アキレス腱
アキレス腱(アキレスけん、英語: Achilles' tendon、ラテン語: tendo Achillis)は、踵骨腱(しょうこつけん)とも言い、足にあるふくらはぎの腓腹筋・ヒラメ筋をかかとの骨にある踵骨隆起に付着させる腱である。人体で最も強く最大の腱で、歩行や跳躍などの運動の際に必要である。
後述の由来から、比喩的に「強者が持つ急所」を指す言葉として用いられることも多い。
目次
1 概要
2 名称の由来
3 関連
4 脚注
概要
アキレス腱は足首の後ろに存在する。ふくらはぎの中央近くからかかとにかけての部位を占め、長さは約15cmほどで最も強靭かつ太い腱である。上部ほど太く、下へ行くにしたがって細くなっている。ふくらはぎにある下腿三頭筋のうち、腓腹筋は内側頭と外側頭の二頭に分かれ、上部が大腿骨の下端に接続している一方、下部は腓腹筋の下層にある平目筋と合流してふくらはぎの半ばでアキレス腱を形成し、踵骨に接続している。
アキレス腱は歩行や疾走・跳躍などの運動の際、爪先を蹴り出す時にかかとを持ち上げたり、着地する足の爪先を地面に踏み込ませるなど重要な機能を果たしている。しかし、力をこめて踏ん張るなど瞬間的に大きな負荷がかかると、炎症やアキレス腱断裂などの外傷を起こすことがある。そのため、運動の前には丹念にアキレス腱を伸ばすストレッチングが推奨されている。また、人体中最大の腱であるにもかかわらず走行する血管が乏しく、一旦痛みが出ると難治性となりやすい[1]。
名称の由来
腱の名前はギリシア神話に登場する英雄アキレウスから取られている。
アキレウスはプティア王ペレウスとネレウスの娘テティスの間に生まれた。テティスはわが子を愛してその肉体を不死身にしようと、冥府の川ステュクスにまだ赤子であったアキレウスの全身を浸したが、その時母親がつかんでいたかかとだけが水に漬からず、かかとの部分のみ生身のままで残った。
アキレウスは長じて人中最大の英雄となり、トロイア戦争で活躍するが、ついにはパリス王子に弱点のかかとを弓で射抜かれ、これが原因となって命を落とした。この伝説からアキレス腱は致命的な弱点の代名詞ともなった。
関連
プロレスなどの格闘技で用いられる関節技に、アキレス腱固めがある。- かつては奴隷や捕虜が逃げ出さないよう、アキレス腱を切断した事例もある。
ウサギ跳びは、かつてこの腱を鍛えるのに有効とされていたが、近年のスポーツ医学では、無理な姿勢で繰り返し強度の負荷を掛けることに対する害が指摘されている。
ウシのアキレス腱は、牛筋(ぎゅうすじ)と称して、各種煮込み料理に利用される。他の動物のものも同様に食用になるが、大きさが小さいものは、わざわざ分けて料理にされる事は少ない。健康食品として広く認識されるコラーゲンが主成分であるため、栄養価値が強調されることがある。
アキレス腱反射は、脊髄反射のひとつで神経疾患の鑑別に用いられる。特にギラン・バレー症候群や筋萎縮性側索硬化症 (ALS) 、脊髄損傷で有用である。
脚注
^ 臨床雑誌整形外科≪月刊≫整形外科(Vol.62 No.1)2011年1月号