MADムービー









MADムービー(マッドムービー)とは、既存の音声・ゲーム・画像・動画・アニメーションなどを個人が編集・合成し、再構成したもの。単に「MAD」と呼ばれることも多く、ネットコミュニティにおいてはもっぱらこの呼称が主流となっている。ただしパソコンやCGソフトが普及した21世紀初頭には「手書き(描き)MAD」(後述)という用語が出現するなど意味の拡散がみられる。主にファン活動の一環として行われる。「MAD」とは「狂っている、ばかげている」の意の英である「madness」の略。




目次






  • 1 流通と社会の対応


  • 2 制作方法


  • 3 時代の変化に伴う多様化


  • 4 MADとAMV


  • 5 脚注


  • 6 参考文献


  • 7 関連項目





流通と社会の対応


MADムービーの前身は、1970年代末ごろから大学のサークルなどで制作されていたMADテープ(初期はキチガイテープとも呼ばれていた)である。これらは音声MADをカセットテープに収録し、同人誌と同様の経路で流布していた。


優良な作品の登場などによりMADテープは人気を呼び急速に全国に広まったが、流通経路の問題から漫研・アニ研・自主上映会など、特定コミュニティとの関わりがない層にはそれほど認知されていなかった。そんな折『タモリのオールナイトニッポン』において、1980年11月からNHKニュースのアナウンサーの声を合成したものを流す「つぎはぎニュース」のコーナーが放送され、ニュース特有の抑揚が少ない(加工しやすい)無機質な口調で脈絡のないことを話し続けるというギャップが生む面白さで話題になった。ニュース番組を使ったMADは後にマッドニュースと呼ばれるようになった。これらの作品の一部は、現在動画投稿サイトで視聴することができ、新作も製作されている。その後NHKからクレームがついたため2か月ほどでこのコーナーは終了したが、この番組によりコラージュ作品そのものの認知度が上がり、制作者層や流通の幅が広がった。


やがてビデオテープを用いたMADビデオが作られるようになる。初期の頃は特撮やロボットアニメのセリフを強引に改変する、曲を差し替えるなどといった作品が主流であった。現在でも、アニメのキャラクターのセリフを差し替えるなどといったMADムービーはメジャーな改変として作られ続けている。


21世紀初頭にはインターネット環境の整備や、各種編集ツールがフリーウェアで普及したこと、パソコンの性能向上により、インターネットを通じて爆発的に流通、作成されるようになった。これには「あめぞう」などのいわゆるアンダーグラウンドサイトの登場や、WinnyやWinMXといったP2P技術の発展が大きく貢献している。特にP2PはMADムービーの製作に欠かせない「素材」の流通を加速させた。それそのものが「裏」であったとも言える、黎明期のインターネットと本来秘匿されるべきであるMADムービーの性質、そして担い手たちであった当時の「オタク」が持っていた気質が噛みあった結果である。そしてこの時期には、動画を簡単に制作が出来るFlashを利用したムービーやゲーム形式のMAD作品が多数普及し始め、Flash職人と呼ばれる制作者が増加し、一時代を築いた。


しかし、当然ながら著作権の侵害である事には変わりがなく、JASRACから削除要請による削除が相次いだことや、のまネコ問題など商業化による批判、そして、後述するYouTubeなどの登場により、徐々にFLASHブームは衰退して行く事となる。


そして、2005年に登場したYouTube、2007年に登場したニコニコ動画に代表される動画共有サイトの登場により状況は一変する[1]。先述のように「裏」としての側面が強かったMADムービーは、YouTubeなどメジャーなサイトにアップロードされることで、さらなる盛り上がりを呼ぶと同時に、メディアでも取り上げられていくうちにその違法性が大きくクローズアップされることとなった。


素材となる作品との関係上、著作権者に無断で制作・配布されることがほとんどで、無断改編による著作者人格権の一種である同一性保持権の侵害ともいえるMADムービーの違法性が取り沙汰される中、著作権侵害に対する権利者の対応は様々であった。商業コンテンツを題材とした多くのMADムービーは、権利者の申し立てを受けて削除されたが、一部の権利者は半ば黙認した[1]


これはMADムービーの流通量が無視できない規模まで拡大したことの他に、ヒットした場合に大きな広告宣伝効果が見込まれることが関係している(バンダイナムコエンターテインメントが原作の『アイドルマスター』を素材としたMADムービーの例など)[1]


