府
府(ふ)
中国
- 「蔵」の意味
- 原意は、古代中国で官物や財貨を収蔵した蔵。
- 農業が盛んで収穫が高く豊かな土地。「天府」とも。蜀の地など。
- 「政庁」の意味
- 王府: 漢代から明初にかけて、各地に王として封じられた皇族が軍事と行政の拠点として開いた政庁。税穀を備蓄するための蔵が並んでいたことが語源。
- 王府: 明代から清代にかけて、都や主要都市の要所に置かれた皇族の大邸宅。こちらはただの邸宅にすぎないが、上記の王府の名残りでやはり王府といった。明初南京の燕王府、清代北京の恭王府など。
- 「地区」の意味
- 使府: 唐代から宋代にかけて、各地で軍事権と行政権を掌握した節度使が本拠とした地。広州府、揚州府、許州府)など「州」がつくものが多い。
- 京府: 唐以降の歴代王朝において、都や陪都として機能した大都市の副称。唐の北京太原府・南京成都府・西京鳳翔府・南都江陵府、渤海の上京龍泉府・東京龍原府・中京顕徳府・南京南海府・西京鴨緑府、遼の上京臨潢府・中京大定府・東京遼陽府・西京大同府・南京幽都府→南京析津府、後唐の北都真定府、五代後漢の北都大同府、南唐の東都広陵府、西夏の東京興慶府・西京西平府、北宋の東京開封府、西京河南府、北京大名府、南京応天府、南宋の臨安府、金の上京会寧府・中都大興府・南京遼陽府→府東京遼陽府・南京平州府・北京大定府・西京大同府・南京開封府、元の西京大同府・明の南京応天府・北京開封府・北京順天府、清代の盛京奉天府など。
府 (行政区画) - 唐代から清代にかけて、県の上に置かれた行政区画。
日本
- 中国の「政庁」の意味に由来するもの
任那日本府: 日本書紀に記されている、古代、朝鮮半島南部の任那(任那、加羅、馬韓の一部、辰韓の一部)にあった倭国の統治機構。
大宰府・鎮西府: 古代から律令制の時代にかけて、九州・壱岐・対馬を所轄し日本の外交・防衛にあたった機関。
国府: 律令制で、国衙を中心に発達した都市。
内大臣府: 明治から昭和の初めにかけて、内大臣が執務の拠点とした施設及び組織。
政府: 行政府である「内閣」の通称。
府中: 旧憲法下で、「宮中」(内大臣・宮内大臣・侍従長など)に対する「政府」(内閣総理大臣・国務大臣など)の通称。
枢府: 「枢密院」の通称。
元帥府: 明治31年から昭和20年にかけて、功績のあった陸軍、海軍の大将に対して元帥の称号を受け列せられた天皇の最高軍事顧問機関。
総督府: 明治から昭和の初めにかけて外地の総督が執務の拠点とした施設。台湾総督府、韓国統監府、朝鮮総督府、関東総督府、関東都督府。
宮内府: 昭和22年(1947年)5月3日新憲法施行とともに従前の宮内省を改称する形で設置され、昭和24年6月1日宮内庁に改組された機関。
法務府: 昭和24年6月1日従前の法務庁を改組する形で設置され、昭和27年8月1日法務省に改称された行政機関。
総理府: かつて内閣総理大臣が主任大臣として所掌していた行政機関。
内閣府: 平成13年(2001年)の中央省庁再編で内閣補助機関として内閣に設置された機関。
大統領府/首相府: 世界の官邸の総称、大統領や首相が執務の拠点とする施設。「官邸」と同義。アメリカ大統領府、ドイツ連邦首相府、など。「府」との訳語は、これらの機関が日本の総理府や内閣府に相当する機関であるとの連想から慣例上用いられるが、この項の各事例に見るように「府」には中枢機関の意味はなく、むしろ出先機関、地方機関、下僚機関の意味でも用いる令が多いので適訳ではない。漢字使用国において、自ら「大統領「府」」の名称を用いる国はない。[要検証 ]
- 中国の「政庁」の意味から「統治者」の概念が日本で独立したもの
- 左府: 律令制の左大臣の唐名。
- 右府: 律令制の右大臣の唐名。
- 内府: 律令制の内大臣の唐名。
幕府: 律令制の近衛大将の唐名。源頼朝は征夷大将軍任官前に右近衛大将だったことから「幕府」と呼ばれた。後にこれが「将軍の居所」という意味に変化する。
内府: 明治から昭和の初めにかけてあった「内大臣」の通称。
- 中国の「政庁」の意味から「軍事」の概念が日本で独立したもの
五衛府: 律令制で、おもに内裏を警護した五つの組織。衛門府、左・右衛士府、左・右兵衛府の五つ。
六衛府: 奈良時代後期に上の五衛府が改組され、左右の近衛府・兵衛府・衛門府からなる六衛府となった。
鎮守府: 古代の陸奥国に置かれた軍政を司る機関。
幕府: 鎌倉時代から室町時代にかけては「将軍の居所」を指した。幕府が「将軍を頂点とする中央政府」を意味するようになったのは江戸時代中頃になってから。
海軍鎮守府: 明治時代に日本の沿岸を五つの海軍区に分け、各海軍区に軍港とともに設置された海軍の拠点。横須賀鎮守府、呉鎮守府、佐世保鎮守府、舞鶴鎮守府。
- 中国の「地区」(京府)の意味に由来するもの
江戸:「幕府の所在地」という意味から、大名が江戸に入ることを「入府」、江戸にいることを「在府」、江戸に常駐することを「定府」と呼んだ。また江戸町内のことを「府内」「府中」などともいった。
府 (行政区画)
- 九府: 府藩県三治制において、幕府支配地のうち、江戸町奉行の支配地および遠国奉行の奉行知行所を「府」と改めたもの。箱館府・京都府・大阪府・長崎府・江戸府→東京府・越後府→新潟府・度会府・神奈川府・奈良府・甲斐府。(ただし、奈良府は発足の2か月後に奈良県に改称。)
三府: 明治2年7月17日(1869年8月24日)の太政官布告により、東京府・京都府・大阪府以外の6府がいずれも県に改められた。- 二府: 昭和18年(1943年)7月1日、東京都制施行により東京府と東京市を東京都に改編した結果、京都府と大阪府が残って現在に至る。
府 (行政区画) - 植民地統治下の朝鮮において、主要都市に置かれた行政区画。内地の市に相当する。大韓民国成立後も1949年8月14日まで使用された。(ソウル特別市を除く)
琉球
- 中国の「政庁」の意味に由来するもの
- 王府:琉球王国の行政機関。首里王府、中山王府とも呼ばれた。琉球王国#政治を参照。
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