CH-53 (航空機)






CH-53 シースタリオン




CH-53D

CH-53D






  • 用途:大型輸送ヘリコプター


  • 製造者:シコルスキー・エアクラフト


  • 運用者


    • アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国(海兵隊、海軍、空軍)


    • ドイツの旗 ドイツ(ドイツ陸軍)


    • イスラエルの旗 イスラエル(イスラエル空軍)




  • 初飛行:1964年10月14日


  • 生産数:409機


  • 運用開始:1966年9月


  • 運用状況:現役






CH-53 シースタリオン(CH-53 Sea stallion)は、アメリカ海兵隊の強襲作戦用に開発されたシコルスキー・エアクラフト社製の重量物輸送ヘリコプター(Heavy lift transport helicopter)。愛称のスタリオンは、成長した種馬の意。社内・輸出・民間型などの呼称はS-65


原型は、当時西側諸国最大のヘリコプターとして初飛行し、アメリカ海兵隊への引渡しは1966年より開始されている。以来改良、強化、多用途化が続けられ、アメリカ海軍、アメリカ空軍はもとより、ドイツ、イスラエルなどにも輸出されている。




目次






  • 1 開発


  • 2 発展


  • 3 派生型


    • 3.1 CH-53E スーパースタリオン/MH-53E シードラゴン


    • 3.2 MH-53 ペイブロウ


    • 3.3 そのほかの派生型




  • 4 採用国


  • 5 性能・主要諸元 (CH-53D)


    • 5.1 諸元


    • 5.2 性能




  • 6 登場作品


    • 6.1 映画・テレビドラマ


    • 6.2 アニメ


    • 6.3 ゲーム




  • 7 脚注


  • 8 関連項目





開発


1960年代に入り、アメリカ海兵隊はCH-37の後継となる輸送ヘリコプターの検討を開始した[1]。1961年にアメリカ陸海空3軍は、XC-142垂直離着陸輸送機の開発に乗り出したが、海兵隊は開発期間の長さを見越し、それには加わらなかった[2]。結局、XC-142は実用化に至らなかった。


1962年3月に、海軍は航空メーカー各社に次期重輸送ヘリコプター(Heavy Helicopter Experimental/HH(X))の要求仕様を提示した。これは、8,000ポンド(3.6t)のペイロードを搭載し、150kt(280km/h)の速度で、100nm(190km)の行動半径を有するものとされた。人員輸送のみならず、航空救難、航空機回収をも任務とするなど重物資輸送にも重点が置く機体とされた[2]


海軍の要求に対し、ボーイング・バートル社はCH-47の改良型を、カマン社はフェアリー ロートダイン複合ヘリコプターの発展型をそれぞれ提案した。これに対し、シコルスキー社はシコルスキー S-61R(CH-3)の拡大型のS-65案を提案した。エンジンをGE T64に換装し、シコルスキー S-64の動力機構を参考とした機体である[3]。1962年7月にシコルスキー S-65案が採択され、9月より開発が開始された。


試作機YCH-53Aは2機が製造され、計画より4ヶ月遅れの1964年10月14日に初飛行している[4]。続いて、16機の量産型CH-53Aの発注がなされている。量産機の引渡しは1966年9月から開始された[1]


CH-53Aは、機内に38名の完全武装兵、または担架に乗せた42名の負傷兵と4名の看護員を乗せることができた。貨物の積載量は3,630kgで、9,070kgまでの大型機材を吊り下げ輸送することもできた。



発展


1967年1月には海兵隊の第463海兵重ヘリコプター飛行隊(HMH-463)の機体がベトナム戦争に投入され[4]、CH-54とともに物資輸送に用いられた。CH-53Aは総計139機が製造されている[4]


アメリカ空軍は、CH-53Aの発展型として機体側面に増槽を装備したCH-53Cを取得したほか、さらに空中給油プローブを装着した戦闘捜索救難機としてHH-53B スーパージョリーグリーンジャイアント(Super Jolly Green Giant)を運用しベトナム戦争に投入した。これは、HH-53CやHH-53H、MH-53Jなど戦闘捜索救難機・特殊作戦機として発展している。


