埋葬








埋葬(まいそう)とは死者を土の中に埋めることである。


墓地、埋葬等に関する法律においては「死体を土中に葬ること」として、いわゆる土葬を指す言葉として定義されているが、慣用的な用法としては火葬後の遺骨を墓地や納骨堂などに収納することを指す場合もある。




目次






  • 1 埋葬の歴史


    • 1.1 日本の埋葬の歴史


    • 1.2 西洋の埋葬の歴史




  • 2 埋葬する理由


  • 3 埋葬する場所


  • 4 埋葬後の遺骨


  • 5 関連項目


  • 6 脚注


  • 7 参考文献





埋葬の歴史


原始人類の化石や遺跡は、時代が古くなるほど発見例が少なく、また破損や撹乱により原形を保っていない事も多く、彼らが埋葬行為を行なっていたかどうかの判定は困難であるが、わずかな証拠から、猿人・原人段階では埋葬はなかったと考えられる。北京原人(ホモ=エレクトゥス)は食人を行なっていた可能性が指摘されているが、埋葬をした形跡は認められない。


埋葬という行為が成立するためには、死を理解する事。また死者の魂や来世を考えるといった抽象的な思考力の発達が不可欠で、アウストラロピテクスやホモ=エレクトゥス・ホモ=エルガステルの段階ではまだ知的能力がそこまで発達していなかったと考えられる。


最も古い埋葬の例はネアンデルタール人のものがよく知られている。すなわち、埋葬の起源はおよそ10万年前にさかのぼる。発見されるネアンデルタール人類の化石は、事故や遭難のため埋葬される事なく遺棄されたと思われるものも少なくないが、洞窟内など特定の場所から何体もの骨格化石が副葬品と共に発見される場合も多く、彼らが死者を葬っていた証拠とされる。ただしこれには反対意見がある。ネアンデルタール人は、遺体を狙う食肉獣の接近を恐れて単に遺体を埋めて隠したに過ぎないとする考えである。彼らが本当に埋葬と呼べる行為を行なったかどうか、まだ意見の一致を見るに至っていないが、ネアンデルタール人の「埋葬」された化石を調べると、女性もあるが男性がはるかに多い。彼らの社会や意識の反映であろうが、こうした違いは、単に食肉獣の襲撃を避けるだけなら起こりえないもので、ネアンデルタール人が死者に対して特別な意識を持っていた可能性を示唆するものであり、埋葬行為が行なわれていたと考えても十分に良いと思われるとの意見もあるが、仮に猫の遺骸が土中から見つかり、その遺骸は雌よりも雄が多かったため、猫は埋葬習慣と弔意を持つといった主張と同じであるため、空想の域を出ず、学術的にはネアンデルタール人が埋葬習慣を持っていたとする意見は支持されるに値する根拠を持たない。


尚、ネアンデルタール人とほぼ同時期に既にアフリカや西アジアではホモ・サピエンスが出現しており、彼らも埋葬行為を行なっていた事は確かで、最古のネアンデルタール人に近い時代と考えられるジェベル=カフゼー人で埋葬が見られるが、これらのホモ=サピエンスは絶対年代がはっきりしないものや、石器などの文化遺物だけで人骨は発見されない場合も多く、確実な事はわかっていない。



日本の埋葬の歴史


日本では旧石器時代に北海道美利河1遺跡や湯の里遺跡の土抗など墓の可能性ある遺構が数例発見されている。


つづく縄文時代から埋葬行為が確認されている。集落内や貝塚などに墓域が設けられ、死者は土坑墓や土器棺墓[1]、石棺墓など土葬により埋葬されるのが一般的で、火葬や再葬が行われている例も確認されている。遺体の手足を折り曲げる屈葬と手足を伸ばした伸展葬の二形態があり、この時代では屈葬が主流であった。また、住居の内外に見られる深鉢形土器を埋納した特殊な施設である埋甕は乳幼児の墓(または胞衣壺)である可能性も考えられている。縄文後期・晩期の東日本では、伸展葬や配石墓[2]、再葬[3]など多くの変化見られるようになる。また、環状列石などの配石遺構に造られた墓や周堤墓[4]などがある[5]


