ペルセポネー








イシス・ペルセポネー像 (イラクリオンにある考古学博物館蔵)




























ペルセポネー(古希: ΠΕΡΣΕΦΟΝΗ, Περσεφόνη, Persephonē)は、ギリシア神話に登場する女神で冥界の女王である。


ゼウスとデーメーテールの娘(一説にゼウスとステュクスの娘[1])で、ハーデース(ローマ神話のプルートーに相当)の妻として傍らに座しているとされる。しばしばコレー(「乙女」の意)とも言及される(地上にいる間はコレーと呼ばれ、冥界に入るとペルセポネーと呼ばれることもある)。


ペルセフォネーとも[2]。日本語では長母音を省略してペルセポネペルセフォネとも呼ぶ。ローマ神話ではプロセルピナと呼ばれ、春をもたらす農耕の女神となっている。




目次






  • 1 神話


    • 1.1 ペルセポネーの略奪


    • 1.2 デーメーテールの怒り


    • 1.3 四季の始まり




  • 2 物語


    • 2.1 メンテー(ミント)


    • 2.2 アドーニス(アネモネ)




  • 3 その他


  • 4 脚注


    • 4.1 注釈


    • 4.2 脚注




  • 5 参考文献


    • 5.1 原典資料


    • 5.2 二次資料




  • 6 関連項目





神話



ペルセポネーの略奪




ペルセポネーの略奪 (レンブラント・ファン・レイン/画, 1631)


神話によると、ペルセポネー(当時のコレー)は、ニューサ(山地であるが、どこであるのか諸説ある)の野原でニュムペー(妖精)たちと供に花を摘んでいた[3]。するとそこにひときわ美しい水仙の花が咲いていたのである。ペルセポネーがその花を摘もうとニュムペーたちから離れた瞬間、急に大地が裂け、黒い馬に乗ったハーデースが現れ彼女は冥府に連れ去られてしまう。



デーメーテールの怒り


オリュムポスでは、ペルセポネーが行方知れずになったことを不審に思った母デーメーテールが、太陽神ヘーリオスから、ハーデースがペルセポネーを冥府へと連れ去ったことを知る[3]。女神はゼウスの元へ抗議に行くが、ゼウスは取り合わず、「冥府の王であるハーデースであれば夫として不釣合いではない」と発言した。これを聞き、娘の略奪をゼウスらが認めていることにデーメーテールが激怒し、オリュンポスを去り大地に実りをもたらすのをやめ、地上に姿を隠す。


一方、冥府に連れ去られたペルセポネーは丁重に扱われるも、自分から進んで暗い冥府に来た訳ではないため、ハーデースのアプローチに対しても首を縦に振らなかった。



四季の始まり




ペルセポネーの帰還 (フレデリック・レイトン/画, 1891)


その後ゼウスがヘルメースを遣わし、ハーデースにペルセポネーを解放するように伝え、ハーデースもこれに応じる形でペルセポネーを解放した。その際、ハーデースがザクロの実を差し出す。それまで拒み続けていたペルセポネーであったが、ハーデースから丁重に扱われていたことと、何より空腹に耐えかねて、そのザクロの実の中にあった12粒のうちの4粒(または6粒)を食べてしまった。


そして母であるデーメーテールの元に帰還したペルセポネーであったが、冥府のザクロを食べてしまったことを母に告げる。冥界の食べ物を食べた者は、冥界に属するという神々の取り決めがあったため、ペルセポネーは冥界に属さなければならない。デーメーテールはザクロは無理やり食べさせられたと主張してペルセポネーが再び冥府で暮らすことに反対するも、デーメーテールは神々の取り決めを覆せなかった。そして、食べてしまったザクロの数だけ冥府で暮らす(1年のうちの1/3(または1/2)を冥府で過ごす)こととなり、彼女は冥府の王妃ペルセポネーとしてハーデースの元に嫁いで行ったのである[4]。そしてデーメーテールは、娘が冥界に居る時期だけは、地上に実りをもたらすのを止めるようになった。これが冬(もしくは夏)という季節の始まりだという。


