズムには一定の相関があるが、昼夜変化や時刻といったフリーラン・リズムに従う生活によって生理的相関が失われ、加齢によって位相が前進しやすい深部体温の概日リズムに従って就眠するようになる、と述べている[7]



睡眠と生体内物質


覚醒を維持する神経伝達物質には、ノルアドレナリン、セロトニン、ヒスタミン、アセチルコリン、オレキシンなどがあるが、睡眠中はこれらの神経伝達物質を産生する神経細胞が抑制されている。その抑制には腹背側視索前野に存在するGABA作動精神系が関与しているとされる[要出典]。アセチルコリン作動性神経の一部はレム睡眠の生成にも関与している。


カルシウムイオンが細胞内に取り込まれることで脳が眠りにつくという[8]


2018年6月13日、筑波大学の柳沢正史教授らのチームの研究により、マウスの実験で脳内の80種類のタンパク質の働きが活性化することで眠気が誘発されることが発見されたとネイチャー電子版に発表された。同チームはタンパク質が睡眠を促すことで神経を休息させ、機能の回復につながるという見方を示し、睡眠障害の治療法開発につながる可能性を指摘した。[9][10]



推奨時間










































全米睡眠財団による推奨睡眠時間
年齢
必要時間
新生児 (0–3 ヶ月)
14 〜 17 時間[11]
乳児 (4–11 ヶ月)
12 〜 15 時間[11]
幼児 (1–2 歳)
11 〜 14 時間[11]
就学前 (3–5 歳)
10 〜 13 時間[11]
学童 (6–13 歳)
9 〜 11 時間[11]
青年 (14–17 歳)
8 〜 10 時間[11][12]
若年者 (18 - 25 歳)、中年者 (26 - 64 歳)
7 〜 9 時間[11]
老人 (65 歳以上)
7 〜 8 時間[11][13]

ヒトに必要な睡眠量には個体差があり、7 - 8時間の場合が多い。カリフォルニア大学サンディエゴ校のDaniel KripkeらのSleep medicine掲載論文[14]や名古屋大学医学部大学院玉腰暁子の研究[15][16]によれば、1日の睡眠時間が7時間の人は他の人たちに比べて死亡リスクが低い。ただし、睡眠時間が短い人や長い人が睡眠時間を7時間にすれば死亡しにくくなるのかどうかはわかっていない。


児童は成長のために一日より多くの睡眠時間を必要とする。新生児は一日18時間以上必要だが、成長に従って減少していく[17]。2015年初頭に、全米睡眠財団(National Sleep Foundation)は2年間の研究成果を以下に公表した[11]


1900年頃まで、人々の本来の睡眠サイクルは、太陽が沈んでから4-5時間の睡眠をとり、日中に2度目の睡眠をとるのが一般的なリズムであった。20世紀になって作為的に行われるようになった制度、八時間労働制の悪影響で不眠症が起きている面がある、と指摘している研究がある[18]



睡眠不足





睡眠不足の健康への影響



睡眠が不足すると、生命にとって大切ないわゆる「免疫力」「自然治癒力」などに悪影響があり、成長ホルモンの分泌にも悪影響があり乳幼児・幼児・青少年では身体の成長にも悪影響があり(身長が伸びにくくなる)。睡眠不足では胃や腸の調子が悪くなる人も多い。顔がむくみ、血色が悪くなり、人によっては土気色(つちけいろ)つまり死人のような顔色になり、皮膚の状態は目に見えて悪くなる。また睡眠不足は肥満を招きがちである。精神的には気分に悪影響があり鬱(あるいは躁状態や鬱状態の不安定な変化)になりがちで不機嫌で人間関係が悪くなり、また脳の知的面での基本機能である記憶力、集中力などに悪影響があり、結果として学生では学業(勉強)の効果に、成人では仕事の質に深刻な悪影響を及ぼす。睡眠不足だと仕事のミスが増え、肉体労働などをしている人では深刻な負傷を負ったり死亡事故に遭う確率(労働災害発生率)が増してしまうことが各種労働統計によっても明らかにされている。



  • 睡眠時間が短い人は、血中の食欲を抑えるレプチンが少なく食欲を増進させるグレリンが多い。その結果、睡眠時間が短くなるほど食欲が亢進しやすく肥満になるリスクが高くなる[19]

