IJFワールド柔道ツアー
IJFワールド柔道ツアー(IJF World Judo Tour)[1]とは、国際柔道連盟(IJF)が2009年1月から施行する柔道国際大会。以前はIJFグランプリシリーズと呼ばれていた。
目次
1 概要
2 国際大会のランク
3 賞金
4 メダル獲得選手上位一覧
5 優勝者の年齢
6 世界ランキングの各階級トップ選手
6.1 男子
6.2 女子
7 世界ランキング年間トップ回数上位一覧
8 関連項目
9 脚注
概要
世界選手権(シニア、ジュニア、カデ及び無差別)、ワールドマスターズ(世界ランキング上位16名のみに出場資格が与えられる大会)、グランドスラム(フランス、アゼルバイジャン、ロシア、UAE、ドイツ、日本で行われる6大会)、グランプリ(グランドスラムに次ぐ大会。ハンガリーなどで行われる約10大会)の各大会が、IJFによる世界ランキング対象のワールド柔道ツアーに含まれる(カデ及び無差別の世界選手権はシニアの世界ランキング対象外の大会となる)。オリンピックは世界ランキング対象大会となるが、IOC主催なのでIJFのワールド柔道ツアーには含まれない。また、大陸選手権及びコンチネンタルオープンも世界ランキング対象大会となるが、各大陸連盟主催のためワールド柔道ツアーには含まれない。各大会の成績によってポイントが選手個人に与えられる(国ではない)。オリンピックの出場権はこのポイントによって決定される。また、ジュニア(15歳以上20歳以下)とカデ(15歳以上17歳以下)を対象にしたワールド柔道ツアーもあり、そこでの成績がジュニア及びカデの世界ランキングに反映される。なお、IJFワールド柔道ツアーの場合、エントリーの締め切りは大会の3週間前までとなる[2]。各大会のポイントの詳細についてはランキング制 (柔道)を参照。
マリウス・ビゼールがIJF会長就任後の2007年9月に構想を発表したもので、2008年10月のIJF理事会で決定された[3]。
2016年のリオデジャネイロオリンピック及びIJFワールド柔道ツアーにおける一本の割合は立ち技が約52%だったのに対して寝技は約48%だったのが、2017年には立ち技が約45%で寝技が約55%と寝技での一本が上回ることになった。また、2016年にはゴールデンスコアの割合は全体の約4.5%にあたる263試合だったが、2017年はルール改正により本戦における指導差での決着が認められなくなったことなどもあって、ゴールデンスコアが全体の約23.7%にあたる1349試合と飛躍的に増加した[4][5]。
国際大会のランク
上位順
IOC主催
オリンピック(4年に一度)
IJFワールド柔道ツアー
世界選手権(オリンピック開催年以外は毎年開催)
ワールドマスターズ(世界ランキング上位16名のみに出場資格が与えられる大会)
グランドスラム(フランス、アゼルバイジャン、ロシア、UAE、ドイツ、日本で行われる6大会)
グランプリ(グランドスラムに次ぐ大会。ハンガリーなどで行われる約10大会)
IJFワールド柔道ツアー対象外
大陸選手権(年1回)
コンチネンタルオープン(チェコなどで行われる約20大会)
賞金
1988年11月にフランスのパリで、柔道界初の賞金大会となる男子の無差別のみを対象とした「フランスマスターズ」が開催された(この時の優勝賞金は当時の日本円で約210万円となる10万フラン、2位は5万フラン、3位は3万フランだった)[6]。
その後ヨーロッパでは度々賞金大会が開催されたが、このIJFワールド柔道ツアーの開始によって本格的な賞金大会が始まったと言える。
IJFワールド柔道ツアーは、世界選手権、ワールドマスターズ、グランドスラム及びグランプリ大会が対象となる。大陸選手権とコンチネンタルオープンはIJF主催大会でないのでそこには含まれない。世界選手権とワールドマスターズの優勝者には6000ドル、2位には4000ドル、3位には2000ドル、グランドスラム優勝者には5000ドル、2位には3000ドル、3位には1500ドル、グランプリ優勝者には3000ドル、2位には2000ドル、3位には1000ドルの賞金がそれぞれ授与される[7][8]。コンチネンタルオープンの場合は基本的に賞金は授与されない(但し、2010年のワールドカップ・アルマトイのように主催国の連盟の裁量によって賞金が授与される場合もある[9])。
