社会保険労務士
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この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。 |
社会保険労務士 | |
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英名 | Labor and Social Security Attorney |
略称 | 社労士 |
実施国 | ![]() |
資格種類 | 国家試験 |
分野 | 法律 |
認定団体 | 厚生労働省 |
等級・称号 | 社会保険労務士 |
根拠法令 | 社会保険労務士法 |
公式サイト | shakaihokenroumushi.jp |
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社会保険労務士徽章
社会保険労務士(しゃかいほけんろうむし)は、労働関連法令や社会保障法令に基づく書類等の作成代行等を行い、また企業を経営して行く上での労務管理や社会保険に関する相談・指導を行う事を職業とする為の国家資格であり、弁護士・弁理士・司法書士・税理士・行政書士・土地家屋調査士・海事代理士と共に職務上請求権が認められている8士業の一つである。
略称として「社労士」や「労務士」とも呼ばれる。ローマ字で社会保険(Syakaihoken)労務士(Roumushi)の各頭文字を取って「SR」とも置き換えられる。社会保険労務士の徽章は、菊の花弁の中央にSRの文字が付されている。素材は、純銀の台座に純金貼りが施されており、中央SR部はプラチナ製。主務官庁は厚生労働省で、もともと旧厚生省と旧労働省の共管とされていた。
- 社会保険労務士法については、以下では条数のみ記す。
目次
1 業務
2 諸形態
3 社会保険労務士試験
4 社会保険労務士としての登録
4.1 欠格事由
4.2 登録の拒否・取消し
4.3 懲戒処分
5 歴史・沿革
6 脚注
7 関連項目
8 外部リンク
業務
- 概要
社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする(第2条)。
労働及び社会保険に関する諸法令に基づき行政機関(主に労働基準監督署、公共職業安定所、年金事務所等)に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、再審査請求書その他の書類を作成すること、またこれらの申請書等の提出に関する手続を代行すること
- 「諸法令」には、労働基準法や健康保険法、厚生年金保険法等、企業の労務管理に直結するもののほか、雇用対策法、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律、障害者の雇用の促進等に関する法律、国民健康保険法、国民年金法などの法令も含むが、各種共済組合法、労働組合法は含まれない。
- 労働社会保険諸法令に基づく申請、届出、報告、審査請求、再審査請求その他の事項(厚生労働省令で定めるものに限る)について、又は当該申請等に係る行政機関等の調査若しくは処分に関し当該行政機関等に対してする主張若しくは陳述(厚生労働省令で定めるものを除く。)について、代理すること
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律6条1項の紛争調整委員会における同法5条1項のあっせんの手続及び男女雇用機会均等法18条1項、育児介護休業法52条の5第1項 及びパートタイム労働法22条1項、障害者雇用促進法の調停の手続について、紛争の当事者を代理すること
地方自治法180条の2の規定に基づく都道府県知事の委任を受けて都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律1条に規定する個別労働関係紛争(労働関係調整法第6条に規定する労働争議に当たる紛争及び特定独立行政法人等の労働関係に関する法律26条1項に規定する紛争並びに労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争を除く。)をいう。)に関するあっせんの手続について、紛争の当事者を代理すること- 個別労働関係紛争(紛争の目的の価額が120万円を超える場合には、弁護士が同一の依頼者から受任しているものに限る)に関する民間紛争解決手続(ADR法2条1号に規定する民間紛争解決手続をいう。)であって、個別労働関係紛争の民間紛争解決手続の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体として厚生労働大臣が指定するものが行うものについて、紛争の当事者を代理すること
- 3~5の手続きについて、相談に応じること、和解交渉を行うこと、和解における合意を内容とする契約を締結することを含む。
