大日本帝国海軍艦艇類別変遷
大日本帝国海軍艦艇類別変遷(だいにっぽんていこくかいぐんかんているいべつへんせん)は、日本海軍の艦艇類別の変遷。
目次
1 概要
2 最終時の類別
2.1 艦艇
2.1.1 軍艦
2.1.2 軍艦以外の艦艇
2.2 特務艦艇
2.2.1 特務艦
2.2.2 特務艇
2.3 その他
3 廃止もしくは名称変更された類別
3.1 艦艇
3.1.1 軍艦
3.1.2 軍艦以外
3.2 艦艇以外
4 各年代の代表的な艦艇類別
4.1 1871年(明治4年)11月5日(運送船は1873年(明治6年)5月17日)
4.2 1890年(明治23年)8月12日
4.3 1896年(明治29年)4月1日
4.4 1898年(明治31年)3月21日
4.5 1900年(明治33年)6月22日
4.6 1912年(大正元年)8月28日
4.7 1920年(大正9年)4月1日
4.8 1931年(昭和6年)5月30日
4.9 1941年(昭和16年)6月26日
5 脚注
6 参考文献
7 関連項目
8 外部リンク
概要
明治元年わずか4隻で始まった明治政府の海軍は明治初期には軍艦と運送船の分類しかなかった。なお明治20年まで正式艦名の最後に軍艦には艦を、運送船には丸をつけた。例えば「富士山」の正式艦名は「富士山艦」である。しかし、「和泉丸」は軍艦に類別されるなど例外もある。
その後は順次新たな類別がなされたが体系的に統一されたものはなかったようである。
大正から昭和にかけての系統的類別は1898年(明治31年)3月21日海軍軍艦及水雷艇類別標準の制定に始まる。更に1900年(明治33年)6月22日に軍艦と水雷艇の類別を海軍艦艇類別標準として統合、以後これを基本として改訂が繰り返された。
また特務艦艇の類別は1920年(大正9年)4月1日海軍特務艦艇類別標準を制定、特務船を特務艦艇として独立させたことに始まる。この時特務艦艇と雑役船は特務艦、特務艇、雑役船と大別された。
最終時の類別
1945年(昭和20年)6月30日最後の改訂。
艦艇
軍艦
- 戦艦
- 1898年(明治31年)3月21日軍艦の類別に新設。計画排水量10,000トン以上を一等戦艦、10,000トン未満を二等とする。
- 1905年(明治38年)12月12日等級廃止。
巡洋艦
- 一等 : 主砲口径が15.5cmより大きいもの
- 二等 : 主砲口径15.5cmまで
- 1898年(明治31年)3月21日軍艦の類別に新設。計画排水量7,000トン以上を一等、7,000トン未満3,500トン以上を二等、、3,500トン未満を三等巡洋艦とする。
- 1912年(大正元年)8月28日三等を廃止。[1]
- 1934年(昭和9年)5月31日に主砲口径が15.5cmより大きいものを一等、主砲口径15.5cmまで二等巡洋艦と等級の分類を改正する。
- 航空母艦
- 1920年(大正9年)4月1日軍艦の類別に新設。
- 敷設艦
- 1920年(大正9年)4月1日軍艦の類別に新設。
- 潜水母艦
- 1924年(大正13年)12月1日水雷母艦より名称変更。
- 練習戦艦
- 1931年(昭和6年)5月30日軍艦の類別に新設。
- 練習巡洋艦
- 1931年(昭和6年)5月30日軍艦の類別に新設。
- 水上機母艦
- 1934年(昭和9年)5月31日軍艦の類別に新設。
軍艦以外の艦艇
駆逐艦
- 一等 : 基準排水量1,000トン以上
- 二等 : 基準排水量1,000トン未満
- 1898年(明治31年)3月21日水雷艇の類別に水雷艇駆逐艇として新設。
- 1900年(明治33年)6月22日軍艦の類別に変更し名称を水雷艇駆逐艇から駆逐艦に変更する。
- 1905年(明治38年)12月12日軍艦から独立し艦艇の類別に変更する。
- 1912年(大正元年)8月28日等級を制定。計画排水量1,000トン以上を一等、1,000トン未満600トン以上を二等、600トン未満を三等駆逐艦とする。
