バイオマス
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再生可能エネルギー |
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バイオマス(biomass)とは、生態学で、特定の時点においてある空間に存在する生物(bio-)の量を、物質の量(mass)として表現したものである。通常、質量あるいはエネルギー量で数値化する。日本語では生物体量、生物量の語が用いられる。植物生態学などの場合には現存量(standing crop)の語が使われることも多い。転じて生物由来の資源を指すこともある。バイオマスを用いた燃料は、バイオ燃料(biofuel)またはエコ燃料 (ecofuel) と呼ばれている。
目次
1 生態学におけるバイオマス
2 産業資源としてのバイオマス
2.1 バイオマスの特徴
2.2 利用状況
2.3 日本政府の取り組み
2.4 主なバイオマス資源
2.5 利用形態
2.6 供給形態
2.7 利用上の留意点
2.8 資材
3 脚注・参照資料
4 関連項目
5 外部リンク
生態学におけるバイオマス
生態学、特に群集生態学や生態系生態学において、バイオマスとは特定地域に生息する生物の総量、あるいはその中の群ごとの総量を指し、訳語としては生物量、あるいは現存量を使う。むしろ訳語を用いることの方が多い。
一般には単位面積あたりの該当生物の乾重量で表す。単位面積あたりの現存量を生物の栄養段階に分けて表すと、階層の低いものほど大きく、高いものほど小さくなる。これを生態ピラミッドという。
産業資源としてのバイオマス
枯渇性資源ではない、現生生物体構成物質起源の産業資源をバイオマスと呼ぶ。新技術として乾留ガス化発電を用いたエネルギー利用が脚光を浴びている。日本政府が定めた「バイオマス・ニッポン総合戦略」では、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」と定義されている[1]。
バイオマスの特徴
- カーボンニュートラル
- バイオマスは有機物であるため、燃焼させると二酸化炭素が排出される。しかしこれに含まれる炭素は、そのバイオマスが成長過程で光合成により大気中から吸収した二酸化炭素に由来する。そのため、バイオマスを使用しても全体として見れば大気中の二酸化炭素量を増加させていないと考えてよいとされる。この性質をカーボンニュートラルと呼ぶ。
石油などのいわゆる化石燃料に含まれる炭素もかつての大気中の二酸化炭素が固定されたものであると考えられているが、それらが生産されたのは数億年も昔のことであり、現在に限って言えばそれらを使用することは大気中の二酸化炭素を増加させている。従って、化石燃料についてはカーボンニュートラルであるとは言わない。- 再生可能性
- バイオマスエネルギーの源は、元を辿れば植物によって取り込まれた太陽エネルギーである。このため、正味でエネルギーが獲得できれば再生可能エネルギーである。
利用状況
1990年代以降、バイオマスは二酸化炭素削減(地球温暖化対策)、循環型社会の構築などの取り組みを通じて脚光を浴び、旧来の薪や炭などの利用に加え、バイオマスエタノール、バイオディーゼルなど各種のバイオマス燃料の利用も拡大している[2]。しかしその一方で生産のための森林破壊や食料との競合などの問題も指摘されており、より弊害の少ない技術の開発が進められているほか、技術水準に応じた規制も検討が進んでいる[3]。
日本では、地方自治体や環境保護団体などが注目している[4]。そもそも高度成長期以前の日本では、落葉や糞尿を肥料として利用していたほか、里山から得られる薪炭がエネルギーとして活用されてきた。石油起源の資材、燃料などへの置換により、顧みられることが少なくなったが、近年、廃棄物処理コストの高騰などから高度利用を模索する自治体が増えている。またRPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)施行に伴い、各電力会社では火力発電所での石炭と間伐材等との混焼が進められており、実証試験の段階から本格実施へと移行している[5]。
