フロッピーディスク
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左から8インチ、5インチ、3.5インチの
フロッピーディスク

左から8インチ、5インチ、3.5インチの
フロッピーディスクドライブ

フロッピーディスクドライブと一体化したカードリーダー
フロッピーディスク (floppy disk) は、磁気ディスクの一種で、磁性体を塗布・蒸着した樹脂製小円盤を樹脂製の保護ケースに入れたものである。
目次
1 名称
2 概要
3 規格・構造など
3.1 サイズ
3.2 ライトプロテクト
3.3 セクタと容量
3.3.1 3.5インチフロッピーディスクの2DD、2HC、2HDの物理的な違い
3.4 耐久性・寿命
4 歴史
4.1 8インチ
4.2 5.25インチ
4.3 3.5インチ
4.4 年譜
4.5 その他の規格
4.6 その後
5 大容量フロッピーディスク
6 各ハードウェア規格の開発元
7 関連する日本工業規格
8 フォーマット
8.1 IBMフォーマット
8.2 一般的なフォーマットの例
8.3 3.5インチフロッピーディスク各形式の詳細
9 レガシーシステムとしてのフロッピーディスク
10 注釈
11 出典
12 参考文献
13 関連項目
14 外部リンク
名称
本来は記録媒体(メディア)が「フロッピーディスク」または「フロッピーディスクメディア」で、駆動装置(駆動し読み書きする装置)が「フロッピーディスクドライブ」(FDD) と呼ばれる。両者とも略して「フロッピー」などと呼ばれることも多い。また「フロッピィ」のように書き表すこともある。俗称の「フロッピーディスク」(floppy disk) が普及したが(レトロニム)、日本工業規格 (JIS) の用語集では「フレキシブルディスク」と「フレキシブルディスクカートリッジ」である。
最初のフロッピーディスクは1971年にIBMが開発した[1]。当時の名称は「フレキシブル・ディスケット」(flexible diskette) または「ディスケット」[2]で、IBMの登録商標となった。IBMは現在、一般向けには「フロッピーディスク」の用語も併用している[3]。かつては3 1/2インチ型媒体を使用する読取装置を「3.5型駆動機構」と呼んでいた。
なお、「フレキシブル」も「フロッピー」も“柔らかい”の意味[4]で命名されたもので、登場当初はメディアの構造が薄いディスクを薄い保護ケースに包んだ薄く柔らかいものであったためである。これに対して、従来の硬い磁気ディスクは「ハードディスク」や「ハードドライブ」と呼ばれるようになった。
概要
磁気ディスクの一種で、駆動装置からの取り外しが可能(リムーバブル)な記録媒体(メディア)である。磁性体を塗布した厚さ0.075ミリのプラスチック円盤を駆動装置で回転させ、円盤の片面ないしは両面に同心円状に信号を記録する。
現時点で一般的なハードディスクとは異なり、駆動装置から媒体を取り外すことができることが特徴である。ディスクの直径により、8インチ、5 1/4 (5.25) インチ、3 1/2 (3.5) インチの3種が主に知られる。1969年に読み取り専用の8インチフロッピーディスクが生まれてから1990年代末にかけて、小型コンピュータのデータの記録に広く用いられた。
その後、小型コンピュータの性能の向上により、扱うデータの容量も増大したため、CDやDVD、BDなどの記録型光ディスクドライブがパソコンに標準搭載されるようになり、2000年頃以降は徐々に廃れていった。1998年に発売されたiMacはCD-ROMドライブのみを標準搭載し、フロッピーディスクドライブは廃止された。2000年頃よりノートパソコンで、続いてデスクトップタイプでもフロッピーディスクドライブを内蔵していない製品が増えた。このような製品でOSインストール時のドライバの組み込みバックアップや復元作業など何らかの事情でフロッピーディスクを使う必要がある場合、USB接続による外付けのドライブを利用する。2000年代後半頃には市販のパソコンではほぼ搭載されなくなり、自作パソコンでも非対応のマザーボードが出回るなど、事実上レガシーデバイス扱いとなっている。代替メディアとしては、記録型CD・DVD・BD、USBメモリ、SDメモリーカード等の各種メディアがあり、配布、保管などの役割を分けて普及している。また、ネットワークの発達によって、物理的な媒体をデータ交換に使用すること自体が減少した。
現在でもBIOSのメニューのみで認識させられる数少ないメディアである。一部では需要があり、SDカードやメモリースティック、コンパクトフラッシュ、スマートメディアなどのカードリーダーと3.5インチフロッピードライブを一つにまとめた製品が販売されている。また3.5インチ型は最も普及していたことから、現在でもファイルの保存などに使われるマークの図柄(アイコン)として、多くのソフトでその形がモデルにされ、Unicodeにもフロッピーディスクの絵文字(💾、U+1F4BE)がある。しかし、2013年の調査では、アメリカ合衆国の小学5年までの子供のうち、保存アイコンが何の絵であるかを理解している者は14%しかいなかった[5]。

3.5インチ型での磁気ヘッド動作
磁気ヘッドがメディアに接触する際、ヘッドの接触痕跡がメディアに残る。この痕跡はヘッド毎にユニークであるといわれる。記憶媒体の中では磁気テープと並び、読み取りの痕跡が媒体に残る数少ないメディアである。
現在フロッピーディスクドライブはowltechや株式会社isaが生産しているが、フロッピーディスク自体が2011年3月のソニー撤退により生産終了した。
規格・構造など
サイズ
円盤(ベース)の直径、ないしその外側の正方形状の外装の辺の長さで分類される。主要な仕様を挙げれば200mm≒8インチ、130mm≒5.25インチ、90mm≒3.5インチなどがある。5.25インチは5インチと呼ばれることも多い(3.5インチについては、同時期に3インチ前後の仕様が複数提唱されていた経緯から、誤解を避けるために3インチと呼ばれることは稀である)。
先行製品の磁気ディスクでは金属ベースだったこともあり(初期には)ディスクを剥き出しで扱うものもあったが、フロッピーディスクではその名の通り薄い樹脂のベースであるため、ほぼ全てのものが、おおよそ正方形の外装から取り出さず、常に入れたまま使うようになっている。駆動とアクセスのために、外装の中央と、1箇所に放射状の穴が開いている。
外装は主要な仕様では、8インチと5.25インチのものは薄く弱い樹脂製、3.5インチでは硬質のハードケースになっている。他の仕様もだいたいそのどちらかに似ている。内側には不織布による内張りがある。3.5インチのケースのヘッドアクセス用の穴がある部分は、金属またはプラスチック製のシャッターで保護される。シャッターはディスクドライブ内部でスライドして開き、閉じるときはケース内のばねの力で閉じる。なお、このシャッターにはロック機構は無いため、手で開ける事もできてしまうのは、メディア保護の点では良くない。
