バーサーカー (セイバーヘーゲン)
『バーサーカー』(Berserker)は、フレッド・セイバーヘーゲンの代表作のSF小説シリーズである。
異星の殺戮機械「バーサーカー」と人類との戦いを描く。「バーサーカー」の名は北欧神話の(人間の)狂戦士ベルセルク (berserkr、英語では berserker) を由来として人類側が命名したという設定である。
目次
1 ストーリー
2 書籍リスト
3 訳書
3.1 バーサーカー 皆殺し軍団
3.2 バーサーカー 赤方偏移の仮面
3.3 バーサーカー 星のオルフェ
4 他作品への影響
4.1 バーサーカー(あるいは類似の存在)が登場する作品
ストーリー
恒星間文明を築き上げた人間のもとに、宇宙の果てから何者かが襲いかかってきた。
遥か太古、いずことも知れぬ星域で滅び去った星間帝国が残した遺産、自己増殖と進化を繰り返し、生あるものをすべて滅ぼすことを至上命令としてプログラムされ、何度撃退されても再び襲来する、死そのもののような無人の殺戮機械軍団――それがバーサーカーである。人類はこのバーサーカーと遭遇したのだ。
あるときは巨大無人戦艦が、あるときは潜入用の小型機械が…あらゆる姿で襲来するバーサーカーに対し、あるときは力押しの正面決戦で、あるときは知略を尽くした頭脳戦で…あらゆる様式のバーサーカーと人類の存亡を賭けた闘争が繰り広げられる。
書籍リスト
Berserker(1967) 『バーサーカー 赤方偏移の仮面』(1980) - 1963年–1966年に発表された短編による連作短編集。
Brother Berserker(1969) 『バーサーカー 皆殺し軍団』(1973) - 1967年に『Galaxy Science Fiction』誌に発表された作品の長編化。
The Ultimate Enemy(1979) 『バーサーカー 星のオルフェ』(1990) - 1968年–1977年に発表された短編による連作短編集。
Berserker Wars (1981) - 短編集。邦訳未単行本化の「鋼鉄の殺戮者」The Adventure of the Metal Murderer (短編集書き下ろし、1999年『SFマガジン』訳出) 収録。
Berserker Throne (1985) - 短編集。
Berserker Blue Death (1985)
Berserker Base (1985) - ゲスト作家によるアンソロジー。セイバーヘーゲンは各短編間の幕間を書いた。
Berserker Attack (1987) - 短編集。
Berserker’s Planet (1991)
Berserker Lies (1991) - 短編集。
Berserker Man (1992)
Berserker Kill (1993)
Berserker Fury (1997)
Shiva in Steel (1998)
Berserker Star (2003)
Berserker Prime (2003)
Rogue Berserker (2005)
訳書
日本ではハヤカワ文庫SF(白背)から加藤直之のイラスト(カバー表紙・口絵・挿絵)で、3冊目までが刊行されている。
バーサーカー 皆殺し軍団
岡部宏之訳。1973年刊。
シリーズ2冊目で初長編(正確には、中篇三本を三部構成の長編に書きなおした作品)。日本では刊行順序が変わり、1冊目となった(ただし短編の雑誌掲載よりは遅い)。惑星サーゴルでの戦いを描く。また、惑星サーゴルはタイムトラベルが可能な惑星であるため、タイムトラベルSFでもある。
短編の雑誌掲載時のイラストレーターは異なるので、本書は加藤直之による初のバーサーカーである。カバーにはバーサーカーの本体が大きく描かれている。
なお、本作のみバーサーカーが「狂戦士」と訳されている。
バーサーカー 赤方偏移の仮面
浅倉久志・岡部宏之訳。1980年刊。一部は『SFマガジン』初出。原書では初の単行本だが、日本では刊行順序が変わり2冊目となった。
シリーズ最初期の短編を収録しており、最初の作品「無思考ゲーム」Without a Thought を1作目に収録している。『If』誌の別冊アンソロジー『Worlds of If』1963年1月号に Fortress Ship として発表され、短編集収録時に改題された。日本では『SFマガジン』1969年7月号に訳出され、日本語でも最初の作品である。
- 無思考ゲーム Without a Thought (1963、雑誌掲載時 Fortress Ship)『SFマガジン』1969年7月号
- グッドライフ Good Life (1963)『SFマガジン』1977年6月号
- 理解者 Patron of the Arts (1965)『SFマガジン』1969年9月号
- 和平使節 The Peacemaker (1964)