また、ペルセポネーが地上に戻る時期は、母である豊穣の女神デーメーテールの喜びが地上に満ち溢れるとされる。これが春という季節である。そのため、ペルセポネーは春の女神(もしくはそれに相当する芽吹きの季節の女神)とされる。ペルセポネーの冥界行きと帰還を中軸とするエレウシース秘儀は死後の復活や死後の世界における幸福、救済を保証するものだったと考えられている[5]


デーメーテールがポセイドーンとの間に産んだ娘、デスポイナと同一視されることもあり、ギリシア神話が確立される以前はポセイドーンとデーメーテールの間に産まれた子だった。そもそもペルセポネー自体が本来デーメーテールと同じ神であり、同一神格の別の面が強調されただけではないかともいわれる[6]


なおペルセポネーへの言及は『オデュッセイア』、オルペウス説話などにも見られる。



物語


このように、ペルセポネーは強制的にハーデースの妻にされてしまったが、ハーデースの妻であることを受け入れ、ギリシャ神話では夫のそばにいる場面が多い。またハーデースの恋人メンテーを厳罰に処すなど、強い嫉妬心を見せるようになった。しかしペルセポネー自身も美しい人間の男・アドーニスを深く愛し、ゼウス公認で1年の1/3の間、彼を恋人として堂々とそばにおいている。



メンテー(ミント)


コキュートス川のニュムペー、メンテーはペルセポネー以前にハーデースが愛した女性[7]


ハーデースは最初にメンテーを愛したが、後に地上からペルセポネーをさらって冥府に連れてきた。メンテーは嫉妬に狂ってペルセポネーに怒りや不満の言葉を浴びせた。自分の方がペルセポネーよりも美しいのだから、ハーデースもいずれ自分とよりを戻し、館からペルセポネーを追い出すだろう、と。しかしこの言葉が母デーメーテールの怒りを買った。メンテーはデーメーテールに足で踏みつぶされて死に、どこにでもある草ミントになった[8]。別の話によると、メンテーを踏みつけて草に変えたのはペルセポネーで、ピュロス市の東にはメンテーの名に由来する山があった[9][注釈 1]



アドーニス(アネモネ)


アッシリア王キニュラースの娘ミュラー(スミュルナ)が父王を愛し、その結果生まれたアドーニス。


この不幸な出生のアドーニスの養育を、愛の女神アプロディーテーは密かにペルセポネーに頼んだ。しかしアドーニスの美しさにペルセポネーもアドーニスを愛するようになった。そこでゼウスは1年の1/3をそれぞれアプロディーテー、ペルセポネーと暮らし、残る1/3をアドーニスが好きなように使うよう決めたのだが、アドーニスは自分の時間を全てアプロディーテーに与えた[10]。これを知ったアレースは獰猛な猪に変身し、アドーニスを殺した。この時アドーニスが流した血からアネモネが生まれ、死を悲しみアプロディーテーが流した紅涙が白薔薇を赤く染めた。



その他




  • セイレーンは、元はペルセポネーに仕えていたニュムペーで、ペルセポネーがハーデースに誘拐されると、毎日悲しんでばかりで、「恋愛もせず、泣いてばかりで許せない」、とアプロディーテーの怒りを買い、怪鳥の姿に変えられてしまったとの説もある[11]


  • プシューケーがアプロディーテーの試練により冥府に来た際、美の箱を渡したり、冥府に連れて来られたシーシュポスの3日間だけ生き返らせてくれという頼みを叶えたりするなど、冥府の女王としての描写も多数ある。

  • また、ディオニューソスにギンバイカの木と引き替えに母親のセメレーを冥府から帰している。

  • 「ペルセポネー」という名前の意味については諸説がある。

    • 「光を破壊する女」あるいは「目も眩むような光」[12]

    • 「破壊する者」[13]



  • その象徴は水仙、ザクロ[14]、蝙蝠である[15]