外装は「エンベロープ」とも「ジャケット」とも呼ばれるが、ディスクの一部とも言えるこの外装ではなく、8インチや5.25インチのディスクにおいて、保管時にそのさらに外側に被せる、1方向が開いた袋(紙製が多かった)のこともまた「エンベロープ」とも「ジャケット」とも呼ばれることがあり、混同に注意を要する。円盤が入っている正方形状の外装は紙製ではない。
最初期にソニーが発売した3.5インチディスクドライブはシャッター自動開閉機能がなく、ディスクの出し入れ前後に手でシャッターをスライドさせて開閉する必要があった。やがてドライブにシャッター自動開閉機能が搭載されたが、その頃は自動開閉機能のないドライブとの互換のために、手でシャッターを開けると開けた位置でロックされ、"PINCH"と書かれた部分(肩部分)をつまむとロックが解除されてシャッターが閉じるという機構のディスクが発売された。このディスクは自動開閉機能搭載のドライブには手でシャッターを開けずに挿入することができた。やがて自動開閉機能が一般的になり、開けたままロックできる機構は消えていった。
日本ではSIを使用し、計量法の関係上、正式な製品名称では、サイズを具体的にインチで表現することが禁じられており、サイズはmmで表し、インチの数字については「型」といった表現の使用が見られる。例:
- 3.5インチ:90mmまたは3.5型
- 5/5.25インチ:130mmまたは5/5.25型
5インチ、90mm 3.5インチの一般的な2HDのメディアでは、約1.2-1.4MBの容量があり、現在では90mm 3.5インチのものが主流である。さらなる小型化を試みる動きもあり、80mm 3インチや65mm 2.5インチも発表されたが、計測器など一部機器の記録メディアとしての利用にとどまり、主流にはならなかった。また、大容量化を試みた製品も数多く存在していた。概要を大容量フロッピーディスクの節に記す。
1枚で1MB程度という容量は、現在のように画像や音声データを扱う用途では不足する。しかしフロッピーの代替となる標準メディアがなかなか現れなかった。また、かつてのPC/AT互換機では唯一の起動可能 (Bootable) かつ読み書き可能なリムーバブルメディアだった。そのため、主に起動用や一部周辺機器のデバイスドライバなど、少量のデータの受け渡し用として広く普及し、現在でも利用されている。なお、類似のものに、クイックディスクやスーパーディスクなどがあるが、ともに広く普及することはなかった。
ライトプロテクト
読み込みのみを許可し、書き込みを禁止する設定ができ、「書き込み禁止」または「ライトプロテクト」と言う。その書き込み禁止の操作は各メディアにより異なる。
- 90mm/3.5インチディスク - ライトプロテクトノッチをスライドさせ、窓が空いた状態にする
- 130mm/5.25インチディスク - 外装の切り欠きにライトプロテクトシールを貼る
- 200mm/8インチディスク - 外装の定位置に切り欠きを作成する
ノッチを元に戻す、シールを剥がす、シールを貼るなどの逆操作を行えば、再び書き込み可能状態になる。
ディスクドライブは、ノッチまたはシールの位置に配置した光センサまたはスイッチで、書き込み禁止の状態を判別する。
セクタと容量
他のディスクメディアと基本的には同様であるが、簡単に説明する。ディスクには、片面であれば1枚、両面であれば2枚の「サーフェース」がある。(各)サーフェースには、同心円状に独立した多数の「トラック」がある(スパイラル状のディスクもあるが稀)。各トラックは一定の角度毎に複数の「セクタ」に分けられている。フロッピーではほぼ全てのディスクが線速度一定ではなく角速度一定のため、内周と外周で記録密度が異なる。セクタ位置の判別において、各セクタの開始角度に対応する内周の記憶領域外の位置に穴(インデックスホール)が開けてあり、光学センサで検出するなどといった機械的方式がハードセクタ方式、第1セクタの位置のみ穴があり[6]後続セクタの位置を各トラックの物理フォーマットにより磁気パターンで検出する方式がソフトセクタ方式である。
ディスクの構造
A.トラック
C.セクタ(ディスクセクタ)
読み書きの処理が行われるタイミングによっては、論理的には連続したセクタを、物理的には1セクタおき、あるいは数セクタおきに配置すると、前のセクタを読み込んで処理をした後に、ちょうどタイミング良く次のセクタの読み出し位置に来て、連続して読み書き可能にできることがある。この技法をインターリービングという(インターリーブ#ディスク・ストレージでのインターリーブ)。同様の理屈でトラックごとに第1セクタの位置をずらす手法もある。
フロッピーディスクの容量表記には2進接頭辞が使用される場合が多い。しかし1.44MBなど一部に独特の表記もあり、1.44MBは1.44×1000×1024バイトである。詳細はメガバイト#実際の使い分けを参照。また各種フォーマットの容量についての詳細は下記#フォーマットを参照。
3.5インチフロッピーディスクの2DD、2HC、2HDの物理的な違い
3.5インチの2DDと2HDは、磁性体の品質の要件(塗布厚など)と、2HDのみ外側ケースに穴(HD検知孔)が開いている以外の差はない。
3.5インチの2HCと2HDについては、メディア自体は全く同じ2HDであり、物理フォーマット(ローレベルフォーマット)が違うだけである。具体的には1トラックあたりのセクター数の違いである。PC-9800シリーズで用いられる2HDフォーマットとはこれに加えて1セクターあたりのバイト数(セクター長)とトラック数も異なる。フロッピーディスクでは物理フォーマットという言葉は、ハードウェア形式を指す用語ではなく、論理フォーマットの一段下のレベルのフォーマットを意味し、セクター長やトラック数などのパターンのマッピングを指すものである。
なお、一時期の日本では1.44MBフォーマットの2HDが「2HC」と呼ばれることがあったが[7]、誤りである。
耐久性・寿命
フロッピーディスクは磁気ディスクの一種なので、磁気に弱い。ある程度以上に強力な磁石を近づけると、記録されている情報は破壊されてしまう。ホコリなどの異物の付着や汚れにも弱く、記録面が汚れると情報が読み取れなくなり、破壊に至ることがある。また、高温多湿や紫外線も嫌う。
常に磁気ヘッドと接触した状態で読み書きを行うために少しずつ摩耗し、利用には限度がある。アクセス時以外にはヘッドをディスクから分離する機構のドライブもあるが、現在はヘッドとディスクが常に接触するドライブが一般的である。
摩耗が重なるとディスクの磁気が弱まり、記録された情報を維持できなくなる。ただし、その磨耗は一般使用では無視できるレベルである。JISでは1トラックにつき300万回は使用できる耐久性を持たせるよう定められている。
フロッピーディスクは、適切な使用と保管をしていれば、100年程度は情報を維持できるとされる[8][9]。しかし、雑に扱うと、破壊に至る可能性が高くなるデリケートな記録媒体であり、保管方法によっては数年程度で読み込み不良となる場合もある。寿命を延ばすには、磁気、ホコリ、汚れ、高温多湿、紫外線を避ける保管方法が必須となる。
歴史
