小池修一郎
小池 修一郎(こいけ しゅういちろう、1955年3月17日 - )は、日本の劇作家・舞台演出家。東京都出身。慶應義塾大学文学部卒業。愛称はイケコ。
目次
1 略歴
2 演出家像
3 エピソード
4 宝塚歌劇団での主な作品
4.1 大劇場公演
4.2 バウホール公演
4.3 その他劇場
4.4 コンサート・ディナーショー
5 宝塚歌劇団以外の主な舞台
6 その他
7 書籍
8 受賞歴
9 脚注
10 外部リンク
略歴
慶應義塾大学文学部在学中に演劇研究会で活動する。当時はアングラ演劇の旗手・唐十郎に傾倒しており、宝塚の舞台はアングラ演劇などとほぼ対極の特殊な世界と考えていたという。しかし、宝塚歌劇の東京公演を観劇する機会があり(本人は立ち見料金が安かったからと回想)、題材に合わせてスターたちが日本人にも外国人にもなりきる姿に新鮮さを感じて印象が変化、その後宝塚観劇を重ねるようになる。東京宝塚劇場で演出助手の募集広告を見つけ、大学を卒業した1977年、宝塚歌劇団に演出助手として就職を果たす。
演出助手時代はショー作品の演出、構成の補佐にあたることが多く、長い助手時代を経て演出家デビューが決まった際も、デビュー作として当初ショー作品を企画していたが、結局劇団側から芝居を企画するよう求められ、1986年に宝塚バウホール公演『ヴァレンチノ〜愛の彷徨〜』と題したドラマ作品で演出家デビュー。以後、ドラマ作家・演出家としてキャリアを積む。
1989年、宝塚大劇場公演としてゲーテの名作『ファウスト 第一部』を大胆にアレンジした『天使の微笑・悪魔の涙』(主演:月組剣幸、こだま愛)を演出、劇団本拠で初めて演出を手掛ける。
1991年、演出作品『華麗なるギャツビー』(主演:雪組杜けあき、鮎ゆうき、原作:F・スコット・フィッツジェラルド)で第17回菊田一夫演劇賞・演劇賞を受賞。
1992年にはシェイクスピア作『夏の夜の夢』を現代に置き換え、環境問題や人間の欲などの風刺を盛り込んで翻案した『PUCK』(主演:月組涼風真世、麻乃佳世)でも絶賛された。
1996年、ドイツ語ミュージカルのヒット作『エリザベート』の宝塚版上演の際、潤色・演出を担当。男役重視の宝塚の伝統から、オリジナルでは脇役の死神トートを主役に据え、トートを中心とした壮麗な恋愛劇に仕立て、日本の観客にわかりやすく構成したこともあいまって宝塚版のヒットに貢献、以後『エリザベート』(主演:雪組一路真輝、花總まり)は宝塚で再演の繰り返される人気作品となった(再演でも一貫して小池が担当)。2000年からは宝塚での絶賛を受けて製作された、東宝版にも演出で参加、また『エリザベート』の作詞・作曲コンビであるクンツェ&リーヴァイによる『モーツァルト!』も、2002年に東宝ミュージカルでの上演の際、演出に携わっている。
2006年、『NEVER SAY GOODBYE』(主演:宙組和央ようか、花總まり)では、ブロードウェイから作曲家フランク・ワイルドホーンを招いて協働した。
2007年、大阪で開催された2007年世界陸上選手権の開会式と閉会式等の総合演出を担当。その際に、歌劇団から雪組の主要男役メンバーによるユニット・AQUA5(水夏希、彩吹真央、音月桂、凰稀かなめ、彩那音)を招き、開会式でのパフォーマンスアクトに抜擢している。
2008年、『THE SCARLET PIMPERNEL』(主演:星組安蘭けい、遠野あすか)の日本初演の潤色・演出を手掛ける。同作は第34回菊田一夫演劇賞・大賞を受賞。
2009年には、韓国の人気ドラマ『太王四神記』(宝塚での主演:花組真飛聖、桜乃彩音)、映画『カサブランカ』(主演:宙組大空祐飛、野々すみ花)の世界初のミュージカル化に伴い、脚本・演出を担当。これらの功績が認められ、2010年に第35回菊田一夫演劇賞・大賞を受賞する。
2014年、紫綬褒章を受章[1]。現在も宝塚歌劇団所属の演出家として、宝塚歌劇や外部舞台作品などの演出で活躍中。
演出家像
- 小池自身、宝塚の魅力として、男役を生かす舞台展開と題材の豊富さを挙げている。また惹かれる人間像については、理想のため情熱を燃やしながら現実に敗れてしまう悲劇的な人間に魅了されると語っている。これらの傾向からか、小池のオリジナル作品では、作品の中心人物たちの理想や生きがいは周囲に理解されず、その点が悲劇に繋がっていくという設定もよく見受けられる。
- 『ヴァレンチノ』や『華麗なるギャツビー』、『JFK』、『失われた楽園』、『カステル・ミラージュ』など宝塚での演出作品ではアメリカをよく舞台に取りあげている。
- 近年は一本物の大作を任されることが多くなっている。
エピソード
