戦車揚陸艦






ビーチングしたLST-1級とM4中戦車


戦車揚陸艦(せんしゃようりくかん、tank landing ship)は、人員や物資の揚陸を目的とする揚陸艦のうち 、揚陸艦自体が直接海岸に乗り上げる(ビーチング)ことによって、歩兵や戦車などを揚陸する艦種のこと。


アメリカ海軍式の艦種類別記号は、LST(Landing ship,tank )が当てられる。[1]




目次






  • 1 概要


  • 2 歴史


    • 2.1 開発


    • 2.2 実戦


    • 2.3 その後




  • 3 派生的な用途


  • 4 主な戦車揚陸艦


  • 5 脚注


  • 6 関連項目





概要


戦車揚陸艦はその目的に特化した構造を持っている。搭載された車両や兵員を上陸させるための大きな扉が艦首に設けられている。艦の前部は格納庫になっており、艦橋や機関部などは多くの場合は艦尾に置かれている。武装は自衛用の対空砲のほか、艦首に上陸支援用の機関砲やロケット弾発射機などが取り付けられることもあるが、あまり大型の火砲はない。着岸しやすくするために艦体前部の船底は平になっている。この平らな船底という特徴のため、外洋では横揺れがひどく、乗り心地はあまり良くない。


揚陸の手順としては、まずバラストを調節し艦首を上げて海岸に接近する。着岸直前に艦尾の錨を下ろし、着岸点についたらバラストを調節して艦首を下げ、艦首を着底させ固定する。艦首の扉を開けて渡し板を繰り出し、車両・兵員を上陸させる。離岸時にはバラストを調節し艦首を上げ、艦尾の錨を巻き上げ後進する。



歴史



開発


現代の戦車揚陸艦の直系の祖先である連合国側の戦車揚陸艦(LST)は、第二次世界大戦中の1941年にイギリスで考案された。この背景には、第二次世界大戦序盤に連合国側が一敗地にまみれ、フランスがナチス・ドイツに降伏(ナチス・ドイツのフランス侵攻)したためヨーロッパ大陸での拠点を失ってしまっていたという事情がある。枢軸国側に勝利するためには、大陸への再上陸作戦が不可欠となっていた。守備側のドイツ軍は機甲部隊を持っているため、上陸作戦を成功させるためには連合軍も機甲部隊を速やかに上陸させる必要がある。イギリス軍は、戦車を搭載できる大型の上陸用舟艇であるLCTを開発していたが、航洋性が低くて不適当であった。そのために、戦車を搭載し敵前でも速やかに上陸させることができる新型揚陸艦の開発が望まれ、戦車揚陸艦の開発につながったのである。


最初に、タンカー改造のバチャクエロ級の建造が行われた後に、より高速のボクサー級(LST(1)型)の建造が行われた。さらに、イギリスの設計に基づいてアメリカ合衆国で委託建造された、改良型のLST(2)型が大量に就役した。


他方、日本陸軍も日中戦争での経験から1930年代には独自の戦車揚陸艦の研究を開始していた。連合国のものより小型であるが一応の航洋性能を有する機動艇を1942年に完成させている。日本海軍も、太平洋戦争中に類似した二等輸送艦を建造している。



実戦


戦車揚陸艦が最初に実戦投入されたのは、1943年6月のソロモン諸島でのアメリカ軍の作戦であった。その後行われたノルマンディーや硫黄島、沖縄などの多くの上陸作戦においては、欠かすことができない存在となった。敵前上陸という過酷な任務から多数の艦が失われた。[2]


第二次世界大戦後には戦略・戦術の変化や戦車揚陸艦の欠点から不要論もあったが、朝鮮戦争時において仁川で使用され有用性が再認識された。



その後


しかし、今日では以下のような理由のためエアークッション艇やその他の上陸用舟艇を用いた揚陸を主体とするドック型揚陸艦等に取って代わられつつある。



  • 戦車の大型化(主力戦車)等に伴う必要船形の大型化、及び外洋航海能力との両立の困難

  • 非常に限られた展開力(世界の海岸のうち15%しかビーチングに適しない)

  • 着岸後、潮が引くと離岸できなくなってしまう

  • 海面下の障害物に対する脆弱性

  • 陸上砲火に晒された際のリスク分散化

  • エアークッション艇の発展(エア・クッション型揚陸艇)


アメリカ海軍では1970年代にLSTの新機軸としてニューポート級が建造されたものの主流とはならず、この種の艦船は全て退役済である。その一方で、開発途上国や台湾では現在でもLST-1級が数々の延命改修を受けながら現役であるところもある。



派生的な用途


第二次世界大戦後、余剰となった揚陸艦は民間に払下げられ、貨物船やフェリーなどとして再活用された。広い甲板や格納庫を有する特徴から、追加設備を設けて揚陸艦以外の用途に流用されることがあった。工作艦や指揮艦、病院船などに使用された例がある。


アメリカ陸軍における兵站支援艦(LSV)はLSTのコンセプトを応用している。ただし、前線における敵前上陸等は想定されていないため、艦首のランプなどは簡略化されている。


日本においても戦後の一時期、青函連絡船の貨車輸送に二隻のLSTが使用されていたが、船体の構造が貨車輸送に不向きなことや燃料の問題、さらに当該の艦そのものの状態もあまり良いものではなくこの輸送は早々に打ち切られた。



主な戦車揚陸艦



アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国



  • LST-1級戦車揚陸艦

  • LSM-1級中型揚陸艦

  • タルボット・カウンティ級戦車揚陸艦

  • テレボーン・パリッシュ級戦車揚陸艦

  • デ・ソト・カウンティ級戦車揚陸艦

  • ニューポート級戦車揚陸艦


インドの旗 インド


  • シャーダル級戦車揚陸艦

大韓民国の旗 韓国



  • 雲峰級揚陸艦

  • 高峻峰級揚陸艦

  • 天王峰級揚陸艦




中華人民共和国の旗 中国


  • 玉康型揚陸艦

大日本帝国の旗 大日本帝国/日本の旗 日本




  • 機動艇(SS艇)


  • 第百一号型輸送艦(SB艇)

  • みうら型輸送艦

  • あつみ型輸送艦


フランスの旗 フランス



  • トリュー級戦車揚陸艦

  • シャンプレーン級中型揚陸艦






脚注




  1. ^ 海上自衛隊のおおすみ型輸送艦 (2代)は、LSTの記号を有するがビーチング方式の戦車揚陸艦ではなく、ドック型揚陸艦である。


  2. ^ 一説には、広い上甲板を有する艦型から航空母艦と誤認されて、集中攻撃の目標となったとも言われる。



関連項目


  • 揚陸艦








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