もともとフロッピーディスクのようなフレキシブルな円盤に磁気情報を記録させようとする報告は1960年代からあり、例えばピアソンの研究報告では容量12.5KB、40トラック、回転速度は1800rpmでヘッドは非接触式のものであった[10]。
8インチ

8インチ型フロッピーディスク
1970年、IBMによってIBM System/370のIPLローダーとして8インチのIBM23 (23FD-2) フロッピーディスクが開発された[11]。容量は80キロバイト[12]。1972年にはやはりIBMから新たなIBM33フロッピーディスクが開発され、翌年発表のIBM 3740データ入力システム用であった。これは容量400KB、ディスケット1枚で1900枚のパンチカードに匹敵するデータを格納できる、当時としては画期的なものであり、フロッピーディスクの基本にあたる[11]。その後ディスクを両面化し容量を800KBとしたIBM43フロッピーディスクとなり[12]、さらに倍密度化して1.6MBのIBM53フロッピーディスクが登場する[13][14]。その後小型コンピュータやワードプロセッサの記憶媒体として利用されていく[15]。
初期の8ビットや16ビットパソコン用としても1980年代後半前後[要出典]まで使われていた。
5.25インチ
5.25インチ型フロッピーディスク
ミニフロッピーディスクとも呼ばれる。デスクの上に載せるには8インチフロッピーディスクドライブは大きすぎると考えられ、その小型化が要求された[16]。
シュガートが興したメーカーである米シュガートアソシエイツは1976年に、SA-400と呼ばれる5.25インチのディスクとドライブを発表・発売した[* 1][17]。当初は容量が109.4KB(1S、片面単密)と小さく[18]、さらにすでに利用されている8インチ(SA-800シリーズ)ドライブとは物理的にも電気信号的にも互換性がなかったが[要出典]大いにヒットした[13]。なお1980年には両面・倍密度として容量を約4倍の437.5KBとしたSA450が発売されている[14]。
また小型化により、コンピュータへのドライブの内蔵も可能となった[16]。また小型化に伴い容量は一時的に減少している[19]。
1978年にアップルコンピュータのApple IIでは容量100KBのドライブが採用された[20]。これはSA-400からコントローラ基板を抜いたモデルである兄弟機SA-390。これは、Apple IIではコントローラはアップル独自の物を利用していたことによる。ただし、実機のドライブ銘板がSA-390ではなく、SA-400のままの個体も多数存在した。[要出典]
その後、フロッピーディスクはコンピュータにとって必要不可欠なものとなり、広く普及していった[21]。
5.25インチのディスクは1D(片面倍密度)や2D(両面倍密度)などに発展し、2DD(両面倍密度倍トラック)を経て、やがて主流となる2HD(両面高密度)に至る。日本では電電公社(現在のNTT)が5.25インチ2HDドライブの開発を行なってきたため、発表当時は電電公社フォーマットドライブとも言われた。これは容量が約1.2MBで、電気的にも8インチドライブと互換性をとっており、8インチドライブからの代替が可能だったのもスムーズな移行につながった。ごく古いMS-DOS等の5.25インチ2HD用ディスクフォーマットを持たないオペレーティングシステム (OS) でも、これを8インチ2Dディスク用フォーマットで代用できた。
ただし信頼性は8インチディスク同様に問題があり[19]、磁気に弱く、外装も変形しやすく、それに入った磁性体は、常にヘッド部が露出し[22]、さらに磁性体を塗布した円盤の中央部も露出している。このため保管時は専用の封筒を用いねばならない[23]。また開口部からは常に塵や埃が内部に侵入する危険性があり、その他その脆弱性により取り扱いには相当な注意を払うことが要求されているものであった[24]。
なおヘッドと磁性体は接触製であるため摩耗が心配されるが、これは当時1トラックの連続使用で100万パス(360rpmで46時間)が保証されていた[25]。また、ドライブが磁性体の円盤中央部をクランプしチャッキングする際の精度やその部分の耐久性も弱点であった[26]。
3.5インチ

3.5インチ型フロッピーディスク

3.5インチ型フロッピーディスクドライブ
3.5インチフロッピーディスクの内部
1980年、ソニーが3.5インチ (90mm) のディスクを開発し、1981年発売の英文ワープロ「シリーズ35」の外部記録媒体として採用・発売した[27]。なお外付け形式ではなく、ドライブはワープロ本体に2台内蔵されている[28]。標準規格では「90mmフレキシブルディスク」が正しく、3.5インチフロッピーディスクは通称[29]。マイクロフロッピーディスクとも呼ばれる。また従来は磁気ディスクは薄い樹脂製の「袋」に近いものに収められていたが、それをプラスチック製の硬質なケースに改めている[30]。なお、3.5インチ、すなわち外径90mm、内径25mmと言うサイズは、ソニーのプロジェクトリーダー中山正之が、本人の言葉によれば「えいやー」と決めたものであり、結局それが変更なく標準と落ち着いてしまったものであり、深い意味が有るサイズではないらしい[31]。
本ディスクはもともとはソニーが自社のワードプロセッサーに内蔵させるために開発したもの[* 2][32]。それに当たり他社をリードする、より小型のフロッピーディスクが計画された[16]。また当時の5.25インチフロッピーディスクは容量250KBであったが、小型化を実現しつつ容量は4倍の1MBが目標とされた[33]。このため、従来のディスクでは磁性体にガンマヘマタイトを使用していたところ、より高密度化が可能なコバルト・ガンマ酸化鉄を採用した[* 3][34]。またデータ更新時の磁気の消し残りを解消するため、磁性体の塗布厚を減少させている[35]。密度は従来48TPI (Track par Inch) であったものを135TPIに向上させ、磁気ヘッドもビデオテープレコーダーのヘッドに用いられていた技術を応用し、新たに開発された[36]。
さらに脆弱であった8インチ/5.25インチフロッピーディスクの問題を解消するため、高コストは信頼性のためやむを得ないとし磁性体のケースは比較的強靱な厚さ3.3mmのプラスティック製とされた[37]。従来のディスクは外装が剛性の低い樹脂であったため、ドライブの内部で外から間接的にディスクを押さえる事が可能であったが、3.5インチフロッピーディスクでは硬質のケースとしたため、それが行えない。このため、ケース内部に「リフター」と呼ばれる板バネがあり、それによって押さえを行っている[38]。またやはりコストはかかるがヘッド部にはシャッターを設け、未使用時にはシャッターを閉じておくといった構造とし、異物の混入などを避け得る構造とした[39]。なお、初期のものはこれの開閉は手動であり、手でシャッターを開けてからドライブに挿入し、ドライブから排出後は手動でピンチマークを締めこれを閉じる必要があったが[* 4][40]、利用者から自動化への要求が多く寄せられ、後年は自動開閉式とされている[41]。