弥生時代に入ると、北九州を中心に甕棺と呼ばれる大きな甕に埋葬する例が確認できるほか、再葬墓と呼ばれる、いったん死者を地下に埋葬した後、白骨化した後に骨壺に収める例が確認されている。古墳時代にはいると、権力者は古墳と呼ばれる大型の墳墓に埋葬されるようになるが、庶民の埋葬については不明である。


奈良時代になると、仏教の影響から火葬墓が増えるが、庶民は絵巻物などの記述から、河原や道端に遺棄されたと見られる。


古代から中世にかけては、穢れの思想が強く、貴人の墓地管理も疎かであった。近世になると、庶民も墓を設け、先祖の供養をする。現在はほとんどの死者は火葬され、一族や家族の墓地に葬られる。一方で墓友という語や、都市部に於いてはロッカー式の墓地なども出現している。



西洋の埋葬の歴史


西洋諸国では現在も火葬より土葬が主である。死者はエンバーミングを施され、体を洗われて服を着せられ、棺に入れられる。その後参列者の前で墓地に掘られた穴に棺ごと埋められる。キリスト教の国々では棺は東西方向に埋められ、その際頭は西側に向けて埋められる。



埋葬する理由


埋葬とは、土中深くに死体を埋めることで死臭が地表に上がるのを防ぎ、肉食獣によって遺体が食べられ四散するのを防ぐ目的がある。死者(他者)へ対する共感能力を備えた人類特有の習慣である。従い、共感能力を欠く人類以外の種族には(ネアンデルタール含み)埋葬習慣はない。



  • 死者に敬意を表し、死後の世界で再生、往生、復活できるように願う。

  • それらを葬儀時のみならず継続的に行うならば、墓が残る埋葬は便利である。

  • 遺体が道端に転がっていると、見栄えが悪いので隠すという意味がある。

  • 遺体をそのまま放置しておくのは、衛生上もよくない。


  • 遺体の復活を恐れ、宗教的な措置をすると同時に物理的に脱出を困難にする。



埋葬する場所



  • 人里離れた場所に墓地が設けられ、埋葬されることが多い。

  • 日本では墓地埋葬法により、墓地以外の自宅の裏庭などに埋葬することはできない。違反すると死体遺棄罪として罰せられることもある。



埋葬後の遺骨


納骨堂に納める場合は半永久的に遺骨は残されるが、埋葬すると遺骨の殆どは風化し土に還ると言われている。土壌等によって左右されるが基本的に埋葬後30年経過後は遺骨は土に還される傾向にあり、何かの理由で埋葬地を掘り返したとしても遺骨が見つかる例は少なく、見つかったとしても埋葬時に比べ小さくなっている例が多い。一般的に墓地に遺骨を埋葬した場合においても、骨壺に入れた状態と墓の下の土壌部分に埋めるとでは遺骨の風化も大きな差が生まれ、骨壺に入れたままは骨の風化は殆ど起きない[6]が土壌部分に埋めると年数経過後には風化し遺骨とは判別できない例が多い[7]



関連項目




  • 墓・墓地(墓苑・霊園・納骨堂)・墓石


  • 葬儀・火葬・土葬・樹木葬



脚注





  1. ^ 小児用


  2. ^ 地上に石組みをもつ


  3. ^ 遺体を外の場所で骨にし、その後埋葬する。


  4. ^ 北海道に特有で、土手で墓域を囲んでおり、記念物的な性格を併せ持つ墓。例としてキウス周堤墓群。


  5. ^ 中村大「埋葬」 小林達雄編『考古学ハンドブック』新書館 2007年1月 85-86ページ


  6. ^ 但し雨水が浸入し骨が水と反応し溶けて跡形も残らなくなる例はある


  7. ^ 酸性土壌ではそれが顕著ではある




参考文献


  • 小林達雄編『考古学ハンドブック』新書館 2007年1月 ISBN 978-4-403-25088-0




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