  • 慢性的な寝不足状態にある人は高血圧、糖尿病、脂質異常症、心筋梗塞、狭心症などの冠動脈疾患や脳血管障害といった生活習慣病に罹りやすい[20]。また免疫力を低下させ、インフルエンザなどの感染症や癌の誘因や増悪因子になる[21]

  • 睡眠不足は子どもの身体能力や学業成績に多大な影響を及ぼす(脳は睡眠中に、昼間体感・学習した情報から余計な情報を省いて効率よく整理し、長期的な感覚や記憶として処理される)。子供たちの学習量は増える一方なのに、学んだことを処理するための睡眠量は最近どんどん削られている[22]

  • 夜更かしした翌日に長時間睡眠をとって寝不足を解消することはできるが、逆に前日に長時間睡眠し、翌日に夜更かしするなどといった「寝貯め」はできないとされている。また、前者のような「まとめ寝」も、寝不足は解消できるが、長時間睡眠により睡眠の質が下がったり、睡眠バランスや体のリズムを崩すためよくないとされる。



熟睡


深い眠りに入っている状態を「熟睡」という。その状態は「ぐっすりと~」と表現される[23]。医学的にはノンレム睡眠のステージIII・IVの徐波睡眠を指し「深睡眠」とも呼ばれる[24]。脳機能の回復と記憶の再構成にはこの状態に入ることが重要とされている。


若い成人の場合、男性に比べて女性の方がステージIII・IVの徐波睡眠の量が有意に多いが、レム睡眠の量は総睡眠時間の30パーセントと男女とも差は無い[7]。中高年になると男女ともに熟睡量は減少し、とくに男性は睡眠中の覚醒反応が増え、ステージIV徐波睡眠はほぼゼロとなる。20歳代を除けば総睡眠時間は男性の方が長い傾向があり、高齢になると男性のほうが昼寝する人の割合が高いことから、男性に比べて女性の方が効率良く質の高い睡眠が取れていると言える[7]



熟睡のポイント



  • 睡眠サイクル(体内時計)を固定する。特に起床時刻を一定にすることが重要。

  • 毎日起きる時刻に本物の日光(太陽の光)を浴びることで、次回に眠りに入るタイミングがセットされるように体内時計ができている(強烈な日光を浴びてからおよそ14時間後に次第に眠くなってゆくような仕組みが体内にある、ということが近年の研究で明らかにされてきている)ので、起床時に太陽の光を浴びることをあなどらず、面倒でも必ずしっかりと日光を浴びる。


  • 朝食をとることも体内時計に影響を及ぼすので、日光を浴びた後1時間以内に朝食をとる。

  • 寝る数時間前に運動や入浴をして体温を上げることで、眠りに就くときに体温が急激に低下する。これを利用すれば眠りに入りやすくなる。

  • 寝る予定の30分〜2時間前から照明をしっかり暗くすることでメラトニンの分泌を促す。

  • 毎日の食事で炭水化物とたんぱく質(トリプトファン)をしっかり摂取する。トリプトファン摂取→セロトニン合成&分泌→メラトニンができる。

  • 入眠ニューロンは体温の上昇によって活動が亢進するため、入眠前に入浴をすることや入眠時に寝室を暖かくすることは有効である。また睡眠にはメラトニンが関わっており、メラトニンを脳にある松果体で生成するには起床中に2500ルクス以上の光を浴びる必要がある[25]

  • 寝室を暗くする[26]



短眠について



  • 稀にではあるが、遺伝的に睡眠時間が短い人間(ショートスリーパー)は存在する。

  • 「まったく睡眠を取らずに健康に生活している」と主張する者がいるのは事実である[27][28]。一例を挙げると、アメリカ・ニュージャージー州で暮らしていたアル・ハーピン(1862? - 1947)という人物は「生涯で一度も眠ったことのない男」として『ニューヨークタイムズ』誌が少なくとも2度にわたって記事で紹介しており[29][30]、比較的よく知られている。



