熱力学第二法則








熱力学第二法則(ねつりきがくだいにほうそく、英: second law of thermodynamics)は、エネルギーの移動の方向とエネルギーの質に関する法則である。またエントロピーという概念に密接に関係するものである。この法則は科学者ごとにさまざまな言葉で表現されているが、どの表現もほぼ同じことを示している。


例えば、電気エネルギーが電熱線を使って熱エネルギーに変換するが、電熱線に熱エネルギーを与えても、電気エネルギーには変換しないことは経験上知られている。つまり、電気エネルギーは質の高いエネルギーであるが、熱エネルギーの質は低い。




目次






  • 1 法則の表現


  • 2 歴史


    • 2.1 マックスウェルの悪魔と情報理論


    • 2.2 ボルツマン




  • 3 現代における熱力学第二法則の展開


    • 3.1 注釈




  • 4 関連項目


  • 5 外部リンク





法則の表現


この法則には様々な表現がある。




クラウジウスの法則

低温の熱源から高温の熱源に正の熱を移す際に、他に何の変化もおこさないようにすることはできない。


トムソンの法則あるいはケルビンの法則

一つの熱源から正の熱を受け取り、これを全て仕事に変える以外に,他に何の変化もおこさないようにするサイクルは存在しない。


オストヴァルトの原理

ただ一つの熱源から正の熱を受け取って働き続ける熱機関(第二種永久機関)は実現不可能である。

クラウジウスの不等式


n個の熱源を考え、温度Tiの熱源i(1≤in)からQiの熱を受け取り、その総和分の仕事i=1nQi{displaystyle sum _{i=1}^{n}Q_{i}}sum _{{i=1}}^{n}Q_{i}をするサイクルを作ると、i=1nQiTi≤0{displaystyle sum _{i=1}^{n}{frac {Q_{i}}{T_{i}}}leq 0}sum _{{i=1}}^{n}{frac  {Q_{i}}{T_{i}}}leq 0である(i→∞の極限を考えると、熱源の温度をTe、受け取る熱をQとすればd′QTe≤0{displaystyle oint {frac {d'Q}{T_{e}}}leq 0}oint {frac  {d'Q}{T_{e}}}leq 0)。

エントロピー増大則

断熱系において不可逆変化が生じた場合、その系のエントロピーは増大する。


これらの表現は全て同値である。まず、オストヴァルトの原理はトムソンの法則と全く同じ主張をしている。クラウジウスの法則とトムソンの法則は、それぞれの反例となるサイクルを認めると、カルノーサイクルとの合成サイクルを作ることにより互いの反例が生じてしまう。つまり対偶を示すことにより同値であることが示せる。クラウジウスの不等式はカルノーサイクルを連結し合成サイクルを作ることによって、トムソンの法則と、それより導かれるカルノーの定理を用いて示せ、またクラウジウスの不等式においてn=1としたものはトムソンの法則そのものである。熱力学では伝統的にはクラウジウスの不等式を用いてエントロピーを定義し、それが増大することが証明されるが、エントロピーを他の方法を用いて定義し、かつエントロピー増大則を原理として認めれば、他の諸原理を示すことができる。これは拡散問題とも密接に通じているが深く模索した国内の学者はすくない。



歴史



マックスウェルの悪魔と情報理論




ボルツマン



統計力学解釈


ボルツマンは、1872年H定理による熱力学第二法則の証明を発表した。しかし下記の時間の矢のパラドックスを指摘され、その証明の欠陥が指摘されることになった。しかし、その後その業績を引き継ぎGibbsが完成させた熱力学は化学反応や合金設計などの強力な基礎理論と発展している。

時間の矢のパラドックス


ヨハン・ロシュミットによる「時間対称的な力学から不可逆過程が導かれるはずがない」という批判。







現代における熱力学第二法則の展開


現時点で「熱力学第二法則」は、データによる検証という意味では正しいが、証明(物理の証明とは、ある法則を別の独立した物理法則から導くこと。ここではミクロな物理法則から、マクロな法則である熱力学第二法則を導くこと。)は未完成であり、統計物理学の懸案事項の一つとなっている。本法則を確立するために、「時間の矢のパラドックス」を解決し、「マックスウェルの悪魔」を否定し、かつ「統計的にエントロピーが増大すること」を証明することが必要となる。ここでは、この展開について説明する。



時間の矢のパラドックス

1993年に提案された「ゆらぎ定理」を用いる、時間の矢のパラドックスの解釈が提案されている。これは、時間の矢のパラドックスの解決の一つとして挙げられている。

マクスウェルの悪魔の否定

マクスウェルの悪魔は情報処理を行っており、「ランダウアーの原理」により、n [bit] の情報を消去するのに kln n のエントロピーが増大し、熱力学第二法則に反しないと説明されている(k はボルツマン定数)。なお、ランダウアーの原理の統計力学的な証明は、特殊な形状のメモリについてはJarzynski等式を用いてなされているが、一般的な場合についてはなされていない。

エントロピー増大の証明

現在下記の証明候補が挙げられている。

Jarzynskiの不等式による証明(要確認)





ファインマンのブラウン・ラチェット




上記らは、情報そのものに熱力学的な値が存在すると主張するためのものである。この試みが続いているのは、熱力学第二法則のマクロ的な結論を回避するためである[注釈 1]







注釈





  1. ^ 早稲田大学第9代材料技術研究所所長加藤榮一工学博士の主張






関連項目




  • 熱力学

    • 熱力学第零法則

    • 熱力学第一法則

    • 熱力学第三法則



  • 統計力学

  • 物理学

  • 粗視化

  • 散逸構造

  • 情報理論


  • 不可逆性問題、H定理

  • 最大エントロピー原理



外部リンク




  • 熱力学第二法則の量子限界 (英語)


  • 熱力学第二法則の量子限界第一回世界会議 (英語)












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