なお、ワールドマスターズ、グランドスラム及びグランプリは2009年から2012年まで敗者復活戦は設けられていなかったが、2013年からは導入されることになった[10]。
日本選手の場合、稼いだ賞金の扱いは大相撲の懸賞金に似ており、半分は「納税準備」「強化資金確保」等の名目で全日本柔道連盟の取り分となっていた。しかし、2013年3月からは競技者規定が改訂されて、賞金は全額選手が受け取れることになった[11][12]。
2014年が始まった時点で男女各階級1位の選手には、それぞれ1万ドルが授与された[13]。さらに、2014年からIJFはプレステージランキング制度を設けて、その年最後のランキングにおいて全階級のトータルでもっともポイントを獲得した男女それぞれ1名に5万ドルを贈呈することに決めた。男女各階級1位の選手には1万ドルが贈呈された[14]。2016年には世界ランキングの各階級で1位になった選手全員に5万ドルが支払われた[15]。
2014年7月からはIJF主催の各大会でコーチにも賞金が支給されるようになったために、選手の賞金が従来の2割減となった。そのため、メダリストの賞金は従来より2割減となる(グランドスラム大会では優勝者に4000ドル、そのコーチに1000ドル、2位に2400ドル、そのコーチに600ドル、3位に1200ドル、そのコーチに300ドル)[16]。
2017年11月の世界選手権 (無差別)では優勝者に8万ユーロ(日本円で約1064万円)、2位に4万ユーロ、3位に2万ユーロと、IJFワールド柔道ツアーでは初めてとも言える高額な賞金が用意されることになった[17]。2017年の各階級年間ランキング1位には5万ドルがIJFから授与された[18]。
2018年の年間ランキングで最もポイントを積み上げた男女各1名に5万ドル、残り12名の世界ランキング1位にそれぞれ1万ドルがIJFから授与された[19]。
メダル獲得選手上位一覧
順位 | 選手 | 国籍 | 金メダル | 銀メダル | 銅メダル | 総計 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | テディ・リネール | フランス | 21 | 1 | 0 | 22 |
2 | クラリス・アグベニュー | フランス | 19 | 6 | 2 | 27 |
3 | マイリンダ・ケルメンディ | コソボ | 19 | 4 | 2 | 25 |
4 | 高藤直寿 | 日本 | 16 | 2 | 2 | 20 |
5 | 松本薫 | 日本 | 15 | 3 | 4 | 22 |
6 | ケイラ・ハリソン | アメリカ合衆国 | 14 | 6 | 8 | 28 |
7 | オドレー・チュメオ | フランス | 13 | 7 | 11 | 31 |
8 | 田知本愛 | 日本 | 13 | 4 | 9 | 26 |
9 | ムンフバット・ウランツェツェグ | モンゴル | 12 | 11 | 12 | 35 |
10 | ドルジスレン・スミヤ | モンゴル | 11 | 6 | 8 | 25 |
(出典[20]、JudoInside.com)。
優勝者の年齢
Category | 男子 | 女子 |
---|---|---|
最年少優勝 |
|
|
最年長優勝 |
|
|
(出典JudoInside.com)。
世界ランキングの各階級トップ選手
男子
年 | 60kg以下級 | 66kg以下級 | 73kg以下級 | 81kg以下級 | 90kg以下級 | 100kg以下級 | 100kg超級 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2009年 | ゲオルグリー・ザンタラヤ | ハシュバータル・ツァガンバータル | 王己春 | イワン・ニフォントフ | 小野卓志 | 穴井隆将 | テディ・リネール |
2010年 | リショド・ソビロフ | ハシュバータル・ツァガンバータル | 王己春 | 金宰範 | 小野卓志 | 穴井隆将 | テディ・リネール |
2011年 | リショド・ソビロフ | ムサ・モグシコフ | 中矢力 | 金宰範 | イリアス・イリアディス | 穴井隆将 | テディ・リネール |
2012年 | リショド・ソビロフ | ラシャ・シャフダトゥアシビリ | 中矢力 | 金宰範 | イリアス・イリアディス | マクシム・ラコフ | テディ・リネール |