- 1931年(昭和6年)5月30日三等駆逐艦を廃止。
- 1934年(昭和9年)5月31日基準排水量1,000トン以上を一等駆逐艦、1,000トン未満を二等駆逐艦と等級の分類を変更する。
潜水艦
- 一等 : 水上排水量1,000トン以上
- 二等 : 水上排水量1,000トン未満
- 1905年(明治38年)1月23日水雷艇の類別に潜水艇として新設。
- 1905年(明治38年)12月12日艦艇の類別に変更。
- 1916年(大正5年)8月4日等級を制定。水上排水量600トン以上を一等潜水艇、600トン未満を二等潜水艇とする
- 1919年(大正8年)4月1日潜水艇より名称変更。等級に三等を制定し、水上排水量1,000トン以上を一等潜水艦、1,000トン未満500トン以上を二等潜水艦、500トン未満を三等潜水艦とする。
- 1931年(昭和6年)5月30日三等潜水艦を廃止。
- 砲艦
- 1898年(明治31年)3月21日軍艦の類別に新設。計画排水量1,000トン以上を一等砲艦、1,000トン未満を二等砲艦とする。
- 1912年(大正元年)8月28日排水量800t以上を一等砲艦、800トン未満を二等砲艦と等級変更。
- 1931年(昭和6年)5月30日等級を廃止。
- 1944年(昭和19年)10月1日軍艦から艦艇の類別に変更。
- 海防艦
- 1898年(明治31年)3月21日軍艦の類別に新設。当初は一等、二等、三等の区別あり。
- 1912年(大正元年)8月28日三等を廃止。
- 1931年(昭和6年)5月30日等級を廃止。
- 1942年(昭和17年)7月1日軍艦から艦艇の類別に変更。
- 水雷艇
- 1898年(明治31年)3月21日水雷艇類別標準を制定。当初は一等、二等、三等、四等の区別あり。
- 1900年(明治33年)6月22日水雷艇類別標準を廃止。水雷艇は艦艇の類別とする。
- 1912年(大正元年)8月28日三等、四等を廃止。
- 1924年(大正13年)1月15日廃止。
- 1931年(昭和6年)5月30日艦艇の類別として復活。等級はなし。
- 掃海艇
- 1920年(大正9年)4月1日特務艇の類別に新設。当初は一等、二等の区別あり。
- 1923年(大正12年)6月30日艦艇の類別に新設。旧掃海艇は掃海特務艇に変更。
- 敷設艇
- 1920年(大正9年)4月1日特務艇の類別に新設。当初は一等、二等、三等の区別あり。
- 1931年(昭和6年)5月30日等級を廃止。
- 1944年(昭和19年)1月31日艦艇の類別に新設。旧敷設艇は敷設特務艇に変更。
- 駆潜艇
- 1933年(昭和8年)5月22日特務艇の類別に新設。
- 1940年(昭和15年)4月1日艦艇の類別に新設。旧駆潜艇は駆潜特務艇に変更。
- 哨戒艇
- 1940年(昭和15年)3月30日特務艇の類別に新設。
- 1943年(昭和18年)2月15日艦艇の類別に新設。旧哨戒艇は哨戒特務艇に変更。
輸送艦
- 一等 : 基準排水量1,000トン以上
- 二等 : 基準排水量1,000トン未満
- 1944年(昭和19年)1月31日艦艇の類別に新設。等級は一等と二等に分類。
特務艦艇
特務艦
- 工作艦
- 1920年(大正9年)4月1日工作船より名称変更し特務艦の類別に変更。
- 運送艦
- 1920年(大正9年)4月1日運送船より名称変更し特務艦の類別に変更。
- 砕氷艦
- 1921年(大正10年)8月2日特務艦の類別に新設。
- 測量艦
- 1922年(大正11年)3月31日特務艦の類別に新設。
- 練習特務艦
- 1922年(大正11年)11月30日特務艦の類別に新設。
- 標的艦
- 1923年(大正12年)9月29日特務艦の類別に新設。
特務艇
- 敷設特務艇
- 1920年(大正9年)4月1日敷設艇として特務艇の類別に新設。当初は一等、二等、三等の区別あり。
- 1931年(昭和6年)5月30日等級を廃止。