文化差、地域差







































































経済協力開発機構(OECD)各国の
1日あたり平均睡眠時間 (2006年)[31]
時間
時間

日本の旗 日本
7時間50分

 ノルウェー
8時間03分

 スウェーデン
8時間06分

ドイツの旗 ドイツ
8時間12分

イタリアの旗 イタリア
8時間18分

メキシコの旗 メキシコ
8時間21分

OECD logo.svg OECD18カ国
8時間22分

イギリスの旗 イギリス
8時間23分

ベルギーの旗 ベルギー
8時間25分

 フィンランド
8時間27分

ポーランドの旗 ポーランド
8時間28分

カナダの旗 カナダ
8時間29分

オーストラリアの旗 オーストラリア
8時間32分

トルコの旗 トルコ
8時間32分

 ニュージーランド
8時間33分

スペインの旗 スペイン
8時間34分

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
8時間38分

フランスの旗 フランス
8時間50分


世界


スペインを初めとする地中海地方などに於いては昼食の後に睡眠を含む一休みをする「午睡(シエスタ)」の風習がある。健康増進の効果がある。


2000年代に入って米国などでも、Lifehack(ハッカー文化の一端にある仕事術)の延長で、短時間の昼寝が注目されている。昼寝をすることで、大切な頭脳の働きが良好になるとされており、頭脳労働に従事する人々(いわゆるホワイトカラー)の間ではそれが重視されている。その一方で、労働時間の増加により地中海地方の国々に於いてもシエスタを行わない企業が増加しつつある。





テヘランのベンチで眠る男性たち



日本




列車内で着座したまま居眠りをする少女


電車やバスで通勤・通学をする者も多く、またこれらの交通機関においての治安も非常に良いため、その中で睡眠する者もいる。


肉体労働の多い職種(いわゆるブルーカラー)では、昼休み時間の昼食の後、午後の作業再開までの間、15分〜30分程度の短い睡眠をとる場合がある。短時間ではあるが、午前中に溜まった疲労から回復させ、注意力も回復する、という重要な役割がある。昼寝をとるのととらないのでは、午後の事故発生率が変わる。肉体労働の現場では眠気を催すことは生命の危険に直結する。現場監督などは、現場で事故が起きないように注意を払う役割・任務があるので、作業員の仮眠を奨励していることが多く、できるだけそっとしておいたり、睡眠できる環境を確保するのに協力することが一般的である。


座ったままで眠ることは「居眠り」と呼ばれる。授業中、仕事中、運転中など、眠ってはいけない場所・場合で無意識のうちに居眠りをしてしまう例もある。特に授業中や仕事中の居眠りはやる気がないとみなされる場合があり、前者の場合内申点に影響したり、後者の場合は解雇の対象ともなりうる。


運転中に眠るという行為は「居眠り運転」となり事故に繋がる。長距離輸送を行っているバスやトラックの運転手はいかにして眠らないように、眠気が出ないように運転をするか、さまざまな工夫をしなければならない。とりわけ高速道路などの運転は単調になりがちで居眠り運転が起きやすい。法律で連続的に運転できる時間に制限が定められており、長距離輸送では2名交代制にしていることも多い。運転席の後部に小さな睡眠用のベッドがしつらえてあって、身体を伸ばして、遮光カーテンで光をさえぎり睡眠がとりやすくなっている構造になっているトラックも多い。バスの運転手もトラック同様に様々な規制があり、2名が1チームを組み、片方のドライバーが運転している間、もう片方のドライバーはバスの下にある睡眠用のスペースで睡眠をとれるようになっていることが多い。近年では、ドライバーが過酷な労働体制下で無理なローテーションで長時間の運転を連続的に行い居眠り運転をしてしまったり、また睡眠障害のドライバーが深刻な事故を起こし、社会問題にもなった。


風呂に入浴中の居眠りは溺死の危険性がある。


2001年2月に発表されたNHKの調査によると、「日本人の平均睡眠時間は平日で7時間26分、土曜日で7時間41分、日曜日で8時間13分」であった[32]。2014年の調査では平均睡眠5時間44分と、世界最悪の水準まで短くなっている[33]


無意識や文化的背景に影響される就寝行動を就寝形態という観点で文化人類学、教育社会学的に比較検証する研究もある。


加齢していくとその度ごとに「早寝早起きの習慣」が身につくと一般に考えられている。しかし、本当に習慣であるのか、高齢者に多く見られる「睡眠相前進症候群」の症状であるのかは、容易には判断できない。