- 『華麗なるギャツビー』は小池が演出家デビューの際、デビュー作品候補として企画を提出していた作品。結局共に提出していた『ヴァレンチノ』がデビュー作となったが、上記のとおり5年後に念願の『ギャツビー』上演が実現。ミュージカル版『ギャツビー』については、受賞の他、長く歌劇団を取材してきた記者・宇佐見正も「ロバート・レッドフォード主演の映画版より出来が良い」と絶賛していた。
宝塚歌劇団での主な作品
大劇場公演
- 『天使の微笑・悪魔の涙』(1989年・月組)*大劇場デビュー作品
- 『アポロンの迷宮』(1990年・星組)
- 『華麗なるギャツビー』(1991年・雪組)
- 『PUCK』(1992年・2014年・月組)
- 『ベイ・シティ・ブルース』(1993年・花組)
- 『カサノヴァ・夢のかたみ』(1994年・星組)
- 『JFK』(1995年・雪組)
- 『エリザベート -愛と死の輪舞-』*潤色・演出
- (1996年・雪組、星組、1998年・宙組、2002年・花組、2005年・月組、2007年・雪組、2009年・月組、2014年・花組、2016年・宙組、2018年・月組)
- 『失われた楽園 -ハリウッド・バビロン-』(1997年・花組)
- 『エスクカリバー-美しき騎士たち-』(1998年・宙組)
- 『タンゴ・アルゼンチーノ』(1999年・花組)
- 『LUNA-月の伝言-』(2000年・月組)
- 『カステル・ミラージュ』(2001年・宙組)
- 『薔薇の封印 -バンパイア・レクイエム-』(2003年・月組)
- 『NEVER SAY GOODBYE』(2006年・宙組)
- 『アデュー・マルセイユ -マルセイユへ愛を込めて-』(2007年・花組)
- 『THE SCARLET PIMPERNEL』(2008年・星組、2010年・月組、2017年・星組)*潤色・演出
- 『太王四神記』[2](2009年・花組、星組)
- 『カサブランカ』(2009年・宙組)
- 『ロミオとジュリエット』[3](2011年・雪組、2012年・月組、2013年・星組)*潤色・演出
- 『オーシャンズ11』(2011年・星組、2013年・花組、2019年・宙組)
- 『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』(2012年・宙組)
- 『眠らない男・ナポレオン -愛と栄光の涯に-』(2014年・星組)
- 『1789 -バスティーユの恋人たち-』(2015年・月組)*潤色・演出
- 『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』(2016年・雪組)
- 『ALL FOR ONE 〜ダルタニアンと太陽王〜』(2017年・月組)[4]
- 『ポーの一族』(2018年・花組)
バウホール公演
- 『ヴァレンチノ〜愛の彷徨〜』(1986年・1992年・雪組[5])*演出家デビュー作品
- 『蒼いくちづけ』(1987年・星組、2008年・花組[6])
- 『タイム・アダージオ』(1988年・花組)
- 『美しき野獣』(1990年・花組)
- 『ロスト・エンジェル』(1993年・月組)
- 『ローン・ウルフ』(1994年・月組)
- 『チャンピオン!-甦る伝説-』(1995年・花組)
- 『ブルー・スワン-Get Beauty,Only Beauty-』(1997年・花組)
- 『イコンの誘惑』(1998年・星組)
- 『DAYTIME HUSTLER』(2005年・雪組)
その他劇場
- 『MIND TRAVELLER -記憶の旅人-』(2006年・花組・シアタードラマシティ、日本青年館)
- 『グレート・ギャツビー』(2008年・月組・日生劇場)[7]
- 『ロミオとジュリエット』(2010年・星組・梅田芸術劇場、博多座)
- 『ヴァレンチノ』(2011年・宙組・シアタードラマシティ、日本青年館)[8]
- 『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』(2013年・宙組・博多座)
コンサート・ディナーショー
紫吹淳コンサート『ALL ABOUT RIKA』(2000年)
和央ようかディナーショー『So in Love』(2003年)
宝塚歌劇団以外の主な舞台
- 『レディー・ビー・グッド!』(1993年)*演出
- 『アニーよ銃をとれ』(1997年)*演出・訳詞
- 『ユアーズ』(1997年)*構成・演出
- 『カンパニー 〜結婚しない男〜』(1999年)*修辞、訳詞、演出
- 『エリザベート』*潤色・演出
- (2000年、2001年、2004年、2005年、2006年、2008-2009年、2010年、2012年、2015年、2016年)
- 『ジャン・コクトー 堕天使の恋』(2001年) *演出のみ
- 『モーツァルト!』(2002年、2005年、2007年、2010年、2014年) *演出・訳詞