- 1944年(昭和19年)1月31日敷設艇より名称変更。
- 掃海特務艇
- 1920年(大正9年)4月1日掃海艇として特務艇の類別に新設。当初は一等、二等の区別あり。
- 1923年(大正12年)掃海艇より名称変更。
- 1931年(昭和6年)5月30日等級を廃止。
- 潜水艦母艇
- 1920年(大正9年)4月1日特務艇の類別に新設。
- 駆潜特務艇
- 1933年(昭和8年)5月22日駆潜艇として特務艇の類別に新設。
- 1940年(昭和15年)4月1日駆潜艇より名称変更。
- 哨戒特務艇
- 1940年(昭和15年)3月30日哨戒艇として特務艇の類別に新設。
- 1943年(昭和18年)2月15日哨戒艇より名称変更。
- 電纜敷設艇
- 1940年(昭和15年)10月24日特務艇の類別に新設。
- 魚雷艇
- 1941年(昭和16年)6月26日特務艇の類別に新設。
- 海防艇
- 1945年(昭和20年)6月30日特務艇の類別に新設。
その他
- 雑役船
- 1916年(大正5年)5月17日雑役船舟を雑役船と改称
廃止もしくは名称変更された類別
艦艇
軍艦
- 巡洋戦艦
- 1912年(大正元年)8月28日軍艦の類別に新設。
- 1931年(昭和6年)5月30日廃止。
- 通報艦
- 1898年(明治31年)3月21日軍艦の類別に新設。
- 1912年(大正元年)8月28日廃止。
- 水雷母艦
- 1898年(明治31年)3月21日軍艦の類別に新設。
- 1912年(大正元年)8月28日廃止。
- 1920年(大正9年)4月1日軍艦の類別として復活。
- 1924年(大正13年)12月1日潜水母艦に名称変更。
- 急設網艦
- 1927年(昭和2年)3月2日軍艦の類別に新設。
- 1929年(昭和4年)3月22日廃止。
軍艦以外
- 水雷艇駆逐艇
- 1898年(明治31年)3月21日水雷艇の類別に新設。
- 1900年(明治33年)6月22日名称を駆逐艦とし艦艇の類別に変更する。
- 潜水艇
- 1905年(明治38年)1月23日水雷艇の類別に新設。
- 1905年(明治38年)12月12日艦艇の類別に変更。
- 1916年(大正5年)8月4日等級(一等、二等)を制定。
- 1919年(大正8年)4月1日潜水艦に名称変更。
- 急設網艦
- 1927年(昭和2年)3月2日軍艦の類別に新設。
- 1929年(昭和4年)3月22日廃止。
艦艇以外
- 運送船
- 1905年(明治38年)12月12日新設。
- 1916年(大正5年)5月17日特務船の類別に変更。
- 1920年(大正9年)4月1日運送艦に名称変更。
- 病院船
- 1905年(明治38年)12月12日新設。
- 1916年(大正5年)5月17日廃止。
- 工作船
- 1905年(明治38年)12月12日新設。
- 1916年(大正5年)5月17日特務船の類別に変更。
- 1920年(大正9年)4月1日工作艦に名称変更。
- 敷設船
- 1916年(大正5年)5月17日特務船の類別に新設。
- 1920年(大正9年)4月1日廃止。(代わりに敷設艦と敷設艇を新設)
- 捕獲網艇
- 1927年(昭和2年)3月2日特務艇の類別に新設。
- 1929年(昭和4年)3月22日廃止。
- 雑役船舟
- 1916年(大正5年)5月17日雑役船舟を雑役船と改称
各年代の代表的な艦艇類別
1871年(明治4年)11月5日(運送船は1873年(明治6年)5月17日)
1886年(明治19年)7月13日まで。艦艇類別は無く軍艦と運送船に大別するのみ[2]
軍艦 (一等、二等、三等、四等、五等、六等、七等) - 乗組員の人員数によって類別
運送船 (四等、五等、六等、七等) - 排水量によって類別
1890年(明治23年)8月12日
軍艦と運送船の類別を廃止し、第一種から第五種へ類別[2]
第一種 - 戦闘航海の任務に耐える軍艦
第二種 - 水雷艇
第三種 - 戦闘航海の任務に耐えない軍艦