また、宗教的影響として仏教思想と結び付けて、頭を北に、足を南に配置する形で寝ることは「北枕」と呼ばれ、忌避されている。



昼寝



日本でも昼寝の効用について研究が行われている。昼寝を行うことにより、事故の予防・仕事の効率アップ・自己評価のアップなどが期待されるため、職場・学校などで昼寝が最近、奨励されるようになった。また、昼寝により、脳が活発になるため、独創的なアイデアが浮かびやすい環境になるという。



昼寝におけるその他の研究報告



  • 30分以下の昼寝を習慣的にとる人は、それ以外の人に比べてアルツハイマー病にかかるリスクが低下するという報告がある[34]

  • 高齢者は昼寝後と前では最大血圧で平均8.6mmHg、最小血圧で平均15.6mmHgも血圧が降下したという報告もあり、生活習慣病予防も期待される[35]。(広島大学)

  • 40分以上の昼寝は、メタボリックシンドロームのリスクを増加させる[36]



昼寝の方法



  • 目安としては午後1〜3時ごろが良いとされる(遅くとると、夜、眠れなくなることがあるため)。

  • 15〜30分程度が良いとされる。1時間とると、逆に疲労になることがある(30分以上睡眠をとると、多くの人が深睡眠に入り寝起きが悪くなるため)。



動物の睡眠




眠るライオン





睡眠中のイヌ






眠るニホンザル


必要な睡眠時間は種ごとの体の大きさに依存する。例えば小型の齧歯類では15時間 - 18時間、ネコでは12 - 13時間、イヌでは10時間、ゾウでは3 - 4時間、キリンではわずか20分 - 1時間である。これは大型動物ほど代謝率が低く、脳細胞の傷害を修復する必要が少なくなるためとも考えられている[37][38]。また小型の動物は他の動物に捕食者として狙われやすいので、無防備になる睡眠時間は短い傾向がある。体躯が同程度であれば、草食動物は睡眠時間は短く、肉食動物は長い傾向にある。草食動物は摂取する食料に不自由しない反面、食料は低カロリーであり、繊維質も多く、長時間食べる事、消化する事を余儀なくされるので、睡眠時間は短い。一方で肉食動物は、食物を得る機会は乏しく、一方で食物は高カロリーであるため、一度食物を得た後はしばらく食物を摂る必要が無い。そのため何もしない時間が多く、その間は睡眠によって消費カロリーを抑えていると考えられる。


すべての陸生哺乳類にレム睡眠が見られるものの、レム睡眠時間の種差は体の大きさとは無関係である。例えば、カモノハシは9時間の睡眠時間のうち、レム睡眠が8時間を占める。イルカはレム睡眠をほとんど必要としない。


脊椎動物以外の動物、例えば節足動物にも睡眠に類似した状態がある。神経伝達物質の時間変化を観察すると、レム睡眠と似た状態になっているらしい[39]


ヒトと異なり、生物の中には、長い期間覚醒しない種もある。これは冬眠と呼ばれる。冬眠する生物の例として、クマ、リス、カエルなどが挙げられる。


睡眠の際の姿勢も生物によって異なる。魚は単に水中を漂う形で睡眠状態に入る。フラミンゴは片足で立ったまま眠るとされる。またイルカは数秒程度の半球睡眠(大脳半球ずつ交互に眠ること)を繰り返して取るため、眠りながら泳ぎ続けることが可能である。半球睡眠は人間では脳障害などの病気や薬の重篤な副作用以外では脳の構造上、不可能と言われている。


ネコは丸くなって寝ているという印象が多いが、これは身を守ろうとしているか寒い時の状態で、飼い猫などはほぼ確実に攻撃を受けないと確信したリラックス状態や、暑さで体の熱を逃がすために仰向けで寝ることもある。この例は猫だけに限った事例ではなく、犬も当然行い、特に体毛が多く、気候や気温が安定しない場所で生活する動物は行う。



生理学


脳の覚醒は脳内のヒスタミンにより齎されており、脳内のヒスタミンを妨害することで脳は睡眠へと導かれる[40]。脳内のヒスタミンを妨害する物質には、ATP代謝物のアデノシンがある[40]。抗ヒスタミン剤の成分の一部にも脳内のヒスタミンの妨害を行い、眠気を誘発するものがある[40]。また、プロスタグランジンD2(英語版)は、脳内のアデノシンを増やし、眠気を誘発する[40]