エンジンをT64-GE-6(2,850shp)からT64-GE-413(3,925shp)に換装したCH-53Dは、1969年1月27日に初飛行している。同年3月より引渡しが開始され、126機が製造されている。トランスミッションなども改良されたことにより、兵員も55名の輸送が可能となった[2]


アメリカ海軍は1971年に、海兵隊よりCH-53Aを15機取得し、掃海ヘリコプターRH-53Aとして運用した。これは、エンジンがT64-GE-413に換装されている。この機体は後にCH-53Aとして海兵隊に返却された[4]。続いてCH-53Dを原型としたRH-53Dが製造され、海軍は30機を取得している。航空掃海具の曳航の他、機雷処分用にブローニングM2重機関銃を装備している。RH-53Dはイーグルクロー作戦にて長い航続距離と艦載機としての運用能力を買われてデルタフォースを輸送するヘリコプターに選ばれ、砂漠地帯の飛行のため砂漠迷彩に塗り直されて使用されたが、元々この用途に適した機体ではなく、作戦は失敗に終わっている。


海外では西ドイツ陸軍(当時)とイスラエル航空宇宙軍が輸送型を取得した。両国とも近代化改修を施して現在も運用し続けている。オーストリア空軍も少数を取得したが、10年程度で運用を終了しイスラエルに売却した。イラン海軍はRH-53Dを取得したが、イラン・イラク戦争後はもっぱら輸送任務に使用していると見られている。


CH-53は民間にも社内名称であるS-65の名称で売り込みが試みられたが、失敗に終わった。



派生型



CH-53E スーパースタリオン/MH-53E シードラゴン





タキシング中のCH-53E



CH-53をエンジン3基として推力向上を図り、大型化したもの。そのほか、メインローターブレードが6枚から7枚になり、テールローターが左側に20°傾斜しているのが特徴。現在、西側最大のヘリコプターである。



MH-53 ペイブロウ



アメリカ空軍で使用される、特殊作戦型。



そのほかの派生型




空中給油を受けるHH-53C




掃海具を曳航するRH-53D




イスラエル空軍の"Yasur 2025"



CH-53A


アメリカ海兵隊向けの初期生産型。139機製造。

CH-53C


アメリカ空軍向けの輸送型。20機製造。

CH-53D


アメリカ海兵隊向けCH-53Aのエンジン換装型。126機製造。

CH-53G


ドイツ陸軍向けの輸出型。CH-53D相当。

CH-53GA

CH-53Gの改良型。

CH-53GS

CH-53Gのエンジン換装型。





HH-53B


アメリカ空軍向けの戦闘捜索救難型。

HH-53C

HH-53Bの改良型。





RH-53A


アメリカ海軍向けの掃海型。CH-53Aより15機改装。

RH-53D

CH-53Dを元にした掃海型。





TH-53A

アメリカ空軍向けの練習型。

VH-53D

CH-53DのVIP輸送型[1]。2機改装。

VH-53F


マリーンワン向け。6機発注もキャンセル[1]

S-65


シコルスキー社の社内呼称

S-65C-3


イスラエル航空宇宙軍向けの輸出型。HH-53C相当。

Yasur 2000

イスラエル空軍において1990年代初頭に実施された近代化改修。運用寿命を2000年代まで延ばす事が目的とされた。

Yasur 2025

イスラエル空軍において2007年に実施された近代化改修。運用寿命を2025年頃まで延ばす事が目的とされている。





S-65Öe


オーストリア空軍向けの輸出型。CH-53C相当。



採用国




  • アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国


  •  オーストリア


  • ドイツの旗 ドイツ


  • メキシコの旗 メキシコ


  • イランの旗 イラン


  • イスラエルの旗 イスラエル - 第118飛行隊(1969年~)、第114飛行隊(1973年~)において運用。現在、"Yasur 2025" 仕様に改修されている。



