抑込技
抑込技(おさえこみえわざ)とは、柔道において関節技、絞め技とともに寝技の一分野をなす。レスリングの抑込技に関しては、ピンフォールを参照の事。
目次
1 概要
2 寝技(抑込技)の主な基本動作
3 抑込技の種類
4 関連項目
5 脚注
6 外部リンク
概要
柔道での抑込技は、基本的に相手を立ち技で崩して寝技の展開に持ち込んだ際に、相手の背中及び両肩(または一方の肩)を畳に着けた状態から袈裟または四方の形で制御して、一定時間抑え込むことを言う。2014年からの国際ルールでは裏の体勢で制御することも認められることになった。高専柔道で認められているいきなり寝技に引き込む行為は禁止されている[1]
抑え込まれた者が仰向けの状態から脱してうつ伏せになった場合、又は抑え込みをしている者の片足を自らの両足で絡めるとその時点で「解けた」となり、抑え込みは無効となる。寝技の攻防で相手が亀の状態になったので深追いせずに動きが止まった場合や、絡まれた足がとけそうになく膠着状態となってこれ以上の進展が望めないと審判が見なした場合などはすかさず「待て」がかかるので、競技柔道においては素早く抑え込みに入ることが要求される。
また、寝技の攻防の際には単に上からの攻めだけでなく、下になった状態から相手と体を入れ替えて逆に抑え込んだり、特定の抑込技で抑え切るだけではなく、例えば上四方固から横四方固といった別の抑込技への連絡変化や、関節技や絞め技狙いの状態から抑込技への移行などもよく見られる。
講道館ルール及び1997年までの国際ルールでは30秒抑え込むと一本、25秒以上で技有り、20秒以上で有効、10秒以上で効果(国際ルールのみ)となるが、その後の国際ルールでは25秒で一本、20秒以上で技有り、15秒以上で有効となる。なお、試合終了間際に抑えこみとなった場合は、試合時間が終了しても抑え込みは継続される。さらに、場外際での抑え込みになった際は、どちらかの競技者の身体の一部が試合場内に留まっている限り抑え込みは継続される。
近年IJF内部では20秒で抑え込み一本になるよう画策する動きがあったものの、IJF指名理事の上村春樹が会長のマリウス・ビゼールに強硬な反対姿勢を示したことにより、取り止めとなった[2]。
しかしながら、2013年2月のグランドスラム・パリから8月のリオデジャネイロ世界選手権までの期間、20秒抑え込むと一本、15秒で技あり、10秒で有効と従来よりそれぞれ抑え込み時間が5秒ずつ短縮され、また、一旦場内で抑え込みに入ったら両者の身体が場外に出ても抑え込みが継続されるルール改正案が試験導入されると、2014年からは正式導入が決定された[3][1]。2017年からは10秒で技あり、20秒で一本と規定されるようになった[4][5]。
抑込技は寝技の中では関節技などに較べると日本の選手が比較的得意にしている分野である。とりわけ女子代表選手は特に誰がと言うわけではなく、総じて抑込技に長けている[6]。日本の女子選手は2011年の世界選手権では寝技で13勝(抑込技10勝)をあげており、2位の中国は9勝(抑込技7勝)となっている[7]。2017年の世界選手権では19勝(抑込技15勝)をあげて、2位のモンゴルの7勝(抑込技5勝)を大きく引き離している[8]。フランスの柔道メディアであるL'Esprit du Judoも寝技(抑込技)こそが常に日本女子の強みとして機能している部分だと指摘した[9]。Ippon.TVでは大会の度に、実況のみならずゲスト解説で呼ばれる各国の選手も日本の女子選手の寝技(とりわけ抑込技)の巧さに関して盛んに言及している。但し、女子の抑込技の巧さは今に始まったことではなく、1980年代後半から抑込技を非常に得意としていた。とりわけ、横四方固での一本が際立って多い[10]。1989年の世界選手権前に当時の女子代表監督だった柳沢久は、ヨーロッパ勢の関節技には抑込技で対抗すると宣言していた[11]。
寝技(抑込技)の主な基本動作
脇締め
両脇を締めて腹ばいの状態から前に進む。脇を締めることで相手の逆襲を喰らわずきっちり抑え込む力を養うための鍛錬となる。
