スープラナショナリズム




スープラナショナリズム(英語: supranationalism)とは、国際法や政治学、とくに国際関係論において、国家より上位にある次元の主体に権限を譲渡するという概念。日本語では超国家主義という表現があてられることが多いが、こちらはどちらかと言うと国粋主義や急進的国家主義などのような「ウルトラナショナリズム(ultranatonalism)」と同義で用いられている。上位となる組織は、たとえその参加国すべてが同意していなくとも拘束力を持つ決議を行うことができる。


スープラナショナリズムの反対の概念は政府間主義であり、政府間主義においては内容的にも空間的にも深化・制度化せず、各国政府の国際協力のみが扱われる。




目次






  • 1 特徴


  • 2 事例


  • 3 関連項目


  • 4 参考文献


  • 5 外部リンク





特徴


超国家的な決定形成過程の概念は18世紀から19世紀にはすでに哲学者、法学者、政治家の間には存在していたものである。それでもやはりロベール・シューマンやジャン・モネ、ポール=アンリ・スパークは超国家的統合論の父という見方がなされる。



国家の主体性についての法原理

超国家という概念は欧州共同体に関連して注目が集まったものである。超国家的な組織は国家の主体性という法原理において、世界貿易機関や国際連合で見られるような、伝統的な国際法学における「国際的」結合とは異なるものである。しかしながら一方で超国家機関は国家とも根本的に異なる。超国家機関は独自の主権(権限決定権)に基づいておらず、その代わりに超国家機関の権限は加盟国から譲渡された主権、いわば派生的主権に基づくのである。

超国家的法令の優位性

超国家機関において特徴的であるのは、とりわけ加盟国において自然人および法人に対する直接効果を発する法令を公布する能力を持つことにある。このため多数説によると超国家機関の法令は国内法に優先して適用されることになる。国際法と違って超国家機関の法令は、国内法の規定に違反していようとも加盟国内において承認・受容される(たとえば欧州司法裁判所での提訴など)。超国家的法令の直接効果により自然人・法人も損害賠償を請求することができる。関係法令が訴訟提起時において必要な修正がなされていない場合には、加盟国内の裁判所における既存の国家賠償請求訴訟の枠組みで賠償を求めることができる。


しかしながら欧州連合には欧州理事会や共通外交・安全保障政策、警察・刑事司法協力のような政府間主義的な機関・枠組みがあり、それらにおいては国家間の協力を基本としている。



事例


超国家的な組織の事例として、欧州連合の一部となっていた欧州共同体や、欧州原子力共同体、アンデス共同体、メルコスール、アフリカ連合、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体がある。最も古い事例としては欧州石炭鉄鋼共同体があったが、これはパリ条約が発効から50年で失効する規定があったため、同共同体は2002年に消滅した。


超国家的機関ははっきりとした、また均衡の取れた機構や、参加国間の緊密な法律上の結束を持つことが特徴である。取り決めにより協議や柔軟性を持つ北米自由貿易協定やアメリカ・中米・ドミニカ共和国自由貿易協定といった統合方式では、超国家的な統合モデルは明確に拒絶されており、政府間主義を志向している。



関連項目


  • 国家結合


参考文献




  • Schweitzer, Michael (German). Staatsrecht III Staatsrecht, Völkerrecht, Europarecht (8th edition ed.). Heidelberg: Müller Jur.Vlg.C.F.. ISBN 978-3811490246. 


  • Fischer, Peter; Köck, Heribert Franz ; Karollus, Margit Maria (German). Europarecht (4th edition ed.). Wien: Linde. ISBN 978-3707300475. 



外部リンク



  • Supranational (ドイツ語) - ドイツ連邦政治教育センターによる









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