またやはりコストは増したがディスクのセンター部には金属製のハブを設け、ドライブはそれをチャックするシステムとした。これにより従来よりチャッキングの精度を上げると同時に、チャッキングを片面からのみ行うことによりケース中央の穴を片面に限定でき、異物の混入を防げるようになった[42]。またドライブ側もチャッキングに要する部品を片面のみに限定することができるため、ドライブの薄型化にも貢献している[42]。
1980年末の「シリーズ35」発表時には、ワープロでなく3.5インチフロッピーディスクが注目を集め、翌年5月にはプロジェクトリーダーはフランスでIEEEの学会発表を行う[43]。またソニーはディスクの普及のためにはじめてOEMを行う方針を打ち出すが、3.5インチフロッピーディスクの採用に至ったのは一社にとどまった[44]。
続いてパソコンへの採用も行われ、1982年に発売された同社製のSMC-70に最初に搭載された[45]。また同年にはヒューレット・パッカードへ3年間に27万台の供給契約を締結[46]、その後1983年にはアップルが導入を決定[47]、マッキントッシュに採用され、ソニーは世界一のフロッピーディスクドライブ製造会社となった[48]。
1982年[要出典]、日本が中心となって3.5インチのフロッピーディスクの標準化が進んでいることを良く思わなかった米国企業は、「マイクロ・フロッピー・スタンダード・コミッティ」(Micro Floppy Standard Committee) を形成し、フロッピーディスクに関する標準化で、米国が中心となるよう活動を開始した。ところが、シュガート、バーベイタムなど参加した14企業には、フロッピーディスクに関する高い技術や独自規格を世界標準に育てるだけの技術力を持った企業が存在しなかった。そのため、ソニーにこのコミッティへの参加を呼びかけた。ソニーはオブザーバーとして参加することになった。[要出典]ソニーはこのコミッティからの依頼を受け、以下の改良を行った。
- シャッターの自動化[49]
- トラックの数を80に変更[49]
- プロテクトのセンサーを透過型に変更[49]
ソニーがこの3点を変更したことを受け、コミッティは全米規格協会 (American National Standards Institute: ANSI) に3.5インチ規格を提案し[50]、1984年にはISO会議で規格が承認された。標準化案には他に3インチ、3.25インチ、4インチなどが提案されていたが、既にヒューレットパッカードやアップルが採用しておりデファクトスタンダードとなっている3.5インチフロッピーディスクが採用された[50]。ただし各種パソコンメーカーは5.25インチフロッピーディスクドライブをそのまま置き換えられることを期待していたのに対し、ソニーは既にワープロ用として3.5インチフロッピーディスクを販売していたため、トラック数は70と80、回転数は300rpmと600rpm、転送レートは250Kbit/secと500Kbit/sec、と言った仕様が混在し、また接続ピンも5.25インチのドライブと互換性のある34ピンのものと、24ピンのものの二種類があった[51]。
3.5インチフロッピーディスクは従来は容量1MBのものであったが、その後当時もっとも標準的であった8インチフロッピーディスクと互換性がある、1.6MBの容量を持ったディスクへの要望が高まった。従来より磁性体を薄く塗布する技術が完成していたため、材料は共通化したままで1985年には容量1.6MBの「2HD」のディスクを発表、その後標準化される[52]。1987年にはIBMでも採用されるに至った[47]。
この後3.5インチフロッピーディスクは大いに普及し、最盛期では世界市場で1995年にディスクが年間約45億枚、2002年にはドライブが年間約14000台となっている[53]。だが1993年頃からCD-ROMが普及し始めたたことによって、ディスクの生産枚数は減少し始め、ドライブも2002年をピークに生産数は減少を始める。だが2004年頃までに、3.5インチフロッピーディスクドライブは、約1億台が生産された[54]。ドライブがディスクの生産数減少後も長く生産されているのは、パーソナルコンピュータに標準で内蔵された期間が長かったためである[55]。
年譜
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1980年 ソニーの英文ワープロ「シリーズ35」の外部記録媒体として採用。翌年発売。
1982年 ソニーのパーソナルコンピュータSMC-70に搭載。
1983年提唱のMSXが、1984年5月の発売時までに3.5インチに一本化されたこともあり、日本ではホビー用途の機種や、ワープロ専用機では普及が早かった。しかし、3.5インチのメディアは5.25インチより高価で、ゲームなどパッケージソフトの価格にも同封媒体による差があった。パソコン関連雑誌の付録メディアについては、「露出した金属を流通させてはならない」という付録に関する規制のため、3.5インチのメディアを付録として使用することが出来なかった。シャッターのプラスチック化は、価格よりもこの対策が主要因である。なお、チャッキング部分は露出していないため、金属製のままとされた。なお、後にはディスクと同じ厚さのボール紙で囲うことで金属部分を露出させないように対処した。
また、ビジネス用途では、日本電気 (NEC) 製PC-9800シリーズなどの中期までは、互換性を重視して5.25インチが主流だった。だが、ホビーユースではいずれの16ビットパソコンも3.5インチを採用したため、両者間のデータ共有が少なからぬ問題となった。結局、家庭用では安価な3.5インチFDD標準搭載のホビーユースモデルに5.25インチFDDを外付けする手法で対応した。さらには、EPSON PCシリーズの一部では、3.5インチFDDと5.25インチFDDの両方を標準搭載したパソコンも発売された。
1984年1月、アップルコンピュータのMacintoshが3.5インチ (400K) を採用したのを皮切りに、世界的にも各社が3.5インチを用いるようになった。1986年、IBMはIBM PC Convertibleで3.5インチ2DD (720KB) を採用。1987年にはPS/2とPS/55の全モデルで3.5インチを採用。下位機種は2DD (720KB)、上位機種は2DD (720KB) および2HD (1.44MB) を搭載した。後の上位機種には2ED (2.88MB) も追加された。
この2HD (1.44MB) のフォーマットは2DD (720KB) のフォーマットを単純に2倍にした形である。5インチでの電電公社フォーマットをベースにした国産各社の3.5インチの2HD (1.2M) フォーマット(正確には1.21MBや1.23MBなど)とは互換性が無く、相互に読み書きできなかった。ただし、PS/2やPS/55は企業向けが中心であり、また当時のPC/AT互換機はまだ5.25インチが主流であり、2ED (2.88MB) はNeXTstationなどのワークステーションに採用された程度で、あまり普及しなかったため、影響は限られていた。