脚注



注釈




  1. ^ オウィディウスもペルセポネーがメンテーを香しいミントに変えたと述べている(『変身物語』10巻728行-731行)。



脚注





  1. ^ アポロードロス、第1巻1・13。


  2. ^ “ノンノス『ディオニューソス譚』第七歌 翻訳と解題”. 新潟大学. 2018年1月28日閲覧。

  3. ^ ab『ギリシア・ローマ神話辞典』p.165。


  4. ^ 『ギリシア神話』(アポロードロス)第1巻5.3


  5. ^ 『地獄』p.143。


  6. ^ 『早わかりギリシア神話』p.82。


  7. ^ オッピアヌス『漁夫訓』3巻487行。


  8. ^ オッピアヌス『漁夫訓』3巻488行-497行。


  9. ^ ストラボン、8巻3・14。


  10. ^ アポロードロス、第3巻14・4。


  11. ^ 『オデュッセイア』エウスタティウス注より。


  12. ^ フェリックス・ギラン『ギリシア神話』邦訳、p.252。


  13. ^ 『神話・伝承事典』p.624。


  14. ^ 『「聖書」と「神話」の象徴図鑑』 p.66f。


  15. ^ フェリックス・ギラン『ギリシア神話』邦訳、p.253。




参考文献



原典資料



  • 『ギリシア神話』(アポロードロス)
    • アポロドーロス 『ギリシア神話』 高津春繁訳、岩波書店〈岩波文庫 4831-4833〉、1953年4月。全国書誌番号:.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit}.mw-parser-output .citation q{quotes:"""""""'""'"}.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/65/Lock-green.svg/9px-Lock-green.svg.png")no-repeat;background-position:right .1em center}.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg/9px-Lock-gray-alt-2.svg.png")no-repeat;background-position:right .1em center}.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/aa/Lock-red-alt-2.svg/9px-Lock-red-alt-2.svg.png")no-repeat;background-position:right .1em center}.mw-parser-output .cs1-subscription,.mw-parser-output .cs1-registration{color:#555}.mw-parser-output .cs1-subscription span,.mw-parser-output .cs1-registration span{border-bottom:1px dotted;cursor:help}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/4c/Wikisource-logo.svg/12px-Wikisource-logo.svg.png")no-repeat;background-position:right .1em center}.mw-parser-output code.cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:inherit;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;font-size:100%}.mw-parser-output .cs1-visible-error{font-size:100%}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#33aa33;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-subscription,.mw-parser-output .cs1-registration,.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left,.mw-parser-output .cs1-kern-wl-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right,.mw-parser-output .cs1-kern-wl-right{padding-right:0.2em}
      53005125、
      NCID BN05599568。


  • オウィディウス『変身物語(下)』中村善也訳、岩波文庫(1984年)

  • 『オデュッセイア』(エウスタティウス注)


  • アラトス/ニカンドロス/オッピアノス『ギリシア訓叙事詩集』伊藤照夫訳、京都大学学術出版会(2007年) ISBN 4876981701

  •  ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌』飯尾都人訳、龍渓書舎(1994年)



二次資料



  • バーバラ・ウォーカー 『神話・伝承事典 - 失われた女神たちの復権』 大修館書店、1988年。
    ISBN 978-4-469-01220-0。

  • 『「聖書」と「神話」の象徴図鑑』 岡田温司監修、ナツメ社、2011年。

  • 木村点 『早わかりギリシア神話 - 文化が見える・歴史が読める』 日本実業出版社、2003年5月。
    ISBN 978-4-534-03580-6。

  • フェリックス・ギラン 『ギリシア神話』 青土社、1991年、新装版。

  • 草野巧 『地獄』 新紀元社〈Truth In Fantasy 21〉、1995年12月。
    ISBN 978-4-88317-264-1。

  • 高津春繁 『ギリシア・ローマ神話辞典』 岩波書店、1960年。



関連項目







  • ハーデース


  • デーメーテール - コレー

  • ヘカテー

  • おとめ座


  • 死と再生の神 - エレウシスの秘儀

  • 地母神


  • イザナミ - 冥府の食物を口にしたため、地上に戻れなくなったという。


  • 春ちゃん - NHKのニュース番組「ニュースウオッチ9」に登場するお天気キャラクター。ペルセポネーをモチーフに考案された。










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