オートジャイロ
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NACAのオートジャイロ 三舵で制御している初期のもの
シェルバ社製のイギリス空軍のオートジャイロー。基本的な構造は第二次世界大戦が終わるまで変わらなかった
オートジャイロ(autogyro / autogiro)とは、航空機の一種。ジャイロコプター(gyrocopter / girocopter)やジャイロプレーン(gyroplane / giroplane)とも呼ばれる。通称ではジャイロ (giro) と呼ばれることもある。ジャイロの英語表記はgyroであるものの、発明者が造語のgiroで商標登録をすませたため、こういった表記になった。ヘリコプターやフェアリー・ロートダインなどと同様、回転翼機に分類される。
目次
1 構造と特徴
1.1 ジャンプ・テイクオフ
2 操縦方法
3 歴史
3.1 ソビエト連邦
3.2 日本
3.3 韓国
4 登場作品
5 関連項目
6 脚注
構造と特徴
固定翼の代わりに回転翼を装備し、見た目はヘリコプターにも似ている。しかし構造的には異なっている。ヘリコプターは動力によって回転翼を直接回転させるが、オートジャイロの場合回転翼は駆動されていない。この回転翼は、前進する機体に対し、鉛直上向きより後傾した回転軸の回りに自由に回転できるよう取り付けられている。回転翼は、何らかの推進力(飛行時に動力駆動される別のプロペラによる推進力など)で機体が前進して生じる相対的な気流を下前方から受け、受動的に回転する。この回転により揚力が生じるため機体の飛行が可能となる。ヘリコプターでは回転翼の動力駆動による下向き気流が機体全体の揚力を生じているのに対し、オートジャイロでは回転翼の下面側から上面側に気流が流れる事により揚力を生じる。
オートジャイロの回転翼の付け根には蝶番がついており、回転中の揚力の急な変化や揚力のムラを防ぐことにより、安定した飛行が実現されている。発明されてすぐのころは補助翼、方向舵、昇降舵の三舵で制御されていた。しかし現在は翼の回転面を左右に傾けることによって旋回をし、回転面の迎え角を増減させることによって上昇と降下を行い、方向舵によって方向を変更するという独特の制御方法を用いる機体が多い。
回転翼は動力駆動されていないため、ヘリコプターのようなホバリングや無風状態での垂直離陸は原理上不可能である。それでも固定翼機に比べれば短い距離での離着陸可能である。なお、着陸については、ヘリコプターのオートローテーションと同じ方法で、滑走距離ゼロの実質的な垂直着陸が可能である。
ジャンプ・テイクオフ
機体によっては、回転翼がクラッチでON・OFF可能な機構で動力駆動可能なものもある。このような機体で回転翼のピッチを制御できるものでは、実質的に垂直離陸を行いうるものもある。つまり、まず回転翼のピッチをゼロにした状態(回転翼に揚力が発生しない状態)でクラッチを繋ぎ回転翼を動力駆動しておく。この際、地上にあるため駆動の回転反力は問題とならない。回転数が充分に上がった時点でクラッチを切って回転翼のピッチをプラスとすれば、回転翼に急激に揚力が発生し、機体を空中に持ち上げることができる。機体が持ち上がったと同時にピッチを再調整し前進用プロペラの回転数を上げれば、そのまま水平飛行に移行することができる。このオートジャイロ特有の離陸方式は跳躍離陸(ジャンプ・テイクオフ)と呼ばれ、現代のオートジャイロの多くが備えている機能である。また、萱場工業の「ヘリプレーン1型」のように回転翼の先端にラムジェット等をつけ垂直離着陸できる商用機も計画された。
操縦方法
操縦の感覚はヘリコプターよりも飛行機に似ているといわれるが、方式は上述のように根本的に違っている。飛行機のようなアクロバット飛行ができない代わりに、飛行姿勢がそれほど変化せず、安定して飛行できる。また、回転翼の回転面すべてで制御しているので、三舵で制御する飛行機より強力な旋回が可能であるが、ヨーイングは方向舵で行っているのでヘリコプターのような、空中で停止しながらの方向転換(ホバリングターン)はできない。
歴史
古くは軍用や商業用にも使用されていたが現在ではヘリコプターに取って代わられてしまい、オートジャイロはスポーツ用のものがほとんどとなっている。