- 『モーツァルト!』韓国公演(2016年) *演出 [9]
- 『モーツァルト!』韓国公演(2016年) *演出 [9]
- 『アンナ・カレーニナ』(2006年、2010年、2013年)*修辞・訳詞
- 『トライアンフ・オブ・ラブ』(2008年)
- 『キャバレー』(2010年、2012年)*修辞、訳詞、演出
井上芳雄 10周年記念コンサート (2010年)- 『MITSUKO』(2011年) *脚本、作詞、演出
- 『ロミオ&ジュリエット』(2011年、2013年、2017年) *潤色、演出
- 『レディ・ベス』(2014年・2017年) *訳詞、演出
- 『オーシャンズ11』(2014年)
- 『1789 - バスティーユの恋人たち -』(2016年)
- 『グレート・ギャツビー』(2017年)[10]
その他
2007年世界陸上選手権 開会式・閉会式の総合演出
サンリオピューロランド『ハローキティのくるみ割り人形』(2006年6月24日 - 2009年4月5日)脚本・演出・作詞- サンリオピューロランド『ハローキティとオズの魔法の国』(2009年4月13日 - 2013年4月4日)作・演出
- サンリオピューロランド『不思議の国のハローキティ』(2013年4月20日 - 2018年1月31日)脚本・演出
書籍
- オール・インタビューズ ミュージカル『エリザベート』はこうして生まれた(2016年6月28日、日之出出版) ※ ミヒャエル・クンツェ、シルヴェスター・リーヴァイと共著
受賞歴
☆はスタッフの一員として受賞したもの
- 第17回菊田一夫演劇賞・演劇賞(1991年) - 『華麗なるギャツビー』の脚本・演出に対して
- 第26回菊田一夫演劇賞・大賞(2000年)☆ - 『エリザベート』スタッフ・出演者一同 高い舞台成果
- 第41回毎日芸術賞・千田是也賞(2000年) - 『エリザベート』の演出に対して
- 第27回菊田一夫演劇賞・大賞(2001年)☆ - 『モーツァルト!』スタッフ・出演者一同 高い舞台成果
- 第14回読売演劇大賞・優秀作品賞(2006年)☆ - 『NEVER SAY GOODBYE』が優秀作品賞を受賞
- 平成18年度文化庁芸術選奨文部科学大臣賞(2007年) - 『NEVER SAY GOODBYE』の業績に対して
- 第34回菊田一夫演劇賞・大賞(2009年)☆ - 『スカーレット・ピンパーネル』スタッフ・出演者一同 高い舞台成果
- 第35回菊田一夫演劇賞・大賞(2010年) - 『エリザベート -愛と死の輪舞-』『太王四神記 Ver.Ⅱ』『カサブランカ』『キャバレー』の脚本・演出に対して
紫綬褒章(2014年)
WOWOW presents「勝手に演劇大賞2014」・演出家賞(2015年)[11]
脚注
^ 春の褒章:紫綬褒章=演出家 小池修一郎さん(59)(毎日新聞、2014年4月28日)
^ 花組公演の副題は「チュシンの星のもとに」。星組公演は「Ver.Ⅱ」として初演と構成・演出を変えて上演した。副題は「新たなる王の旅立ち」
^ 2010年、星組梅田芸術劇場・博多座公演の再演
^ “宝塚月組が三銃士から着想得た「ALL FOR ONE」珠城りょうが王の秘密握る銃士隊員に”. ステージナタリー. (2016年11月29日). http://natalie.mu/stage/news/211197 2016年11月30日閲覧。
^ 1992年、杜けあきの退団前に再演され、杜はこの作品と『忠臣蔵』での演技に対して、第18回菊田一夫演劇賞・演劇賞を受賞している
^ 2008年は、バウワークショップで再演。真野すがたと朝夏まなとで役替りで主演した。
^ 1991年、雪組公演『華麗なるギャツビー』を再構成して演出をした
^ 1986年、雪組バウホール公演『ヴァレンチノ』の再演。日本青年館公演は、東日本大震災により会場が罹災したため一度公演中止となったが、2011年8月13日~8月19日に上演が決定。
^ “『モーツァルト!』韓国公演の演出に小池修一郎が決定”. シアターガイド (2015年9月3日). 2015年9月4日閲覧。
^ “井上芳雄×小池修一郎、ミュージカル「グレート・ギャツビー」上演決定”. ステージナタリー. (2016年7月25日). http://natalie.mu/stage/news/195782 2016年7月26日閲覧。
^ “『太陽2068』『モーツァルト!』が受賞 WOWOW「勝手に演劇大賞2014」が発表に”. シアターガイド (2015年3月2日). 2015年3月3日閲覧。
外部リンク
- ENAK すみれの園を創る人たち
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