中にはMADムービーの制作におけるガイドラインを規定した権利者も現れた。



  • また角川グループは、2008年1月25日に同社の著作物を使用した作品に対して公開を許可する含みを持たせたコメント[2]を発表した。

  • その後、同グループの角川デジックスにより、YouTubeにアップロードされたMADムービーの一部に、正式に許諾を与える対応方針が発表[3]され、実際に幾つかの動画に公認マークが付与されている(Sham.Studio.の例[4]など)。


いくつかの権利者の中ではMADムービーを参考にしたり強く意識した作品を制作するなど、MADムービー制作者と権利者間でのビジネスが行われるケースも見られるようになった[5]。また、公式によるMADムービーも存在しており、例えばコナミのビデオゲーム「メタルギアソリッド3」では開発者がゲーム内のシーンを改変したショートフィルムの公開などを行った(ただしこれは本来の意味の「MADムービー」とは多少異なる)。


さらに、関連事象としてエコカー補助金終了直後に放映されたダイハツ工業のキャンペーンCMに関して、ダイハツ公式サイト内に「権利者自らが製作したMADムービー」であるような事を匂わせるコメントが掲載されている[6]



制作方法


素材となる音声や画像・動画をキャプチャやリッピング、ソフトウェアからの場合はsusieなどのツールを用いて準備し、各種編集機材やアプリケーションソフトで編集する。静止画MADやアニメMADではAdobe PremiereやAfter Effects、近年はWindows ムービーメーカー、NiVE、VirtualDub、AviUtlなどが作成に利用されることが多い。



時代の変化に伴う多様化


先述のように、黎明期はテープを使うなどのアナログな方法が主であったが、パーソナルコンピューターの発達により表現方法も多様化した。音声を差し替えるだけの手軽なものから、3DCGを用いたもの、アニメーションを自ら描き起こしたもの、音楽を作曲し差し替えたものなど、ほとんど創作に近いMADムービーを製作するものも現れている。


したがってMADムービーの中には既成の映像作品を「素材」として使うのではなく、例えばアニメのワンシーンを、自ら描いた別のキャラクターに置き換えたもの(通称『手描きMAD』)も黎明期から存在するが、たとえキャラクターを自分で描き変えたとしても、既存のキャラクターを使用する限り二次創作であり、著作権法に違反するというMADムービーであることに変わりはない(これは一般のコミック系同人誌にも当て嵌まる事であるが、現行著作権法は親告罪である為、MADにしても同人誌にしても訴訟費用やイメージ戦略等で事実上黙認されているというのが現状である)。


2015年にはTPPの政府間大筋合意によって著作権の非親告罪化が懸念され、その乱用を防ぐため同人誌等の二次創作作品に関しては対象外とする方針で法改正の議論が行われている。しかしMADが「二次創作」に含まれるかは不明なままである。



MADとAMV


しばしば日本のMADムービー文化は欧米発祥のAMV (Anime Music Video) と比較されるが、発端は完全に別である。



脚注



  1. ^ abc井上理 (2012年5月7日). “「ニコ動」で進行するコンテンツ革命、熱狂の舞台裏 ネット上の才能を現実世界に解放~ドワンゴの挑戦(1)”. 日本経済新聞: p. 2. http://www.nikkei.com/tech/business/article/g=96958A90889DE6E3E3E2E5E6E6E2E2E5E2E7E0E2E3E0E2E2E2E2E2E2;df=2;p=9694E2EBE3E3E0E2E3E2E1E7E2E4 


  2. ^ AV Watch 2008年1月25日


  3. ^ Kadokawa Digix. “YouTube上の角川グループコンテンツを含むMAD動画への対応について”. 2008年9月12日閲覧。


  4. ^ Sham.Studio. FAQ


  5. ^ “吉幾三、ドワンゴ(ニコニコ動画)のコラボ企画スタート”. リッスンジャパン. (2008年7月31日). http://listen.jp/store/musicnews_24531_all.htm 2011年2月9日閲覧。 


  6. ^ テレビCM、ムーヴコンテ「減税は続く」篇(ダイハツ公式 archive.todayキャッシュ)



参考文献




  • 山本弘『山本弘のハマリもの』洋泉社 2002

  • と学会+α『トンデモ音楽の世界』小学館クリエイティブ 2008



関連項目



  • パロディー音楽

  • リミックス

  • カットアップ

  • 面白画像

  • マシニマ

  • zoome

  • ediPa

  • 大阪芸術大学








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