しかし、1990年にDOS/Vが登場して1991年にOADGも3.5インチを推奨し、3.5インチ標準搭載のPC/AT互換機が一般家庭を含めて日本で本格的に普及すると、日本(PC-9800シリーズ、FMRシリーズ、FM TOWNSなど)と世界(PC/AT互換機)では両者で標準となった3.5インチの2HDフォーマットで互換性が無いという問題の影響が拡大し、PC/AT互換機の普及の過程で混乱があった。当初は、両者に共通のフォーマットである2DD (720KB) のフロッピーディスクや、ネットワークなどを利用したデータ交換が行われた。中には日本IBMのPS/55Zのようにオプションで1.2MBフォーマットのディスク読み出しに対応したドライブを搭載可能とした機種も存在した。次第に、3モードフロッピーディスクドライブ (720KB, 1.2MB, 1.44MB) が両者に普及した。
2000年代後半から他の大容量電子媒体の登場に伴い、3.5インチFDの売り上げは大幅に落ち込んだ。2009年春に日立マクセル(現・マクセルホールディングス)と三菱化学メディアがFD生産から撤退。最後までFD生産を続けたソニーも、2011年3月に中華人民共和国のメーカーに委託しているFDの生産を終了した。
ソニーから発売されていた3.5インチFDのパッケージには長らく「世界の3.5フロッピーはソニーから始まった SINCE 1980」と記されていた。
その他の規格

3インチ型フロッピーディスク

2インチ型フロッピーディスク
- 4インチ
- 1983年に、IBMが「デミディスケット(Demi Diskette)」という名称で発表。トラックにより回転数を変え、ビット密度を一定にした。また、外装の対角線上で磁気ヘッドを接触させる珍しいレイアウトを採用していた。片面単密度でフォーマット容量250KB。試作のみで製造中止。
- 3.8インチ
キヤノン製[56]。- 3.25インチ
- アメリカのダイサン製。5.25インチフロッピーディスクをそのままサイズダウンしたもの[57]。
- 3インチ
- コンパクトフロッピーとも呼ばれる。1981年に、松下電器産業(現・パナソニック)、日立製作所、日立マクセルの3社が規格を発表。片面40トラック、250KBアンフォーマットなど、初めから5.25インチと互換が取れるように設計されていた。3社を中心に、日本でフロッピーディスクの標準化を進めたが、Macintosh、IBM PCが3.5インチを採用し、廃れていった。中山正之によれば、カセットのような分厚いケースに入ったもので、ケースの「内側」に読み取り部分のシャッターがあるもの。日本のマスコミには人気があったが、片面しか使用していなかったため記憶容量は3.5インチフロッピーディスクの半分であったという[58]。実際に各社から発売されたメディアは両面を使うことができ、ディスクを裏返して挿入するドライブや、ディスクを裏返すことなく両面を読み取れるドライブが発売されていた。日立家電販売株式会社のベーシックマスターシリーズ用の外付けドライブMP-3370や、シャープX1Dなどに採用されている。
- 2.5インチ
オリベッティが電子式タイプライターの補助記憶装置として販売。容量は8KB[59]。- その他全く別の規格で、三協精機(現・日本電産サンキョー)より8KBまたは16KBのものが、東京電気(現・東芝テック)からも16KBのものが製品化された。
- 2インチ
- 1981年にソニーが発表したビデオフロッピーディスクをデータ用に使用したもの。ソニーのワープロ「PRODUCE」シリーズに使われた。パソコンでは標準搭載された機種は存在しなかったが、PC-9800シリーズ用の外付けドライブがある。
- クイックディスク
- 1984年に、ミツミ電機が発表。2.8インチで片面64KB(裏返して使用可能)。渦巻状のトラックでランダムアクセス不可。詳細は「クイックディスク」を参照。
- ファミリーコンピュータ ディスクシステム
- 1986年に任天堂が開発した、コンシューマーゲーム機であるファミリーコンピュータ(ファミコン)用の磁気ディスクシステム。容量は112kB。クイックディスクのケース形状を変更し、任天堂の独自規格としたもの。
その後
当初、フロッピーディスクは磁性体の塗布技術に難点があり、不良率が高かった。しかし、特定OS用の初期化作業時に全品検査する方式が導入されると、不良率が激減した。さらに、磁性体の塗布技術が向上し、1990年代前半には品質が安定した。その後は大容量化が図れず、日本ではコスト削減から製造ラインの国外移設により、品質も低下した。
1990年代にはすでにフロッピーディスクは容量、速度、信頼性のいずれも時代遅れとなっていた。光磁気ディスク、フロプティカルディスク、ZIP、jazなど、より高速大容量の媒体もあったが、フロッピーディスクは起動用ディスクとして使え、ほぼすべてのコンピューターで共通に使える利点が大きく、長らく使われ続けた。雑誌や本の付録に3.5インチディスクが使われることもあった。
おおむね2000年頃までフロッピーディスクは盛んに使われていたが、読み書き速度も高速で大容量かつ低価格なフラッシュメモリ(特にUSBメモリ、およびSDメモリーカード(SDHC以上))が普及したこと、フロッピーディスク以外の記憶媒体(CD/DVD-ROMなど)からでもOSの起動やセットアップができるようになったことから、フロッピーディスクは徐々に廃れていった。また、本の付録としての使用は、出版社や著者のWebサイト上でのファイル公開という代替手段ができている。
ただし、自作機市場では現在でも一定の需要があり、自らシステムメンテナンスを行う自作機ユーザーは、フロッピーディスクを「最後の起動手段」として常識的に搭載してきた。だが、近年のWindowsでは、フロッピー起動ではNTFSの読み書きをするには上級の知識と技術が必要なため、この意味での搭載の意味は薄くなった。
DSP版Windowsのライセンスがハードウェアとのセット(OSとハードウェアを一体製品)で販売されていた時期は、フロッピーディスクドライブとのセットが見られた。これは、フロッピードライブは今後発展がないと推測されるため交換する必要がなく、ライセンスを維持したまま他のパーツを自由に交換することができる上に安価であるためである。この販売手法が、フロッピーディスクドライブインターフェイスを搭載しないマザーボードが主流となったのちにも一部で継続され、DSP版Windowsを廉価に販売および購入する方法の一つになっていた。フロッピーディスクドライブの製造が各社で終息したこと、マザーボードからFDインターフェースが廃止により、この方法での販売も収束した。その他の需要と問題点については後述するレガシーシステムとしてのフロッピーディスクを参照。
フロッピーディスクの磁性体特性は、規格に定められているか、あるいはデファクトスタンダードとして定着しており、メディアの差別化は磁性体をフィルムに固定するバインダーと呼ばれる接着剤に工夫を凝らしていた。磁性体の剥離を最小限に抑えヘッドの清浄性を保つもの、導電性を持たせて埃の付着を防止したもの等があった。現在でも古いメディアをドライブに挿入するとヘッドにカビが付着し、他メディア読み取りも不可となる事例がある。経時したメディア使用時、白い粉が噴いていないか確認するユーザーもいる。