- 宇宙の岩場 Stone Place (1965)『SFマガジン』1978年10月号
- Tとわたしのしたこと What T And I Did (1965)
- 道化師 Mr. Jester (1966)
- 赤方偏移の仮面 Masque of the Red Shift (1965) 『SFマガジン』1970年3月号
- 狼のしるし Sign of the Wolf (1965)
- 軍神マルスの神殿にて In the Temple of Mars (1966)
- 深淵の顔 The Face of the Deep (1966)
バーサーカー 星のオルフェ
浅倉久志・岡部宏之訳。1990年刊。一部は『SFマガジン』初出。
- 微笑 The Smile (1977)
- 圧力 Pressure (1977)
- アンコール・アペイロンの消滅 The Annihilation of Angkor Apeiron (1977)
- 機械の誤算 Inhuman Error (1974) 『SFマガジン』1989年2月号
- テンプル発光体事件 Some Events at the Templar Radiant (1979)
- 星のオルフェ Starsong (1968)『SFマガジン』1970年6月号
- スマッシャー Smasher (1978)
- ゲーム The Game (1977)
- 心の翼 Wings out of Shadow (1974)
他作品への影響
本作シリーズでセイバーヘーゲンが産み出した古代宇宙文明の殺戮機械「バーサーカー」は、魅力的な存在であり、類似の設定の存在が(あるいは「バーサーカー」という名称のまま)、のちのSF作品にもさかんに用いられるようになった。SFゲームにおいても、敵や第三勢力としてしばしば登場する。
バーサーカー(あるいは類似の存在)が登場する作品
スタートレック(宇宙大作戦) (当該エピソードは1967)「はるか昔別の銀河系で作られ、創造者が滅びた今なお惑星を破壊し続けている無人最終兵器」が登場する(邦題は「宇宙の巨大怪獣」)。- 『無敵超人ザンボット3』(1977–1978) ありがちなスーパーロボット風の侵略宇宙人と思われていたバンドック(=コンピューター・ドール8号)は、実はバーサーカー的存在(の一つ)でしかなかった。
- 『超時空世紀オーガス』(1983–1984) 「混乱時空」を構成する複数の平行世界の一つ「ムー」では機械が反逆して創造主である人類を絶滅させており、機械の軍団は別の平行世界の人類をも絶滅せんと攻撃を仕掛ける。
あさりよしとお『宇宙家族カールビンソン』(1984–) レギュラーキャラクターの1人(1体)「パーカー」。ただし、共通点は意思疎通が困難な点と外見(日本語版のカバー絵に類似)にとどまる。
ゆうきまさみ『究極超人あ〜る』(1985–1987) 物語終盤で、世界征服をたくらむ科学者・成原成行が大量に作ったロボット「狂戦士(バーサーカー)」。
星野之宣『STAR FIELD』『メガクロス』 (1986)
デイヴィッド・ブリンのSF『知性化戦争』(1987) の中で、実質的ヒーローであるネオチンパンジーのファイベン・ボルジャーが、天才女性ネオチンパンジーのゲイレット・ジョーンズがライブラリーから得た知識として語る機械種族の海賊を称して「バーサーカーか?」と発言し、ゲイレットから「古いSFの読みすぎ!」と突っ込まれるシーンがある。- 『ディガンの魔石』(1988) スタジオぬえ原作、アーテック制作のRPGで、美術監督・イラスト原画として加藤直之がかかわっており、バーサーカーの名称の外見も類似した敵キャラクターが出てくる。それ以外の性質は特に反映されていない。
たかしげ宙原作、皆川亮二画『スプリガン』 (1989–1996)
山本弘『サイバーナイト』シリーズ (1990–1992)
笹本祐一『ARIEL』(カセット文庫版 1992) バーサーカーと書いて「無人戦艦」と読ませ、そのタチの悪さが嫌われている。また登場人物の「クレスト・セイバーハーゲン」の名も、恐らくセイバーヘーゲンから。
神坂一『ロスト・ユニバース』 (1992–1999)
吾妻ひでお『銀河放浪』(1995–1997)
テーブルトークRPG『アルシャード』(初版2002) ウェストリ王国の王都ハイウェストリ攻防戦の最中に出現し、一帯の生命体を無差別殲滅した戦闘機械の名として「バーサーカー」が登場する。またリプレイ「翼の折れた愛と青春」(2011) にも本作品をモチーフにしたキャラクターが登場する。- 『ウルトラマンマックス』(当該エピソードは2006) 最後の敵バーサークシリーズは、自己進化・自己改良・再襲来というバーサーカーそのものの戦いぶりを見せた。
木々津克久『フランケン・ふらん』 (2008-2012)