エビ
仰向けの状態から体を左右にはねながら、畳を両足で交互に蹴り上げて頭の方向へ進む。仰向け状態の時に相手が自分の足の方向から攻めてきた時に、相手の攻撃をかわして逆に攻撃に転ずるための鍛錬となる。
逆エビ
仰向けの状態から体を左右に反らしながら、畳を両足で交互に蹴り上げて足の方向へ進む。相手に抑え込まれないように体を移動させたり、相手と密着状態になった時に隙間をつくるための鍛錬となる。
足回し
仰向けになって膝を曲げながら左右に足を回す。仰向け状態から相手の攻撃をかわすための鍛錬となる。
足伸ばし
仰向けになって両足を交互に下から上に回す。仰向け状態から足を伸ばして相手の反撃をかわして、逆に逆襲の機会を伺うための鍛錬のなる。
ブリッジ
うつ伏せ、または仰向けの状態で頭部を畳につけながら首を上下に動かす。またはその状態から体を
回転させる。首の強化のための鍛錬となる。
抑込技の種類
詳しくは各技の項目を参照のこと
横四方固
相手が仰向けの状態から左腕で肩越しに相手の帯を掴み、さらにもう一方の右腕を相手の股の間に伸ばして下穿きを掴みながら相手の上半身を横向きの体勢で抑え込む技。
上四方固
仰向けの相手の帯を両手で掴み相手の両腕を制しながら、相手の胸に顎を乗せて抑え込む技。
崩上四方固
仰向けの相手の右腕を自分の右腕で抱え込みながら、斜め方向から相手の胸に顎を乗せて抑え込む技。横三角絞の状態から自らの上半身を相手の下半身の方角に向け、相手の下穿きを一方の腕で掴みながら抑え込んだ場合は崩上四方固と見なされる。
袈裟固
仰向けの相手の首を自分の右腕で巻きつけ、さらに相手の右腕を自分の左脇で制御した状態から抑え込む技。かつて講道館ルールで名称は「本袈裟固」だった。
崩袈裟固
仰向けの相手の左脇に自分の右腕を伸ばして、相手の右腕を左腕で制御した状態から抑え込む技。
縦四方固
仰向けの相手の片腕か頭を制して、さらに相手に跨がって抑え込む技。
肩固
仰向けの相手の右腕と首を決めた状態から抑え込む技。
後袈裟固
仰向けの相手の左腕を左脇で抱え込みながら右腕で相手の右下穿きを掴み抑え込む技。
かつて、講道館ルールでは崩袈裟固めの一種とみなされている。
浮固
仰向けの相手の左腕を腕挫十字固の体勢で制御しながら、自らの足を相手の左側面に移動させて、尻を浮かせながら相手の上体を自らの上半身で覆って抑え込む技。2017年から講道館ルールでも認められた。
裏固
仰向けの相手の下腹部を後頭部で抑えて、左腕を左脇で抱え込みながら右腕で相手の左下穿きを掴みながら抑え込む技。2017年から講道館ルールでも認められた。一時、国際ルールでも認められていなかった。
関連項目
- 固技
脚注
- ^ ab国際柔道連盟試合審判規定(2014-2016)
^ 「上村春樹・全柔連専務理事に聞く」近代柔道 ベースボールマガジン社、2008年12月号、42-43頁
^ ENG-Refereeing-Rules-2013-2016
^ Wide consensus for the adapted rules of the next Olympic Cycle
^ Adaptation of the refereeing rules
^ 「女子柔道の歴史と課題」 山口香 日本武道館、214頁、384頁 ISBN 4583104596
^ 「2011年世界柔道選手権大会」近代柔道 ベースボールマガジン社、2011年10月号 83-86頁
^ 「2017年世界柔道選手権大会」近代柔道 ベースボールマガジン社、2017年10月号 83-85頁
^ Le Japon énorme, la France trop loin
^ 「技術特性」『女子柔道論』 創文企画、40-51頁 ISBN 978-4921164409
^ 「ヨーロッパ選手権 私はこう見た」近代柔道 ベースボールマガジン社、1989年7月号 60頁
外部リンク
柔道チャンネル 柔道辞典
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