- 労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における当該電磁的記録を含み、申請書等を除く)を作成すること(1.の書類を除く)
- 事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述すること
- この陳述は、原則として当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなされる。またこの事務を受任しようとする場合の役務の提供については、特定商取引に関する法律が定める規制の対象外となる(平成27年3月30日基発0330第3号)。
- 事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること
ただし、これらの事務を行うことが他の法律において制限されている事務並びに労働社会保険諸法令に基づく療養の給付及びこれに相当する給付の費用についてこれらの給付を担当する者のなす請求に関する事務(レセプトの作成等)は含まれない。
1~7の業務は、社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者が原則として[1]他人の求めに応じて報酬を得て行ってはならない。さらに、3~5の業務(紛争解決手続代理業務)については、特定社会保険労務士でなければ行うことができない。なお8の業務は業務制限の対象外であるので、社会保険労務士でない者であっても、他人の求めに応じ報酬を得て業として行うことができる(第27条)。例えば、具体的な個別労働関係紛争について、労働者があっせん等によって紛争を解決する方針を固める以前にあっせん制度等を説明することは、8に該当するので特定社会保険労務士でなくても行えるが、あっせん等により紛争を解決する方針を固めた以降に行われる相談は、紛争解決手続代理業務に該当するので、たとえ受任前であっても特定社会保険労務士のみが行うことができる(平成19年3月26日基発0326009号・庁文発0326011号)。
- 詳細
- 企業からの依頼による、従業員に対する上記概要範囲における事務処理
- 人事雇用等、労務に関する相談・指導
給与計算
労働災害(業務災害・通勤災害)における申請等の事務手続き
社会保険(健康保険・厚生年金等)における私傷病、出産、死亡等に関する申請等の事務手続き
労働保険(労災保険・雇用保険)における申請等の事務手続き- 労働保険料の加入手続き、年度更新に伴う算定納付諸手続き
- 社会保険料を確定させる算定基礎届の作成
労働者名簿及び賃金台帳など法定帳簿の調製、就業規則等の作成・改訂
賃金や退職金、企業年金制度の構築- 各種助成金の相談、申請
- 労働安全衛生に関する相談、指導
- 社員研修、社員教育の実施
メンタルヘルス対策- 企業の作成した申請書等(施行規則第13条1項に掲げるものに限る)の妥当性、適法性の審査
労働に伴う相談、労使交渉等の紛争代理(特定社会保険労務士としての付記が前提)
- 労働争議時の団体交渉において一方の代理人となることは、たとえ特定社会保険労務士であっても業務として行うことはできない。
- 個人からの依頼による、上記概要範囲における事務処理
年金に伴う相談、申請代行(老齢、遺族、障害、離婚時分割等)- 医療保険各法、介護保険法等に基づく相談、申請代行(傷病手当金、高額療養費、要介護認定等)
- 労働に伴う相談、労使交渉等の紛争代理(特定社会保険労務士としての付記が前提)
- 行政協力という名目での下記 厚生労働省管轄下の公的機関での相談業務
- 労働基準監督署、公共職業安定所、年金事務所、街角の年金相談センター他
- 業務形態
社会保険労務士の業務は、主として企業との顧問契約にある。企業の人事・労務諸問題に関する相談、社会保険・労働保険諸手続きの事務代理・提出代行、給与計算などが主軸となる。又、ファイナンシャル・プランナー資格やDCプランナー、DCアドバイザー資格、モーゲージプランナー資格を併せ持ち、年金・資産運用に関するコンサルタント業を主とする実務家や税理士、中小企業診断士、行政書士といった他士業資格を保有した上で多角的な活動を行う実務家もいる。最近では、労働トラブルの増加に伴い「個別労働紛争の解決の促進に関する法律」に基づき、当事者を代理して具体的な解決策を提案するなど労使双方の諍いの解決に尽力する社会保険労務士(裁判外紛争解決手続制度の代理業務を行う場合は、特定社会保険労務士としての付記が必要)も増えている。
- 社会保険労務士は、常に品位を保持し、法令実務に精通し、公正な立場で誠実に業務を行わなければならない(第1条の2)。また、所属社会保険労務士会の会則を守らなければならない(第25条の30)。