大容量フロッピーディスク
フロッピーディスクの記憶容量を増やすために、フロッピーディスクと上位互換を持ついくつかの製品が開発されたこともある。それらを総称して大容量フロッピーディスクという。しかしそれぞれ専用のディスクと専用のドライブが必要で、製品間の互換性もないため、普及しなかったものがほとんどである。
ZIP:フロッピーディスクとの互換性はない。100MB、250MB
スーパーディスク:120MB(当初、LS-120と呼ばれた)、240MB
FD32MB - 2HD媒体を使い特殊フォーマットで32MB詰めこむ。
High Capacity Floppy Disk (HiFD)- フロプティカルディスク
Ultra High Capacity (UHC)
UHD144 (it)
各ハードウェア規格の開発元
- フロッピーディスク(8インチ):1970年、IBM
- ミニフロッピーディスク(5.25インチ):1976年、シュガートアソシエイツ
- 4インチ:IBM(試作のみ)
- マイクロフロッピーディスク(3.5インチ):1980年、ソニー
- コンパクトフロッピーディスク(3インチ):日立製作所
ビデオフロッピーディスク(2インチ):ソニー、キヤノン
関連する日本工業規格
JIS X 0603:情報交換用フレキシブルディスクカートリッジのラベルとファイル構成
JIS X 0605:情報交換用フレキシブルディスクカートリッジのボリュームとファイル構成
JIS X 6221, JIS X 6223, JIS X 6226, JIS X 6226:90ミリメートルフレキシブルディスクカートリッジ
JIS X 6222, JIS X 6224, JIS X 6225:90ミリメートルフレキシブルディスクカートリッジのトラックフォーマット
フォーマット
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IBMフォーマット
一般的なフォーマットの例
- 200mm 8インチ
- 片面単密度(IBMの「Diskette 1」:約243kB)
- 両面単密度(IBMの「Diskette 2」:約493kB)
- 両面倍密度(IBMの「Diskette 2D」:約985kB)
- 初期には片面単密度、後には両面倍密度が多く利用された。
- セクタ長など幾つかのバリエーションがある。
- ソフトセクターが一般的であるが、一部のオフィスコンピュータやメインフレームではハードセクター方式もあった。
- IBM汎用コンピュータでは、77個のシリンダの内、0番目をインデックスとして末尾の2つを予備用として利用するため、実際にデータとして使えるのは74個のシリンダである。MS-DOSなどでは、77個すべて使える。
1995年頃に生産はほぼ終了している。
- 130mm 5.25インチ
- 片面単密度 - 1S (1 sided Single density):約70kB
- 片面倍密度 - 1D (1 sided Double density):約140 - 160kB
- 両面倍密度 - 2D (2 sided Double density):約320 - 360kB
- 両面倍密度倍トラック - 2DD (2 sided Double density Double track):約640 - 720kB
- 両面高密度(8インチ2D相当) - 2HD (2 sided High density Double track):約1 - 1.2MB
- 両面超高密度倍トラック - 2ED (2 sided Extra high density Double track):約2.5MB
IBM PC、PC/XTは両面倍密度360kBが一般的- IBM PC/ATは360kBに加え、2HC(IBMの「5.25" Diskette 2HC」)と称する1MB記録が採用された
- Apple IIは独自フォーマットを施すことで1Sながら約143kB(インデックスホールを検知しないため、書き込みノッチを切るだけで両面使用できた)
- NEC PC-8800シリーズ、富士通FM-7/8/11初期型 (ST/AD/EX)、シャープX1等は2D (320kB) が一般的。PC-8801mkIIMRで2D/2HD (1MB) 両用ドライブが採用された。
- NEC PC-100は2D (360kB) が採用された。
- NEC PC-9801Fで2DD (640kB)、PC-9801Mで2HD (1MB)、PC-98XAおよびPC-9801VMで2DD/2HD両用ドライブがそれぞれ採用された。
- 富士通FM-11後期型(AD2/BS以降)で2HD (1MB)、FM-16βおよびFMRシリーズで2DD (640kB)/2HD両用ドライブがそれぞれ採用された。
- シャープX68000で2DD (640kB)/2HD (1MB) 両用ドライブが採用された。
- 2EDは、富士通OASYSの業務用モデルの一部などで採用されたが、3.5インチ2EDと異なりほとんど普及しなかった。
- ソフトセクターが一般的であるが、一部のオフィスコンピュータやメインフレームおよび初期のパーソナルコンピュータ(NorthStar Horizonなど)ではハードセクター方式もあった。
2001年頃に生産はほぼ終了している。
- 90mm 3.5インチ
- 片面倍密度(1D:約140 - 160kB)
- 両面倍密度(2D:約320 - 360kB)
- 片面倍密度倍トラック(1DD:約320 - 360kB)
- 両面倍密度倍トラック(2DD:約640 - 720kB)
- 両面高密度(2HD:約985kB/1.23MB/1.44MB他|2HC:約1.21MB|IBM形式でフォーマットした場合は、200mm 8インチ2Dに相当する)
- 両面超高密度倍トラック(2ED - 2 sided Extra high density Double track:約2.88MB)
- 両面3倍密度3倍トラック(2TD - 2 sided Triple Density triple track:約9.3MB)
- NEC PC-6601で1D (140kB) が、PC-6601SRで1DD (320kB) が採用された。
- 富士通FM-77で2D (320kB) が、FM77AV後期型(AV40/20以降)で2DDが採用された。
MSXで1DD (360kB)/2DD (720kB) が採用された。日本では早期に2DDに移行したが、欧州では廉価な1DDドライブが発売されたため1DDが普及した。
IBM PC ConvertibleやIBM JXで2DD (720kB) が採用された。
IBM Personal System/2 (PS/2) で2HD (1.44MB) が採用された。- NEC PC-9801Uで2DD (640/720kB)、PC-9801UVで2HD (1MB)/2DD両用ドライブが採用された。