2013年 | 高藤直寿 | ダワードルジ・トゥムルフレグ | サインジャルカル・ニャムオチル | アブタンディル・チリキシビリ | アスレイ・ゴンサレス | エルハン・ママドフ | ラファエル・シルバ |
2014年 | ガンバット・ボルドバータル | ミハイル・プリャエフ | デックス・エレモント | アブタンディル・チリキシビリ | ヴァルラーム・リパルテリアニ | ルカシュ・クルパレク | テディ・リネール |
2015年 | 高藤直寿 | ゲオルグリー・ザンタラヤ | ルスタム・オルジョフ | アブタンディル・チリキシビリ | 郭同韓 | エルマール・ガシモフ | テディ・リネール |
2016年 | オルハン・サファロフ | アン・バウル | ルスタム・オルジョフ | 永瀬貴規 | ベイカー茉秋 | エルマール・ガシモフ | テディ・リネール |
2017年 | 高藤直寿 | 阿部一二三 | 橋本壮市 | ハサン・ハルムルザエフ | アレクサンダル・クコル | ミハエル・コレル | ダビド・モウラ |
2018年 | ロベルト・ムシビドバゼ | 阿部一二三 | 安昌林 | サイード・モラエイ | ニコロス・シェラザディシビリ | ヴァルラーム・リパルテリアニ | グラム・ツシシビリ |
(出典[20]、[21])。
女子
年 | 48kg以下級 | 52kg以下級 | 57kg以下級 | 63kg以下級 | 70kg以下級 | 78kg以下級 | 78kg超級 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2009年 | 福見友子 | 中村美里 | テルマ・モンテイロ | 上野順恵 | リュシ・デコス | セリーヌ・ルブラン | トウ文 |
2010年 | 福見友子 | 中村美里 | 松本薫 | 上野順恵 | リュシ・デコス | セリーヌ・ルブラン | 秦茜 |
2011年 | 浅見八瑠奈 | 西田優香 | 松本薫 | ジブリズ・エマヌ | リュシ・デコス | オドレー・チュメオ | 田知本愛 |
2012年 | サラ・メネゼス | 西田優香 | 松本薫 | 上野順恵 | リュシ・デコス | ケイラ・ハリソン | イダリス・オルティス |
2013年 | サラ・メネゼス | マイリンダ・ケルメンディ | ミリアム・ローパー | ヤーデン・ジェルビ | キム・ポリング | マイラ・アギアル | イダリス・オルティス |
2014年 | ムンフバット・ウランツェツェグ | マイリンダ・ケルメンディ | オトーヌ・パヴィア | クラリス・アグベニュー | キム・ポリング | オドレー・チュメオ | イダリス・オルティス |
2015年 | ムンフバット・ウランツェツェグ | アンドレア・キトゥ | ドルジスレン・スミヤ | ティナ・トルステニャク | キム・ポリング | ケイラ・ハリソン | 于頌 |
2016年 | ムンフバット・ウランツェツェグ | マイリンダ・ケルメンディ | ドルジスレン・スミヤ | ティナ・トルステニャク | キム・ポリング | ケイラ・ハリソン | イダリス・オルティス |
2017年 | ムンフバット・ウランツェツェグ | エリカ・ミランダ | ドルジスレン・スミヤ | クラリス・アグベニュー | 新井千鶴 | フーシェ・ステーンハイス | 金珉程 |
2018年 | ダリア・ビロディド | アマンディーヌ・ブシャール | 芳田司 | クラリス・アグベニュー | 新井千鶴 | フーシェ・ステーンハイス | イダリス・オルティス |
(出典[20]、[22])。
世界ランキング年間トップ回数上位一覧
順位 | 階級 | 選手 | 国籍 | トップ回数 |
---|---|---|---|---|
1 | 100kg超級 | テディ・リネール | フランス | 7 |
2 | 78kg超級 | イダリス・オルティス | キューバ | 5 |
3 | 48kg級 | ムンフバット・ウランツェツェグ | モンゴル | 4 |
70kg級 | リュシ・デコス | フランス | 4 | |
70kg級 | キム・ポリング | オランダ | 4 | |
6 | 60kg級 | リショド・ソビロフ | ウズベキスタン | 3 |
60kg級 | 高藤直寿 | 日本 | 3 | |
81kg級 | 金宰範 | 韓国 | 3 | |
81kg級 | アブタンディル・チリキシビリ | ジョージア | 3 | |
