卵かけご飯
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卵かけご飯 | |
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卵かけご飯と漬物、お吸い物 | |
別名 | TKG |
種類 | ご飯 |
フルコース | メインディッシュ |
発祥地 | ![]() |
難易度 | ![]() |
提供時温度 | 温かい |
主な材料 | 米、鶏卵、醤油 |
その他お好みで | 刻みネギ、海苔、鰹節 |
類似料理 | 目玉焼き丼、雑炊 |
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卵かけご飯(たまごかけごはん、卵掛け御飯、TKG)は、飯に非加熱の鶏卵を掛けた飯料理である。調味料として醤油などが使用される[1][2][3]。
卵を生のまま用いること、主食の飯と混ぜて食べることなどから、日本特有の食文化とされる[4]。近年は外国人が、日本を訪れた機会や、日本の衛生基準に基づいた輸出鶏卵(温泉卵を含む)を購入して味わう例も見られる[5]。
目次
1 歴史
2 卵の生食
2.1 日本における卵の流通
2.2 サルモネラ菌
2.3 タンパク質の吸収性
2.4 卵白の摂取による影響
3 日本の食文化の中での位置づけ
3.1 現代の料理として
4 調理と味付け
4.1 卵かけご飯専用醤油
4.2 卵かけご飯専用調味材
5 関連イベント
6 関連資料・作品
7 脚注
8 参考文献
8.1 書籍
9 関連項目
10 外部リンク
歴史
古来より日本人が食する動物性の食品は、魚介類が中心であった。仏教の不殺生戒の影響(ただし誤解もある)と、稲の神聖視によって肉が穢れとみなされたことの影響によって、獣肉や鳥肉の摂取は稀であった。家畜化されたニワトリは弥生時代にブタとともに日本列島へ伝来するが、天武天皇・聖武天皇の代にはニワトリをはじめとする殺生禁断令の詔が発せられ、ニワトリの卵も避けるべきとされた[6]。
戦国時代から江戸時代にかけて、西洋人が来航した西日本では肉食とともに卵を食する文化が伝来し、カステラやボーロなど鶏卵を使用した南蛮菓子も伝来した[7]。
江戸後期の天保9年(1838年)には鍋島藩の『御次日記』において、客人に饗応された献立のなかに「御丼 生玉子」が見られる[8]。
近代に入った1877年頃、日本初の従軍記者として活躍し、その後も数々の先駆的な業績を残した岸田吟香(1833年 - 1905年)が卵かけご飯を食べた日本で初めての人物とされ、周囲に卵かけご飯を勧めたとされている[9][10]。その後の第二次世界大戦後の食糧難の時期は鶏卵は希少品となったものの、昭和30年以降、卵が庶民の味となってからは、味や栄養面で注目され、食卓の人気者となったという[10]。
卵の生食
現代日本では卵は生食できる食品として認知されている。日本以外の国では韓国のユッケおよびヨーロッパのタルタルステーキで生卵と生肉や他の具材をかき混ぜる料理、あるいは食材の一部(フランスのミルクセーキなど)としての他は、生食する食習慣は独特とされる[要出典]。ほかに、薬用として卵が生食される[11]ことがある。
世界各地域では、卵を食す場合は完全に火を通した調理法が一般的である。[要出典]日本以外の文化圏で育った人にとって、生卵を食する習慣はカルチャーショックであり、時にはゲテモノ食と映る可能性もある。[要出典]
日本における卵の流通
日本の国内産の鶏卵は通常、厚生労働省の定める「衛生管理要領」に基づき食品消毒用次亜塩素酸水溶液など殺菌剤で洗浄を行うなど病原体の付着を防ぐ安全のための措置が講じられ、卵選別包装施設でパック詰めされる[12]。日本卵業協会によると、パック後2週間(14日)程度を年間を通して賞味期限としている所が多い[13]。このような流通上の努力によりサルモネラ菌に感染する卵を減らす努力をしている[要出典]。
サルモネラ菌
元来、生卵はサルモネラ食中毒などを起こしやすく、安全に食べられる地域は日本など一部に限られている。日本国外では卵の生食で食あたりする日本人が毎年発生するが、生食を前提にしている日本では鶏卵農家などによる卵の完全洗浄といった衛生管理全般が行き届いており、サルモネラ食中毒は2000年代以降に減少傾向を示している。