- 2HD (1.44MB) を読み書き可能にした3モードFDDが採用されたのは、初代PC-9821からだった。
- 富士通FMRシリーズおよびFM TOWNSで2DD (640kB)/2HD (1MB) 両用ドライブがそれぞれ採用された。
- シャープX68000 Compactで2DD (640kB)/2HD (1MB) 両用ドライブが採用された。
- 現在の主流サイズである。
- 2HD (1.23MB) を98フォーマット、2HD (1.44MB) をDOS/Vフォーマットと呼ぶこともある。
- 2HD (1.21MB) は東芝のJ-3100シリーズ・初期のDynaBookが標準フォーマットとして採用していた。ただし、当時の同機では2HD (1.44MB) をサポートしていなかったなど、5.25インチのフォーマットをそのまま3.5インチに縮小したという表現の方がより正しい。5.25インチの2HC形式と互換性がある。
- 2EDは東芝が普及に力を入れたが、ドライブが普及しなかったことや、MS-DOSでサポートされたのはVer.5からだったこともあり、あまり一般的ではない。ただし、2世代目以降のNeXTcube・NeXTstationでは、初代NeXTcubeの5インチMOに代わる記憶媒体として、ハードディスクドライブとともに標準搭載された。なお、2EDはDynaBookではサポートされなかったが、富士通FMRシリーズ・FM TOWNSのBIOSではサポートされていた。
- 日本国内で3モードドライブといえば1.44MB/1.23MB/720KBを指すのが一般的だが、世界では2.88MB/1.44MB/720KBの事を指していた。そのため、少し古いマザーボードのBIOSで3モード設定を行なうと、不具合を生じる事がある。最近のものは日本仕様になっている(2.88MBには別の設定がある)ため、問題は起こりづらい。
- 2TDは、日本電気 (NEC) のPC-88VA3のみに採用されたドライブで、レーザー刻印によるオプティカルトラックガイドがついたメディアを使用する。
- 2HD (1.23MB) に関しては、PC-9800版MS-DOSのFORMATコマンドで1.25MBと表示されていたために、1.23MBではなく1.25MBと表現されることも多かった。
- Macintoshは独自フォーマットを施すことで片面 (1DD) で400KB、両面 (2DD) で800KBを実現した。外周から16シリンダ毎にセクタ数が減っていき回転数が上がるZCAV方式で、エンコードはGCR方式。2HDの物理フォーマットは1.44MB(ファイルシステムは異なる)で、ユーティリティを使用すればWindows上でもアクセスできる。
- アップル純正ディスクは、当初は2DDが白色でシャッターにDouble Sidedの表記、2HDは灰色でアップルマークとHigh Density、400K/800Kドライブへ挿入禁止のマークがあった。2HDに、2DDにはない挿入禁止マークがあるのは、2DDは400Kドライブで認識でき『両面ディスクです』と表示される(読み書きはできないので取り出すか初期化するかを選択する)が、2HDは400K/800Kどちらのドライブでも認識できず未フォーマットと同じく『読めません』と表示されるためである。
- 片面および両面ディスクはUSB接続のドライブではZCAVにもGCRエンコードにも対応できないためClassic Mac OS上でもアクセスできず、アクセスするにはドライブを搭載した当時の機種が必要になる。そのため、両面ディスクにアクセスできMac OS Xの稼動する機種は初期のG3のみと非常に限られる。PowerBook G3ではそれ以降もFDDのオプションがあったため、Power Mac G3よりも長くサポートされた。
3.5インチフロッピーディスク各形式の詳細
形式名 | 回転数 | アンフォーマット 容量 |
フォーマット 容量 |
セクタサイズ | セクタ数 | ヘッド数 | シリンダ数 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1D形式 | 300rpm | 250KB | 160KiB |
512バイト | 8 | 1 | 40 | 日本独自 |
2D形式(日本の初期8bitパソコン) | 300rpm | 500KB | 320KiB | 512バイト | 8 | 2 | 40 |
|
2D形式(PC/AT互換機) | 300rpm | 500KB | 360KiB | 512バイト | 9 | 2 | 40 |
|
1DD形式 | 300rpm | 500KB | 320KiB | 512バイト | 8 | 1 | 80 |
|
1DD形式 | 300rpm | 500KB | 360KiB | 512バイト | 9 | 1 | 80 |
|
2DD形式(日本の初期パソコン) | 300rpm[60] |
1.00MB | 640KiB | 512バイト | 8 | 2 | 80 |
|
2DD形式(大抵のパソコン) | 300rpm[60] |
1.00MB | 720KiB | 512バイト | 9 | 2 | 80 | |
2HC形式(俗称) | 360rpm | 1.60MB | 1200KiB | 512バイト | 15 | 2 | 80 | 日本独自 |
2HD形式(日本のパソコン) | 360rpm | 1.60MB | 1232KiB | 1024バイト | 8 | 2 | 77 |
|
2HD形式(PC/AT互換機) | 300rpm | 2.00MB | 1440KiB | 512バイト | 18 | 2 | 80 | |
2HD形式(IBM形式/H型) | 360rpm | 1.60MB | 985KB | 256バイト | 26 | 2 | 77 | 日本独自 |
2HD形式(三菱IBM形式) | 300rpm | 2.00MB | 985KB | 256バイト | 26 | 2 | 77 |
|
2ED形式 | 300rpm | 4.00MB | 2880KiB | 512バイト | 36 | 2 | 80 | |
1DD形式(Mac 片面) | 394~590rpm | 500KB | 400KiB | 512バイト | 12~8 | 1 | 80 | |
2DD形式(Mac 両面) | 394~590rpm | 1.00MB | 800KiB | 512バイト | 12~8 | 2 | 80 | |
2HD形式(Mac 高密度) | 300rpm | 2.00MB | 1440KiB | 512バイト | 18 | 2 | 80 | |
2TD形式(NEC一部機種) | 360rpm | 12.5MB | 9.3MB | 512バイト | 38 | 2 | 240 | 日本独自 |
2HD形式 (FD32MB) | N.Arpm | N.A MB | 約32MB | 512バイト | 53~36 | 2 | 777 |
- 参考
形式名 | 回転数 | アンフォーマット 容量 |
フォーマット 容量 |