100kg級 | 穴井隆将 | 日本 | 3 | |
52kg級 | マイリンダ・ケルメンディ | コソボ | 3 | |
57kg級 | 松本薫 | 日本 | 3 | |
57kg級 | ドルジスレン・スミヤ | モンゴル | 3 | |
63kg級 | 上野順恵 | 日本 | 3 | |
63kg級 | クラリス・アグベニュー | フランス | 3 | |
78kg級 | ケイラ・ハリソン | アメリカ合衆国 | 3 |
(出典[20]、JudoInside.com)。
関連項目
- 柔道の大会
- ランキング制 (柔道)
脚注
^ 柔道 : 格闘技 | J SPORTS
^ Documents
^ 「ランキング制とグランプリシリーズ導入が正式決定」近代柔道 ベースボールマガジン社、2008年12月号、38 - 41頁
^ 国際柔道連盟試合審判規定(2017-2020)改正の要点
^ Les statistiques du circuit international de 2016 et 2017
^ 「1988年フランスマスターズ」近代柔道 ベースボールマガジン社、1989年3月号、78 - 79頁
^ Information Grand Slam and Grand Prix
^ Sports and Organization Rules Edition July 2010
^ Almaty World Cup - Men
^ IJF - Events Overview 2013-2016
^ 競技者規定 - 財団法人 全日本柔道連盟
^ 柔道国際大会の賞金、選手が全額受け取りへ 読売新聞 2013年3月6日
^ New Year
^ Kelmendi and Tchrikishvili crowned IJF Prestige World Ranking List winners
^ 国際柔道連盟、ベイカーと永瀬に約565万円の報奨金/柔道 時事通信 2017年2月1日
^ Judo Grand Slam, Tyumen 2014
^ IJF Announces 500.000 € Prize Money for the Open World Championships in Morocco
^ Which World Ranking Leaders take 50,000 dollars?
^ Prize money bonus for year-end leaders
- ^ abcdjudobase.org
^ The best male judoka of the IJF World Ranking in 2016
^ Year overview of the World Leading women judoka of 2016
柔道の国際大会 | ||
---|---|---|
夏季オリンピック | ||
| ||
メダリスト一覧 | ||
世界選手権 | ||
| ||
ワールドマスターズ 1月・5月・12月開催 | ||
| ||
グランドスラム | ||
グランドスラム・パリ 2月開催 | グランドスラム・デュッセルドルフ 2月開催 | |
|
| |
グランドスラム・バクー 3月〜5月開催 | グランドスラム・エカテリンブルグ 3月〜7月開催 | |
|
| |
グランドスラム・リオデジャネイロ 5月〜7月開催 | グランドスラム・アブダビ 10月〜11月開催 | |
|
| |
グランドスラム・東京 11月〜12月開催 | ||
| ||
グランプリ | ||
チュニス | ハバナ| テルアビブ | アガディール | トビリシ | サムスン | ブダペスト | マイアミ | ウランバートル | ザグレブ | タシュケント | フフホト | チェジュ | ハーグ | カンクン | ||
大陸選手権 | ||
パンナム選手権(パンナム競技大会) | ヨーロッパ選手権 | アジア選手権(アジア競技大会) | アフリカ選手権 | オセアニア選手権 | ||
コンチネンタルオープン | ||
ソフィア | カサブランカ | オーバーヴァルト | ワルシャワ | プラハ | モンテビデオ | リマ | ブエノスアイレス | マドリード | ブカレスト | リスボン | タリン | サンサルバドル | サンティアゴ | 台北 | ミンスク | ローマ | グラスゴー | ポートルイス| アクタウ | アピア |
|