- 社会保険労務士は、社会保険労務士会及び全国社会保険労務士会連合会(連合会)が行う研修を受け、その資質の向上を図るよう努めなければならない(第16条の3)。なお法により努力義務が課せられている研修は「社会保険労務士会」及び「連合会」が行う研修のみであるので、行政機関その他各種団体が行う研修についてまで努力義務が課せられているのではない。
- 社会保険労務士は、国又は地方公共団体の公務員として職務上取り扱った事件及び仲裁手続により仲裁人として取り扱った事件については、その業務を行ってはならない(第22条)。
- 社会保険労務士又は社会保険労務士法人は、事務を受任しようとする場合には、あらかじめ依頼者に対し報酬額の算定の方法その他の報酬の基準を示さなければならない(施行規則第12条の10)。報酬は、規制緩和の一環として他士業者と共に自由化され、社会保険労務士の事務所ごとに異なる。依頼の誘致に際し、業務内容・報酬その他重要事項について不実を告げ、又は故意に事実を告げない行為その他不正不当行為をしてはならない。
国家資格者である社会保険労務士は、社会保険労務士証票、都道府県社会保険労務士会会員証及び徽章など身分を証明するものを所持している。- 社会保険労務士、又は社会保険労務士法人でないものは、これらの名称及び類似する名称を用いることを禁じられている(第26条)。しかし、個人事務所には、名称に関する規定がないため、社会保険労務士事務所、社労士事務所、労務管理事務所、経営相談所、オフィス、事務所、コンサルティングなど多彩である。
- 社会保険労務士は、不正に労働社会保険諸法令に基づく保険給付を受けること、不正に労働社会保険諸法令に基づく保険料の賦課又は徴収を免れることその他労働社会保険諸法令に違反する行為について指示をし、相談に応じその他これらに類する行為をしてはならない(第15条)。
1980年(昭和55年)8月末日の時点で行政書士であった者は、社会保険労務士の独占業務に関わる書類の作成を行うことが認められるが、提出代行(行政機関への提出を代理すること)及び事務代理(書面の内容を自らの判断で修正すること)は認められておらず、使者(行政契約の場合は代理もあり)として提出できるのみに留まる。また、特定社会保険労務士に認められる裁判外紛争解決手続業務に伴うあっせん代理も認められていない。税理士の行う付随業務(租税債務の確定に必要な社会保険労務士事務)についても、提出代行、事務代理並びあっせん代理は認められていない。
- 法律違反となる行為
- 有資格者従業員の社会保険労務士開業登録をもって上記職務を行う外部委託(アウトソーシング)会社も見受けられるが、実態として指揮命令関係等が存在する場合は、「非社労士との提携の禁止」として、当該社労士は社会保険労務士法違反となる(第23条の2)。
- 外部委託(アウトソーシング)等を行う法人組織、経営コンサルティング会社等の社会保険労務士無資格者や、労務管理士などと称する社会保険労務士でない者が社会保険労務士業務を行えば、社会保険労務士法違反となる(第27条)。
諸形態
社会保険労務士は、各人の状況に応じて下記の通り区分けされ、それに応じた登録を行う。
- 開業社会保険労務士(開業登録)
個人で事務所を開き(社会保険労務士法人所属者を含む)、多企業からの依頼に応え、人事・労務管理の専門家として、従業員の採用から退職に至るまでの労働・社会保険に関する諸問題を処理し、更には個人的な年金等の相談に業として応じることができる。主に多くの中小企業、零細企業を対象として多角的に人事・労務管理業務を行う。
開業社会保険労務士は、厚生労働大臣の許可を受けた場合でなければ、2以上の事務所を設けてはならない(第18条)。業務の性質上、社会保険労務士本人が事務処理を行わなければならないためである。また業務に関する帳簿を備え、これに事件の名称、依頼を受けた年月日、受けた報酬の額、依頼者の住所及び氏名又は名称その他厚生労働大臣が定める事項を記載しなければならず、この帳簿をその関係書類とともに、帳簿閉鎖の時から2年間保存しなければならない(第19条)。正当な理由がなければ依頼(紛争解決手続代理業務に関するものを除く)を拒んではならない(第20条)。
- 勤務社会保険労務士(勤務登録)
企業や団体に属し、当該企業内に限定された社会保険労務士としての仕事を行う。大企業の管理部門に所属し、企業内での人事・労務管理に専業従事する者が多い。また、勤務社会保険労務士が、特定社会保険労務士として付記を受けた場合も、所属する企業に関連した裁判外紛争解決手続業務を行うに留まる。
一般企業への勤務士業登録が正式に資格として認められているのは、士業の中でも社会保険労務士だけであり、資格としての存在意義が企業経営と密接に関係していることの裏付けであるとも言うことができる。
- その他社会保険労務士(その他登録)
企業に所属しているものの営業、経理、専門職等、社会保険労務士業務と直接関わらない職種に従事している者や、専業主婦、何れの企業・団体にも所属しないフリーランスを対象としたものが「その他登録」である。なお、全国社会保険労務士会連合会においては、「勤務」と「その他」を合わせて「勤務等」という表記方法を用いている。
