民族主義

























民族主義(みんぞくしゅぎ、英: ethnic nationalism)は、異なる自他の民族間で政治・経済・文化などの分野について、みずからの民族を主体と考える思想や運動。


国家主義・愛郷主義・地域主義とは相互に関連するが、同一の概念ではないことに注意。




目次






  • 1 概要


  • 2 各国における民族主義


    • 2.1 日本




  • 3 現在の民族主義政党


    • 3.1 欧州


    • 3.2 北アメリカ


    • 3.3 アジア




  • 4 民族主義の形態


    • 4.1 民族主義と関連するイデオロギー


    • 4.2 主権国家創設を目指す民族主義


    • 4.3 民族統一主義


    • 4.4 その他




  • 5 関連項目


  • 6 脚注


  • 7 参考文献


  • 8 外部リンク





概要


一般に誤認されがちだが、本来の民族主義は国家ではなく民族を中心に考える思想である。国家主義と結び付くのは民族主義の理念から民族を政治的に一つにしようとする運動が起こりやすいからで、逆にアメリカやユーゴスラビアのように国家を多民族によって形成する国では、あるいはオーストリアやスイスのように、隣の大国(ドイツ)と多数派の民族が共通する小国の場合は、むしろ各民族主義と国家主義は対立する。特定の民族を優遇する多民族国家(フランコ政権下のスペイン、ブミプトラ政策が敷かれたマレーシアなど)の場合は、その優遇された民族の民族主義を支持基盤にするが、当然弾圧・冷遇される側の民族主義とは対立する。愛国心よりはむしろ郷土愛(愛郷主義)との親和性が強いとも言われる[要出典]


一方、英語では愛国主義と民族主義は Nationalism と表記され単語としての違いはない[要出典]。世界的にみても、20世紀に民族自決の原則が唱えられてから、この二つの言葉の意味の違いは減少する方向にある。複数の民族で成り立っている国家が複数民族の権利を主張する場合にエスニシティーと呼ばれる[要出典]。しかし国内に多民族を内包する国は依然として多く、各地で少数派民族の独立運動が激化している。特に冷戦終結以降の欧州では地域主義の推進などで、より小さな民族集団に分かれて争う傾向が深まっている。


マイノリティによる民族主義は、少数民族・先住民族が自らの言語・文化・宗教などの維持存続を求め、民族自決の主張をともなうこともあるが、分離主義など、戦争・紛争の要因になり得る[要出典]


特定民族による国家の形成・純化・拡大を主張し、対外的に自民族との差異と優越性を主張することがある。大国にあっては近隣諸国の自民族居住地域などの併合、少数民族にあっては分離独立や他民族の追放などを主張し、しばしば戦争や紛争が生じる。自民族居住地域が近隣にない場合も、領土を併合する前や後において、被支配民族との近縁性・一体性(日鮮同祖論など)を強調することで正当性を主張する場合もある。これらは国家主義に民族主義を接合する動きと言える。


ナポレオン戦争によるフランスの支配下、こうした概念に触れたヨーロッパの各国民は民族主義を高揚させた。アジアにおいては、日露戦争が同様の役割を果たしており、日本への期待を生んだ。第二次世界大戦後には、多くのアジア・アフリカの国家が民族主義を高揚させて独立を果たした。



各国における民族主義



日本



日本においては、民族主義は江戸時代末期に水戸学・国学の影響を受けた尊王攘夷運動として現れ、明治維新の原動力となった。しかし近代の日本においては、民族主義と国家主義との違いが意識されることは少なかった。日本の民族主義とアジア諸民族の民族主義との連携を模索するアジア主義のような動きはあったものの、帝国主義の時代にあって日本の民族主義は国家主義に吸収されていくこととなる。日清戦争・日露戦争後の大日本帝国は、朝鮮・台湾などを領土に加えて多民族帝国を志向し、日本の国家主義は「八紘一宇」を掲げる大東亜共栄圏建設を目指した大東亜戦争(太平洋戦争)でピークに達した。


大東亜戦争の敗戦後は、その反省から戦前的な(右派的・国家主義的な)民族主義への抵抗感が強まった一方、反米を掲げる左派的な民族主義が高揚することとなった。左派的な立場からの民族主義は沖縄返還の原動力となったほか[1]、列強からの自立を目指すアジア・アフリカの民族主義には情緒的な共感が寄せられ、ベトナム戦争反対などの反戦運動とも結びつくと同時に、共産主義と結びつく勢力の介入により、国家と民族の分離に利用される一面も持っていた[1]


1960年代には、左翼系学生運動に対する対抗として民族派学生組織の運動が活性化する。参加者達は親米・反共に傾き民族主義をないがしろにした戦後右翼団体への反発から民族主義への回帰を指向し、新右翼(民族派)の源流ともなった。