サルモネラ属菌はニワトリの腸管に存在していることが多く、産卵後に糞便などから卵殻に付着する。日本では、GPセンター(Grading〈選別〉・Packing〈パック詰め〉を行う工場)での選別時に次亜塩素酸ソーダによる殺菌処理を入れることもある[14]。生卵を食べる場合、ひび割れた卵[15]や割れた卵、割ってから時間の経った卵を使用するのは危険である。ただし、産卵後の汚染以外にも、菌を保持している親鶏から卵巣や卵管を経由して菌が卵内に侵入するという感染経路もある。
アメリカ食品医薬品局 (FDA) [16]は食中毒を避けるための提唱として、生卵の入手の際には殻が割れていないことを確認することや、調理の際には十分に加熱することを挙げている。
タンパク質の吸収性
タンパク質の生体利用率は生卵で51%、加熱された卵では91%であり、生卵のタンパク質の吸収率は、加熱された卵のタンパク質と比較して半分近く吸収率が低い[17]。
卵白の摂取による影響
卵白には卵黄に多く含まれているコレステロールを抑制する作用があるとする研究発表がある[18]。
一方、生卵白に含まれるアビジンにはビオチンの吸収を阻害する性質があり、生卵白を長期間にわたり継続して大量に摂取することによりビオチン欠乏症を発症する危険性があることを指摘する研究発表も出されている[19]。
日本の食文化の中での位置づけ
現代の料理として
料理研究家栗原はるみは、2004年に発刊した外国人向けの料理書『ジャパニーズ・クッキング』で、卵かけご飯を紹介している。このように、調理を施すか、複雑な調理方法を用いるか否かによる「料理 (Cooking)」の定義は定かではない。
2008年には、岡山県久米郡美咲町に、卵かけご飯を中心のメニューとした定食店が開店した[9][20]。美咲町は卵かけご飯を日本で最初に食べたとされる岸田吟香の出生地でもある[9][20]。
2009年10月10日には東京都の日比谷(行政地名としては有楽町一丁目)に卵かけご飯専門店が開店した[21][22][23]。
2000年代後半には、卵の生食習慣がない香港に向けて日本の食文化である「卵かけご飯」の市場開拓を目指す動きがある[24]。
生卵は冷凍保存できないことから長期間の保存が難しい。南極観測隊では補給物資として半年振りに振舞われた生卵で卵かけご飯を作る隊員もいる[25]。
調理と味付け
「卵かけご飯専用醤油」の一例(おたまはん関東風)
卵かけご飯には、飯(主に米飯)と卵以外に、何かしらの味付けをして食べることが多い。醤油やポン酢など醤油系調味料、卵以外に加える具など様々である[26]。
卵をどのような状態にするかもバリエーションがある。卵を割って、ホイップする機械も市販されている[27]。
卵かけご飯専用醤油
卵かけご飯に合わせた調味料として、卵かけご飯専用醤油も開発されている。醤油をベースに、昆布や鰹節のうま味(出汁)を加え、卵との調和を向上させるために甘味を加えてある。2000年代以降に数十社から商品化・市販され、メーカーによっては「関東風」「関西風」など細分化されている[28]。
おたまはん(雲南市の吉田ふるさと村が開発、2002年発売)[29]
- たまごにかけるお醤油(福山市の寺岡有機醸造が開発)[30]
- 玉子かけご飯にかける醤油(熊本市の濱田醤油が開発)[31]
- ヒゲタ たまごかけご飯にどうぞ!(醤油メーカー大手のヒゲタ醤油が発売)[32]
などが販売されている。
卵かけご飯専用調味材
卵かけご飯に合うように、または独自の風味を出すように調合された調味材も存在している。
- 卵かけご飯専用ふりかけ[33][34]
- おうちで 牛丼風 たまごかけご飯(ブルドックソース)[35][36]
関連イベント
- 日本たまごかけごはんシンポジウム
島根県雲南市において卵かけご飯の魅力を語り合うシンポジウム。第1回は2005年10月28日・29日・30日に開かれた。これは卵かけ専用の醤油「おたまはん」を同市の第三セクター「吉田ふるさと村」が開発したことに起因するものである。- シンポジウムの内容は歴史や魅力について語り合うもので、卵かけご飯にまつわる思い出や料理法が募集された。