- 社会保険労務士法人
業務を組織的に行うため、社会保険労務士が共同し、社会保険労務士法人を設立できる(第25条の6以下)。社会保険労務士法人は、その多くの規定を旧商法・会社法の合名会社を見本とし、社員(出資者である無限責任社員のこと)たる社会保険労務士すべてが無限責任を負い、定款に特段の定めがない限り全社員が代表権・業務執行権を有する。社員は、個人で別に社会保険労務士の事務所を開設できない。また社会保険労務士でない者は社員となることはできない。2016年(平成28年)1月1日より、社員一名のいわゆる一人法人の設立が可能となった[2][3]。社会保険労務士法人は、その名称中に「社会保険労務士法人」という文字を入れなければならない。
社会保険労務士であっても、以下のものは社会保険労務士法人の社員となることはできない(第25条の8)。
- 業務停止処分期間中の者
- 社会保険労務士法人が解散を命ぜられた場合において、その処分の日以前30日内にその社員であった者でその処分の日から3年を経過しないもの
- 社会保険労務士法人が業務停止処分を受けた場合において、その処分の日以前30日内にその社員であった者で当該業務停止期間中のもの
社会保険労務士法人は、社会保険労務士としての職務に加え、定款で定めるところにより、以下の業務を行うことができる(第25条の9)。
- 事業所の労働者に係る賃金の計算に関する事務(その事務を行うことが他の法律において制限されているものを除く)を業として行う業務
開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人を派遣先とする労働者派遣事業- 紛争解決手続代理業務(社員のうちに特定社会保険労務士がある社会保険労務士法人に限り、行うことができる)
社会保険労務士法人を設立するには、その社員になろうとする社会保険労務士が、共同して定款を定めなければならず、主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立する(第25条の10~第25条の12)。成立したときは、成立の日から2週間以内にその旨を主たる事務所の所在地の社会保険労務士会を経由して全国社会保険労務士会連合会に届出なければならない。定款には、少なくとも以下に掲げる事項を記載しなければならない。
- 目的
- 名称
- 事務所の所在地
- 社員の氏名及び住所
- 社員の出資に関する事項
- 業務の執行に関する事項
社会保険労務士法人の事務所には、その事務所の所在地の属する都道府県の区域に設立されている社会保険労務士会の会員である社員を常駐させなければならない(第25条の16)。
社会保険労務士試験
例年、8月の第4日曜日に実施される。試験の管轄は、かつて国直轄であったが、平成12年度以降は厚生労働大臣の委託を受けて全国社会保険労務士会連合会(連合会)が管轄し、社会保険労務士試験センターが試験事務(合格の決定に関する事務を除く)を行っている。
- 受験資格(第8条)
大学卒業者、又は大学において62単位以上を修得済みの者
短期大学、高等専門学校を卒業した者- 修業年限が2年以上、かつ総授業時間数が1,700時間以上の専修学校の専門課程[4]を修了した者
行政書士や司法書士などの定められた資格を有する者- 労働社会保険諸法令の規定に基づいて設立された法人の常勤役員または従業者として同法令の実施事務に従事した期間が通算して3年以上になる者
- 厚生労働大臣が認めた国家試験に合格した者
- 平成22年度試験より、厚生労働大臣が受験資格を認める学校・他の国家資格が拡大されている。詳細は外部リンクを参照。
- 試験科目(第9条)
- 労働法令
労働基準法及び労働安全衛生法
- 労働者災害補償保険法
- 雇用保険法
労働保険の保険料の徴収等に関する法律(労働保険徴収法) - 択一式試験のみの出題(労働者災害補償保険法と雇用保険法それぞれの設問10問のうちの3問を占める)。
- 社会保障法令
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
- 一般常識
- 労務管理その他の労働に関する一般常識 (選択式試験のみ)
- 社会保険に関する一般常識(選択式試験のみ)
- 労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識(択一式試験のみ)
- なお、「一般常識」においては、以下の内容が問われる。
- 労働に関する一般常識
労働組合法、労働関係調整法、労働契約法、雇用対策法、職業安定法、労働者派遣法、高年齢者雇用安定法、障害者雇用促進法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法、次世代育成支援対策推進法、パートタイム労働法、職業能力開発促進法、等の法令- 労務管理の理論