最初のオートジャイロはスペイン人のフアン・デ・ラ・シエルバが開発し、1923年1月17日に初飛行を成功させた。シエルバはその後、イギリスでシェルバ社を設立し、多くの成功機を生み出した。日本でも朝日新聞社がシエルバ社のオートジャイロを購入し、「空中新道中膝栗毛」というコーナーを連載した。イギリスのアヴロ社やアメリカ合衆国のケレット社などで開発が続けられたが、市場は収束の方向に向かい、ヘリコプターなどの生産に移った。
ソビエト連邦
ソ連では1920年代末からオートジャイロ実用化の研究が進められ、シエルバの設計したアヴロ製のオートジャイロをもとにKASKR-1やKASKR-2が作られた。これらは成功作とはいえず研究機の域を出なかったが、その後独自の発展型A-7が量産化された。これらの機体は、のちのソ連におけるヘリコプターの発展の基礎を築いた。
日本
日本では、ジェット機時代の到来を予測し無尾翼ジェット機の試作に関心を寄せていた萱場資郎が、ジェット機研究を踏まえて手始めに萱場式オートジャイロの開発にとりかかる。太平洋戦争へ突入する1942年12月にはKYBの前身である萱場製作所の仙台製造所にてオートジャイロの生産をはじめる[1]。 太平洋戦争中には、旧日本陸軍の依頼でカ号観測機と呼ばれるオートジャイロを当時の萱場製作所が製造し、陸軍の弾着観測や、海軍の対潜哨戒に充てていたことが知られている。
韓国
韓国などでは、高層ビルが林立する都市における防災活動のために、ヘリコプターより小型で値段も安いオートジャイロを使用する消防組織があるが、ホバリングができず、消火剤などの積載量がヘリコプターよりも劣るという欠点がある。
登場作品

「007は二度死ぬ」の「リトル・ネリー」
- 『ルパン三世 カリオストロの城』
宮崎駿監督のアニメ映画。架空のオートジャイロが登場しているが、回転翼の先端に噴射式エンジンが付いていて垂直離着陸能力があるなど(「フォッケウルフ トリープフリューゲル」の項も参照)、ヘリコプターに近い機体である。- 『女皇の帝国』/『女皇の聖戦』
- ヒロイン・桃園宮那子が、オートジャイロ〈海兎〉を操縦して活躍する。
- 『K-20 怪人二十面相・伝』
佐藤嗣麻子監督の映画。冒頭部で「警務局」のオートジャイロが上空から「帝都」を俯瞰し、劇中で羽柴葉子(松たか子)が操縦する小型オートジャイロが怪人二十面相を助ける。- 『007は二度死ぬ』
ジェームズ・ボンドが小型オートジャイロ「リトル・ネリー」を操縦して、日本の上空で戦う。- 『マッドマックス2』
- 小型オートジャイロを操縦する「ジャイロキャプテン」が活躍する。
- 『ロケッティア』
- ラストで、炎上する飛行船の上に孤立してしまったクリフたちを救出するために、ピーヴィーとハワード・ヒューズが操縦した。
- 『D-LIVE!!』
皆川亮二の漫画。テロリストが橋に仕掛けた爆弾を解体するために、主人公・斑鳩悟が操縦する。- 『妖精作戦』
笹本祐一のSF小説。第2巻「ハレーション・ゴースト」に登場。星南学園航空部が保有している。- 『パイロットウイングス64』
- メインで使用可能な乗り物の一つに「ジャイロコプター」が存在する。時速約250キロ(特殊な操縦を行えば350キロ以上も可能)まで出せる他、同時に二発までのミサイルを発射することも可能。
- 『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル』
- 終盤、誘拐した人間たちに逃げられたパラダイスキングが操縦し、客船をダイナマイトで襲撃する。
- 『劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ ビクティニと黒き英雄 ゼクロム・白き英雄 レシラム』
- アイントオークの町長・モーモントが操縦する。ギアル・ギギアル・ギギギアルを動力源に用いている。
- 『ポケットモンスター ベストウイッシュ シーズン2』
- 上記の劇場版に登場したものの同型機が、バージルの所属するポケモン救助隊で使用されている。
関連項目
複合ヘリコプター - 垂直上昇用だけでなく、推進用プロペラも併設されたヘリコプター。後部に推進機がある場合、複合オートジャイロ、ジャイロダインとも呼ばれる。
脚注
^ 鶴本勝夫「東北学院理工系教育機関の系譜とその人脈 =押川方義の創立理念= 「東北をして日本のスコットランドたらしめん」が底流に (PDF) 」 、『東北学院資料室』第16号、東北学院、2012年4月1日、 21頁、2012年6月25日閲覧。
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