辞職勧告決議




辞職勧告決議(じしょくかんこくけつぎ)は、議会が特定公職者に対し「辞職を勧める」決議。




目次






  • 1 概説


  • 2 議員辞職勧告決議


    • 2.1 帝国議会における処決決議


    • 2.2 国会における議員辞職勧告決議


    • 2.3 地方議会における議員辞職勧告決議


      • 2.3.1 都道府県議会における議員辞職勧告決議


      • 2.3.2 市町村議会における議員辞職勧告決議






  • 3 首長辞職勧告決議


    • 3.1 都道府県知事に対する辞職勧告決議可決例


    • 3.2 市町村長に対する辞職勧告決議可決例




  • 4 脚注


  • 5 関連項目





概説


不祥事などで公職の身分にふさわしくないとされる人物に対して行われる議会の意思表示である。法的拘束力はないため、当該人物は勧告に従わなくても法律上問題はないとされている。


分類として以下の二つがある。



  • 議員辞職勧告決議

  • 首長辞職勧告決議



議員辞職勧告決議


議員の不祥事に対して、議員の進退問題について個々の議員が判断すべきという意見や、不祥事に対する議会の意思表示という面もある。一方で、法的明文もないのに議会が有権者に選ばれた特定の議員の進退問題を議決することは憲法上問題であると批判する意見もある。これは、議会の除名は「院内の秩序をみだした議員」のみを対象としており、院外の行動における不祥事は対象外のためである。また、勧告対象となった議員が辞職勧告を拒否した場合、議会の権威が低下する懸念も指摘されている。


一方で、議員辞職勧告決議が本会議で採決された場合、議員が辞職勧告が提出されるような理由が存在する事態において、個々議員がどのように考えているのかを知ることができ、次回選挙における指標にできるとする意見がある。また、辞職勧告を無視する議員がいた場合は、当該議員の政治的道義的退廃を示すものであり、有権者の批判が一層強まるとする意見がある(ちなみにほとんどの議員が無視する)。



帝国議会における処決決議


戦前では辞職を処決という言葉を用い、辞職勧告決議の代わりに処決決議が行われた。戦前の帝国議会では「院議無視」又は「院議不服従」をした議員に対して、院内の秩序を乱す懲罰事犯とする取り扱いが認められており、処決決議を無視した議員に対して除名を含めた処分が可能であった。

























帝国議会の本会議における処決決議等採決例
本会議採決日 議院 議員 結果 採決 理由 その後
1904年(明治37年)3月28日 衆議院 秋山定輔 可決 異議なし ロシアスパイ疑惑 翌3月29日に議員辞職。


国会における議員辞職勧告決議


国会の本会議で議員辞職勧告決議が採決されたことは過去に5例ある。秋山と重政と西村を除く3人は議決時において逮捕勾留されており、議員活動が滞っていた。可決例は4例でいずれも可決された4人は議員辞職を拒否している。


かつては55年体制下では日本社会党など野党が不祥事疑惑がある自由民主党議員に対する辞職勧告決議の本会議採決を要求し、自由民主党は反対するという構図になっており、55年体制下で議員辞職勧告決議が採決されたのは1966年の重政庸徳の1例だけであった。1983年に田中角栄元首相に対して一審有罪判決が出た際には野党が田中角栄議員辞職勧告決議の本会議採決を要求し国会が空転したこともある。


しかし、1997年1月に入ってからは逮捕や起訴を受けても議員辞職しない現職国会議員に対して議員辞職勧告決議が採決される傾向がある。また、民主党は過去には国会議員が逮捕されていない疑惑の段階で議員辞職勧告決議案を提出をし、本会議採決を要求していたことがある(例として鈴木宗男[1]や松浪健四郎[2]など)。しかし、民主党は石川知裕(元民主党)については、逮捕・起訴・一審有罪判決が出ても野党の議員辞職勧告決議採決要求を拒否し続けており、逮捕・起訴されて刑事訴訟で有罪判決が下された現職国会議員に対しては議員辞職勧告決議が採決されない状況が続いている。一方で与党時代の自由民主党も収賄罪の有罪が確定した藤波孝生や二審で収賄罪の有罪判決が出た中村喜四郎に対する議員辞職勧告決議の採決を拒否した過去がある。





























































