一党独裁制
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一党独裁制(いっとうどくさいせい)とは、特定の政党による独裁体制である。非競合的政党制とも。政治学では通常、純粋な一党制のほか、事実上の一党独裁であるヘゲモニー政党制も含まれる。
目次
1 概要
2 歴史
3 主な国家
3.1 現存する一党独裁制国家
3.1.1 現存するヘゲモニー政党制国家
3.2 かつての一党独裁制国家
3.2.1 かつての一党制国家
3.2.2 かつてのヘゲモニー政党制国家
4 脚注
5 参考文献
6 関連項目
概要
憲法などで政権政党を明記している一党制の場合や、複数の政党が存在していても一つの政党により衛星政党として扱われるヘゲモニー政党制の場合を指す。
国家を強力に統制することが可能であるものの、国家権力の暴走が起こりやすいことが問題となる。また、支配政党への反対者には、政治的権利や言論の自由などが保障されず、しばしば支配政党に反対の意見を持つ者に対しては、粛清・国外追放・投獄が行われるなど、基本的な人権さえも守られないような体制になりがちである。例えば、東ドイツでは、刑法の規定によって支配政党であるドイツ社会主義統一党やソ連を批判するだけで1年から8年の懲役刑が科された[1]。
一党独裁により経済発展を強力に推進する開発独裁体制は、やがて経済発展が一段落すると複数政党制へ移行する場合がある。一方で先進国並みの経済発展を実現したものの、ヘゲモニー政党制を維持しているシンガポールのような政党制も存在する。
なお55年体制における日本のような自由選挙の下で特定の政党が多数を確保し続けることによって成立する長期政権は一党優位政党制と呼ばれ、一党独裁制とは区別される。
一党独裁制は複数政党制の中から誕生した場合も多い。独裁権力の獲得は、暴力革命やクーデターなど武力による場合や、選挙など民主的な制度による場合があり、いずれの場合も国民の支持を背景にした場合もある。
歴史
市民革命と古典的自由主義の普及後、資本主義の普及に伴い従来の共同体の崩壊、中間階級の没落、貧富の拡大、など社会不安が拡大し、ブルジョワ民主主義とも呼ばれる議会制民主主義を否定して独裁や革命を掲げる思想が拡大した。いわゆる左翼の側からは社会主義革命やプロレタリア独裁、いわゆる保守の側からは保守革命などである。
1917年の十月革命後に暴力革命とプロレタリア独裁を掲げる共産主義のボリシェヴィキが他の野党を非合法化し、マルクス・レーニン主義を掲げるソビエト連邦共産党となった。ソビエト連邦は一党制で、複数政党制は否定された。中華人民共和国などは人民民主主義を掲げて、事実上の一党独裁であるヘゲモニー政党制を採用した。多くの社会主義諸国で一党独裁が制度化され、国家が共産党による「指導」を受けなければならなくなった(党の指導性)。
一方でイタリアのファシスト党はファシズムを掲げ、議会と反対政党は存続したものの、選挙制度改正によりファシスト党が常に政権獲得できる選挙制度にした。ドイツの国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス党)はナチ党の権力掌握後、ナチス以外の政党は全て「自主解散」もしくは禁止していき、最終的には新党設立禁止法によってナチ党以外の政党の設立を禁じることで一党制を確立した[2]。日本では政党が自主解党して大政翼賛会に合流したものの、独裁体制が成立しなかった。これらの多くは第二次世界大戦の敗戦で消滅したが、スペインのファランヘ党支配は1939年から1975年まで続いた。
1945年から1996年、中華民国(台湾)で国民党が党国体制として実質的な一党独裁を行った。
1960年代、イラクとシリアでアラブ社会主義などを掲げるバース党が政権を獲得し、憲法でバース党を指導政党と規定した。