- 「たまごかけごはんの日」が10月30日に制定され、日本記念日協会にも認定された。
- その後も毎年開催されており、2018年10月29日には「《第14回》日本たまごかけごはんシンポジウム」が開催された。
- アスパムたまごかけご飯フェア(2009年4月25日 - 5月6日、9月19日 - 23日)
青森県観光物産館アスパムを会場として、第1回が2009年4月25日 - 5月6日に、第2回が同年9月19日 - 23日に開催された。
関連資料・作品
- 『365日たまごかけごはんの本』(読売連合広告社、2007年)では365種類の卵かけご飯を紹介している。その中で「T.K.G.」をたまごかけごはんの呼称(「醤油T.K.G.」や「チーズサンシャインT.K.G.」など)として使用している。T.K.G.とはもともと著者の一人である森田明雄が、編集作業の簡素化のために生み出した言葉で、この本ではごはんに生卵をかけた一般的なたまごかけごはんではなく、本文で掲げられている「おきて」に則った自分オリジナルの創作たまごかけごはんのことを「T.K.G.」と呼んでいる[37]。著・編集はT.K.G.プロジェクト。
司馬遼太郎の小説『翔ぶが如く』には、西郷隆盛が卵かけご飯を好み、明治維新以降、夕食事にしばしば食したという旨の記述があるが、史実では無く司馬の創作と推測される。- 携帯電話のゲームにも登場している。Mobage(旧称: モバゲータウン)で提供されているビストロワールドは、世界の料理を調理して提供するソーシャルゲームであるが、2011年12月にイベント料理として「TKG」が登場している。
脚注
^ イセ食品株式会社、全国のたまごかけごはん
^ T.K.G.プロジェクト (2007)
^ 味の素KK、AjiPanda、We love たまごかけご飯
^ 日本、及び諸外国における鶏卵・液卵のSalmomella汚染状況
^ 「卵かけご飯TKG G外国人に新鮮 Kこだわりの卵 T定着の兆し」『朝日新聞』夕刊2018年11月16日(1面)2019年1月12日閲覧。
^ 江後 (2011) p.169
^ 江後 (2011) pp.169-170
^ 江後 (2011) p.171
- ^ abc"たまごかけごはん"の店「食堂かめっち。」ホームページ
- ^ ab原 (2010) p.86
^ 365日、たまごかけごはんが食べたい!? エキサイトニュース、2008年8月8日
^ “東邦微生物病研究所 “卵の殺菌処理””. 2018年9月18日閲覧。
^ “日本卵業協会 “卵の賞味期限はどれくらいですか?””. www.nichirankyo.or.jp. 2018年9月18日閲覧。
^ 畜産ZOO鑑、GPセンター
^ 卵による食中毒を家庭でも予防しましょう オホーツク総合振興局保健環境部
^ Playing it Safe With Eggs, FDA(2010.1.16収載)
^ Evenepoel, P., Geypens, B., Luypaerts, A., Hiele, M., Ghoos, Y., & Rutgeerts, P. (1998). Digestibility of Cooked and Raw Egg Protein in Humans as Assessed by Stable Isotope Techniques. The Journal of Nutrition, 128 (10), 1,716-1,722. 要約
^ 奥浦朋子・木村守・小田裕昭「卵白タンパク質による高コレステロール血症改善効果のメカニズム」 (PDF)
^ 柴田克己 他 「成人におけるビオチンの目安量についての検討」『日本人の食事摂取基準(栄養所要量)の策定に関する基礎的研究 平成16年度~18年度 総合研究報告書』 (PDF)
- ^ ab岸田吟香にあやかった卵かけご飯の店オープン 岡山・美咲町 MSN産経ニュース、2008年1月23日 Archived 2008年9月2日, at the Wayback Machine.