本会議における国会議員辞職勧告決議等採決例
本会議採決日 議院 議員 結果 採決 理由 その後
1966年(昭和41年)2月2日 参議院 重政庸徳 否決 起立少数 銃刀法違反による秘書の逮捕
(国会内短銃密売事件)
自民党籍離脱し、77日間登院自粛。
1997年(平成9年)4月4日 参議院 友部達夫 可決 起立過半数 詐欺罪による起訴
(オレンジ共済事件)
辞職拒否。有罪確定まで約4年間議員在職(本文)。
2002年(平成14年)6月21日 衆議院 鈴木宗男 可決 起立総員 収賄罪による逮捕
(やまりん事件)
辞職拒否。衆議院解散まで約1年4ヶ月間議員在職(本文)。
2003年(平成15年)3月25日 衆議院 坂井隆憲 可決 異議なし 政治資金規正法違反による逮捕 辞職拒否。衆議院解散まで約7ヶ月間議員在職(本文)。
2006年(平成18年)3月17日 衆議院 西村眞悟 可決 起立多数 弁護士法違反による起訴
(西村眞悟弁護士法違反事件)
辞職拒否。衆議院解散まで約3年4ヶ月間議員在職(本文)。





































































議院運営委員会における国会議員辞職勧告決議等の質疑終局・即決動議の否決例
委員会採決日 議院 議員 結果 理由
1983年(昭和58年)5月25日 衆議院 佐藤孝行 挙手少数で否決 収賄罪による一審有罪判決
懲役2年執行猶予3年追徴金200万円
(ロッキード事件)
1983年(昭和58年)5月25日 衆議院 田中角栄 挙手少数で否決 収賄罪による起訴
(ロッキード事件)
1999年(平成11年)11月4日 衆議院 藤波孝生 挙手少数で否決 収賄罪での最高裁有罪判決
懲役3年執行猶予4年追徴金4270万円が確定
(リクルート事件)
2000年(平成12年)3月28日 衆議院 藤波孝生 挙手少数で否決 収賄罪での最高裁有罪判決
懲役3年執行猶予4年追徴金4270万円が確定
(リクルート事件)
2001年(平成13年)5月18日 衆議院 中村喜四郎 可否同数
委員長決裁[3]で否決
収賄罪での二審有罪判決
懲役1年6ヶ月追徴金1000万円
(ゼネコン汚職事件)
2002年(平成14年)3月20日 衆議院 鈴木宗男 挙手少数で否決 外務省疑惑
2002年(平成14年)5月14日 衆議院 鈴木宗男 可否同数
委員長決裁[4]で否決
偽計業務妨害罪での秘書の逮捕
(ムネオハウス事件)
2003年(平成15年)6月12日 衆議院 松浪健四郎 挙手少数で否決 暴力団による秘書給与肩がわり


地方議会における議員辞職勧告決議


地方議会においても議員辞職勧告決議がなされることがある。なお、住民によるリコールという形の解職請求は選挙管理委員会に対して行う強制力のあるものであり、議会による辞職勧告決議とは異なる。



都道府県議会における議員辞職勧告決議







































































































都道府県議会辞職勧告決議の可決例
採決日 議会 議員 理由
1993年(平成5年)6月29日 鹿児島県議会 堀口文雄 贈収賄による起訴
1994年(平成6年)12月15日 徳島県議会 松田一郎 収賄罪による起訴
1997年(平成9年)6月24日 滋賀県議会 西村政之 斡旋収賄罪による逮捕
2001年(平成13年)6月5日 兵庫県議会 萬代正信 図書館建設をめぐる職務強要罪による起訴
2002年(平成14年)2月22日 大阪府議会 奴井和幸 飲酒運転による1審有罪判決
2002年(平成14年)12月11日 東京都議会 福島寿一 婦女暴行致傷罪による逮捕
2003年(平成15年)6月30日 栃木県議会 人見哲 公職選挙法違反による逮捕
2003年(平成15年)7月15日 福岡県議会 吉村元秀 政治資金規正法違反による起訴
2004年(平成14年)9月16日 岐阜県議会 井上一郎 飲酒運転の摘発
2005年(平成17年)12月21日 滋賀県議会 太田正明 加重収賄罪による起訴
2006年(平成18年)3月7日 鹿児島県議会 栄和弘 金銭授受疑惑
2007年(平成19年)5月16日 山形県議会 村山隆 飲酒運転の摘発
2011年(平成23年)6月24日 広島県議会 正木篤 無免許運転の摘発
2011年(平成23年)9月20日 広島県議会 正木篤 無免許運転の有罪判決
2019年(平成31年)2月15日 兵庫県議会 樽谷彰人 妻への暴行容疑で逮捕[5]