日本政府の取り組み
2002年(平成14年)12月、循環型社会を目指す長期戦略「バイオマス・ニッポン総合戦略」を閣議決定。農林水産業からの畜産廃棄物、木材や藁、工芸作物などの有機物からのエネルギーや生分解性プラスチックなどの生産、食品産業から発生する廃棄物、副産物の活用を進めており、「バイオマスタウン」等の構想がある。
しかしながら、2003年度から2008年度までに214事業が実施されているものの、効果があると判断されたのは全体の16%の35事業であり、総務省は事業改善を求めている[6]。2011年3月には総務省の報告書においてこれまでの政策の評価が行われ、バイオマス関連施設の約7割が赤字であるなど、厳しい状況にあることが指摘されている[7]。特に林地残材の98%、食品廃棄物や農作物非食用部の70%以上が活用されていないなどの課題が指摘されており、関係各省に対して利用促進の勧告が行われている[7]。
主なバイオマス資源
- 廃棄物系バイオマス - 紙、家畜糞尿、食品廃材、建設廃材、黒液、下水汚泥、生ごみ等
- 未利用バイオマス - 稲藁、麦藁、籾殻、林地残材(間伐材・被害木など)、資源作物、飼料作物、デンプン系作物等
利用形態
- 乾留ガス化発電方式による発電
ボイラーによる蒸気回収
アルコールを中心とした利用(利用形態・経済性についてはアルコール燃料の項も参照)
供給形態
- 家畜等糞尿などからのメタンの精製(バイオガス)
木質廃材などセルロース系からのエタノールの抽出- 廃食用油などの自動車燃料化
- 生物起源の可燃廃棄物(廃棄物固形燃料、木質ペレット)などの直接燃焼
- 木質バイオマス発電
- 木質バイオマスのガス化による水素、合成ガス、メタノールの生成
製紙パルプ製造工程での黒液バイオマス発電(ソーダ回収ボイラー)
利用上の留意点
- 収集コスト
- 地域内に広く分散していることが多く、収集・運搬・管理のコストがかかる。コストと温室効果ガス排出量を削減するためには効率的な収集が必要であり、大規模になるほどコストダウンが容易になるとされる[8]。
- エネルギー(熱量)
- 下水汚泥(脱水ケーキ)・木質(乾燥)・食品残渣・茶かす・わら屑などは、乾燥状態で4.8Mcal/kg(20MJ/kg)前後と灯油の半分程度であるが、ガス化した際のエネルギー変換率は70%と高いため、燃焼ガスへの利用に向いている[要出典]。
- 含水比
- 水を多く含む場合、乾燥させるのにかかるエネルギーと燃料として取り出せるエネルギーとの関係が問題視される。アオサ・昆布・牛乳・おから・糞尿類・生ごみは含水比が80%以上であり、乾燥工程が不要なメタン発酵での利用に向いている。なお、バイオエタノールの製造においては、生産される以上のエネルギーを消費しているケースがあるとされる[要出典]。
- 食料とのトレードオフ詳細は「食料 VS 燃料」を参照
- 可食部を原料とするバイオマス利用は、食料生産と燃料生産とのトレードオフが懸念されている[9]。これは主にバイオエタノールにおいて指摘されているが、既に2007年の時点で穀物の値上がりの原因となっている。日本では飼料作物である米国産トウモロコシの値上げによる肉類の値上げなどが心配されているが、世界的には耕作における水資源の不足から、貧しい国における食糧危機が懸念されている[10]。
- 非可食部のセルロース等を利用すれば食料とのトレードオフは発生しないため、政策的な規制等も含め、今後はそのような方向が模索されることが期待される[11]。各国で食料や飼料用の穀物の生産と競合しない資源的な制約の少ない原材料で製造する第二世代バイオ燃料に関する研究が進められ、セルロース系原料を効率的にエタノール等に変換する研究にも期待がもたれている[12][13][14][15]。また、シロアリの消化器官内の共生菌によるセルロース分解プロセスがバイオマスエタノールの製造に役立つ事が期待され、琉球大学や理化学研究所等で研究が進められる[16][17][18][19][20][21][22][23]。
- 耕地の確保