2010年代はソ連崩壊により、ロシアよりも中国や韓国への敵対・嫌悪感情から民族主義が高まりつつある。



現在の民族主義政党



欧州




  • ドイツ国家民主党 - ドイツ・ドイツ人


  • バイエルン民族党 - ドイツバイエルン州・バイエルン人


  • オーストリア自由党 - オーストリア・ドイツ人


  • 国民連合 (フランス) - フランス・ケルト人


  • デンマーク国民党 - デンマーク・デンマーク人


  • シン・フェイン党 - アイルランドおよび北アイルランド・アイルランド人


  • スコットランド国民党 - スコットランド・スコットランド人


  • ロシア自由民主党 - ロシア・ロシア人


  • バスク民族主義党 - スペイン(バスク地方)・バスク人


  • 集中と統一 - スペインカタルーニャ州・カタルーニャ人


  • ガリシア民族主義ブロック - スペインガリシア州・ガリシア人


  • アンダルシア人民党 - スペインアンダルシア州・アンダルシア人


  • 国民同盟 (イタリア) - イタリア・イタリア人


  • ヨッビク - ハンガリー・ハンガリー人


  • ハンガリー人民主同盟 - ルーマニア・ハンガリー人


  • 進歩党 (ノルウェー) - ノルウェー・ノルウェー人


  • 真のフィンランド人 - フィンランド・フィンランド人


  • スウェーデン人民党 - フィンランド・スウェーデン系フィンランド人



北アメリカ



  • ブロック・ケベコワ、ケベック党 - カナダケベック州に住むケベック人によるフランス語・カトリック政党


アジア




  • バアス党 - アラブ人


  • タール - イスラエル・アラブ人


  • イスラエル我が家 - イスラエル・ユダヤ人


  • クルディスタン労働者党 - クルド人


  • 民族主義者行動党 - トルコ・トルコ人


  • 統一マレー国民組織 - マレーシア・マレー人


  • シヴ・セーナー -インド・アーリア人


  • ドラーヴィダ進歩党 - インド・ドラヴィダ人


  • 維新政党・新風 - 日本・日本人(ただし国会に議席はなく、政党助成法に基づく政党の扱いをされない)


  • アイヌ民族党 - 日本・アイヌ人(ただし国会に議席はなく、政党助成法に基づく政党の扱いをされない)



民族主義の形態



民族主義と関連するイデオロギー




  • ナチズム - ドイツ人。ただし、ナチズムの民族理論には北方人種説など人種主義の面も強く、単純なドイツ民族主義とは言い切れない。(大ゲルマン帝国)


  • 保守革命 - ドイツ


  • シオニズム - ユダヤ人の中でも、イスラエルに国家を築こうとする者の民族主義


  • 民族派 - 日本


  • 社会主義へのビルマの道 - ミャンマー


  • 韓国の民族主義 - 韓国



主権国家創設を目指す民族主義





  • クルド民族主義 - クルド人


  • ケベック民族主義 - ケベック州


  • 台湾民族主義 - 台湾


  • バスク民族主義 - バスク人


  • ブルトン民族主義 - ブルトン人



民族統一主義





  • パン=ゲルマン主義 - 中欧・北欧諸国のゲルマン人


  • 汎スラヴ主義 - 東欧諸国のスラヴ人


  • 汎スカンディナヴィア主義 - 北欧諸国


  • 大ソマリ主義 - 東アフリカのソマリ人


  • 汎テュルク主義 - トルコ、中央アジア諸国のテュルク系民族


  • イベリスモ - スペインとポルトガルのイベリア人


  • 汎アラブ主義 - アラブ人


  • 汎アフリカ主義 - アフリカ人



その他




  • 経済ナショナリズム

  • 言語ナショナリズム

  • 左翼ナショナリズム

  • 民族アナキズム

  • 民族ボルシェヴィズム



関連項目



  • ナショナリズム

  • 愛国心


  • エスノセントリズム(自民族中心主義)

  • ファシズム

  • ネオ・ファシズム

  • 民族統一主義

  • 民族自決

  • 日本の民族問題

  • 外国人嫌悪



脚注


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  1. ^ ab三島由紀夫「文化防衛論――戦後民族主義の四段階」(中央公論 1968年7月号に掲載)。評論集『文化防衛論』(新潮社、1969年4月。ちくま文庫、2006年11月)、35巻評論10 & 2003-10に所収。




参考文献




  • ベネディクト・アンダーソン『増補 想像の共同体 ナショナリズムの起源と流行』 NTT出版 ISBN 487188516X

  • 田村安興『ナショナリズムと自由民権』 清文堂出版 ISBN 4792405491


  • 『決定版 三島由紀夫全集第35巻 評論10』 新潮社、2003年10月。ISBN 978-4-10-642575-2。 



外部リンク


  • ナショナリズムと自由民権




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