性能・主要諸元 (CH-53D)



諸元


三面図


  • 乗員:3名(兵員37名)

  • 全長:88ft 6in(26.97m)

  • 主回転翼直径:72ft 2.7in(22.01m)(6枚ローター)

  • 全高:24ft 11in(7.6m)

  • 発動機:ゼネラル・エレクトリック製 T64-GE-413 ターボシャフト×2 各3,925shp

  • 全幅(回転翼含む):28ft 4in(8.64m)

  • 全幅(胴体):15ft 6in(4.7m)

  • 空虚重量:23,628lb(10.740t)

  • 最大全備重量:33,500lb(15.227t)

  • 最大離陸重量(内部積載):69,750lb(31.666t)

  • 最大離陸重量(外部積載):73,500lb(33.369t)



性能



  • 超過禁止速度:130knots=M0.20(240.76km/h)

  • 航続距離:540nm(1,000km)

  • 実用上昇限度:16,750ft(5,106m)

  • 上昇率:2,460ft/min(750m/min)



登場作品



映画・テレビドラマ



『ウォーキング・デッド』

シーズン2第5話にて、5機編隊を組んで爆撃されるアトランタ市街地へ向かう。

『エアポート'75』

HH-53Bが登場。

『キリング・フィールド』

『キングコング: 髑髏島の巨神』

髑髏島調査部隊の機体としてUH-1やCH-47 チヌークとともに登場。

『デルタ・フォース』

CH-53Aが登場。冒頭にて、人質救出作戦を行うデルタフォースを輸送していたが、作戦は失敗し、1機が墜落して炎上する。

撮影には、イスラエル国防軍所属機が使用されている。

『バイオハザードV リトリビューション』


ウェスカーがアリス一行を救助するために送る他、ホワイトハウスでの最終決戦にも数機が参戦しているが、キペペオの攻撃により撃墜されている。

『バトルシップ』


アメリカ海兵隊のCH-53Dが登場。オアフ島の基地に多数の機体が駐機していたが、エイリアンが放った自立型ボール状兵器の攻撃により、全機が破壊されてしまう。



アニメ



『新世紀エヴァンゲリオン』


第10使徒の第3新東京市への襲来から民間人を避難させる際に多数の機体が登場[5]。また、NERV所属406号機に葛城ミサトが搭乗し、使徒の観測にも使用。

『ドキドキ!プリキュア』

第47話・第48話に五星財閥の保有機として登場。四葉財閥のCH-47 チヌークとともに、キングジコチューの襲撃を受けた大貝町から避難民を輸送している。



ゲーム



『Just Cause』

「Jackson JC-2 Alamo」の名称で登場する。主人公、リコの移動手段として使用される。

『World in Conflict』


アメリカ軍が車両配備要請を行った時のみに出現。

『大戦略シリーズ』

『マーセナリーズ』


韓国軍が使用する輸送ヘリコプターとして「K-53」の名称で登場する。



脚注




  1. ^ abcdアメリカ海軍機 1946-2000 増補改訂版 ミリタリーエアクラフト’01年2月号別冊 デルタ出版 P218

  2. ^ abcS-65 Origins / US Marine CH-53A & CH-53D Sea Stallion, Vectorsite.net, 1 May 2006.


  3. ^ 世界航空機年鑑 2007-2008 酣燈社 P324-325 ISBN 978-4873572703

  4. ^ abcd米海兵隊の重輸送ヘリCH-53スタリオン 石川潤一 軍事研究 2012年6月号 株式会社ジャパン・ミリタリー・レビュー P70-81


  5. ^ 新劇場版にも同様のシーンが登場するが、登場する機体がV-22に変更されている




関連項目







  • 1988年佐田岬半島米軍ヘリ墜落事故

  • 沖国大米軍ヘリ墜落事件










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