^ 日比谷に卵かけご飯専門店―夜は305円均一の居酒屋に業態転換 銀座経済新聞、2009年10月24日
^ たまごかけごはん専門店『たまごん家(ち)』で朝ごはんしてきた! ロケットニュース24、2009年11月3日
^ 全品305円の"卵かけごはん居酒屋"、朝食スポットとしても外朝族に人気 マイコミジャーナル、2009年12月28日
^ 『卵かけご飯』香港参上 養鶏会社(高岡)が試食販売 好評 中日新聞、2009年6月22日
^ 山口東京理科大学 南極昭和基地からの手紙、「第50次南極地域観測隊が到着」
^ 「なにコレ罪深すぎ…」醤油を使わないのに味わい深い絶品卵かけご飯レタスクラブニュース(2018年5月8日)2019年1月12日閲覧。
^ 【買い物上手】大人も楽しむクッキングトイ「究極」求めかきまわせ/走る電車が寿司運ぶ『日本経済新聞』朝刊2018年9月22日・別刷り(日経プラス1)5面。
^ 「玉子かけご飯」から「アイスクリーム」専用まで “個性派醤油”50本を総チェック!〔3〕 日経トレンディネット 2007年12月28日
^ 卵かけご飯には「おたまはん」!おにぎり食べるなら「おにぎりみそ」!ご飯を美味しく食べるなら!【吉田ふるさと村 だんだん市場】
^ 寺岡家の有機醤油
^ 濱田醤油株式会社、醤油加工品
^ “たまごかけご飯”や“刺身”をおいしく食べる専用しょうゆ「ヒゲタ たまごかけご飯にどうぞ!」「ヒゲタ さしみ醤油」新発売! キッコーマン ニュースリリース 2008年2月1日
^ 丸美屋、卵かけごはん専用のふりかけを発売 日経トレンディネット、2009年1月19日
^ ふりたま(卵かけご飯専用ふりかけ)
^ 「おうちで 牛丼風 たまごかけご飯130g」 MSN産経ニュース 2010年1月28日
^ おうちで 牛丼風 たまごかけご飯(ブルドックソース)
^ 365日たまごかけごはんの本
参考文献
書籍
- 魚柄仁之助『食べかた上手だった日本人―よみがえる昭和モダン時代の知恵』2008年 ISBN 9784000237796
- 江後迪子『長崎奉行のお献立―南蛮食べもの百科』吉川弘文館、2011年
- 杉浦正著『岸田吟香―資料から見たその一生』汲古書院、1996年 ISBN 9784762950193
- 原康明他編『調味料の基礎知識』エイ出版社〈食の教科書〉、2010年 ISBN 978-4-7779-1685-6
- 松本仲子「江戸時代の料理本にみるたまご料理について」1992年、『日本家政学会誌』、pp.903-913
- T.K.G.プロジェクト 『365日たまごかけごはんの本』 読売連合広告社、2007年。ISBN 9784990378806。
関連項目
- 日本料理
- 醤油かけご飯
- ねこまんま
- B級グルメ
- チキンラーメン
- オロナミン・セーキ
- 温泉卵
- すき焼き
- 釜玉うどん
- 鶏卵
- ビオチン
外部リンク
臥竜塾 - 生卵 藤森平司、2007年3月9日
冷凍卵かけごはん・冷凍卵の目玉焼き 大石寿子著、AllAbout、2008年7月12日
たまごかけごはん世界選手権 大石寿子著、AllAbout、2008年9月3日
「たまごかけご飯」ブーム 各地に専門店が登場 J-CASTニュース、2009年2月1日
「卵かけご飯」を輸出したい!ターゲットは海外富裕層 読売新聞、2009年4月7日
「卵かけご飯」佐賀市の新名物に 商工会議所がPR 佐賀新聞、2009年7月7日
卵によるサルモネラ食中毒の発生防止について 厚生労働省
日本たまごかけごはんシンポジウム(〜2016年8月)
日本たまごかけごはんシンポジウム - Facebook
考えるパン - 魯山人の生卵かけごはん 戸矢学著
岸田吟香について - 日本で最初に生卵をご飯にかけて食べた人 美咲町旭文化会館
Playing it Safe With Eggs FDA
「たまご」で町おこし 美咲町役場産業観光課
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