睡眠誘発物質のアデノシンは、アデノシンデアミナーゼにより代謝されることでイノシンとなるが、脳脊髄中のイノシンの量は不眠バイオマーカーの一つとされる[41]。またアデノシンは、アデノシンキナーゼによりアデノシン三リン酸 (ATP)からリン酸を一つ貰い受け、アデニル酸 (アデノシン一リン酸)へと戻るが、ATPの生成を補助する物質コエンザイムQ10の摂取は俗に悪夢を増やすと言われている。


また、ショートスリーパーはDEC2遺伝子の変異が関係するとされる[42]が、DEC2遺伝子はATP消費による脂質形成 (同化)を抑制するとされる[43]。DEC2は、低酸素状態でも発現するとされる[43]


ビタミンB群も睡眠に影響を与えるとされる。豪アデレード大学の実験によれば、ビタミンB6の摂取は夢の覚えている量を増やす一方、ビタミンB6を含むビタミンB複合体の摂取は夢の覚えている量を増やさない上に睡眠の質を下げる効果があるという結果が出ている[44][45]


その他、脳内のシナプス蛋白質のリン酸化の進行が眠気に関係するという説が存在する[46]



睡眠不足時のマーカー




  • オレイン酸アミド が脳脊髄液中に増加。この物質は、東京大学大学院/キリン/小岩井乳業の共同研究によれば、認知症の原因となるアミロイドβの沈着を防止するとされる[47]


  • ジアシルグリセロール 36:3 が血清中で減少[48]


  • シュウ酸 - ペンシルベニア大学の研究によれば、睡眠不足になると減少するとされる。


また、ペンシルベニア大学の研究によれば、睡眠不足になると脂質代謝の変化も起こるとされる。



睡眠障害のマーカー



  • イノシン - 脳脊髄液中で高値[41]


文化



信仰


古代中国で、死屍を枕に眠る巫医の夢の中で死に至った原因の啓示を仰いでいた[49]。古代エジプトでは、眠りの寺院(英語版)と呼ばれる医神イムホテプの神殿があり、病気の治療、催眠や夢占いなどの儀式をおこなった。これらの寺院は中東・古代ギリシアにも存在した。イムホテプと同一視された医神アスクレーピオスの神殿アスクレペイオンなどにおいては仮眠室が作られ、病気の転帰を願い神官が積極的に仮眠をとっていた[49][50]。この儀式はインキュベーション (儀式)(英語版)と呼ばれている。



文学


眠ったら、何年もたってしまったという作品は『リップ・ヴァン・ウィンクル』、『エピメニデス』、7人の眠り男(英語版)、『眠れる森の美女』など数多い。


ちなみに、『三年寝太郎』は寝てたのではなく、思索にふけっていたので上記のパターンとは異なる。


眠りと死を絡める神話や文学が多く見られる。



睡眠にまつわる表現


しばしば死は睡眠に例えられる。死を睡眠になぞらえた例には次のようなものがある。これは、亡くなった状態を遺族や悲しむ人々や、ご遺体本人に気を使う意味で使われる。



  • 永眠

  • the eternal sleep


また、「寝る」、「眠る」という語を含むことわざとして次のようなものがある。主に「辛抱強い」や「気長」、「寝ているように大人しい」状態を意味する。



  • 果報は寝て待て

  • 寝る間も惜しんで

  • 寝る子は育つ(科学的・医学的に正しいが、ことわざとして語句通りの意味で用いた場合は誤用[51]

  • 寝ても覚めても

  • 寝た子を起こす

  • 草木も眠る丑三つ時

  • 猫鼠同眠

  • 寝食を忘れる

  • 寝るより楽は無かりけり 浮世の馬鹿が起きて働く



脚注


[ヘルプ]



  1. ^ abデジタル大辞泉


  2. ^ 広辞苑第五版

  3. ^ abcdブリタニカ百科事典「睡眠」

  4. ^ abcde 『ハリソン内科学』 (4版) メディカルサイエンスインターナショナル、2013年3月26日、Chapt.27。ISBN 978-4895927345。 


  5. ^ 2. 人は眠らないとどうなりますか?


  6. ^ 澤田誠 全学教育科目 理系教養 自然環境と人間 第1シリーズ 脳 6話 2010.11.11の講義資料のひとつ

  7. ^ abcde田中冨久子『女の老い・男の老い:性差医学の視点から探る』<NHKブックス> NHK出版 2011年、ISBN 9784140911778 pp.62-65.