市町村議会における議員辞職勧告決議


  • 福島県須賀川市議会

過去には福島県の須賀川市議会で圓谷年雄須賀川市議に対し、2011年9月18日の飲酒運転が刑事事件になったことを理由に議員辞職勧告決議が4回(2011年10月26日、同年12月1日、2012年2月9日、同年3月1日)可決された例がある。


  • 栃木県小山市議会

また、栃木県の小山市議会で角田良博市議に対し、同市女性職員に対するセクハラ行為などが議会議員の政治倫理に関する条例の政治倫理基準に違反するとして、議員辞職勧告決議が12回も可決されたが、同市議は辞職を拒否し続けている。[6]


  • 兵庫県小野市議会

2017年5月には兵庫県小野市議会でも、市議の椎屋邦隆が「市内に生活の本拠がなく、議員資格を有しない」と議決し、議員資格を失った。しかし、兵庫県の井戸敏三知事は8月16日、第三者機関の自治紛争処理委員の結論に基づき、同市議会の決定を取り消した。椎屋氏は失職した5月22日にさかのぼって復職。公選法は市町村議会議員の被選挙権について、区域内に3カ月以上、住所を置くことを定める。椎屋氏は三木市に妻を残して小野市に転居し、2015年4月に初当選。同市議会は5月22日、市会百条委員会の調査に基づき失職と決めた。椎屋氏は同30日、決定を不服とする審査申立書を井戸知事に提出した。井戸知事は弁護士2人、大学教授1人を自治紛争処理委員に任命。委員らは8月4日までの計3回の会議で提出書類を審査し「小野市と三木市の居宅のいずれかを本拠と断定することは困難」とした上で、「小野市に一定の居住実態があり、三木市に生活の本拠があるとの積極的事情も認められない」との意見書を8月9日付で提出した。しかし、現実には居住実態はほぼ無く、あらためて議員辞職勧告決議が採択されるが、同市議は辞職を拒否し続けている。



























































































市町村議会辞職勧告決議の可決例
採決日 議会 議員 理由 その後
2011年(平成23年)10月26日 須賀川市議会 圓谷年雄 飲酒運転 無視
2011年(平成23年)12月1日 須賀川市議会 圓谷年雄 飲酒運転 無視
2012年(平成24年)2月9日 須賀川市議会 圓谷年雄 飲酒運転 無視
2012年(平成24年)3月1日 須賀川市議会 圓谷年雄 飲酒運転 議員辞職
2015年(平成27年)9月28日 小山市議会 角田良博 セクハラ行為(確定) 市議会前副議長でありながら以後15回辞職勧告無視[7][8]
2017年(平成29年)12月25日 小野市議会 椎屋邦隆 議員資格喪失 無視[9]
2017年(平成29年)12月25日 小野市議会 河島信行 議員品位棄損・説明責任放棄 無視[10]
2018年(平成30年)8月31日 小野市議会 椎屋邦隆 議員資格喪失 無視[11]
2018年(平成30年)11月26日 青森市議会 山崎翔一 不適切ツイッター 無視[12]
2018年(平成30年)11月28日 小野市議会 河島信行 議員品位棄損・説明責任放棄 無視[13]
2019年(平成31年)3月22日
青森市議会
山崎翔一
議員控室での無許可録音
無視[14]


