LaTeX
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作者 | レスリー・ランポート |
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初版 | 1985年 (1985) |
リポジトリ | github.com/latex3/latex2e |
対応OS | クロスプラットフォーム |
サポート状況 | 開発中 |
種別 | 組版処理、TeX マクロパッケージ |
ライセンス | LPPL |
公式サイト | www.latex-project.org |
LaTeX(ラテック、ラテフ)とは、レスリー・ランポートによって開発されたテキストベースの組版処理システムである。電子組版ソフトウェア TeX にマクロパッケージを組み込むことによって構築されており、単体の TeX に比べて、より手軽に組版を行うことができるようになっている。 と表記できない場合は“LaTeX”と表記する。
なお、LaTeX を基にアスキーが日本語処理に対応させたものとして日本語 LaTeX が、さらに縦組み処理にも対応させたものとして pLaTeX がある。
専門分野にもよるが、学術機関においては標準的な論文執筆ツールとして扱われている。

変換の様式。日本においては dvipdfm ではなくその拡張版の dvipdfmx を用いる場合が多い。
目次
1 読み方
2 成立の背景と開発者
3 動作環境と各種バージョン
4 特徴
5 入力と出力の具体例
6 脚注
6.1 補足
6.2 出典
7 参考文献
8 関連項目
9 外部リンク
読み方
LaTeX の生みの親レスリー・ランポートは、“LaTeX”の発音について自著の中で、
「 |
通常、TeX が「テック」と発音されているので、論理的に考えれば「ラーテック」や「ラテック」、「レイテック」などが妥当なところかもしれない。しかし、言葉というものはつねに論理的とはかぎらないので、「レイテックス」でもかまわない。 |
」 |
—Leslie Lamport(『文書処理システム LaTeX』(詳細は出典1)より) |
と述べている[1]。日本語では「ラテック」あるいは「ラテフ」と呼ばれることが多い。
成立の背景と開発者
LaTeX 以前に、“TeX”という名の数式の処理に優れる組版ソフトウェアがあり、その TeX を使ってもっと簡単に論文やレポートを作成したいという要望があった。LaTeX はその要望に応えて開発されたものであり、レスリー・ランポートが TeX の上にマクロパッケージを組み込むことで構築したものである。さらに LaTeX では、TeX の煩雑な部分の修正も行っている(たとえば、累乗根や分数の設定方法など)。また TeX やそれを基にした LaTeX は主に米国での表記法を基に作られたもので、日本の初等教育・中等教育での数式の書き方とは一部異なる[注 1][注 2]。例を挙げれば、日本の初等教育・中等教育では等号附き不等号として、「≦」と「≧」が、近似記号として「≒」が、相似記号として「∽」が用いられる。一方で TeX や LaTeX の標準では、等号附き不等号として「≤{displaystyle leq }」(
leq
または le
)と「≥{displaystyle geq }」(
geq
または ge
)が、近似記号として「≈{displaystyle approx }」(
approx
) や「∼{displaystyle sim }」(
sim
)が、相似記号として「∼{displaystyle sim }」(
sim
) が用いられる。日本で使われる記号を使う必要がある場合は、amssymb パッケージを用いることで「≦{displaystyle leqq }」(
leqq
)、「≧{displaystyle geqq }」(
geqq
)、「≒{displaystyle fallingdotseq }」(
fallingdotseq
) が使用できる。
動作環境と各種バージョン
LaTeX ソフトウェアは、LaTeX Project Public License (LPPL)[2]に規定されたライセンスで提供されたフリーソフトウェアである。現在、macOS や Solaris などの UNIX、Linux OS や BSD 系 OS や OpenSolaris などの UNIX 互換 OS、そして Microsoft Windows など、多くのオペレーティングシステム上で利用できる。
現在使われているバージョンは LaTeX2ε(ラテック・トゥー・イー) である。組版処理による表記ができないプレーンテキストや電子メールなどの場合には“LaTeX2e”と表記する[3]。古い LaTeX 2.09 を利用している場合には、LaTeX2ε への更新が推奨されている。
1993年、LaTeX の新版である LaTeX2ε がリリースされた[4]。
1995年、日本語 LaTeX2ε (pLaTeX2ε) がリリースされた。
なお、「pLaTeX2ε」は株式会社アスキーの登録商標であり、「ピーラテックツーイー」と読むのが正しいとされている。
特徴
LaTeX での文書作成と一般的なワープロソフトでの文書作成を比べると以下のような特徴が見られる。
- ファイル作成時に記述するファイル形式と閲覧ファイル形式が異なる。
ソースコードを作成してコンパイル[注 3]を行うことで、初めて DVI[注 4] や PDF[注 5] のような閲覧用のファイルを得ることができる。- 一度コンパイルを行わないとどういった出力が得られるかがわかりにくい。
- ソースコードをインクルード[注 6]することで、過去の文章を簡単に再利用できる。また、大規模な文書の場合に作業を分割して並行作業することが容易である。
- 一般的なプログラミング言語におけるライブラリに当たる、スタイルファイルを用いることで文書の表現力を拡張しやすい。
Perl や Lua などのプログラミング言語と連携させることがワープロソフトで作成されたファイルと比べて容易である。
- 組版性能が高い。DTP システムとして使用するものもいる。
- 一般向けの出版物の作成にも充分に耐えられるものであり、実際の出版例もある[5]。