  8. ^ マイナビ2016年3月18日2016年4月10日閲覧


  9. ^ “一般社団法人共同通信社 - 眠気の正体は脳内タンパク 筑波大チームが発表(2018/6/14 02:01)”. 2018年6月26日閲覧。


  10. ^ “Sankeibiz - 眠気の“正体”は脳内タンパク 筑波大チームが発表 2018.6.26 05:55”. 2018年6月26日閲覧。

  11. ^ abcdefghiHirshkowitz, Max ; Whiton, Kaitlyn et al. (2015年1月14日). “National Sleep Foundation’s sleep time duration recommendations: methodology and results summary”. Sleep Health: Journal of the National Sleep Foundation (Elsevier Inc). doi:10.1016/j.sleh.2014.12.010. http://www.sleephealthjournal.org/article/S2352-7218(15)00015-7/fulltext 2015年2月4日閲覧。. 


  12. ^ “Backgrounder: Later School Start Times”. National Sleep Foundation (n.d.). 2009年10月2日閲覧。 “Teens are among those least likely to get enough sleep; while they need on average 914 時間 of sleep per night...”


  13. ^ “How Much Sleep Is Enough?”. National Heart, Lung and Blood Institute. 2015年7月25日閲覧。


  14. ^ Daniel F. Kripke; Robert D. Langer; Jeffrey A. Elliott; Melville R. Klauber; Katharine M. Rex (2010年). “Mortality related to actigraphic long and short sleep”. Sleep Medicine 12 (1): 28-33. doi:10.1016/j.sleep.2010.04.016. 


  15. ^ 睡眠時間と死亡との関係  玉腰暁子


  16. ^ 死亡率低い7時間睡眠 日本人11万人の調査結果


  17. ^ “Understanding Sleep: Sleep Needs, Cycles, and Stages”. Helpguide.org (2007年). 2008年1月25日閲覧。


  18. ^ Meyer, Matthew (2012). The slumbering masses : sleep, medicine, and modern American life. Minneapolis: University of Minnesota Press. ISBN 0-8166-7474-4. OCLC 788275263. 


  19. ^ Taheri S, Lin L, Austin D, Young T, Mignot E (2004年12月). “Short sleep duration is associated with reduced leptin, elevated ghrelin, and increased body mass index”. PLoS Med. 1 (3): e62. doi:10.1371/journal.pmed.0010062. PMC 535701. PMID 15602591. http://dx.plos.org/10.1371/journal.pmed.0010062. 


  20. ^ “睡眠と生活習慣病との深い関係”. 2015年11月23日閲覧。


  21. ^ “睡眠不足が引き起こす病気・リスクは何ですか?”. 2015年11月23日閲覧。


  22. ^ ポー・ブロンソン(Bronson,Po)、アシュリー・メリーマン(Merryman,Ashley) 、小松淳子訳、『間違いだらけの子育て―子育ての常識を変える10の最新ルール』 インターシフト社、2011年6月、原題 Nurture Shock、ISBN 978-4-7726-9523-7。


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  34. ^ 昼寝 アルツハイマー病 予防 国立精神・神経センター武蔵病院


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  50. ^ 夢と眠りの博物誌 著者:立木鷹志


  51. ^ この諺が成立したのは栄養失調、病気、寄生虫その他による乳幼児死亡率が高かった時代で、そういった場合、死ぬ可能性の高い乳児は寝ずに泣き続けるケースが多いことから来ているため、この場合の「育つ」とは単なる成長の著しさではなく「死なずに無事生きる」事を指している。




関連項目











  • 寝具

  • 睡眠欲

  • ジャンクスリープ


  • 仮眠

    • パワーナップ

    • シエスタ



  • いびき

  • ショートスリーパー

  • ロングスリーパー

  • 就寝形態

  • co-sleeping


  • 昏睡、植物状態



外部リンク



  • 日本睡眠学会 - 睡眠の基礎知識


  • ラッセル・フォスター: なぜ人は眠るのか?の講演映像。睡眠と健康について語っている。 - TEDカンファレンス、2013年6月、21分46秒。 ウィキデータを編集

  • 睡眠のメカニズム


  • プレスリリース詳細 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター - 『潜在的睡眠不足』の解消が内分泌機能改善につながることを明らかに





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