- 官公庁発行の各種白書(労働経済白書)、統計、調査等
- 社会保険に関する一般常識
国民健康保険法、船員保険法、高齢者の医療の確保に関する法律、介護保険法、児童手当法、確定給付企業年金法、確定拠出年金法、社会保険労務士法、等の法令- 社会保険概論(歴史、沿革等)
- 労働に関する一般常識
- 試験科目の免除
- 実務経験等により試験科目の一部免除を受けることができる。以下は主な免除資格[5]。
- 国又は地方公共団体の公務員として労働社会保険法令に関する施行事務に従事した期間が通算して10年以上になる者
- 厚生労働大臣が指定する団体の役員若しくは従業者として労働社会保険法令事務に従事した期間が通算して15年以上になる者又は社会保険労務士若しくは社会保険労務士法人の補助者として労働社会保険法令事務に従事した期間が通算して15年以上になる者で、全国社会保険労務士会連合会が行う免除指定講習を修了した者
日本年金機構の役員又は従業者として社会保険諸法令の実施事務に従事した期間(日本年金機構の設立当時の役員又は職員として採用された者にあっては、社会保険庁の職員として社会保険諸法令の施行事務に従事した期間を含む。)が通算して15年以上になる者
全国健康保険協会の役員又は従業者として社会保険諸法令の実施事務に従事した期間(全国健康保険協会設立当時の役員又は職員として採用された者にあっては、社会保険庁の職員として社会保険諸法令の施行事務に従事した期間を含む。)が通算して15年以上になる者
- 試験方法
- 完全マークシート方式
- 午前:選択式、設問が8題(1設問につき5問=合計40か所の穴埋め 合計40点)、制限時間80分(1時間20分)
- 原則、各設問のうち3問以上正解し、かつ総得点が28点以上でなければならない。以前の記述式に代わり2000年から実施されている。各設問ともに5問中3問以上得点できない場合は足切りとなり、どんなに総合得点(択一式+選択式)が高い場合であっても足切りとなった時点で即不合格となる。それ故選択式試験の1得点に対するウェイトは非常に重く、毎年大多数の受験者を苦しめることになる。
- 午後:五肢択一式10問が7つ=70問(1問1点合計70点)、制限時間210分(3時間30分)
- 原則、各科目において10問中4問以上得点できない場合は足切りとなり、どんなに総合得点(択一式+選択式)が高い場合であっても足切りとなった時点で即不合格となる。
回 | 年 | 試験日 | 申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|---|---|
第1回 |
昭和44年 | 11月9日 | 23,705人 | 18,611人 | 2,045人 | 11.0% |
第2回 |
昭和45年 | 8月1日 | 12,709人 | 8,144人 | 1,027人 | 12.6% |
第3回 |
昭和46年 | 8月6日 | 13,699人 | 8,641人 | 1,015人 | 11.7% |
第4回 |
昭和47年 | 8月2日 | 13,097人 | 8,530人 | 1,081人 | 12.7% |
第5回 |
昭和48年 | 8月2日 | 12,089人 | 7,486人 | 842人 | 11.2% |
第6回 |
昭和49年 | 8月2日 | 13,440人 | 8,297人 | 961人 | 11.6% |
第7回 |
昭和50年 | 8月2日 | 14,866人 | 9,143人 | 1,328人 | 14.5% |
第8回 |
昭和51年 | 8月3日 | 13,956人 | 8,973人 | 1,012人 | 11.3% |
第9回 |
昭和52年 | 8月2日 | 14,092人 | 8,810人 | 1,235人 | 14.0% |
第10回 |
昭和53年 | 8月1日 | 14,515人 | 9,251人 | 1,189人 | 12.9% |
第11回 |
昭和54年 | 8月2日 | 14,708人 | 9,348人 | 1,012人 | 10.8% |
第12回 |
昭和55年 | 7月31日 | 14,074人 | 9,406人 | 888人 | 9.4% |
第13回 |
昭和56年 | 7月28日 | 13,923人 | 9,692人 | 1,380人 | 14.2% |
第14回 |
昭和57年 | 7月27日 | 13,918人 | 9,818人 | 1,040人 | 10.6% |
第15回 |
昭和58年 | 7月26日 | 13,302人 | 9,309人 | 1,354人 | 14.4% |
第16回 |
昭和59年 | 7月24日 | 13,581人 | 9,646人 | 992人 | 10.3% |
第17回 |
昭和60年 | 7月30日 | 13,580人 | 9,450人 | 1,078人 | 11.4% |
