アルゴ座






アルゴ座の星図—ヨハネス・ヘヴェリウスにより1690年に描かれたもの


アルゴ座(アルゴざ、Argo)、現在は用いられなくなった南天の星座の1つ。その名称はギリシア神話に登場する船、アルゴーにちなむ。アルゴ船座[1](アルゴせんざ、Argo Navis)、あるいは単に Navis[2][3] (船座) ともいう。現在は、りゅうこつ座、ほ座、とも座の3つに分割されている。




目次






  • 1 アルゴ座の恒星一覧


    • 1.1 りゅうこつ座


    • 1.2 ほ座


    • 1.3 とも座




  • 2 由来と歴史


  • 3 脚注


    • 3.1 注釈


    • 3.2 出典




  • 4 参考文献


  • 5 関連項目


  • 6 外部リンク





アルゴ座の恒星一覧


アルゴ座の領域に所属していた星座のうち、以下の3つの星座は、まとめてバイエル符号(ギリシャ文字)が振られ、最終的に以下のようになった。




アルゴ座の恒星



りゅうこつ座



  • α星(カノープス)

  • β星

  • ε星

  • η星

  • θ星

  • ι星

  • υ星

  • χ星

  • ω星



ほ座



  • γ星

  • δ星

  • κ星

  • λ星

  • μ星

  • ο星

  • φ星

  • ψ星



とも座



  • ζ星

  • ν星

  • ξ星

  • π星

  • ρ星

  • σ星

  • τ星



由来と歴史


『アルマゲスト』に見えるプトレマイオス星座の一つだが、それ以前のアラートスの『ファイノメナ』にも詩われている歴史の古い星座である。ギリシアの詩人たちによれば、星座となっているアルゴー船は、船首部分を欠いた不完全な形であるという。プトレマイオスが定義したアルゴ座は、現在の「らしんばん座」と「とも座」の大部分、それに「ほ座」の西半分ほどの領域であった。カノープスは現在「りゅうこつ座」の北西端にあるが、プトレマイオスの定めたアルゴ座では南西端だった。


ティコやヘヴェリウス、フラムスティードらは「とも座」の北側しか観測できなかったが、大航海時代を迎えて南天の観測がヨーロッパにもたらされると、バイエルの星図やハウトマンの星表で「りゅうこつ座」の大部分と「ほ座」の東半分が付け加えられた。しかし、その領域にはプトレマイオスがなにも記述していなかったため、バイエルはアルゴー船の船首をもぎ取った巨大な岩 (シュムプレーガデスの岩) を置いた[4]


1676年にセントヘレナ島で南天の星を観測したハレーは、1678年に刊行した星表 Catalogus Stellarum Australiumの中で、バイエルが置いた岩の部分を樫の木に置き換えた[5]。またプランシウスは、Arca Noehi (ノアの方舟座)と改名し、3本マストの近代的な帆船を描いた。


1756年に出版された、フランス科学アカデミーの1752年版『紀要』の中で、フランスの天文学者ラカーユの星表と天球図が収録された[6]。この中でラカーユはチャールズの樫の木座を廃してアルゴ座の一部分に戻し、船のマストの部分をアルゴ座から切り離して新たに羅針盤座 la Boussoleを設定した[注 1][7]。またラカーユは星表の中で、アルゴ座を構成する星にdu Navire (船) 、Corps du Navire (船体) 、Pouppe du Navire (船尾) 、Voilure du Navire (帆) という区別を付けている。これらの区分は、ラカーユ死後の1763年に出版された星表 Coelum australe stelliferum では、それぞれラテン語で ArgûsArgûs in carinaArgûs in puppiArgûs in velisとされた[8]