第四種 - 運送船・曳船・小蒸気船
第五種 - 倉庫船・荷船・雑船
1896年(明治29年)4月1日
第一種から第五種の類別を廃止し、下記の4種へ類別[2]
第一種軍艦 - 戦闘航海の任務に耐える軍艦
第二種軍艦 - 戦闘航海の任務に耐えないが常務を帯び航行可能な軍艦- 水雷艇
- 雑役船舟
1898年(明治31年)3月21日
「海軍軍艦及水雷艇類別標準」の制定。上記の4種の類別は廃止[2]。
- 軍艦
戦艦 (一等、二等)
巡洋艦 (一等、二等、三等)
砲艦 (一等、二等)
海防艦 (一等、二等、三等)- 通報艦
- 水雷母艦
- 水雷艇
- 水雷艇駆逐艇
水雷艇 (一等、二等、三等、四等)
1900年(明治33年)6月22日
「海軍艦艇類別標準」制定。「海軍軍艦及水雷艇類別標準」は廃止。
- 艦艇
- 軍艦
戦艦 (一等、二等)
巡洋艦 (一等、二等、三等)
砲艦 (一等、二等)
海防艦 (一等、二等、三等)- 通報艦
- 水雷母艦
- 駆逐艦
水雷艇 (一等、二等、三等、四等)
- 軍艦
1912年(大正元年)8月28日
通報艦廃止など大幅な改訂。
- 艦艇
- 軍艦
- 戦艦
- 巡洋戦艦
巡洋艦 (一等、二等)
砲艦 (一等、二等)
海防艦 (一等、二等)
- 駆逐艦
- 潜水艇
水雷艇 (一等、二等)
- 軍艦
- 工作船
- 運送船
- 病院船
- 雑役船舟
1920年(大正9年)4月1日
「海軍特務艦艇類別標準」制定、航空母艦新設など大幅な改訂。
- 艦艇
- 軍艦
- 戦艦
- 巡洋戦艦
巡洋艦 (一等、二等)
砲艦 (一等、二等)
海防艦 (一等、二等)- 航空母艦
- 敷設艦
- 水雷母艦
駆逐艦 (一等、二等、三等)
潜水艦 (一等、二等、三等)
水雷艇 (一等、二等)
- 軍艦
- 特務艦艇
- 特務艦
- 工作艦
- 運送艦
- 特務艇
敷設艇 (一等、二等、三等)
掃海艇 (一等、二等)- 潜水艦母艇
- 特務艦
- 雑役船
1931年(昭和6年)5月30日
巡洋戦艦廃止など大幅な改訂。
- 艦艇
- 軍艦
- 戦艦
巡洋艦 (一等、二等)- 砲艦
- 海防艦
- 航空母艦
- 敷設艦
- 潜水母艦
- 練習戦艦
- 練習巡洋艦
駆逐艦 (一等、二等)
潜水艦 (一等、二等)- 水雷艇
- 掃海艇
- 軍艦
- 特務艦艇
- 特務艦
- 工作艦
- 運送艦
- 砕氷艦
- 測量艦
- 練習特務艦
- 標的艦
- 特務艇
- 敷設艇
- 掃海特務艇
- 潜水艦母艇
- 特務艦
- 雑役船
1941年(昭和16年)6月26日
開戦時の類別。その後海防艦(1942年)と砲艦(1944年)は軍艦の類別から外れる。
- 艦艇
- 軍艦
- 戦艦
巡洋艦 (一等、二等)- 砲艦
- 海防艦
- 航空母艦
- 敷設艦
- 潜水母艦
- 練習戦艦
- 練習巡洋艦
- 水上機母艦
駆逐艦 (一等、二等)
潜水艦 (一等、二等)- 水雷艇
- 掃海艇
- 駆潜艇
- 軍艦
- 特務艦艇
- 特務艦
- 工作艦
- 運送艦
- 砕氷艦
- 測量艦
- 練習特務艦
- 標的艦
- 特務艇
- 敷設艇
- 掃海特務艇
- 潜水艦母艇
- 駆潜特務艇
- 哨戒艇
- 電纜敷設艇
- 魚雷艇
- 特務艦
- 雑役船
脚注
^ 国立公文書館デジタルアーカイブ 『艦艇類別標準ヲ改正ス』画像3
- ^ abcd日本海軍史 第7巻 1995, pp. 460.
参考文献
- 片桐大自『聯合艦隊銘銘伝 全860余隻の栄光と悲劇』(光人社、1993年新装版) ISBN 4769803869
- 『日本軍艦史』(海人社『世界の艦船』1995年8月号増刊 No.500)
国立公文書館デジタルアーカイブ
- 件名 『艦艇類別標準ヲ改正ス』
- 『日本海軍史』 海軍歴史保存会、第一法規出版、1995年。ISBN 4-474-10058-1。
関連項目
- 大日本帝国海軍艦艇一覧
外部リンク
- 艦艇類別標準
- 日本海軍艦艇類別