首長辞職勧告決議


議会が首長の資質を問題視して、退陣を勧告する場合に議決される。辞職勧告決議が不信任決議の可決効力と同等の特別議決(議員数の3分の2以上が出席する都道府県または市町村の議会の本会議において4分の3以上の賛成した場合)であり、客観的に首長の不信任と同一視し得る事情があれば、辞職勧告決議を地方自治法上の不信任決議可決として法的効力を有するとみなす判例がある(和歌山地裁昭和27年3月31日判決、青森地裁昭和33年2月27日判決)。


なお、住民によるリコールという形の解職請求は選挙管理委員会に対して行う強制力のあるものであり、議会による辞職勧告決議とは異なる。



都道府県知事に対する辞職勧告決議可決例




















































































都道府県知事に対する辞職勧告決議
採決日 議会 首長 比率 理由 その後
1949年(昭和24年) 埼玉県議会 西村実造 日本シルク疑獄事件 3月28日辞職。
2003年(平成15年)3月7日 青森県議会 木村守男 39 9 30 79.59% セクハラ疑惑 5月17日辞職。
2004年(平成16年)10月8日 高知県議会 橋本大二郎 22 15 7 59.46% 選挙資金問題 当日辞職。知事選に立候補し、当選。
2006年(平成18年)11月29日 宮崎県議会 安藤忠恕 39 0 39 100.00% 宮崎県官製談合事件 12月1日、不信任可決。12月4日辞職。
2006年(平成18年)12月18日 広島県議会 藤田雄山 37 29 8 56.06% 後援会による政治資金不正事件 辞職拒否。
2007年(平成19年)3月9日 広島県議会 藤田雄山[15]
38 27 11 58.46% 後援会による政治資金不正事件 辞職拒否。


市町村長に対する辞職勧告決議可決例







脚注




  1. ^ 夕刻に鈴木宗男議員辞職勧告決議案を野党共同で提出


  2. ^ 4野党、松浪議員の議員辞職勧告決議案を提出


  3. ^ 議院運営委員長は藤井孝男


  4. ^ 議院運営委員長は鳩山邦夫


  5. ^ “樽谷彰人・兵庫県議に辞職勧告決議 本人は「任期全う」と応じず”. 産経新聞 (2019年2月16日). 2019年3月5日閲覧。


  6. ^ “角田市議に11回目の辞職勧告 小山市議会が可決”. 下野新聞 (2018年2月15日). 2019年2月5日閲覧。


  7. ^ “小山市議・角田氏のセクハラ確定 最高裁が上告不受理”. 下野新聞 (2018年9月29日). 2019年2月5日閲覧。


  8. ^ “市前副議長に辞職勧告15回 栃木・小山、セクハラ理由”. 共同通信 (2019年2月21日). 2019年3月5日閲覧。


  9. ^ “小野市議会だより第180号「椎屋邦隆議員に対して議員辞職を勧告」”. 小野市議会 (2018年2月1日). 2019年2月5日閲覧。


  10. ^ “小野市議会だより第180号「河島信行議員に対して議員辞職を勧告」”. 小野市議会 (2018年2月1日). 2019年2月5日閲覧。


  11. ^ “小野市議会が2回目 椎屋市議の辞職勧告決議案を可決”. 神戸新聞NEXT (2018年8月31日). 2019年2月5日閲覧。


  12. ^ “不適切ツイッターの青森市議、辞職勧告決議案可決”. 産経新聞 (2018年11月26日). 2019年3月5日閲覧。


  13. ^ “小野市議会だより第185号「河島信行議員に対して議員辞職を勧告」”. 小野市議会 (2019年2月1日). 2019年2月5日閲覧。


  14. ^ 日本放送協会. “スマホ隠し録音 青森市議に2回目の辞職勧告決議”. NHKニュース. 2019年3月24日閲覧。


  15. ^ 共同通信/47NEWS (2007年3月9日). “広島・藤田知事に辞職勧告 政治資金問題で2度目”. 全国新聞ネット. 2014年8月4日閲覧。



関連項目



  • 問責決議

  • 除名

  • 不信任決議

  • リコール (地方公共団体)

  • オール野党

  • 公職追放

  • 逮捕許諾請求

  • 歳費凍結法案




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