カラスウリ
カラスウリ | |||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
![]() 日没後開花した花 | |||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||
学名 | |||||||||||||||||||||
Trichosanthes cucumeroides | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
カラスウリ |
カラスウリ(烏瓜、Trichosanthes cucumeroides)はウリ科の植物で、つる性の多年草。朱色の果実と、夜間だけ開く花で知られる。地下には塊根を有する。
目次
1 概要
2 生態
2.1 昆虫との関係
3 利用
4 近縁種
4.1 キカラスウリ
4.2 ヘビウリ
5 画像
6 カラスウリの登場する作品
6.1 小説
6.2 児童書
6.3 エッセイ
6.4 童謡
6.5 童話
6.6 漫画
7 参考文献
8 脚注
9 外部リンク
概要
原産地は中国・日本で、日本では本州・四国・九州に自生する。林や藪の草木にからみついて成長する。葉はハート型で表面は短い毛で覆われる。雌雄異株で、一つの株には雄花か雌花かのいずれかの実がつく。別名:玉章(たまずさ)・ツチウリ・キツネノマクラ・ヤマウリ。
生態
4月〜6月にかけて塊根から発芽、あるいは実生する。花期は夏で、7月〜9月にかけての日没後から開花する。雄花の花芽は一ヶ所から複数つき、数日間連続して開花する。対して雌花の花芽は、おおむね単独でつくが、固体によっては複数つく場合もある。花弁は白色で主に5弁(4弁、6弁もある)で、やや後部に反り返り、縁部が無数の白く細いひも状になって伸び、直径7〜10cm程度の網あるいはレース状に広がる。花は翌朝、日の出前には萎む。こうした目立つ花になった理由は、受粉のため夜行性のガを引き寄せるためであると考えられており、ポリネーターは大型のスズメガである。カラスウリの花筒は非常に長く、スズメガ級の長い口吻を持ったガでなければ花の奥の蜜には到達することはできず、結果として送粉できないためである。
雌花の咲く雌株にのみ果実をつける。果実は直径5〜7cmの卵型形状で、形状は楕円形や丸いものなど様々。熟する前は縦の線が通った緑色をしており光沢がある。10月から11月末に熟し、オレンジ色ないし朱色になり、冬に枯れたつるにぶらさがった姿がポツンと目立つ。鮮やかな色の薄い果皮を破ると、内部には胎座由来の黄色の果肉にくるまれた、カマキリの頭部に似た特異な形状をした黒褐色の種子がある。この果肉はヒトの舌には舐めると一瞬甘みを感じるものの非常に苦く、人間の食用には適さない。鳥がこの果肉を摂食し、同時に種子を飲み込んで運ぶ場合もある。しかし名前と異なり、特にカラスの好物という観察例はほとんどない。

栄養繁殖の状況
上に突き出しているのが、前年土中にもぐりこんだ蔓の跡
地下にはデンプンやタンパク質をふんだんに含んだ芋状の塊根が発達しており、これで越冬する。夏の間に延びた地上の蔓は、秋になると地面に向かって延び、先端が地表に触れるとそこから根を出し、ここにも新しい塊根を形成して栄養繁殖を行う。
名前については、カラスが好んで食べる、ないし熟した赤い実がカラスが食べ残したように見えることから命名された等、諸説[1]ある。
昆虫との関係
- ミスジミバエ
- カラスウリ属の野生植物の雄花にはミバエ科のハエであるミスジミバエ Zeugodacus scutellatus (Hendel, 1912) の雌が飛来し、産卵する。ミスジミバエの幼虫を宿して落花した雄花はミバエの幼虫1個体を養うだけの食物量でしかないが、ミスジミバエの1齢幼虫の口鉤(こうこう:ハエの幼虫独特の口器で、大顎の変化した1対の鉤状の器官)は非常に鋭く発達しており、他の雌が産みつけた卵から孵化した1齢幼虫と争って口鉤で刺し殺し、餌を独占する。

実の中のミバエの幼虫
- ミバエ類
- カラスウリ類の結実後の実にのみ産卵する種がある。例えばキカラスウリの果実にはカボチャミバエ Dacus (Paradacus) depressus Shiraki の幼虫が寄生して内部を食害する。
利用
種子はその形から打ち出の小槌にも喩えられる。そのため財布に入れて携帯すると富みに通じる縁起物として扱われることもある。中国では医薬原料として活用されており、果実・種子・塊根ともに生薬として利用されている[2][3]。かつては日本でも、しもやけの薬として実から取れるエキスが使用された若い実は漬物にするほか、中身を取り出し穴をあけてランタンにする遊びに使われる。また、カラスウリの根を煎じて、ぜんそく薬にしたり、果汁を手足などのひびに塗ったりするという伝統的民間療法が長野県阿智、喬木村などに残っている[4]。近年ではインテリアなどの用途として栽培もされており、一部ではカラスウリの雌雄両株を出荷する農園も存在する。
近縁種

赤熟過程のヘビウリの実
キカラスウリ
キカラスウリ(Trichosanthes kirilowii var. japonica)は、生態や花・葉の形状からカラスウリと混同される事が多い。かつては、様々な用途に利用された。
ヘビウリ
ヘビウリ (Trichosanthes cucumerina:英語: snake gourd) はインド原産の近縁種で、実は細長くのびながらくねくねと湾曲し、ヘビそっくりの姿になる。カラスウリ同様赤橙色に熟す。
東南アジアの一部では若い実を食用にする。ゴーヤを淡白にしたような味である。日本では主に観賞用に栽培される。
画像
蕾と開花中の花
全開した雄花(以下、左端とは別個体)
全開した雌花
雄花の側面
雌花の側面
翌朝萎んだところ
受粉、結実した雌花
未熟な果実 ウリボウと呼ばれる
果実:2005年10月23日
果実(拡大)
種子
種子(拡大)
塊根 (♂)
塊根(♀)から発芽した様子
土中の塊根の様子
カラスウリの登場する作品
小説
- 『少年アリス』長野まゆみ
- 『酔いどれ小籐次留書』佐伯泰英 幻冬舎
- 『幻の朱い実<上><下>』石井桃子岩波書店<上>ISBN 9784000021456 <下>ISBN 9784000021463
児童書
- 『カラスウリのひみつ』真船和夫 / 文 下田智美 / 絵 偕成社 ISBN 4-03-634630-X
エッセイ
- 『からすうりの花と蛾』寺田寅彦
童謡
- 『真赤(まっか)な秋』薩摩忠作詞・小林秀雄作曲
童話
- 『銀河鉄道の夜』宮沢賢治
漫画
- 『オチビサン 1巻』安野モヨコ 朝日新聞出版 ISBN 978-4-02-250464-7
- 『鎌倉けしや闇絵巻』第23話「谷中けしや猫絵巻」赤石路代 小学館 ISBN 978-4-09-139838-3
参考文献
草川俊「有用草木博物事典」(東京堂出版)
脚注
^ 参考・和泉晃一氏HP「草木名のはなし」カラスウリの項[1]
^ カラスウリ,きからすうり,黄烏瓜,王瓜根(おうがこん),王瓜子(おうがし),王瓜仁(おうがにん),Trichosanthes kirilowii var.japonica,ウリ科カラスウリ属 - イー薬草・ドット・コム
^ カラスウリ(王瓜・土瓜) - 日中医薬研究会・関西支部
^ 『信州の民間薬』全212頁中80頁医療タイムス社昭和46年12月10日発行信濃生薬研究会林兼道編集
外部リンク
- フラボン:カラスウリの種子画像