第18回 |
昭和61年 | 7月29日 | 13,391人 | 9,474人 | 875人 | 9.2% |
第19回 |
昭和62年 | 7月28日 | 13,157人 | 9,173人 | 1,022人 | 11.1% |
第20回 |
昭和63年 | 7月26日 | 13,232人 | 9,354人 | 870人 | 9.3% |
第21回 |
平成元年 | 7月25日 | 14,081人 | 9,918人 | 1,237人 | 12.5% |
第22回 |
平成2年 | 7月31日 | 15,758人 | 11,063人 | 1,176人 | 10.6% |
第23回 |
平成3年 | 7月30日 | 18,760人 | 13,490人 | 1,298人 | 9.6% |
第24回 |
平成4年 | 7月28日 | 21,587人 | 15,984人 | 1,567人 | 9.8% |
第25回 |
平成5年 | 7月27日 | 25,672人 | 19,088人 | 1,867人 | 9.8% |
第26回 |
平成6年 | 7月26日 | 29,817人 | 22,693人 | 1,532人 | 6.8% |
第27回 |
平成7年 | 7月25日 | 31,989人 | 24,430人 | 1,754人 | 7.2% |
第28回 |
平成8年 | 7月30日 | 34,687人 | 26,513人 | 1,941人 | 7.3% |
第29回 |
平成9年 | 7月29日 | 35,978人 | 28,124人 | 1,991人 | 7.1% |
第30回 |
平成10年 | 7月28日 | 39,415人 | 30,816人 | 2,327人 | 7.6% |
第31回 |
平成11年 | 7月27日 | 45,455人 | 35,894人 | 2,827人 | 7.9% |
第32回 |
平成12年 | 8月27日 | 50,689人 | 40,703人 | 3,483人 | 8.6% |
第33回 |
平成13年 | 8月26日 | 54,203人 | 43,301人 | 3,774人 | 8.7% |
第34回 |
平成14年 | 8月25日 | 58,322人 | 46,713人 | 4,337人 | 9.3% |
第35回 |
平成15年 | 8月24日 | 64,122人 | 51,689人 | 4,770人 | 9.2% |
第36回 |
平成16年 | 8月22日 | 65,215人 | 51,493人 | 4,850人 | 9.4% |
第37回 |
平成17年 | 8月28日 | 61,251人 | 48,120人 | 4,286人 | 8.9% |
第38回 |
平成18年 | 8月27日 | 59,839人 | 46,016人 | 3,925人 | 8.5% |
第39回 |
平成19年 | 8月26日 | 58,542人 | 45,221人 | 4,801人 | 10.6% |
第40回 |
平成20年 | 8月24日 | 61,910人 | 47,568人 | 3,574人 | 7.5% |
第41回 |
平成21年 | 8月23日 | 67,745人 | 52,983人 | 4,019人 | 7.6% |
第42回 |
平成22年 | 8月22日 | 70,648人 | 55,445人 | 4,790人 | 8.6% |
第43回 |
平成23年 | 8月28日 | 67,662人 | 53,392人 | 3,855人 | 7.2% |
第44回 |
平成24年 | 8月26日 | 66,782人 | 51,960人 | 3,650人 | 7.0% |
第45回 |
平成25年 | 8月25日 | 63,640人 | 49,292人 | 2,666人 | 5.4% |
第46回 |
平成26年 | 8月24日 | 57,199人 | 44,546人 | 4,156人 | 9.3% |
第47回 |
平成27年 | 8月23日 | 52,612人 | 40,712人 | 1,051人 | 2.6% |
第48回 |
平成28年 | 8月28日 | 51,953人 | 39,972人 | 1,770人 | 4.4% |
第49回 |
平成29年 | 8月27日 | 49,902人 | 38,685人 | 2,613人 | 6.8% |
第50回 |
平成30年 | 8月26日 | 49,582人 | 38,427人 | 2,413人 | 6.3% |
社会保険労務士としての登録
以下のいずれかに該当する者は、連合会への登録を経て、社会保険労務士と名乗ることが認められる(第3条1項、2項)。連合会が備える社会保険労務士名簿に社会保険労務士として登録しなければ、社会保険労務士又はこれに類似する名称を用いる事はできない(第14条の2、第14条の3、第26条)。
- 社会保険労務士試験に合格した者
- 社会保険労務士試験科目すべてが免除される者