- 現時点では農地の大部分は食糧を確保するために利用されているが、これに加えてバイオマス燃料を収穫するための耕地が必要となれば、さらなる耕地の拡大が求められ、たとえば熱帯雨林の伐採が進む恐れがある[24]。また、耕地の拡大により、世界的に不足が懸念されている水資源が一層枯渇する可能性が指摘されている[要出典]。
- 加工コスト
薪・木材チップなどはそのままエネルギーとして消費できるにもかかわらず、あえて加工して消費している例として、木質ペレットがある。山から切り出した材木や廃材は、比較的少ない手間で薪や木材チップに加工でき、薪ストーブやチップボイラーなどの燃料として利用することができる。これに対して木質ペレットは、化石燃料や電力を消費するプラントにおいて製造され、ペレットストーブの使用時には電気ファンによる送風などのための補助的なエネルギーが必要ではないことがわかった。
資材
トウモロコシでんぷんなど - 生分解性プラスチックへ
- バイオマスの乳酸発酵によって生成された乳酸から生分解プラスチックが生産される。
- トウモロコシでんぷんなどの未利用バイオマス - バイオプラスチックへ
- 生物起源の廃棄物など - 堆肥へ
脚注・参照資料
^ 「バイオマス・ニッポン総合戦略」本文 1ページ - バイオマス・ニッポン - 農林水産省
^ NEDO海外レポート No.994、2007年2月7日
^ Technobahn、2008/1/15 05:18の記事
^ バイオマス情報ヘッドクォーター
^ 資源エネルギー庁が木質バイオマス混焼発電を推進(新エネルギー財団)
^ “政府バイオマス関連事業、8割以上効果なし 総務省”. 日本経済新聞. 2011年2月15日閲覧。
- ^ abバイオマスの利活用に関する政策評価<評価結果及び勧告>、総務省、2011年3月
^ http://www.civil.miyazaki-u.ac.jp/~dyken/ronbun/ronbun/01baba.pdf
^ バイオ燃料用作物、無秩序栽培は生態系破壊…国連報告書 読売新聞、2008年(平成20年)5月4日。
^ レスター ブラウン「フード・セキュリティー―だれが世界を養うのか」、ワールドウォッチジャパン、2005年4月、 ISBN 978-4948754225。
^ 三菱総合研究所、バイオ燃料とライフサイクルアセスメント〜良いバイオ燃料、悪いバイオ燃料の選別〜、2007.12.25
^ " WiredVision、2006年2月8日の記事
^ セルロースを分解しディーゼル、アルコール等を作る新しい微生物
^ 正念場を迎えた米国の第二世代バイオエタノール(2)
^ 食料と競合しないバイオ燃料
^ シロアリによるバイオエタノール製造に弾み
^ シロアリがエタノール生産の救世主に? 代替燃料技術の現在
^ シロアリの腸からバイオ燃料生産効率を高める新酵素を発見
^ 国エネルギー省(DOE: Department of Energy)の共同ゲノム研究所
^ “廃材をバイオ燃料に”. 沖縄タイムス ( 沖縄: 沖縄タイムス): pp. 1面. (2008年7月3日)
^ シロアリの新しい利用法
^ シロアリ腸内共生系の高効率木質バイオマス糖化酵素を網羅的に解析
^ バイオエネルギー生産のためのシロアリ共生系高度利用技術の基盤的研究
^ 三菱総合研究所、バイオ燃料とライフサイクルアセスメント ~良いバイオ燃料、悪いバイオ燃料の選別(2)~、2008.3.7
関連項目
- 生産性
- カーボンニュートラル
- 再生可能エネルギー
バイオ燃料
- バイオガス
- バイオマスエタノール
- アルコール燃料
- バイオディーゼル
- エチルtert-ブチルエーテル
- 2,5-ジメチルフラン
バイオプラスチック
- ポリ乳酸
- バイオマスタウン
- バイオマスボイラー
電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法 - RPS制度について
外部リンク
- 農林水産省バイオマス・ニッポン
- バイオマス熱利用 - 経済産業省・資源エネルギー庁
バイオマス産業社会ネットワーク - NPO