1965年、独立したシンガポールでは人民行動党が開発独裁を行い、事実上の一党独裁と呼ばれる場合が多い。
1990年代、ソ連崩壊と東欧革命により、マルクス・レーニン主義を掲げた一党独裁国は減少した。2003年のイラク戦争により、イラクのバース党は政権を追われた。2011年以降のシリア内戦により、シリアでは戦闘が続いている。ロシアでは統一ロシアに権限が偏っている。
主な国家
現存する一党独裁制国家
赤道ギニア - 赤道ギニア民主党
ベトナム - ベトナム共産党
ラオス - ラオス人民革命党
キューバ - キューバ共産党
エリトリア - 民主正義人民戦線
スワジランド - インボコドボ国民運動(国王の指導下にある極端な王党派、議会を独占し内閣も王家が占めている、憲法で国王の権力を保障)
現存するヘゲモニー政党制国家
中国 - 中国共産党
北朝鮮 - 朝鮮労働党
シンガポール - 人民行動党
カザフスタン - ヌル・オタン
かつての一党独裁制国家
ビルマ連邦社会主義共和国 - ビルマ社会主義計画党
中華民国(1996年以前) - 中国国民党
イラク共和国 - バアス党(イラク・バアス党、フセイン政権下)
シリア - バアス党(シリア・バアス党、2012年憲法以前)
カンボジア - サンクム(人民社会主義共同体、シハヌーク政権下)
インドネシア - ゴルカル(スハルト政権下)
ドイツ国 - 国家社会主義ドイツ労働者党(通称ナチ党、ナチス政権下、他党を解散した)
イタリア王国→
イタリア社会共和国 - ファシスト党(ムッソリーニ体制下、常に議席の2/3を確保できる選挙制度を実施)
満州国 - 満州国協和会
クロアチア独立国 - ウスタシャ(クロアチア人による民族団体)
スペイン - ファランヘ党(フランコ体制下)
ポルトガル - 国家連合党(エスタド・ノヴォ体制下)
タンザニア - タンザニア革命党
ガボン - ガボン民主党
かつての一党制国家
ソビエト社会主義共和国連邦 - ソビエト連邦共産党(ソビエト主義の政党)
モンゴル人民共和国 - モンゴル人民革命党
ハンガリー人民共和国 - ハンガリー社会主義労働者党
ルーマニア社会主義共和国 - ルーマニア共産党
アルバニア人民共和国 - アルバニア労働党
ユーゴスラビア社会主義連邦共和国 - ユーゴスラビア共産主義者同盟
民主カンボジア(後に民主カンプチア) - カンプチア共産党(クメール・ルージュ)
カンボジア人民共和国(対抗政権) - カンボジア人民革命党
エチオピア人民民主共和国 - エチオピア労働者党


モザンビーク人民共和国 - モザンビーク解放戦線
アンゴラ人民共和国 - アンゴラ解放人民運動
ベナン人民共和国 - ベナン人民革命党
かつてのヘゲモニー政党制国家
ポーランド人民共和国 - ポーランド統一労働者党
ドイツ民主共和国 - ドイツ社会主義統一党[3]
チェコスロバキア社会主義共和国 - チェコスロバキア共産党
ブルガリア人民共和国 - ブルガリア共産党
脚注
^ 仲井斌 1983, p. 74-75.
^ 成瀬治, 山田欣吾 & 木村靖二 1997, p. 210.
^ 成瀬治, 山田欣吾 & 木村靖二 1997, p. 446.
参考文献
- 成瀬治、山田欣吾、木村靖二 『ドイツ史〈3〉1890年~現在』 山川出版社〈世界歴史大系〉、1997年。ISBN 978-4634461406。
- 仲井斌 『もうひとつのドイツ―ある社会主義体制の分析』 朝日新聞社、1983年。
関連項目
政党制 - 政党システム論
- 独裁政治
- パックス・コミュニスタ
マルクス・レーニン主義 - プロレタリア独裁 - 前衛党 - 党の指導性 - 民主集中制
ソ連型社会主義 - 人民民主主義
アラブ社会主義 - バアス党
ファシズム - 指導者原理