- 試験合格者・免除者が登録を受けるには、2年以上の実務経験を要する(第3条1項)。2年以上の実務経験を有する者は、「労働社会保険諸法令関係事務従事期間証明書」に事業主等の証明を受け、各都道府県の社会保険労務士会を経由して連合会に提出することにより、社会保険労務士登録される。2年以上の実務経験がない者は、連合会実施による4ヶ月間の通信教育(途中、原則として3回のレポート課題を提出)と試験後1年前後を経て開催される連続4日間の面接講習(講義形式の座学。東京・愛知・大阪・福岡のいずれかに出席)を受講する事により、2年間の実務経験に代えることができる。
弁護士となる資格(司法試験に合格して司法修習を終えるなど)を有する者
登録を受けようとする者は、所定の事項を記載した登録申請書を、社会保険労務士となる資格を有することを証する書類を添付の上、都道府県社会保険労務士会を経由して、連合会に提出しなければならない(第14条の5)。連合会は登録の申請を受けた場合においては、当該申請者が社会保険労務士となる資格を有し、かつ、登録拒否事由に該当しない者であると認めたときは、遅滞なく、社会保険労務士名簿に登録し、当該申請者が社会保険労務士となる資格を有せず、又は登録拒否事由のいずれかに該当する者であると認めたときは登録を拒否しなければならない(第14条の6)。登録を受けた者は当然に当該都道府県社会保険労務士会の会員となる(第25条の29)。
連合会が登録を拒否しようとする場合・登録を取消そうとする場合においては、資格審査会の議決に基づいてしなければならない。連合会は、登録を拒否しようとするときは、あらかじめ、当該申請者にその旨を通知して、相当の期間内に自ら又はその代理人を通じて弁明する機会を与えなければならない(第14条の6)。登録を拒否された者・取消された者は、当該処分に不服があるときは、厚生労働大臣に対して審査請求をすることができる。また登録の申請を行った日から3月を経過してもなんらの処分がなされない場合には、当該登録を拒否されたものとして、厚生労働大臣に対して審査請求をすることができる。この場合においては、審査請求のあった日に、連合会が当該登録を拒否したものとみなす(第14条の8)。
社会保険労務士試験合格実績は、たとえ失格処分を受けたとしても終身有効である。ただし、社会保険労務士はあくまでライセンスを付与されている(つまり登録している)者に限るのであり、試験に合格しただけの者は社会保険労務士ではなく、また、試験にも合格していない者が社会保険労務士を名乗り法解釈することもあるので、(特定)社会保険労務士証票・都道府県社会保険労務士会会員証の提示を求めるなど、注意の喚起が必要である(いわゆる「ニセ社会保険労務士」問題)。
欠格事由
次のいずれかに該当する者は、当然に社会保険労務士となる資格を有しない(第5条)。
- 未成年者
成年被後見人又は被保佐人- 破産者で復権を得ないもの
- 懲戒処分により社会保険労務士の失格処分を受けた者で、その処分を受けた日から3年を経過しないもの
- 社会保険労務士法又は労働社会保険諸法令の規定により罰金以上の刑に処せられた者で、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過しないもの
- 5.以外の法令の規定により禁錮以上の刑に処せられた者で、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から3年を経過しないもの
- 社会保険労務士の登録の取消しの処分を受けた者で、その処分を受けた日から3年を経過しないもの
公務員で懲戒免職の処分を受け、その処分を受けた日から3年を経過しない者- 懲戒処分により、弁護士会から除名され、公認会計士の登録の抹消の処分を受け、税理士の業務を禁止され又は行政書士の業務を禁止された者で、これらの処分を受けた日から3年を経過しないもの
登録の拒否・取消し
次の1~4に該当する者は、社会保険労務士の登録を受けることができない(第14条の7)。また、登録したものの次の4~6に該当するに至った場合は、連合会は当該登録を取消すことができる(第14条の9)。
- 懲戒処分により、弁護士、公認会計士、税理士又は行政書士の業務を停止された者で、現にその処分を受けているもの
- 労働保険・社会保険の保険料について、登録の申請をした日の前日までに滞納処分を受け、かつ、当該処分を受けた日から正当な理由なく3月以上の期間にわたり、当該処分を受けた日以降に納期限の到来した保険料のすべて(当該処分を受けた者が、その納付義務を負う保険料に限る。)を引き続き滞納している者
- 社会保険労務士の信用又は品位を害するおそれがある者その他社会保険労務士の職責に照らし社会保険労務士としての適格性を欠く者
- 心身の故障により社会保険労務士の業務を行うことができない者
- 登録を受ける資格に関する重要事項について、告知せず又は不実の告知を行って当該登録を受けたことが判明したとき