セクタサイズ | セクタ数 | ヘッド数 | シリンダ数 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
8インチ1S形式(汎用機) | 360rpm | 400KB | 243KB | 128バイト | 26 | 1 | 77 | |
8インチ2D形式(汎用機) | 360rpm | 1.60MB | 985KB | 256バイト | 26 | 2 | 77 | |
5.25インチ2HC形式 (PC/AT) | 360rpm | 1.60MB | 1200KiB | 512バイト | 15 | 2 | 80 | |
5.25インチ2HD形式(PC-9800シリーズ) | 360rpm | 1.60MB | 1232KiB | 1024バイト | 8 | 2 | 77 | 日本独自 |
5.25インチ1S形式 (SA-400) | 300rpm | 100KB | 80KB | 256バイト | 18 | 1 | 35 | 日本独自 |
5.25インチ2D形式 (SA-450) | 300rpm | 400KB | 320KB | 512バイト | 18 | 2 | 35 |
レガシーシステムとしてのフロッピーディスク
前述の自作機パーツとしての用途が廃れた後も、世界各国の刺繍機や現金自動預け払い機、医療、航空機関連の機器で未だにフロッピーディスクは現役であり、新規の生産が終了した現在も、その需要は消滅していない[61]。
一例として西陣織では、織機に紋様の織り出し方を指示する紋意匠図の製作と製織の過程で、以前は「紋紙」と呼ばれる孔開き厚紙(歴史的には、コンピュータ以前の時代から使われていたパンチカードの由来である、イギリスで発明された織機のシステムそのものである)を使っていたが、1980年代に紋紙に代わって電子的な形式が制定され(コンピュータ柄システム)フロッピーディスクを使う機器が普及した。その後フロッピーディスクの生産打ち切りに伴い、ほとんどの織機が使えなくなるおそれを生じている[62]。このような問題に対応するために京都市産業技術研究所でシステムが開発され、2011年から西陣織セミナーが開催されている[63]。
アメリカ合衆国連邦政府でも、2016年になっても未だに「核兵器の運用部門」にはフロッピーディスクが使われており、それらを始めとする旧式システムの維持管理に、年間600億ドル(約6兆6000億円)以上も費やされることが問題となっている[64]。
アメリカ国防総省は、一刻も速くフロッピーディスクの使用を停止する方針を発表しているが、新システム構築のために用意された投資額は、旧システム維持費用の3分の1以下に留まっており、「簡単に言えば現在も機能しているため」旧システムは使われ続けている[65]。これらは同省固有の現象ではなく、財務省[64]やホワイトハウス[66]でもフロッピーディスクや、1950年代のコンピュータプログラムが使われ続けている。
これら旧システムには利点もあり、フロッピー機器はその古さゆえに、インターネットから遮断され、サイバー攻撃の影響を受けないこと、また長年使用されてきた信頼性と確実性は、新規システムを上回ること等が指摘されている[67]。
ともあれ、フロッピーディスクの生産が終了した現在、これらの供給は各所とも、リサイクルショップに頼っているのが現状であり[61]、いずれもコンピュータシステムの更新は、早急に行われることが望ましい。
注釈
^ 製造はデータ・カセットメーカーであるインフォメーションターミナルが行った。
^ 発売までに3.5インチフロッピーディスクの開発が間に合わなければ、5.25インチドライブを採用する予定であった
^ 当時既に家庭用ビデオテープレコーダーで採用実績があった。
^ 開発が急がれたためであるという。オートシャッター対応ドライブに初期のディスクを挿入する時には、ディスクのロック爪と言う部品をカッターナイフなどで削り落とす必要がある。
出典
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^ IBM's 360 and early 370 systems (Emerson W. Pugh, Lyle R. Johnson, John H. Palmer) p520, p615.
^ 例:The Floppy Disk - IBM100
^ フロッピー (floppy) とは「だらりとした」「締まりのない」または「元気のない」「弱い」を意味する英語の形容詞で、日本語のニュアンスとしては「ふにゃふにゃしたもの」「ぐにゃりとしたもの」が近い。
^ Joe Federer (2013), The First Infographic Made by Kids!, TechHUB.com, http://www.teachhub.com/first-infographic-made-kids-national-library-week
^ 3.5インチでは中心部にあるハブ自体に位置決めがある
^ 『Oh!FM TOWNS』(ソフトバンク)1993年7月号、60頁。
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^ “消えるFD、西陣直撃 織機9割今も使用”. 朝日新聞 (2011年11月24日). 2012年9月7日閲覧。[リンク切れ]
^ “平成23年度 京都市伝統産業技術者研修 第1回西陣織セミナーの開催について”. 2013年12月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年12月15日閲覧。
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^ “フロッピーディスクからカセットテープまで 2015年でも現役なレトロテクノロジーとは”. ハフィントン・ポスト (2015年11月14日). 2016年6月16日閲覧。
^ “Think the floppy disk is dead? Think again! Here’s why it still stands between us and a nuclear apocalypse”. DIGITAL TRENDS (2015年9月26日). 2016年7月29日閲覧。
参考文献
中山, 正行 (2010), 世界を変えた1枚のディスク, 角川学芸出版 - 著者は3.5インチFDの開発者、工学博士の中山正之。p.28は中山の論文「技術文脈の融合と技術開発」(吉川弘之監修 1997『新工学知-2 技術知の本質 文脈性と創造性』東京大学出版会 第一部)が初出。
関連項目
スマートメディア (Solid State Floppy Disk Card)- ブートディスク
中松義郎(ドクター中松):フロッピーディスクの発明者と主張している人物。中松が取得する一部の特許についてIBMと中松が非独占的特許使用契約を結んでいるが、IBM側は発明に関わるものではないとしている。
外部リンク
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