- 数式の入力のためのコマンドが豊富に組み込まれており行いやすい。更に数式組版の性能は特に高い。
GUIベースのワープロソフトと比べると、CUIの操作やソースコード作成に関する知識が必要となる点で、コンピュータ初心者は敷居が高いと感じることが多い。- しかし、文書のページ数が増えてくると、画面出力の全てを自動化したソースコード作成による組版と比較して、GUI経由で文書のページを1枚毎に手作業で調整する組版は飛躍的に非効率になる。ソースコード作成方式では、文書のページ数が幾ら膨大であっても、事前に文書スタイルさえ定義されていれば、CUI上のコマンド入力で一括して全てを組版することが可能である。従って、コンピュータ上の作業自動化のメリットを知っている研究者・技術者からの受けは良い。
数式組版性能が非常に高いという特徴から、自然科学・応用科学系の中でも数学を多用する分野では学会提出の資料の標準形式として広く用いられている。雑誌に掲載するための体裁を整えたテンプレートの配布を行っている学会もある[6]。一方で化学式を多用する分野では Word 形式を奨励し、LaTeX の使用は一般的でないことがある[注 7]。
入力と出力の具体例
以下は LaTeX 用の入力の例[7]。
documentclass[12pt]{article}
title{LaTeX}
date{}
begin{document}
maketitle LaTeX{} is a document preparation system for the TeX{}
typesetting program. It offers programmable desktop publishing
features and extensive facilities for automating most aspects of
typesetting and desktop publishing, including numbering and
cross-referencing, tables and figures, page layout, bibliographies,
and much more. LaTeX{} was originally written in 1984 by Leslie
Lamport and has become the dominant method for using TeX; few
people write in plain TeX{} anymore. The current version is
LaTeXe.
newline
% This is a comment, it is not shown in the final output.
% The following shows a little of the typesetting power of LaTeX
begin{eqnarray}
E &=& mc^2 \
m &=& frac{m_0}{sqrt{1-frac{v^2}{c^2}}}
end{eqnarray}
end{document}
上記のソースコードを LaTeX で処理することで、以下のような出力が得られる。
脚注
補足
^ 日本の初等教育・中等教育での数式表記は JIS Z 8201 を基準にしている。2006年1月20日に確認が行われている JIS Z 8201-1981 (JIS Z 8201:1981) と国際標準である ISO 31-11:1992 とでは、表記が一部異なっている。
^ 日本の初等教育・中等教育での数式用に記号の形を調整するマクロとして、初等数学プリント作成マクロ emath がある。
^ ソースコードを DVI などの文書ファイル形式に変換すること。
^ Microsoft Word でしか開くことができなかった doc ファイルなどとは異なり、処理系に依存しないとされるファイル形式。
^ 処理系に依存しない標準規格。
^ 他のソースコードの記述を自動的に読み込む仕組み。
^ XϒMTeX や mhchem といったパッケージを利用すれば書ける。
出典
^ Leslie Lamport『文書処理システム LaTeX』Edgar Cooke・倉沢良一 監訳、大野俊治・小暮博道・藤浦はる美 訳、アスキー、1990年、5頁、ISBN 978-4-7561-0784-8.
^ LaTeX project: The LaTeX project public license
^ 奥村 & 黒木 2013, p. 4.
^ 奥村 & 黒木 2013, p. 2.
^ TeX で作られた本 — TeX Wiki
^ 例えば日本数学会や電子情報通信学会
^ ScienceSoft — LaTeX
参考文献
- 奥村, 晴彦、黒木, 裕介 『LaTeX2ε 美文書作成入門』 技術評論社、2013年、改訂第6版。ISBN 978-4-7741-6045-0。
関連項目
- 数式エディタ
- MathJax
外部リンク
CTAN: Comprehensive TeX Archive Network (英語)
LaTeX – A document preparation system - ウェイバックマシン(2008年6月30日アーカイブ分) (英語)
TeX Wiki (日本語) TeX・LaTeX に関する Wiki
MyTeXpert (日本語)
myTeXpert プロジェクト日本語トップページ (日本語)
T. Yoshinaga's LaTeX page (日本語)
LaTeX 入門 (PDF) (日本語)
LaTeXの家 (日本語)
- pLaTeX for Windows
TeXclip - ウェイバックマシン(2015年6月21日アーカイブ分) Web 上で TeX を用いて数式の画像を生成できる
らすてすでいこう (日本語)
てふますたーへの道 (日本語)
Cloud LaTeX(日本語)株式会社アカリクが運営する、Web 上で LaTeX をコンパイルできるサービス
MOEDITOR LaTeXとMarkdown(簡単に見出しなどのレイアウトを変えられる機能)を融合したエディタ
Google Colaboratory LaTeXとPythonをWeb上で使えるサービス
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