- 2年以上継続して所在が不明であるとき
懲戒処分
社会保険労務士に対する懲戒処分は、「戒告」「1年以内の業務停止」「失格処分」の3種類である(第25条)。
厚生労働大臣は、社会保険労務士が、故意に、真正の事実に反して申請書等の作成、事務代理もしくは紛争解決手続代理業務を行ったとき、又は不正行為の指示等を行ったときは、1年以内の業務停止又は失格処分をすることができる。社会保険労務士が、相当の注意を怠り、これらの行為をしたときは、戒告または1年以内の業務停止の処分をすることができる(第25条の2)。
厚生労働大臣は、社会保険労務士が、申請書等の添付書面もしくは付記に虚偽の記載をしたとき、社会保険労務士法及びこれに基づく命令もしくは労働社会保険諸法令の規定に違反したとき、又は社会保険労務士たるにふさわしくない重大な非行があったときには、いずれかの懲戒処分をすることができる(第25条の3)。
社会保険労務士会又は連合会は、社会保険労務士会の会員について懲戒事由に該当する行為又は事実があると認めたときは、厚生労働大臣に対し、当該会員の氏名及び事業所の所在地並びにその行為又は事実を通知しなければならない。また、何人も、社会保険労務士について懲戒事由に該当する行為又は事実があると認めたときは、厚生労働大臣に対し、当該社会保険労務士の氏名及びその行為又は事実を通知し、適切な措置を取るべきことを求めることができる(第25条の3の2)。
厚生労働大臣は、いずれかの懲戒処分をしようとするときは、公開の審理による聴聞を行わなければならない(第25条の4)。懲戒処分をしたときは、遅滞なく、その旨を、その理由を付記した書面により当該社会保険労務士に通知するとともに、官報をもって公告しなければならない(第25条の5)。
歴史・沿革
戦後、いわゆる労働三法が制定され、労働者の権利が法的権利となる。さらに経済成長と相まって、急速に労使間の対立やストライキが頻発する。また、特に1960年代における日本経済の急激な成長により、税収や企業からの社会保険料が増加し、厚生年金・健康保険・労災保険・雇用保険も発展する。しかし、補償額の高度化・制度の複雑化を伴い、煩雑な社会保険の仕組みと申請・給付に係る事務手続きにより中小企業等では対応が困難となる。これらに対応する専門家の必要性から、人事・労務・総務部門の業務を行う職業が発生した。
当初、これらの請負業務を合法的に行いうる有資格者は行政書士であったが、狭義総務を除く人事・労務分野のより専門的な知識を持った人材が必要とされた。そこで1968年、社会保険労務士法が議員立法により制定された。制度発足時の経過措置として、行政書士が試験なく特認として社会保険労務士資格を取得し、およそ9,000名が社会保険労務士となる。2007年4月の司法制度改革で、裁判外紛争解決手続制度の代理権が認められる。2009年のリクルートの調査では取りたい資格の10位、ニーズが高まりそうな仕事の9位である。
1968年 - 社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)制定
1986年 - 書類作成基礎事項表示権・他人作成書類審査権付与
1998年 - 審査請求代理権付与
2000年 - 社会保険労務士試験事務を連合会へ委嘱
2003年 - 社会保険労務士法人発足、ADRあっせん代理権付与、(開業社会保険労務士の)労働争議不介入条項(旧社会保険労務士法第23条)の削除
2007年 - 裁判外紛争解決手続制度の代理権付与、特定社会保険労務士制度発足
2016年 - 裁判所における補佐人としての陳述権付与
脚注
^ 他の法律に定めのある場合、あるいは公認会計士・税理士が政令で定める一定の業務に付随して行う場合はこの限りでない。
^ 現行の会社法では社員一名の、いわゆる一人合名会社が認められているが、旧商法では認められず、必ず二名以上の社員を必要としていた。2015年12月31日までは旧商法にならって社会保険労務士法人は必ず二名以上の社員を必要としていて、一人になった場合、6か月以内に二人以上とならないときは、法人を解散するという規定になっていた。
^ 一人法人で当該社員が死亡した場合、清算人は当該社員の相続人の同意を得て、新たに社員を加入させて社会保険労務士法人を継続することができる。
^ 履修した内容(分野)は問わない。
^ 全国社会保険労務士会連合会試験センター 試験科目の免除
関連項目
- 特定社会保険労務士
- 税理士
- 中小企業診断士
- 行政書士
- ファイナンシャル・プランナー
- 銀行業務検定協会
- DCプランナー
- DCアドバイザー
- 日本の法律・会計に関する資格一覧
外部リンク
- 全国社会保険労務士会連合会
- 社会保険労務士試験センター
- 日本年金機構
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