ラカーユは、彼が設定したアルゴ座の領域にある明るい星に、ギリシャ文字でαからωまで符号を付けた。さらに、Corps du NavirePouppe du NavireVoilure du Navire と区分した領域のそれぞれにラテン文字の小文字で a、b、c……z 、続いて大文字で A、B、C…… Z と符号を付けた[6]。ラカーユはバイエルと異なり、 a の代わりに A を用いることはせず、a星を設けている[注 2]


1922年の第1回国際天文学連合総会において現行の88星座が提案された際、従来「アルゴ座」とされた領域は、とも座、ほ座、りゅうこつ座の3つに分けられた。同時に、「とも座」・「ほ座」・「らしんばん座」・「りゅうこつ座」の総称としてラテン語名の Argo (属格形は Argus) と略符の Arg が制定された[9]。日本でも1974年に刊行された『学術用語集・天文学編』で番外として和名の「アルゴ座」を制定したが、これを実際に使用していたのは野尻抱影くらいで、現在の各種星座表では使われていない。また、1994年に刊行された『学術用語集・天文学編(増訂版)』では、「アルゴ座」の項目が削除されている[10]


上述のように、ラカーユは星表においてアルゴ座の各部分を区分しただけであり、ラカーユがアルゴ座を「とも座」・「ほ座」・「りゅうこつ座」の3つ、あるいは「らしんばん座」を加えて4つに分割したという事実はない。実際にラカーユの南天天球図を見ても、単に le Navire (船) とあるだけであり、「とも座」・「ほ座」・「りゅうこつ座」に当たる星座名は描かれていない[11]



脚注


[ヘルプ]


注釈




  1. ^ ポンプ座も同じく帆の部分を切り取って作られたとする研究者もいる。


  2. ^ そのため、とも座・ほ座・りゅうこつ座にはプトレマイオス星座にはない「a星」が存在する。



出典





  1. ^ ハーマン・メルビル『白鯨』阿部知二訳、岩波書店。


  2. ^ Bayer, J. (1603). Uranometria. p. Qq recto, table 40.


  3. ^ Flamsteed, J. (1725). "Catalogus Britannicus Stellarum Inerrantium", Historia Coelestis Britannica, vol. 3. pp.31-32, et passim.


  4. ^ Ian Ridpath. “Argo Navis”. 2015年7月12日閲覧。


  5. ^ Ian Ridpath. “Robur Carolinum”. 2015年7月12日閲覧。

  6. ^ abFelice Stoppa. “Planisphere contenant les Constellations Celestes comprises entre le Pole Austral et le Tropique du Capricorne.”. Atlas Coelestis. 2015年7月12日閲覧。


  7. ^ Ian Ridpath. “Argo Navis”. 2015年7月12日閲覧。


  8. ^ Nicolas Louis de La Caille (1763). Coelum australe stelliferum. pp. 192-196. http://www.e-rara.ch/zut/content/titleinfo/152572 2015年7月12日閲覧。. 


  9. ^ International Astronomical Union (1922). Transactions of the IAU. 1. International Astronomical Union. p. 158. 


  10. ^ “オンライン学術用語集”. 国立情報学研究所. 2015年6月1日閲覧。


  11. ^ 村山定男 『キャプテン・クックと南の星』 (初版) 河出書房、2003年5月10日、51-55頁。ISBN 978-4-309-90533-4。 




参考文献


  • 草下英明 『星座手帖』 社会思想社、1969年、169頁。ISBN 978-4390106580。


関連項目







  • りゅうこつ座の恒星の一覧

  • ほ座の恒星の一覧

  • とも座の恒星の一覧

  • らしんばん座の恒星の一覧



外部リンク



  • Ian Ridpath. “Star Tales”. 2014年1月29日閲覧。
    • Ian Ridpath. “The IAU list of the 88 constellations and their abbreviations”. 2015年5月31日閲覧。





Popular posts from this blog

MongoDB - Not Authorized To Execute Command

in spring boot 2.1 many test slices are not allowed anymore due to multiple @BootstrapWith

How to fix TextFormField cause rebuild widget in Flutter